非アルコール性脂肪肝炎の検査。NASHを診断する3つの方法

肝臓の病気はたくさんあり、あらゆる肝疾患の総称を「肝臓病」と呼びます。

最も深刻な肝臓病というと肝硬変や肝臓がんを思い浮かべると思いますが、最も軽度といわれる脂肪肝も同じく「肝臓病」です。

アルコールと無関係の脂肪肝を特にNAFLD(ナッフルディー)と呼びます。

確かに一般には脂肪肝は軽度の肝臓病でしが、NAFLDが悪化するとNASH(ナッシュ)という深刻な肝炎に至ります。

その診断にはなにより検査が必要です。自身の肝臓が蝕まれていないか知るために、早期発見のために検査のすすめをお話します。

脂肪肝を分類する検査、スクリーニング診断

NAFLDは非アルコール性脂肪性肝障害の別称です。NAFLDのうち、肥満や糖尿などが原因で起こる脂肪肝を単純性脂肪肝(NAFL=ナッフル)と呼びます。

NAFLDが悪化して肝炎に至ったものが非アルコール性脂肪肝炎・NASHです。

NAFLDのスクリーニング診断画像
(出典:NAFLDのスクリーニング診断-一般社団法人日本肝臓学会 より)

NASHはアルコール性肝障害・肝炎よりも深刻です。肝硬変や肝臓がんのリスクが高いからです。

検査による所見と問診から医師がNAFLD、NAFL、NASHといったそれぞれの肝臓病を診断します。

NASHかどうかを判断する3つの検査

では、ここからはとても怖い肝臓病の1つであるNASHの検査方法についてお話します。

NASHであるか否かの判定を「鑑別診断」と呼びます。鑑別診断は大きく分けて3つに分かれます。

鑑別診断の手法
  • 画像診断
  • 肝炎の有無の測定
  • 肝生検
肝生検は、内視鏡(針)などで肝臓組織を採取し、顕微鏡で組織の詳細を分析する検査方法です。多くは肝生検でNASHの判断が可能になりますが、患者への負担も多少考慮されます。

そのため、画像診断や肝炎の検査が優先されることもあります。

画像による脂肪肝の検査

NASHは脂肪肝であることが前提となり、至る肝臓病です。つまり、NAFLDの患者さんのうち、NASHを発症している、あるいはこれから発症することになる患者さんが一定割合で含まれることを意味します。

NAFLDの予後画像
(出典:NAFLDの予後-一般社団法人日本肝臓学会 より)

ですからまずは、脂肪肝であるかどうかを検査する必要があります。

脂肪肝の検査は比較的簡単で、CTスキャンやMRIなどの造影検査の画像から容易に判断できます。脂肪肝かつNASHの下画像の白っぽく見える部分が脂肪ですね。

NASHの肝組織像画像
(出典:NASHの肝組織像-はざま医院 より)

この時点でNAFLDであることが決定します。「脂肪肝」という時点でNAFLDであると診断されるんです。しかし実は、CT画像からもNASHの可能性を模索することができるんですね。

脂肪肝のCT像
(出典:脂肪肝のCT像-はざま医院 より)

たとえば上の画像の右側のCT像を見ると、肝臓全体に血管とおぼしき筋が見えると思いますが、このように見えるとNASHである確率が30%程度と診断されます。まだNASHの確定ではなく、NAFLにとどまるかもしれません。

NASHとNAFLを明確に区別するために、ここからさらに臨床検査を進める必要があります。

肝線維化の有無の検査

NASHは肝硬変へと移行する可能性が極めて高い、かなり危険なNAFLDです。肝硬変という病気の病態は、肝臓が線維化して肝臓がかたく、その表面がデコボコになってしまう病変が特徴です。

脂肪肝が原因となって肝硬変への予兆、つまり肝臓の線維化がみられるときには、残念ながらその患者さんはNASHである可能性が極めて高くなります。肝線維化は、ダメージを負った肝細胞が再生される過程で起こります。

では、なぜ肝細胞がダメージを負ってしまうのかというと、その主な原因となるのが「肝炎」だからです。肝炎は文字通り「肝臓の炎症」ですから、多くの肝細胞が不当に負荷を受け、ダメージを負います。

肝炎の精密な検査は、肝線維化がどの程度進んでいるかを測定する目的で行われます。とはいえ、肝臓の線維はそう簡単に測定できるものではないので、線維化によって硬化した肝臓の硬度を調べて肝炎を検査します。

この検査ができる医療機関は限られていますが、たとえば「肝フィブロスキャン」などという特殊な検査器具によって検査を実施します。

フィブロスキャン製品イメージ画像
(出典:フィブロスキャン-株式会社インターメディカル より)

超音波とせん断破を発生させて、肝臓の硬さをリアルタイムで計測してくれる装置です。体を傷つけない、出血の心配がない、入院の必要がない、といった新しい技術なんです、すごい。

CTやMRIなどの画像で怪しい部分があって、肝フィブロスキャンによって肝臓の硬度が高い患者さんは、高い確率でNASHであると診断されることになります。ただし、後者の検査は実施できない病院もあります。

ですから厳密なNASHの検査を実施するのであれば、肝臓専門病院や消化器系の専門科がある大規模な病院で検査を実施することをおすすめします。

生活習慣病の典型であるNASH!脂肪肝と診断されたら精密検査を受けよう

NASHというと、病名はなんとなくカッコイイ響きですが、なってしまったら一大事の怖い肝臓病です。肝臓病はお酒が原因になることが多いですが、お酒が関係しないNASHの怖さをご理解いただけたでしょうか?

NAFLDだのNAFLだのNASHだのとどれも似た字面と音の響きを持つ肝臓病で、しかもいずれも「脂肪肝」を経由していたり脂肪肝そのものだったりするため、NASHも軽んじられてしまうことが多い印象があります。

脂肪肝が軽い病気だとは言いませんが、NASHだけはやっぱり特別な恐怖感を持っていただきたいと思います。恐怖感ほど病気の予防の役に立つ感覚はありませんから。脂肪肝が軽んじられてきた時間が長かったのも問題だなぁ・・・

とはいえ脂肪肝でさえなければ、ごく近い将来にNASHにかかる危険性はほぼありません。しかし逆に、アルコールと無関係な脂肪肝(NAFLD)の診断を受けた人は、もしかしたらNASHへと移行する可能性もあると考えるべきです。

ですからずいぶん長い間脂肪肝の診断を受け続けている人は、少し精密な検査を受けて、NASHの危険性を具体的に理解する、もしくはNAFLにとどまり胸をなでおろすといった自衛策を講じたほうが安心ですね。

いずれにしても、「単なる脂肪肝」とは明確に異なるNASHは、生命にかかわる肝臓病であるという認識が大切ですよ!

なお、NASHやその原因である脂肪肝の予防方法についてもこちらのページにまとめてありますので、ぜひ一度ご覧いただいて、NASHの予防のために必要なことに理解を深めていただきたいと思います。

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