肝機能障害の治療。検査で異常があったときに受ける2タイプの治療とは

肝機能障害を治療したい!と考える患者さんは多いでしょう。

肝機能障害といっても種類によって治療方法は異なります。種類が異なるとはいえ、治療の方針を大きく分けるなら2とおりに分けることはできます。というよりも、根本から解決する根治治療と、つらい症状を軽減するための対症療法を並立することが多い、というだけです。

肝機能障害の症状ごとの治療法や治癒期間を解説します。

自覚症状に乏しい肝機能障害。治療は根治療法と対症療法の二つ

一般的な肝機能障害は、主に肝機能の数値からその進行度を判断します。

なんとなくだるいなぁ・・・とか、皮膚に発疹が出るんだけど・・・などという自覚症状よりも数値が重要です。

もちろん自覚症状も無視できませんが、自覚症状は必ずしも肝機能障害によるものとは限りません。たとえば

など、数々の肝機能にまつわる数値から判断します。

早い話が、肝機能検査の結果に応じて肝機能障害の治療を実施することになります。ただし肝機能障害の場合、明確な症状として障害が表面化しないこともあります。

逆にだからこそ検査が重要な意味を持ってくるわけです。ここからは代表的な肝機能障害をピックアップし、それぞれの治療方法を

  • 根治療法
  • 対症療法

の2パターンでご紹介します。

最もポピュラーな肝機能障害「黄疸」の治療方法

黄疸(おうだん)は、主に胆道系のトラブルによって起こる最も典型的な肝機能障害のひとつです。黄疸は、白目や皮膚の一部に黄色の病変があらわれる肝機能障害です。

黄疸自体の症状としては白目や皮膚の変色がみられるくらいなので、痛い、苦しいなどの感覚的な自覚症状には乏しいといえます。しかし警戒色が突然あらわれるとなると、精神的にも身体的にも不安は大きいはずです。

黄疸の原因となる病気はいろいろありますが、いずれもビリルビンの血中濃度が上昇することであらわれます。ビリルビンは、赤血球内のヘモグロビン(Hb)が代謝されて生成されます。

ですからビリルビンが一定量血中に含まれること自体に異常はありません。しかしその濃度が高くなることで、白目や皮膚の一部に黄変がみられる「黄疸」として認識されることになります。

ということは、黄疸の主な原因は、

  • 血液の異常(主に溶結性貧血)
  • 肝細胞性黄疸(主にウイルス性肝炎、薬剤性肝炎、自己免疫性肝炎、NASH
  • 閉そく性黄疸(主に急性肝炎や胆管がんなどによる胆汁うっ滞)

(参考:黄疸-専門医の健康相談(日本消化器学会)より)

などに求められることになります。

ウイルス性肝炎は、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎などの肝炎ウイルスが感染して起こる肝炎です。いずれのウイルス性肝炎も黄疸の症状がみられます。

とすると、黄疸を根治的に治療するためには、やはりこれらの病気を改善する、あるいは完全に治すことが優先されなければなりません。当然医療機関での治療が必要になります。

黄疸自体には身体的苦痛を伴う症状があらわれませんので、これといった対症療法が採用されることはありません。しかし上記の病気はいずれも重度の肝臓病なので、厳密な外科治療や投薬治療が行われます。

ただし、厳密には肝臓病に分類されない「体質性黄疸」と呼ばれる黄疸症状もあります。体質による黄疸は治療を必要としません。ただ、食事制限やアルコール制限によって対症療法的な手法が採用されることもあります。

消化器や気力に影響が及ぶ肝機能障害の治療方法

肝機能障害は「肝機能に障害が起こる事象の総称」なので、肝機能障害という病気があるわけではありません。ですから「食欲不振や吐き気」が肝機能障害であるという事実に違和感を覚える人も多いです。

しかし何らかの障害によって起こる肝機能低下が原因となっている症状のすべてが肝機能障害に分類されますので、「食欲不振・吐き気」などの消化器症状も、代表的な肝機能障害と解釈されます。

もちろん、食欲不振や吐き気が続けば気力の減退(倦怠感やめまい)などの原因にもなります。肝機能障害としてあらわれる食欲不振や吐き気、だるさ、めまいの原因となる病気には、

慢性肝炎、急性肝炎、劇症肝炎、NAFLD、アルコール性肝障害、ウイルス性肝炎、自己免疫性肝炎などの「肝炎」や、終末期的な肝臓病である肝硬変、肝臓がん

など、ありとあらゆる肝臓系の病名が挙がります。ただしいずれも中程度以上に進行してから症状があらわれることが多いです。

ただし、だるさやめまいについては、初期的症状として自覚することもあります。

すべてではありませんが、肝機能障害の進行傾向としては、次の順に症状があらわれることが多いと考えられます。

  1. だるさ・めまい
  2. 食欲不振・吐き気
  3. 黄疸

とはいえ肝硬変や肝臓がんともなると、肝機能障害というレベルの症状ではなく、根治治療だ対症療法だと考えている余裕もありません。

肝硬変やがんなど重度肝臓病の場合、もうお医者さんに一任して、できるだけ痛みやつらい症状を取り除く「緩和ケア」が必要になります。それ以外の肝臓病にしても、上記はかなり重度な肝疾患に分類されます。

これらの治療方法や治癒期間については、それぞれの病気の治療方法に特化したページがありますので、以下にご紹介しておきます。そちらをご覧ください。

根治治療はともかく、病状や病気によらず、食欲不振のまま食べられない状態が続いたり、食べても吐き気に襲われ続けたりするようでは、体力的にも精神的にも持ちませんよね?

もちろん食欲不振や吐き気に関しては対症療法的に投薬治療や点滴治療、流動食の導入など、症状によってそれぞれの対応が実施されることになります。重い肝臓病の治療では、とにかく体力と気力が重要になってきます。

ほかにも、重度肝疾患では必ずと言っていいほどあらわれる「腹水(お腹に水がたまる症状)」と呼ばれる肝機能障害が考えられます。腹水の治療については、こちらのページにまとめてあります。

肝機能障害の治療は肝臓病の種類や症状レベルごとに実施される

肝機能障害は、何らかの肝障害が原因となってあらわれる症状の総称です。つまり肝機能障害の治療方法や治癒期間は、障害の種類、肝臓病の種類、症状レベルによって異なるといわなければなりません。

ですからこのあたりの判断は、とても患者さんご自身に下せるものでもありません。しかも肝機能障害は、肝臓病がかなり悪化していたとしても顕著な自覚症状があらわれるわけではないという特徴もあります。

そうなると、肝機能障害の治療方法や治癒期間を知るためには、担当のお医者さんとじっくり相談していただくのが一番の近道ということになりそうですね。

中には重篤な肝臓病に起因する肝機能障害もありますので、とにかく体力と気力を欠かさないよう、患者さんには治療にはげんでいただきたいと思います。

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