A型肝炎の治療は対症療法。安静と食事の注意で完治が目指せる

肝臓病はかつて、回復させることが難しい病気であるとされた時代が長く続いてきました。しかし近年ではいろいろな優れた薬が開発され、肝臓病の治療にもいくつかの選択肢ができるほどに医療は進化しました。

肝臓病のなかでもやっかいな病気に「肝炎」があります。特にウイルス性肝炎は、ウイルスが長期にわたって体内に残留するため治療が難しいといわれることが多いです。

中でも今回は「A型肝炎の治療」の方法を考えます。

A型肝炎にかかったらなにをする?A型肝炎の治療方法

不幸にも何らかの病気にかかってしまった、あるいはかかっていると気づいたら、ほぼ例外なく「治療」が行われます。治療の方法は、その病気によって当然いろいろな方法があります。

しかしあえて病気ごとに分けるのではなく、治療という「医療的な行為」を2つのタイプに分けるなら、治療は、

  • 根治療法(病気の原因を取り除いて完治を目指す治療方法)
  • 対症療法(病気の原因はさておき、病気のつらい症状を軽減するための治療方法)

に大別することができます。ただ、中には根治療法が不可能な種類の病気もあって、その場合は病気の症状の軽減をひたすら目指す「対症療法」だけを治療法とする病気もあります。

A型肝炎も、対症療法だけが治療方法となる病気のひとつです。

A型肝炎の具体的な治療方法

A型肝炎の症状タイプは「急性肝炎」です。

急性肝炎というのは肝炎の急性症状のことですが、急性症状というと突然の痛みや強い不快感にもだえ苦しむようなイメージがあるかもしれませんね。

しかし肝炎の場合、急性症状といってもそこまで重症になることは多くありません。だいたいは風邪のような症状か、これに毛が生えた程度の、むしろ微妙な症状があらわれるのがA型急性肝炎です。

▼詳しくはこちらの記事で解説しています
急性肝炎の症状一覧。風邪に似た発熱やのどの痛みに要注意!

そのため、病院に行っても「風邪ですね」と言われ、入院したり点滴を打ったり頓服薬で発作を抑えたり・・・といった特別な治療は行われないことが多いです。

ですから、場合によっては風邪薬を処方されて、その風邪薬を服用しているうちに症状が治ってしまうこともあります。正直、A型急性肝炎はそこまで積極的な治療が行われるわけではないのです。

とはいえ、血液検査などでA型急性肝炎であることが判明した場合は、やはりそれなりの投薬治療が行われることもありますが、治療のベースとなるのは「安静」と「食事療法」です。

A型肝炎の場合、肝機能が低下する肝臓病ですから、できるだけ肝臓に負担をかけないような食事を心がけてください。ですから「食事療法」というほど大げさな治療では正直ありません。

A型肝炎ウイルスに感染したら対症療法だけで治療する

病気の治療のタイプは、完治を目指す「根治療法」と、症状の軽減を目指す「対症療法」とにわかれるわけですが、A型肝炎の場合上記のお話のとおり、根治療法ではなく対症療法を採用します。

「えっ!?A型肝炎は完治できないの!?」と思うかもしれませんが、そういうことではありません。

A型肝炎は、根治治療を実施しなくても完治することができるウイルス性肝炎であると解釈して問題ありません。

根治治療を実施しないといわれるとなんだか心配になるかもしれませんが、そもそも症状の軽減を目指すのが対症療法ですから、対症的な治療を実施しないほうがよっぽどおかしな治療方法であるといえます。

A型肝炎に限定せず、さまざまな病気を対象として、根治治療を実施しない理由は、

  • 根治治療の方法が確立していないから
  • 根治療法を導入する必要がないから

のいずれかの理由で説明されます。

A型肝炎の場合「根治療法を導入する必要がない」という理由で、対症療法のみの治療になることがほとんどです。

「根治治療の方法が確立していない病気」は、肝不全や腎不全、末期(あるいは非代償期)肝硬変など、いわゆる「手の施しようのない病気」がこれに当たります。

また、リウマチなどの膠原病(こうげんびょう)や高尿酸血症・痛風といった難治性疾患(いわゆる「難病」)のように、まさに「治療方法がみつかっていない」といった種類の病気も対症療法のみの対処になります。

A型肝炎など「根治療法を導入する必要がない」タイプの病気は、対症療法で対処しているうちに完治してしまうタイプになります。

この種類の疾患で最も代表的なものが、誰もが一度はかかる「風邪」ですね。

A型肝炎に根治治療を導入しようとするなら、その目的は「A型肝炎ウイルスをゼロ(に近い状態)に持っていく」ところにあります。ところがA型肝炎の症状に対するケアの過程でウイルスはほぼゼロになるのです。

そのため、根治治療は必要ないというか、しようとしてもそのときにはもうA型肝炎ウイルスが体外に排出されているイメージになります。ただし、A型肝炎ウイルスが強力でないわけではありません。

A型肝炎の症状は急性肝炎としてあらわれ、急性肝炎の中にはまれに劇症肝炎という、生命の危機に瀕する症状へと移行することがあるからです。

ですからA型肝炎にかかったら、できるだけ早く対処して、完ぺきに治療を終えることが重要になります。ただしその方法は「対症療法」になりますよ、というお話です。

A型肝炎は治療よりも「ウイルスの発見」が重要かも

A型肝炎にかかったら治療が重要でないなどということは決してありません。ただ、再三お話してきたように、「風邪に近い症状」となることがとにかく多いのがA型肝炎の特徴です。

その意味では、「A型肝炎の治療」という明確な意図をもって治療するためには、A型肝炎ウイルスの感染をまずは発見することが大切なのです。その意図がないと、「風邪です」で終わってしまうこともあります。

そういう特徴的な症状のA型肝炎ですから、たとえば生ガキを食べてからの不調や、海外から帰ってきたら調子が悪いなどといった時点で、一度ウイルスチェックを受けたほうがよいかもしれませんね。

B型肝炎C型肝炎など、比較的重大であるとされるウイルス性肝炎とくらべると、A型肝炎はなんとなく軽い肝炎であるイメージがあります。

しかし実際には、たいへんな事態に陥る危険性もありますので、風邪と大差ない症状であっても油断することはできません。しっかりと治療をすることが大切です。そのためには「ウイルス(感染)の発見」が重要なのです。

この記事をシェア

合わせて読みたい

ページ先頭に戻る