肝機能を改善する3つの行動。悪化を阻止して回復させる極意とは
肝臓は「沈黙の臓器」といわれるくらいですから、ちょっとやそっとのことでは音を上げたりしません。とても頑張り屋さんの臓器なんです。それはそれで私たち肝臓の持ち主にとってはありがたいことです。
しかし逆に、肝機能が低下したときには自覚できないもどかしさもあるのが肝臓です。肝機能が低下したらこれを改善することが重要ですね。
肝機能を改善、回復させる方法について解説します。
当たり前にみえて奥が深い!食事、運動、睡眠の3つから肝機能を改善する
肝機能低下の自覚は難しいです。「肝機能が低下しているのかも」と推測することはできるかもしれませんが、明確に肝機能の低下を断定できるとしたら、それはお医者さんか深刻な肝障害の患者さんくらいです。
肝機能検査で肝機能の数値が高いことを確認したら、身体がどう感じるかはともかく、肝機能が低下していると解釈して、肝機能改善に向けた取り組みが必要になります。
肝機能の改善は、風邪をひいたから風邪薬を飲めばよいというほど簡単ではありません。もちろん重度肝障害の場合は、「肝機能の改善」などという生易しい考え方ではなく、しっかりと治療をすることが大切です。
病院で肝機能検査をして、「少し肝機能が低下していますね」とお医者さんから指摘がある程度の肝機能低下であれば、ある程度自力で改善することも可能です。
- 食事
- 運動
- 睡眠
の3つの行動において、肝機能改善のためにあなたがすべきことを順に紹介していきます。
低下した肝機能を改善する食事、食べ物
肝臓は食事からの栄養を管理する臓器です。ですから「食事」に気を配ることが当然重要になります。それだけ密接な関係があるんです。
肝機能の検査で「注意しましょうね」と指摘されるレベルの「軽度肝機能障害」がみられる人は、次の食品を意識して食事に取り入れてください。
栄養素 | 食べ物 |
---|---|
たんぱく質 | 肉全般、魚全般、卵、大豆製品など |
脂質 | 植物油、バターなど |
糖質(炭水化物) | ご飯、パン、麺類 |
ビタミン(特にB群) | 豚もも肉、大豆、落花生、ロースハム、鶏レバー、玄米、胚芽米、小麦胚芽など |
肝機能改善と食事の関係に関しては「肝臓にいい食べ物。科学的根拠のある肝機能を改善する食品まとめ」の記事でさらに詳しく紹介していますので、じっくりご覧ください。
では、肝機能改善の大前提となる食事とのかかわりをご理解いただいたところで、食事以外の方法について考えることにしましょう。
脂肪肝を防げ!肝機能改善のために運動が必要な理由
肝機能が低下するということは、肝臓の主要な働きである「代謝」、「解毒」、「貯蔵」などの機能が満足に行われなくなることを意味します。肝細胞が回復し、これらの機能が元通りになるのが「改善」です。
実は、肝機能を改善させる上で重要なポイントとなる明確な要因が2つあるのです。肝機能改善のための重要なポイントとは、「運動」と「睡眠・休養」です。肝臓に負担がかかる原因を考えると、
- 代謝しきれないほどの栄養が運ばれ、どんどん貯蔵されていく
- 働きっぱなしで肝臓が疲れてしまう
という2つの要因が挙げられます。
代謝しきれないほどたくさん運ばれてくる栄養素として知られるのが「脂肪」です。肝臓には脂肪がたまりやすいのです。つまり「脂肪肝」になりやすいのです。
脂肪肝といえば肝機能低下の最大の原因であるといえますよね?
では、肝臓に蓄積された脂肪を代謝する、あるいは大きな負担なく代謝できるレベルの脂肪の量に抑えるために必要になるのは・・・そう、「運動」をおいてほかには考えられないのです。
これが、「運動が肝機能を改善するために重要」である根拠です。肥満の人はALT(GPT)、AST(GOT)の数値が上昇しやすい傾向があります。
ALT(GPT)やAST(GOT)の肝機能値が上昇するのは、脂肪肝の人に見られる特徴的な傾向です。食生活や飲酒習慣を見直すと同時に、運動することで脂肪の代謝機能を高める必要があります。
睡眠・休養を取らないと肝臓はどんどん仕事をして疲れてしまう
しかし中には、十分運動はしているしメタボでもないんだけど・・・と、肝機能低下の原因がはっきりしない人もいると思います。このケースでは、肝臓に送られてくる脂肪の量自体はそこまで大量ではないでしょう。
とすると考えられるのは、ふつうの人ならば十分代謝できるはずの脂肪を代謝できなくなっている、という原因です。このような事態は、「肝臓の疲労」によって比較的よく起こります。
つまり、肝臓が働きすぎてしまっていることが原因として考えられるのです。肝臓が疲労する原因として最も有力なのが、上でお話してきた「食生活の問題やアルコール」、そして「運動不足」です。
しかしここではすでにこれらの要因が当てはまらないケースを考えています。ではいった何が原因なのかというと、「睡眠不足・過労」が考えられます。なるほど!と簡単に納得できないかもしれませんね・・・
肝機能が低下しているからといって、その原因が肝臓だけにあるとは限りません。たとえば風邪をひいてのどが痛くなるのは、「風邪の菌やウイルス」が原因では確かにあります。
ただしこれはあくまでも間接的な要因であって、直接的には「白血球が風邪の菌やウイルスを退治しようとして炎症が起こること」が、のどの痛みの原因になっています。
同様に、肝臓自体が悪くなっているわけでなくても、ほかからの影響で肝臓がダメージを受けることもあるのです。睡眠や休息が不足すると、その間も肝臓は何らかの仕事をしようとしてしまうのです。
私たちが覚醒し、活動している間は、肝臓も運ばれてくるかもしれない栄養の処理に備えているのです。ちなみに、ほかの消化器も私たちが活動しているときには活発に働き続けます。
とすると、睡眠不足や休息の不足により、肝臓自体の働きすぎによる肝臓疲労や、ほかの臓器の働きすぎによる不調のあおりを肝臓が食らってしまって肝臓がダメージを追うといった事態が発生しうるのです。
以上から、肝機能を改善するためには「運動」と「睡眠・休息」が必要になるのです。「無理はいけません」などとよく言われますが、肝臓にとっても「まさに」なのです。
なお、「肝臓疲労」については「肝機能が低下する原因は?」に詳しくまとめてありますので、ぜひご覧いただきたいと思います。
肝機能改善のためには原因を知り、原因を排除することが必要
肝機能が低下する原因は非常に多様です。
- お酒の飲みすぎ
- 栄養に偏りがある食生活
- 運動不足
- 睡眠不足
- ストレス
・・・と、一般的なものをちょっと思い出すだけでもこれだけの要因に思い当たります。
間接的な原因・要因は多様ですが、肝機能が低下する直接の原因は単一的です。それは、「肝細胞の破壊」が起こることです。細胞の破壊は肝臓に限らずいろいろなところで起こっているということは周知のとおりです。
しかし問題となるのは、肝細胞破壊の程度です。破壊にも許容範囲があるのです。
広範囲にわたって肝細胞が破壊されれば「肝炎」を発症します。肝炎ともなると、比較的重度な肝障害です。
肝炎を発症するレベルではないけれど、許容範囲を超えて肝細胞の破壊が進んでいると考えられる状況が、「肝機能低下」に相当すると解釈することができます。
とすると、肝機能改善とは何かというと、「破壊された肝細胞の代わりに新たな肝細胞が生まれ、再生されること」であると解釈できますよね。
肝臓は一部を切除しても新しい肝細胞が再生され、組織自体も再生される唯一の臓器なのです。ということは、肝機能の改善の大前提となるのが、「安静」です。
ただしここで大事なことは、風邪をひいて安静にしていなければならないというときの「安静」とは少しイメージが異なる、ということです。
身体が安静を保つのではなく、肝臓の安静が重要になります。
つまり、肝臓にかかる負荷をできるだけ小さく抑えることが、肝機能改善のためには重要なのです。
もちろん身体の酷使も避ける必要がありますが、暴飲暴食など肝臓をいじめるような行為は避けなければなりません。
強い臓器だけに、基本的な生活を送れば肝機能は改善される
肝臓は、ちょん切っても元通りにないくらいですから、少々ダメージを受けても頑張りとおす臓器です。つまり、肝臓は「強い臓器」なのです。しかし肝臓は生体組織です。その強さ、タフさにも限度があります。
そうした限度を超えた時に、肝機能の低下が起こります。しかし強い臓器だからこそ、仮に肝機能が低下したとしても、基本に忠実な生活習慣を送ることで、肝機能は無事に改善されることが多いです。
忙しい現代人にとって、肝臓のことばかり考えて生活を送るのはさすがに難しいとは思います。しかし「強い肝臓」だからこそ、文句も言わずハードな毎日を過ごす私たちを支えてくれるのです。
そんな肝臓だからこそ、ひとときの「いたわり(運動、休息・睡眠、休肝日など)」を与えてあげたいものです。