肝硬変は治る時代!?改善のためにあなたが取り組むべきこと


一般的に、肝硬変は長い間不治の病であるとされてきました。

「されてきました」もなにも、肝硬変なんて肝臓の細胞が死んでしまうわけだから、肝硬変はこれから先も「不治の病」に決まっているではないか!?

・・・という声もあると思います。確かに肝硬変が治ったなどという話は聞いたことがありません。

しかし医学は着実に進歩し、肝硬変についても「治った!」の声が聞かれる時代になるかもしれない、というお話が今回のテーマです。

厳密には「治らない」が正しいけれど、肝硬変は改善が可能!?

肝硬変が治るか治らないかでいうなら、やはり現在の医学では「治らない」と解釈するのが正しいです。なんだぁ、やっぱり治らないのか、と思うかもしれません。

しかし肝硬変が治らなくても、肝臓が正しく機能すれば問題ないということも事実です。

肝硬変自体が治らなくても、肝臓が正しく機能するところまで改善されることを「治った」と解釈するならば、肝硬変は治る時代になったともいえます。もちろんすべての肝硬変に当てはまるわけではないですが・・・

正常な肝臓と肝硬変の肝臓とのちがいに着目して考える

肝硬変というのはあくまでも肝臓の状態であって、肝硬変になるとよく見られる腹水(ふくすい)だとか黄疸(おうだん)だとかアルブミン低下だとか血小板減少といった諸症状とはまた別の話です。

今回のテーマとなる「肝硬変という肝臓の状態は治らないけれど、肝機能は回復した!」という種類の改善が実現されれば、腹水も黄疸もその他の問題も起こらない、あるいははるかに改善されることになります。

では、ほんとうに肝硬変であっても肝機能が回復し、症状が改善されるの?改善されるとしたらどうして?・・・というところが今回のお話の核心になるわけですが、そのために、まずは正常な肝臓と肝硬変の肝臓との違いに着目してみたいと思います。

肝硬変の最大の問題は、肝臓が線維化してしまうところにあります。肝硬変は、この「線維(一種のコラーゲン)」という、正常な肝臓にはほとんど存在しない物質が肝臓に、大量にできてしまうところにあります。

肝組織が線維化することによって、肝臓の血流が悪化するなど、肝臓にとって何ひとつ良いことがない状況に至り、激しい肝機能障害が起こります。肝機能が正常に働かなければ人間は生きていくことができません。

これが「肝硬変は怖い!」と考えられる理由です。線維というのはいわば「傷口にできるかさぶた」のようなものなのですが、これが細胞単位でつくられてしまうため、かさぶたのように時間が経てば治るというほど簡単なものではありません。

正常な肝臓は、3億ともいわれる肝細胞と無数に張り巡らされた血管や胆道をはじめとするさまざまな管、そして「肝小葉(かんしょうよう)」と呼ばれる肝組織の主要部分から成り立ちます。

肝組織の主要部である肝小葉が、肝硬変によって大きなダメージを受けます。というのも、線維によって肝組織に新たな区画が不正につくられてしまうからです。つまり、肝小葉が正常に機能しなくなってしまうのです。

このとき線維によってつくられた新たな不正区画を「偽小葉(ぎしょうよう)」と呼びます。まさに「いつわりの肝小葉」ですね。

はじめから仕事なんてするつもりがない偽小葉の形成によって肝小葉がゆがめられ、正常に機能しなくなると、肝機能は著しく低下します。特に顕著にみられるのが、肝小葉を通る静脈の血流の著しい悪化です。

これによって起こるのが、腹水や黄疸などの「肝硬変の症状」なのです。

C型肝炎が原因の肝硬変は特に治りやすい?

肝硬変にかかる原因のうち最大の比重を占めるのが、「ウイルス性肝炎」です。中でもC型肝炎から肝硬変に悪化する確率は50%以上という恐るべきデータがあります。C型肝炎が怖いといわれる理由もわかりますよね。

最大のポイントは、インターフェロン療法など特殊な治療によってC型肝炎ウイルスを減らすことができると、肝線維が細くなる傾向にあるという点です。

もちろん細くなろうが太くなろうが肝線維は肝線維ですから、C型肝炎ウイルスが減少し、やがてゼロ収束を果たしたとしても、肝硬変が治ったとは言えません。肝硬変はあくまでも「肝組織の状態」だからです。

ただし肝線維が細くなることによって、肝機能は一定の改善を見るということも報告されています。つまり、偽小葉は残ったままでも、肝臓さえ正しく機能してくれるなら、肝硬変による症状は現れないのです。

実は肝線維には大きく分けて2種類あるのですが(次の章で説明します)、その種類によっては細化し、徐々に溶けて消えてしまうこともあります。そうなれば、肝機能の回復の望みも大きいわけです。

これが、「肝硬変は治らないけれど、肝機能は回復する!」という今回のテーマの核心の部分です。「C型肝炎由来の肝硬変については」という部分がミソかな、という気も正直します。

ただ、それでも「不治の病」が治る、あるいは治るのと同等の改善がみられるのであれば、これはやはり医学の進化の証でもあるといえるのかもしれません。ただし、C型肝炎由来の肝硬変であっても、すべてが治るわけではないんです・・・

C型肝炎からの肝硬変はすべて治るわけではない!肝がんへのリスクは依然大きい

C型肝炎由来の肝硬変なら治るのか!と喜ぶのはまだ早いといわなければなりません。確かにほかの原因による肝硬変よりも改善の可能性が高いことは事実です。しかしだからといってすべてが治るわけではないんです。

そして肝硬変といえば、原因はどうあれそう遠くない将来、「肝がんへの移行リスク」が高いこともよく知られますよね・・・

治る肝硬変と治らない肝硬変がある?

大部分のC型肝炎ウイルスの消滅に伴い、細化し、溶けていく種類の肝線維を「退行性肝線維」と呼びます。このタイプの線維であれば、肝硬変の原因をつくっていても、偽小葉を無力化できる可能性が高いです。

一方、C型肝炎ウイルスが完全に消滅しきれず、残ったウイルスに反応してさらに増殖しようとする肝線維もあります。これが「進行性肝線維」です。このタイプの肝硬変は、線維化が進行する以上治らない(肝機能が回復しない)ことになります。

それならば、インターフェロン療法などでC型肝炎ウイルスをどんどん滅菌すればよいではないか・・・と思われると思いますが、実際のところ肝炎ウイルスを完全に除去することはそう簡単なことではありません。

インターフェロン療法はすべてがうまくいくとは限りませんし、また、副作用によってインターフェロン注射などを制限しなければならない患者さんも少なくないのが実情です。

患者さんの体力や体質、インターフェロン療法との相性、そして肝線維のタイプなど、さまざまな部分で肝硬変を改善できる「幸運」も、ある意味必要といえるのかもしれませんね。

しかしこの分野は、肝硬変の完治(肝機能の正常化)へ向けた研究が加速している分野でもあるので、将来はもっと高い確率で肝硬変が「治る病気」へと変わっていくのかもしれません。またこれを大いに期待したいところです。

肝がんへの移行リスクは低くならないので要注意!

がんにもいろいろなタイプがあるので一概に言えない部分も正直あるのですが、がんの場合、もちろんウイルスが影響して発生することもある反面、破壊された細胞ががん化することも多いです。

C型肝炎由来であってもなくても、肝硬変の場合、肝細胞が線維化して破壊された部分ががん化する可能性が高いと考える必要があります。とすると、

肝機能が回復することがあっても肝細胞自体のダメージは回復しない肝硬変の場合、肝がんへの移行リスクは依然「高い」

と考えておかなければなりません。

そうはいっても、がんの場合ある日突然増殖して1週間で手の施しようがない状態になってしまった・・・などということはありません。半年に1回くらいのペースで肝臓のがん検診を受けることで、リスクは軽減できます。

がん化する確率が高い肝硬変だけに、「そういう可能性もある」と認識する必要はあります。ただ、早期に発見して早期に対処することができれば、高い生存率をキープできるということをこのタイミングで思い出すべきでしょう。

いずれは完治する病気となる予感も・・・しかし「ならない」ことが最重要!

先日、とあるニュース番組で、「現存する重病や難病のほとんどが、20~30年後にはほぼ完治できるようになる」と報道していました。20年どころか、学者さんによっては「あと数年」と断言する人もいるそうです。

もちろん、「末期がん」も「完治する病気」の対象です。というか、すでにかなりの末期がんを完治させる治療法の臨床検査も、現段階で相当進んでいるということですから、がんが「完治する病気」となるのも時間の問題なのかもしれません。

とすると、肝硬変だって当然「完治できる病気」の最有力候補の1つなのではないかという気がします。あれほど「不治の病」と言われてきたにもかかわらず、現状すでにC型肝炎由来の肝硬変は治る可能性があるのですから。

肝硬変というだけで、絶望的な気持ちになってしまう患者さんも、それは多いと思います。しかし現在は、上でお話したような時代ですから、あきらめず、医療の進歩を信じ、希望を捨てない気持ちが大切です。

しかし最重要ポイントは、「肝硬変が治ることを期待する」のではなく、「肝硬変にならない」ことのほうです。治るのであればなってもいいではないか・・・と考えるのであれば、それは大きな間違いであると認識すべきです。

すでに肝硬変になってしまった患者さんは、どうか希望を捨てないでください。しかし現状肝硬変とは無縁であるという人も、生活習慣次第では肝硬変のリスクがあるということを忘れずに、日々を大事に過ごしていただきたいと思います。

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