根拠があるタウリンの効果とは。肝機能、疲労回復に効くのか?

CMなどでもよく耳にするタウリンという成分。疲れに効いて元気になれそうなイメージがありますが、実際にはどのような成分なのでしょうか。

タウリンの効果や、タウリンが多く含まれている食品について詳しくみてみましょう。

タウリンは特に魚介類に多く含まれている成分。お酒のつまみによく登場するスルメですが、あの表面についている白い粉、実はあれがタウリンなんですよ。

タウリンはアミノ酸の一種で、なんと体重の0.1%ほどの量が人体にある

タウリンは含硫(がんりゅう)アミノ酸という硫黄を含んだアミノ酸の一種で、人の体内でも合成することができる成分です。

ただしタンパク質を構成するアミノ酸ではありません。(アミノ酸にはとてもたくさんの種類があり、タンパク質を構成するのはそのうちの20種類だけです。)

タウリンは、タンパク質を構成するアミノ酸のひとつである「システイン」から作られます。システインに酵素が働くことで、人の体内でもタウリンが合成されるのです。しかし合成できる量は多いとは言えず、食品などから取り入れることも必要になります。

タウリンは人の体のあらゆる場所に存在している

タウリンは人の体のあらゆる場所、例えば心臓、肝臓、脾臓、脳、筋肉、眼の網膜などに存在しています。特に筋肉には多く、全タウリンの50−80%が筋肉に存在しているとされます。

また体内のタウリンの量は、体重の0.1%ほどにもなります。これだけ多くの量が、体のあらゆる場所に含まれていることから、タウリンは体の中で重要な役割を果たしているのだろうと考えられています。

新生児はまだ、自分で十分な量のタウリンを合成できません。初乳(産後すぐの時期に出る母乳)は栄養が豊富で免疫成分も多くなっていますが、この中にはタウリンも大量に含まれています。

つまりタウリンは体にとって必要な成分で、合成できない分を補うために初乳にたくさん含まれているのだろうと思われます。タウリンは健康に生きていくために欠かせない成分なのでしょう。粉ミルクにもタウリンは配合されています。

タウリンを特に多く含むのは魚介類です。その他のいろいろな動物にも含まれますが、植物にはわずかにしか含まれません。

タウリンの効果がすごい!肝臓をはじめ血圧から眼精疲労まで

人の体には、気温や湿度などのような外部環境の変化があっても、体温や血圧や血糖値といった体の内部の状態を一定に保とうとする仕組みがあります。それを「ホメオスタシス、生体恒常性」と言います。

タウリンはホメオスタシスに関わっていて、体や細胞を正常な状態に保とうとする働きがあると考えられます。

例えば高くなってしまった血圧を下げて正常に保つ、コレステロールが増えて血液がドロドロになってしまったらコレステロール値を下げる、血糖値が上がってしまったらインスリン分泌を促して血糖値を一定に保つといった働きがあると考えられるのです。

肝機能を高める効果

タウリンは肝臓での胆汁酸の分泌を促したり、肝細胞の再生を促す、また細胞膜を保護するというような働きがあります。

胆汁酸は脂肪や脂溶性ビタミンを消化・吸収するために必要不可欠なものです。この胆汁酸を原料にして胆汁を作ることが、肝臓の重大な働きのひとつです。

タウリンを摂取することで胆汁酸の分泌が促され、またダメージを受けてしまった肝細胞の再生も促されるために、肝機能は改善してきます。

その他にも、肝臓にはアルコールを分解し無毒化するという働きもあります。タウリンはこのときに必要となる酵素の働きを助けるとされ、それによってアルコールの分解を促し肝臓の負担を軽くする効果もあるとされます。

肝機能が悪化すると、ダルさや疲労を感じやすくなります。そのようなときにタウリンを摂取して肝機能が改善されれば、疲労回復の効果も期待できるでしょう。

コレステロール値を改善する効果

先ほども言いましたが、タウリンには胆汁酸の分泌を促す効果があります。胆汁酸はコレステロールを原料にして作られていて、そのため胆汁酸の分泌が促されるということはコレステロールもたくさん必要になるのです。

それによって、高くなってしまっていた血中のコレステロール値を改善する効果が期待できます。

動脈硬化を予防する効果

血中のコレステロールや中性脂肪が増えてしまうと血液はドロドロになってしまい、やがて動脈硬化を起こしてしまいます。そして動脈硬化は心筋梗塞や脳梗塞などのリスクを高めてしまいます。

タウリンにはコレステロール値を改善する効果があり、それによって動脈硬化を予防する効果も期待できます。

高血圧を改善する効果

血圧は自律神経のバランスや腎臓の働きなど、様々なものによって調節されています。そして時間帯や気温、精神状態などいろいろな条件によって変動します。塩分を摂り過ぎたりすると血圧は上がりやすくなります。

ストレスがかかったときにはノルアドレナリンが分泌されて交感神経が興奮し、血圧は上昇します。タウリンにはこのノルアドレナリンの分泌を抑える働きがあり、それによって血圧を正常なままに保つとされます。

また動脈硬化で血管が細くなってしまうことも高血圧の原因になりますが、タウリンは動脈硬化を予防する効果もあると考えられ、それによっても血圧の上昇を抑える効果が期待できます。

糖尿病を予防する効果

タウリンにはインスリンの分泌を促す作用もあると考えられますが、はっきりとはわかっていません。

ただインスリンを分泌するすい臓にはタウリンが豊富で、また糖尿病患者の血中のタウリン量は正常な人よりかなり少ないことがわかっています。そのようなことから、タウリンと糖尿病にはなんらかの関係はあると考えられます。

タウリンによってインスリンを分泌する働きのあるすい臓のβ細胞が保護され、そのためにインスリン分泌低下が抑えられるのではないかとされます。

またタウリンは、糖尿病によって起きてしまう動脈硬化や糖尿病網膜症といった糖尿病の合併症を予防する効果もあると考えられます。

眼の疲労回復をする効果

タウリンは眼の網膜にもたくさん存在していて、網膜を守る働きや眼の疲労回復などにも効果があると考えられます。

タウリンが配合された目薬も市販されています。

心不全に対する効果

タウリンは心筋(心臓の筋肉)にも多く含まれていて、心筋を保護し代謝を改善する作用があります。うっ血性心不全に効果があるとして、医薬品としても使われています。

このようにタウリンにはいろいろな効果があると考えられていますが、全ての効果が人で確認されているわけではありません。

動物の実験で効果が確認されているだけだったり、また効果があると思われても確実に効果があると言えるほど詳しい研究がされていないこともあります。

ただこれらの中で、高ビリルビン血症における肝機能の改善とうっ血性心不全に対してはきちんと効果が確認されています。これらの症状に対しては、医薬品として医者から処方されます。

タウリンは魚介類に多く含まれる

タウリンは植物にはあまり含まれませんが、動物には多く含まれている成分です。特に魚介類には多く、例えば牡蠣などの貝類、イカやタコ、魚の血合いの部分などに多くなっています。

タウリンは以下のような食品に多く含まれています。

  • 牡蠣
  • ハマグリ
  • ホタテ
  • アサリ
  • イカ
  • タコ
  • カツオ
  • ブリ など

このようにタウリンはいろいろな魚介類に含まれます。魚の血合いの部分にも多くなりますから、捨てないで食べるとよいでしょう。

最初にも書きましたが、お酒のつまみで食べることの多いスルメにもタウリンは豊富です。スルメの表面の白い粉がタウリンなのです。

またタウリンは、調理によってかなり減ってしまいます。焼くと生で食べるのに比べて3割減、煮ると5割も減ってしまいます。煮た場合には煮汁にタウリンがたくさん溶け出していますから、煮汁ごと食べるようにしましょう。

以前、イカはコレステロールが高いからあまり食べないほうがよいと言われていました。しかしイカのコレステロールはそれほど問題なく、逆にタウリンが多い食品ということがわかってきました。もちろん食べ過ぎはダメですが、敬遠すべき食品ではないのです。

タウリンはどのくらい摂ると良いの?過剰も不足もダメ!

タウリンの1日の摂取目安量は500mgと言われています。(医薬品として病気の治療に使う場合には、1日3000mgとなっています。)普段の食事からは、1日100−300mgくらいのタウリンが摂取できるとされます。

魚介類に多い成分ですから、魚類が中心の食生活であれば不足はしにくいと思います。しかし肉類が中心の食生活で、偏食やダイエットをしていたりということもあると不足気味になってしまうかもしれません。

タウリンを含むサプリメントで補うこともできますが、まずは普段の食生活を見直してみて下さい。

タウリンを摂り過ぎたり、不足すると起きることは?

タウリンは過剰に摂り過ぎてもそれほど心配はないとされます。摂り過ぎた分はそのまま尿と一緒に排泄されてしまうため、特に体に問題が起きるということはありません。

副作用もほぼ心配ないと思われますが、医薬品として1日3gの量で摂ったときにはごくまれに吐き気や下痢といった副作用がありました。

不足してしまった場合には、肝機能が低下してしまったり高血圧になってしまうということが出てくるかもしれません。コレステロール値が高くなると動脈硬化になりやすくなり、心筋梗塞や脳梗塞のリスクも上がります。

また眼の網膜も守っているため、不足すると眼に問題が起きてしまう可能性もあります。

ただしタウリンは体内でも合成することのできる成分ですから、あまり神経質になることはないでしょう。

タウリンの豆知識。キャットフードにはタウリンが入っている!

タウリンは1827年にドイツの学者によって、ウシの胆汁から発見されました。「タウリン」という名前の由来は、ラテン語の雄牛taurus(タウルス)とされます。

第二次世界大戦のときには、日本国海軍が戦意を高揚させるため使ったとも言われます。長い歴史のある成分なんですね。

人以外の動物でも、同じように体内でタウリンを合成することができます。ただ猫にはタウリンを合成するための酵素がなく、外から取り込むしかありません。そしてタウリンが欠乏すると、拡張型心筋症という心臓の病気になってしまいます。

そのようなことからキャットフードには、あらかじめタウリンが配合されています。ちなみに犬は体内でタウリンを合成できるため、ドックフードにはタウリンがあまり配合されていません(配合されているものもあります)。

ですから猫にドックフードばかりを食べさせていると、タウリン不足になって危険なのです。猫と犬を一緒に飼っていても、フードはそれぞれ専用のものを用意しましょう。

タウリンの効果を期待しすぎて肝臓を酷使しないように

不足に神経質になることはない、と記事中でお話しましたが、それでもお酒を飲み過ぎていたりすると肝臓には大きな負担がかかっていることになります。適量の飲酒は健康に良いとも言われますが、飲み過ぎはよくありません。たまに休肝日を作ったりしてください。

「魚介大好きで結構食べてるから、大丈夫」なんて言わずに、肝臓を休めてあげることも考えてくださいね。

補助的要素としてタウリンをプラスしたいときは、調理法には気をつかってください。魚介を煮たら煮汁ごと食べる。美味しくて肝臓にもいい食事を、ときどき意識して取り組んでみてくださいね。

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