C型肝炎の治療をわかりやすく解説。確立されている2つの治療法

ウイルス性肝炎の中で最も怖いといわれることが多いのが、C型肝炎です。(A型肝炎やB型肝炎が怖い肝炎ではないとは言いませんが)

C型肝炎の場合、B型肝炎にくらべて感染力自体はかなり弱いです。しかしC型肝炎に感染すると、B型肝炎のような抗体の有効性が強くないため、肝硬変をはじめとする重度肝障害へと移行する危険性が高いのです。

だからこそ、万一C型肝炎ウイルスに感染したら、速やかな治療が重要になってきます。

C型肝炎の治療法は大きくわけて2つ

C型肝炎を治療するためには、まずはウイルス感染後にどういった症状に至るかを知っておかなければなりません。C型肝炎ウイルスが感染してから一定の潜伏期間を経たあと発症する症状は、大きく分けると次の2つです。

  • C型慢性肝炎
  • 肝硬変

C型肝炎ウイルスによる「肝炎」の症状として多くは慢性肝炎ですが、ほかにも急性肝炎を発症することもあります。急性肝炎ではさらに急変して劇症肝炎に至ることもまれにあります。

肝硬変にもいくつか種類がありますが、改善を十分見込めるという意味で治療が可能なのは、C型代償性(期)肝硬変です。一方、非代償性(期)肝硬変になってしまうと、改善は難しくなります。

今回はC型慢性肝炎とC型代償性肝炎の治療方法についてお話しします。

C型肝炎治療のウイルス排除・肝庇護療法

C型肝炎は、B型肝炎などほかのウイルス性肝炎と同じく、ウイルスが体内にある状態で肝炎などの症状が進行する、いわば感染症です。ウイルス性肝炎であってもほかの病気であっても、感染症では、

  • ウイルスを排除すること
  • 既存のウイルスが悪さをしないようにコントロールすること

を目的とした治療が必要になります。もっといえば、すぐに排除することができないウイルスを首尾よくコントロールし、排除できる部分からどんどん排除していくといった治療の方向性が明確になっています。

上記の目的を根底に据えたC型肝炎ウイルスによる感染症(C型慢性肝炎、C型代償性肝硬変)の治療方法を大きく分けると、

  • 抗ウイルス療法(ウイルスの排除)
  • 肝庇護(かんひご)療法(既存ウイルスのコントロール)

に分かれます。そこからさらに治療方法は細かく分かれていくのですが、それぞれについてご紹介しましょう。

C型肝炎の治療方法、ウイルス排除と肝庇護療法
(出典:肝臓疾患の現状と先端医療|最先端の治療法 – 大久保病院/肝臓センター)

C型肝炎の抗ウイルス療法では精度の高い方法が確立されている

C型慢性肝炎やC型代償性肝硬変などは、C型肝炎ウイルスが直接の原因です。だったらC型肝炎ウイルスに身体から出て行ってもらいましょうよ、という発想の治療が、C型肝炎の抗ウイルス療法です。

そのための方法として実施する、有力な治療方法がすでに確立されています。そのひとつが、かなり古くから導入されていた「インターフェロン療法」です。

しかし現在はさらに精度の高い方法があります。これが「インターフェロンフリー療法」という治療方法です。

どちらも「インターフェロン」という用語がつかわれた治療方法なので、似た治療方法のように感じられるかもしれませんが、そうではありません。

インターフェロン療法は、「インターフェロン」というもともと体内で生成されるたんぱく質を注射、もしくは服用することによって、身体の抗ウイルス機能(ある種の免疫)を高める治療方法です。

これに対し、インターフェロンフリー療法は、インターフェロンを用いない治療法です。要は、真逆の治療方法になります。

インターフェロンは効果がないわけではありませんが、確実性は高くありません。

インターフェロンフリー療法は、もっとダイレクトにC型肝炎ウイルスを攻撃する「抗ウイルス薬」を使用してウイルス駆除を行う治療方法になります。「フリー」のほうが確実性は高く、近年はこちらが主流です。

というより、症状によってインターフェロンフリー療法とインターフェロン療法を組み合わせて実施する治療が主流であるといえます。

抗ウイルス療法の組み合わせ例
  • インターフェロンフリー療法・・・抗ウイルス内服薬1~2種類
  • インターフェロン療法・・・インターフェロン注射+抗ウイルス内服薬、もしくはインターフェロン注射のみ

感染症は、ウイルス駆除さえ順調に進めば、改善は時間の問題です。

排除できないC型肝炎ウイルスから肝臓を守る、肝庇護療法

C型慢性肝炎やC型代償性肝硬変の治療の前提となるのが、インターフェロンフリー療法とインターフェロン療法です。

しかし何らかの事情によって、これらの前提を覆さなければならない患者さんもいます。

その場合に採用されることになるのが、排除できずに体内に残っているC型肝炎ウイルスをコントロールする目的で行われる「肝庇護療法」です。「庇護(ひご)」とは、文字通り「かばい、守ること」です。

つまり、肝庇護療法は排除できないC型肝炎ウイルスから、肝臓をかばい、守るための治療方法になります。

ここで、ひとつの素朴な疑問が湧きあがった人もたくさんいると思います。それは、

インターフェロンフリーやインターフェロンはウイルスを排除するための治療で、しかもこれらがC型肝炎治療の前提になるわけだから、この時点でC型肝炎ウイルスは順調に減っているんじゃないの?

という疑問です。確かに理論上は抗ウイルス療法によってC型肝炎ウイルスは順調に減少していくことになるはずですが、実際にはそう簡単な話ではありません。C型肝炎はそんなに生易しい病気ではないのです。

実際、インターフェロン療法の治療精度が低かったからインターフェロンフリー療法が新たに確立されたわけで、そのインターフェロンフリー療法ですら、精度が多少上がっただけで、「完全」ではないのです。

患者さんの体質によっては、インターフェロンやインターフェロンフリーの効果が十分ではない可能性も十分あるのです。加えて、C型肝炎の症状の重症度(C型肝炎ウイルスの増殖の度合い)にもよります。

インターフェロン(フリー)によって、ある患者さんにとって有効なレベルでC型肝炎ウイルスが排除されていたとしても、C型肝炎ウイルスが大量に増殖している患者さんにとっては、既存のウイルスをコントロールする必要が生じるのです。

このような事情もあって、肝庇護療法は「ついでの治療方法」ではなく、「なくてはならない治療方法」であると考える必要があります。あくまでもインターフェロン(フリー)が前提である、というだけのことです。

肝庇護療法の、抗ウイルス療法と決定的に異なる部分は、C型肝炎ウイルスが排除されないという事情からインターフェロン、インターフェロンフリーの治療を採用できない限りにおいては、完治の可能性がないという点です。

しかし毎日しっかりと薬を飲むことで、C型肝炎ウイルスが悪さをすることは基本的に考えられませんので、「薬を忘れずに飲む」ことこそ肝庇護療法における最重要ポイントです。

C型肝炎の治療は「C型肝炎ウイルスとの付き合い方」に尽きる

インターフェロンだとかインターフェロンフリーだとか、あるいは肝庇護だとか、何やらとても難しく感じられる専門用語を数々登場させてしまった印象もありますが、話自体は決して難しくありません。

C型肝炎の治療で最大のポイントとなるのは、「C型肝炎ウイルスをどう扱うか」です。C型肝炎ウイルスのせいで病気が起こっているのであれば、C型肝炎ウイルスを身体から出せばよいという結論に至ります。

ところが、C型肝炎ウイルスを身体から出すことができない、もしくはC型肝炎の排除が間に合わないなどの理由で、C型肝炎ウイルスを体内に残さざるを得ない事情がある患者さんもいます。

そういう事情があるなら、体内に残ったウイルスをうまくコントロールすればよいという結論に至ります。ですから、技術的な問題は別として、発想自体はそこまで難しい話ではないはずです。

しかし私たち一般人は、患者さんでも健常者でも、ウイルスを排除したりコントロールしたりするすべを基本的には持ちません。だからこそ、早期の発見、早期の治療が重要になります。

症状を悪化させない、つまりはC型肝炎ウイルスを増殖させないことが最も重要な部分であるといえます。お医者さんを信じて、あるいは信じられるお医者さんを探して、患者さんは未来を信じて治療していただきたいと思います。

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