クエン酸の効果を最新の研究から解説。疲労回復や肝機能への効果は?

子供の頃、スポーツの合間にレモンのハチミツ漬けを食べませんでしたか?スポーツなどで疲れたときには、疲労回復の効果のあるレモンが良いと言われていました。レモンにはクエン酸がたっぷり含まれています。

ただ最近は、クエン酸の疲労回復効果についていろいろな意見あります。クエン酸には疲労を回復する効果はないのではないかというのです。

クエン酸の実際の作用、効果について詳しくみていきましょう。

クエン酸とはかんきつ類に豊富な酸味成分

クエン酸はかんきつ類、梅干し、お酢などに豊富に含まれている酸味成分です。これらが「酸っぱい」と感じる原因のひとつは、豊富に含まれるクエン酸にあります。

クエン酸は有機酸(有機化合物(炭素を含む化合物)の酸)の一種であり、人の体の中でも合成することができる物質です。

食品添加物でもあり、ジュースなどの酸味料になったり、またpH調整剤としても身近なところでいろいろと使われています。美容や掃除に使っても効果があるとされます。

クエン酸はクエン酸回路の構成成分

私たちの体内には「クエン酸回路」と呼ばれる、重要な代謝経路があります。

食事をして炭水化物、タンパク質、脂質などの栄養素が体内に取り込まれると、体内ではそれらが分解され「アセチルCoA」が作られます。このアセチルCoAが「オキサロ酢酸」と反応すると「クエン酸」となり、クエン酸回路が始まります。

クエン酸回路では、いくつかの反応を経て二酸化炭素と水、そして「ATP」が作られます。そして最終的に、クエン酸はオキサロ酢酸に戻ります。そしてまた新たなアセチルCoAと反応するとクエン酸になり、クエン酸回路が再び回り始めます。

このとき作られるATPは「生体のエネルギー通貨」とも言われるエネルギー物質です。生きていろいろな活動をするためになくてはならないもので、例えば筋肉を収縮させて体を動かすときなどにATPが使われます。

つまりクエン酸回路が正常に動いていることで、生きていくために必要なエネルギーを作り出すことができるのです。

(正確には、クエン酸回路によって生成されたNADHやFADH2などがその後の「電子伝達系」に入り、そこでATPが生成されます。)

クエン酸回路は食事によって取り入れた栄養分をエネルギーに変える、生きていくために重要な代謝経路なのです。

クエン酸回路はTCA回路(サイクル)、クレブス回路と呼ばれることもあります。1937年にドイツの科学者クレブスが発見したもので、この功績によりノーベル賞も受賞しました。

クエン酸に疲労回復効果はあるのか、ないのか。最新の研究結果での見解は?

昔から、クエン酸には疲労回復効果があると言われてきました。そのためスポーツの合間にクエン酸入りのスポーツドリンクを飲んだり、レモンのハチミツ漬けを食べたりしました。

クエン酸には次のような効果があり、そのために疲労を回復すると言われたのです。

  • 疲労の原因物質である乳酸を減らす
  • クエン酸回路を活性化する

これらのことからクエン酸には疲労回復効果があるとされたのですが、最近はそれに反対する意見も出ています。

乳酸は疲労物質ではない

長い間、激しい運動をしたときに溜まってしまう乳酸が疲労の原因になっていると信じられてきました。そして疲労を回復するためには、乳酸を減らすことが大切だとされていたのです。

クエン酸には乳酸の生成を抑えて乳酸を減らす働きがあり、そのために疲労を回復する効果があると考えられてきました。

しかし最近になって、乳酸は疲労物質ではないことがわかってきたのです。運動をすると乳酸が増えてしまうことは確かなのですが、だからといって乳酸が増えると疲労を感じるというわけではないようなのです。

現在は、増えてしまった乳酸はただ不必要な疲労物質と言うわけではなく、逆に体のエネルギー源として使われる物質なのではないかと考えられています。ですから疲労回復のために乳酸を減らそうとしても、何の意味もないのです。

クエン酸を摂取すると、クエン酸回路が活性化する

先ほども言ったように、クエン酸回路はエネルギーを作りだすために非常に重要な代謝経路です。クエン酸回路がしっかり働かなくなるとエネルギーがスムーズに作れなくなってしまい、活発に働けばエネルギーをうまく作っていけます。

疲労してダメージを受けてしまった細胞を修復するためにはエネルギーが必要です。クエン酸回路によって作りだされるエネルギー(ATP)がたくさんあるほど、疲労状態から回復しやすくなると考えられます。

クエン酸を摂取すると、クエン酸回路が活性化されエネルギーをスムーズに作っていけるようになるとされます。エネルギーが十分にあればダメージを受けた細胞も修復しやすくなり、疲労も回復しやすくなるでしょう。

乳酸が疲労物質ではないことがわかってきて、クエン酸が乳酸を減らすことによっての疲労回復効果はないと考えられるようになってきました。しかしクエン酸回路を活発にすることでエネルギーが生まれれば、疲労回復効果に繋がります。

ただ問題は、口からクエン酸を摂取することで本当にクエン酸回路が活発に働くようになるのかということです。これに対しては、クエン酸摂取でクエン酸回路が活発に働くようになるという意見と、活発に働くようにはならないとする意見があります。

信頼できる十分なデータがない

クエン酸が疲労回復などに効果があるのかについては、いろいろな研究が行われています。動物だけでの実験もあれば、実際に人が摂取して効果を確かめているような実験もあります。

それらの結果の中には摂取によって効果があったとするものもあれば、はっきりとした効果はみられなかったというものもあります。

そしてまだ現在のところ、「人に対して効果がある」と断定できるほど信頼できるデータはないとされます。はっきり疲労回復効果があるとまでは言えないのです。

機能性表示食品として届け出あり

クエン酸には疲労回復効果があると言えるほどのデータはないと言いましたが、機能性表示食品としての届け出は出されています。

そして実際に、疲労感を軽減するなどとして商品に表示がされています。そのため疲労回復の効果が全くないというわけではないでしょう。

さらにたくさんの研究が行われ信頼できるデータが多くなれば、もっと詳しくはっきりした効果がわかってくると思われます。

「機能性表示食品」とは「事業者の責任において科学的根拠に基づいた機能性を表示した食品」です。「特定保健用食品(トクホ)」の場合には「表示された効果などを国が審査し食品ごとに消費者長官が許可」します。

クエン酸は肝臓にも効果があるのか?肝機能とクエン酸の関係

クエン酸には肝臓の機能を改善させる効果もあると言われています。

クエン酸によってクエン酸回路が活性化してエネルギーが十分に作られるようになると肝臓の負担も軽くなり、機能が改善してくるのではないかと考えられるのです。

肝臓は機能が低下していても自覚症状は特に出ないため、調子が悪くても見逃してしまいがちです。そのようなことのないように、健康なときから肝臓のことを気にするようにしておきましょう。

ただしC型肝炎や非アルコール性脂肪肝炎(NASH)で「鉄の摂取を制限するように」と言われた人がお酢やかんきつ類などを摂るときには、少し注意が必要になります。

C型肝炎やNASHでは、鉄を摂り過ぎると症状が進行してしまいます。そのために鉄の摂取が制限されています。

このあとの章でも書きますが、クエン酸にはミネラルの吸収を促進させる働きがあります。そのためクエン酸と鉄を一緒に摂取すると、一緒に摂取しない場合よりも鉄の吸収率が上がってしまうのです。

あまり神経質になり過ぎる必要はありませんが、かんきつ類をデザートに食べるときには食事から2時間くらいあけてからにするなどしてみてください。

その他のクエン酸のさまざまな人体への効果

ではそれ以外に、クエン酸にはどのような作用があるのでしょうか。クエン酸を口から摂取した場合に期待できる作用には次のようなものがあります。

ミネラルの吸収を促進させる

カルシウムや鉄といったミネラルは、そのままの状態では吸収率が悪くなります。いくら口から摂ってもなかなか体内に吸収されません。

そのようなミネラルを摂取するとき、クエン酸と一緒に摂取することでミネラルの吸収を促進させることができます。クエン酸には、ミネラルを包みこんで強く結合する性質があるのです。そのおかげで小腸からの吸収率が上がります。

これをキレート効果と言います。ちなみに「キレート」とは「カニのはさみ」という意味です。カニのはさみでミネラルをはさんで強く結合した状態を想像してみてください。

実際にミネラルのサプリメントには、クエン酸が配合されているものが多くなります。

尿酸の排泄を促進する

尿酸とは痛風の原因となる物質です。体内に尿酸が増え過ぎると結晶化して、足の親指に激痛が走るというような痛風発作が起きてしまいます。

痛風発作が起きていなくても、尿酸値の高い状態は危険です。いつ発作が起きるかわからない状態だと思って下さい。

その状態を改善するためには尿酸値を下げることが必要になります。通常、尿酸は尿に溶けて排出されているのですが、尿が酸性に傾いてしまうと尿の中に溶けにくくなってしまい、排出されにくくなってしまいます。

クエン酸には酸性に傾いている尿を中性側へと戻す働きがあります。尿の酸性度合いが弱くなることで尿中に尿酸が溶けやすくなり、結果的に尿酸の排泄を促進させることが期待できます。

食欲を増進させる

酸味のあるものは、唾液や胃酸の分泌を促進させます。食欲がないようなときにも、クエン酸を含む梅干しやお酢を使った料理は食欲を増進させるためよいでしょう。

暑くて食欲が落ちる夏などには、クエン酸の豊富な食品がお勧めです。

この他にもクエン酸は、α-ヒドロキシ酸として化粧品に使われることもあります。またお掃除にもよいでしょう。アルカリ性の汚れに効果的で、食品の成分のため安心して使うこともできます。

クエン酸を摂取するためにはかんきつ類や梅干しを食べよう

クエン酸はレモンやミカンといったかんきつ類、梅干し、お酢などに豊富に含まれています。

クエン酸を含むサプリメントもいろいろと発売されていますが、まずは食品から摂ることを心がけてみましょう。いつものメニューに酸味のある料理を増やしてもよいかもしれません。

サプリメントで摂る場合にも、適切な品質の製品を用法用量を守って摂取すれば特に問題はないとされます。ただし間違って過剰に摂取してしまった場合には問題が起きたこともあるため、使い方を守って摂取するようにしてください。

一度に大量に摂取するより、こまめに摂取した方がよいでしょう。またビタミンB群や糖質と一緒に摂取することで、エネルギーを作り出しやすくなり効果的です。

栄養素はいろいろなものがお互いに協力し合って働いています。クエン酸がよいからとそれだけを摂るのではなく、他の栄養素も一緒に摂るようにしましょう。

クエン酸回路にはビタミンB2も関係していて大切です。また疲れた体には、糖質やタンパク質をしっかり摂ることも必要です。バランスのとれた食生活を心がけるようにしましょう。

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