【ALT・GPT】血液検査でわかるALT数値があらわす肝臓の状態とは?

肝機能の状態をチェックするための方法として最もシンプルな方法は血液検査です。誰もが一度は経験したことがあると思います。採血の注射は痛いし結果を見るのもなんとなく不安ですが、シンプルであることは間違いありません。

確かに方法としてはシンプルですが、ただ検査項目をみると、なじみのない用語(記号)に気づくことも多いです。すべての項目を説明できる人は少ないのではないでしょうか?

肝機能をチェックしたいのにどれが肝機能の項目なのかわからなければ、せっかくの血液検査も意味がありませんよね?そこで、今回は肝機能に関する検査項目に着目して説明することにします。

まずは「ALT(GPT)」という記号のような名称のような、この用語(項目)から説明しましょう。

ALT(GPT)っていったい何モノ?なぜ異常だと上昇する?

血液検査の項目で肝機能を示すのは、主に

  • ALT(GPT)
  • AST(GOT)
  • γGTP

の3つの項目です。血液検査を実施すれば、たいていはこの3項目の数値がわかります。γは「ガンマ」と読みます。

もっと精密な検査を行うと肝機能に関する項目はほかにいろいろ出てきますが、この3つの項目の数値をとりあえず重視するスタンスで問題ありません。

簡単に言ってしまえば、肝臓の組織ごとに名称(記号)が変わります。

ここでは「ALT(GPT)」についてお話しします。

肝細胞の状態を示す肝臓酵素がALT(GPT)

ALTは「アラニンアミノトランスフェラーゼ=Alanine transaminase」の頭文字を変則的に採用し、GPTは「グルタミン酸ピルビン酸トランスファーゼ=Glutamic Pyruvic Transaminase」の頭文字を採用したものです。

なにやらとても難しそうですね。ひとことでいうなら、ALT(GPT)は、肝臓でつくられる酵素です。AST(GOT)やγGTPも同様です。酵素というのは、消化や代謝を助けるための体内分泌物のことです。

以下すべて「ALT」のみで表記することにしますが、ALTの数値が重視される理由は、肝細胞の状態が悪くなることで、ALTの数値が上昇するからです。肝細胞というのは、そのまま肝臓の細胞のことです。

何らかの原因で肝細胞が変性する、あるいは壊死(えし=細胞や組織が破壊されたり死んだりする)することでALTの数値は敏感な反応を示し、急上昇します。なぜでしょうか?

肝細胞の異変でALTの数値上昇が見られる理由は?

肝細胞が変性したり壊死したりすることによって、その細胞を構成する成分・物質が外部に漏れだし、これが血管内に流れ込みます。ALTを分泌する肝細胞が異常をきたすと、それだけALTが血管内に入り込むことになります。

肝細胞の状態を血液検査のALT値から判断することができるのはそのためです。もちろん、肝細胞も新陳代謝を行います。そもそも肝臓は、再生可能な唯一の臓器です。

ですから、そこまで重篤な状況ではなくても、肝細胞の状態に何らかの変化が起こることで、ALTの数値にも比較的大きな変化が現れます。

そのため、ALTの数値が上昇したからといって、そこまで敏感に反応する必要はないのですが、しかしそれも程度問題です。その「程度」を示すのが、血液検査の項目ごとに設定されている「正常範囲」です。

ALTの正常範囲を知り、肝細胞の状況を知る

肝臓という臓器は、その機能性や大きさに個人差があるため、すべてをひとくくりでくくってしまうのも危険な場合があります。そのため他人よりも数値に敏感でなければならない人もいます。

とはいえ、血液検査では正常範囲がかなり厳しく設定されていますので、検査結果が正常範囲内にあることで、文字通り「正常」である可能性が高くなることだけは間違いなくいえます。

どんな項目でもそうですが、ALTについても「正常」の解釈は同様です。では、能書きはともかく、さっそくALTの正常範囲をご紹介します。直近の血液検査の結果があれば用意していただき、とくとご覧ください。

ALT(GPT)の正常範囲
JSCC法で35IU/L以下(IUは酵素量の単位)(※)

※注・・・ALT(GPT)の正常範囲には諸説あって、たとえば厚労省の推奨(正常範囲とは異なる)では「30IU/L以下」、病院によっては「40IU/L以下」などと設定されることもあります。

ALTの数値が正常であれば、主な肝細胞については現状特に問題ありませんが、定期的に血液検査をして、その際にはALTの数値をチェックしてみてください。

ただ、注意すべき点として、肝機能の状態を示す数値はほかにもありますよ、という点が挙げられます。ALTの数値が正常でも、ほかの肝機能値に問題があるなら肝機能が正常とはいえません。

しかもALTをはじめ、肝機能を示す数値はいずれも刻々と変化します。問題になるのは、数値に異常があった場合です。

ALTの数値が正常範囲を超えていたらどうなるの?その対処は?

ALTの数値が正常範囲を少々超えたからといって、肝臓が痛くなったりその他の異変が現れたりすることなんて、ほぼ起こりません。肝臓は「沈黙の臓器」などと言われますが、「沈黙」は肝臓の無自覚性に由来します。

無自覚とはいえ、ALTの数値が高ければ肝細胞に異常が起こっていることは事実です。「少々超えた」だけであれば、ほかの問題がないという前提で急に肝臓がダメになるようなことはありません。

とはいえ、ALTの数値が下がらないままだと肝細胞の状態は徐々に悪化をたどります。悪化が進めばやがて数値のさらなる上昇を招きます。ALTの数値が高かったら少しでもはやく数値を下げる努力が必要です。

ALTの数値と関係が深い疾患は?

ALTの数値が上昇して正常範囲を超えたら即肝疾患を発症したのかというと、そんなことはありません。ただ、その前兆である可能性もありますし、今後時間をかけて肝疾患へと移行するリスクはあります。

ALTの上昇と関連が疑われる代表的な肝疾患、その他の疾患がいくつかありますので、まとめてみましょう。

肝疾患の種類 ALTなど肝機能値上昇の様子
急性肝炎 ALT、ASTが上昇し、黄疸(おうだん)を伴うものは500~3000IUの高値を示す
慢性肝炎(活動型) 100IUを超えることがあり、肝硬変への移行のリスクが高い
慢性肝炎(非活動型) 50~60IU程度の軽度上昇がみられるが、禁酒、減量などにより比較的数値が下がりやすい
劇症肝炎 1000IU以上の劇的な上昇とともに黄疸がみられ、昏睡から死亡に至るリスクが高い
その他の疾患 胆汁うっ滞、溶血、うっ血性心不全、心筋梗塞、筋ジストロフィーなどの可能性があるが、ALTとASTの比率や生検など、より精密な検査から診断する

上記以外の肝疾患では、アルコール性肝炎、脂肪肝、肝がん、胆道系のがんなどでもALT値の上昇がみられることが多いです。

ALTの数値が上昇したらどうする?

ALTは肝機能の状態を示す数値ではありますが、AST(GOT)やγGTPなど、ほかの肝機能値も含めて、肝臓全体やその周辺臓器の状態の概要を把握することができます。ALTの値だけで判断するのは危険が大きいです。

それゆえ、ALTの数値が上昇したら、ほかの肝機能値の数値も検証しつつ、対策を講じることになります。

対策に関しては、その人の体質もあって、少々デリケートな部分なので、基本的には担当医のアドバイスを参考にしていただくことになります。

ALTだけが上昇することは珍しいですが、そういうことがないわけではありません。ALT値だけ(もしくはALTとともにAST)が軽度上昇を示した場合、脂肪肝の可能性が高いです。

脂肪肝が悪化すると、上表の「肝炎(脂肪性肝炎)」への移行のリスクが高まります。さらに悪化すると、肝硬変への移行のリスクも高まりますので、脂肪肝といっても軽視はできません。

禁酒や運動、糖質制限などのダイエットを行うことで、ALTの数値はあっさり下がることもあります。特に多少の肥満やメタボでALTが少々高いという人は、体重を3kg前後落とすだけでALTが正常値に下がる可能性が高いです。

ただ、肝機能は一般論よりも「個人の特性」が重要なので、肝臓を悪くしないためには病院で検査、治療するなどの対策を選択することをおすすめします。

あわてず、冷静な対処を心がける!

ALT値に限らず、あるいは肝機能値に限った話ではないのですが、血液検査や健康診断などで何らかの異常が見られたときには、まずはあわてず、冷静に対処することが大切です。

ALTの数値の上昇にもいろいろなパターンがあるので一概には言えない部分も正直あるのですが、特にこれといった異常がこれまでにない人のALT値が少々上昇したからといって、急にどうにかなるものではありません。

数値上昇の幅にもよりますが、基本的には自分ですぐに対処できるものでもありませんので、お医者さんなどプロの力を借り、中長期的なスパンで数値を下げていくことを目標にしましょう。

ALTの値で最も重要なことは、高値をそのまま放置させず、正常値に戻す努力をすることです。少々時間がかかっても、このことは忘れないでいただきたいと思います。

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