【HBV抗原・抗体】血液検査でみるHBsはB型肝炎感染の有無をみる

肝疾患は生活習慣病の代表として紹介されることが多いです。確かに、飲酒習慣をはじめ食生活など生活習慣の乱れから、脂肪肝や肝炎、さらには重篤な肝硬変へと移行することも多いです。

ただ、同じく「怖い肝疾患」のなかには、必ずしも生活習慣の乱れによるものとは限らないタイプの疾患もあるのです。

今回のテーマは、ほとんどのケースで生活習慣の乱れとは無関係に起こる、「B型肝炎」です。特にその検査方法についてお話しします。

B型肝炎は広義のアレルギー疾患!まずは抗原と抗体、その検査方法を知ろう

B型肝炎は、ある抗原(アレルゲン=アレルギー反応の原因物質)に対する抗体(抗原をを攻撃する免疫機能)が関係して発症するウイルス性肝炎です。B型肝炎の場合、この抗原にあたるのがB型肝炎ウイルス・HBV(Hepatitis B Virus)です。

B型肝炎は、大きな分類としては「慢性ウイルス性肝炎」ですが、B型肝炎の場合は活動型慢性肝炎のケースが多く、将来的により重篤な急性肝炎、肝硬変、そして最終的に肝臓がんに至るリスクが極めて高い肝疾患です。

B型肝炎ウイルスHBVには3種類の抗原があります。というよりも、複数の抗原とさまざまな物質(核酸)が寄せ集まってひとつのウイルスの体をなしていると考えられます。

HBVの抗原の種類は3種類

抗原は、本来体内にあってはいけないものであると抗体のほうが認識した物質です。つまり「異物」と言い換えることができます。この異物を攻撃するときに現れる反応が「アレルギー」と呼ばれる反応です。

その意味では、一般的な、よく知られる花粉症などのアレルギーの形態とは異なるものの、B型肝炎もアレルギー疾患の一種であると考えられます(厳密には「Ⅱ型アレルギー」と呼ばれる病型に分類されます)。

ではそのアレルゲンに相当するHBV抗原の種類を簡単に説明します。

HBV抗原の種類 抗原の説明
HBs抗原 HBVの外殻に存在していて、増殖する際少し変形した粒子の形で血中に流れ込む
HBc抗原 HBV内部の抗原
HBe抗原 HBV内部の抗原で、過剰増殖の際に「可溶性たんぱく質」と呼ばれるたんぱく質の形で血中に流れ込む

これらのHBV抗原がB型肝炎ウイルスの有無を探る上で重要な手がかりになります。

ただ、現在のところこれらの抗体すべてが検査で有効に活用されるわけではありません。

HBV感染の有無や個々のB型肝炎の特徴を調べるための検査方法は?

一般的な、主に生活習慣病の一種である肝疾患の場合、血液検査などにより、肝細胞をはじめとする肝臓組織のダメージを数値化して、肝疾患の詳細を知ることができます。

しかしB型肝炎の場合「ウイルス性肝炎」ですから、検査の最大のポイントは数値云々ではなく、ウイルス感染の有無、つまりは被験者がHBVキャリアーであるか否かを判断することにあります。

一般に、B型肝炎ウイルスHBVの有無を知るための検査を、「B型肝炎ウイルスマーカー検査」と呼びます。そして上記HBV抗原や体内にある抗体を、「ウイルスマーカー」と呼びます。

HBVの有無をただ調べるだけでなく、感染が判明したあとの治療段階における経過を知るために行う検査でもあります。では、それぞれの抗原が検査でどう活用されるのかについてまとめます。

ウイルスマーカー マーカーの役割 検査結果
HBs抗原 ウイルス外殻にあるためこの抗体の有無だけでHBV感染の有無が決定する HBs抗原があれば感染あり、なければ感染なし
HBc抗原 HBV外殻内部の抗原なので検査で使用できない。現在検出方法を研究中 基本的には検査結果に反映させることができない
HBe抗原 感染の有無ではなく、HBVの感染力の強さや活動性を知るためのマーカー 肝臓でHBe抗原の増殖が認められれば感染力が強く、極めて活動的な(つまり、危険な)B型肝炎であることがわかる

上記はいずれも抗原だけを対象としたウイルスマーカー検査の概要になりますが、これに加え、体内に抗体(HBV抗原を攻撃する免疫機能)があるかないかによって、発症する症状の程度や治療方針が異なります。

B型肝炎ウイルスの抗体が重要な意味を持つ!

大まかに言えば、ウイルスなど体内の異物(アレルゲン)に対し、白血球をはじめとする「抗体」と呼ばれる警察のような物質が異物を攻撃すると解釈されます。この防衛機能のことを「免疫」と呼びます。

アレルゲンが組織、血中など深い部分に入り込んでしまっては、身体にとって一大事ですから、正当防衛とはいえ、時として免疫が過剰に機能することもあります。

抗体が異物を激しく攻撃した結果、炎症や発熱、化膿などの病変をきたします。「アレルギー(性疾患)」と呼ばれる病態もその一部です。花粉症やアトピー、喘息などがアレルギー疾患としてよく知られます。

しかし厳密にいえば、抗体が攻撃をするのは特定の抗原のみであり、必ずしもマンツーマンディフェンスとは限らないものの、それに近いイメージの防衛システムが私たちの体内では構築されています。

B型肝炎ウイルスHBVの抗原に対する抗体にも実は同様のことがいえます。上記3種類の抗原をほぼマンツーマンの形でブロックしようと試みるのが、HBVウイルス抗体です。

HBs抗原、HBc抗原、HBe抗原のそれぞれをブロックする役割を持つ抗体がちゃんと存在しているのです。それぞれHBs抗原にHBs抗体、HBc抗原にHBc抗体、HBe抗原にHBe抗体がマークにつきます。

ただし、HBc抗体には2種類の抗体(lgM-HBc抗体、lgG-HBc抗体)がありますので、合計で4種類の抗体がマークしたそれぞれの抗原を攻撃して侵入を抗原の侵入をブロックしたり、マーカーとしての役割を果たしたりします。

それでは今度は抗体に着目したウイルスマーカー検査についてまとめます。

抗体・ウイルスマーカー 抗体として、およびマーカーとしての役割 検査結果
HBs抗体 HBV感染をブロックする。現在のHBVの有無の判定マーカー。免疫機能が正常であることの確認ができる。 HBVは抗体によって排除され、過去のHBV感染が治癒しており、HBワクチン接種による陽性反応が新たにみられる(つまり、接種によってはじめて陽性を示すため、免疫が機能していたことの証明になる)
lgM-HBc抗体 HBVの感染時期および、急性肝炎のマーカー HBV感染初期に出現し、数か月経過すると消え去る抗体の特徴から、感染時期が比較的浅いか、慢性肝炎が悪化して重篤な急性肝炎に移行するリスクがある
lgG-HBc抗体 現状のHBV感染の有無、過去の感染の有無 抗体価(抗原に対する相対的な抗体の量)が高ければその被験者は現在キャリアであり、低ければ過去に感染経験があったことがわかる
HBe抗体 主にマーカーとしての働き HBVそのものの量とHBe抗体の増殖が収束した時点で、ウイルスは感染力が弱いと判断される

ウイルスマーカー検査では、抗原、抗体それぞれの検査結果から総合的に状況を判断します。

感染力が強いHBVだからこそ検査が重要な意味を持つ!

B型肝炎は、かつては母子感染、輸血の際の感染、汚染された血液製剤の使用、ピアスなどによる感染がメインでした。しかし近年は、妊娠後の検査、献血の際の検査などが厳格化されたことで、感染経路がずいぶん限定的になりました。

ウイルス性肝炎というとC型肝炎をイメージする人が多いかもしれませんが、実は感染力に関しては、C型以上に強力なのがB型肝炎ウイルスなのです。エイズウイルスよりも強いとされるくらい、HBVの感染力は強いです。

そして実は、近年はB型肝炎の感染経路もだいぶ変化が見られるようになってきており、エイズウイルス同様性感染(厳密には性交渉時の「血液感染」)のケースが、特に若い世代の男女に多くみられるようになってきています。

性感染(性交渉を介した血液感染)に関しては、ある意味生活習慣とも関係しているといえるかもしれないので、B型肝炎のなかでもある意味「特殊な例」ではあります。

しかし性交渉を経たHBVキャリアの数は増加の一途をたどっており、必ずしも特殊なケースとはいえなくなってきています。特殊な事例もその数が増えれば特殊性を損なうことになるのです。

感染力が強い、感染経路が変化してきているなどHBVの傾向と現状を踏まえると、やはり早めの発見が重要であり、その意味では、B型肝炎ウイルスマーカー試験は非常に重要な意味を持っているといえるでしょう。

心当たりがある人は、早い段階でウイルスマーカー検査などの検査を受けてみることをおすすめします。

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