脂肪肝は血液検査と画像診断でわかる!高リスクの数値とは


肝臓は「沈黙の臓器」の異名をとるくらい、組織にダメージがあったとしても簡単には自覚症状が現れない臓器です。それゆえこまめに肝臓の状態を把握することが大切です。

そのために有効なのが「血液検査」ですが、特に脂肪肝のような初期の肝障害では、どの検査項目が症状を指し示しているのかがわかりづらいです。

そこで今回は、採血や他の検査で脂肪肝の可能性を探るというテーマでお話します。

脂肪肝の場合、血液検査ではALT(GPT)とAST(GOT)の数値に注意

まずは採血で、つまりは血液検査で脂肪肝の可能性を探る際に、どこに着目すればよいかというお話です。

肝臓は大量の血液が流れ込む臓器なので、血液検査をすることにより肝臓の状況をつぶさに知ることができます。

血液検査における肝機能関連の検査項目は、実はかなり多様です。血液検査などによる肝機能の数値についてはこちらをご覧いただきたいのですが、脂肪肝の疑いを示唆する検査項目もこの中に含まれます。

もしかして脂肪肝?と思ったら、まずはALT(GPT)とAST(GOT)の数値をチェック

おそらくすでにご存知の方は多いと思いますが、一般の血液検査でわかる肝機能の項目のうち、最も代表的な

は特に脂肪肝とのかかわりが大きい検査項目になります。

これらの検査項目の基準値など詳細情報についてはそれぞれのリンク先でご確認いただきたいのですが、脂肪肝の場合、ほぼ例外なくこれらの数値が高値異常を示します。特にALT(GPT)の数値には敏感に反映されます。

ALT(GPT)は肝臓酵素のひとつである「アラニンアミノトランスフェラーゼ」と呼ばれる物質ですが、肝臓だけでつくられるわけではないものの、ほとんどが肝細胞で産生されます。

そのため、ALT(GPT)の数値が高値異常を示した場合、脂肪肝など何らかの肝細胞がダメージを受けている可能性が高いです。脂肪肝は肝障害の最初期的なトラブルですが、脂肪肝が悪化すると、

肝炎

肝硬変・肝繊維症

肝がん・肝不全

という具合に段階的に進行し、重大な肝疾患へのリスクが増加します。ALT(GPT)が少し高めかな、脂肪肝かな…と思ったら、それ以上の悪化を防ぐための対処が必要です。

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AST(GOT)についてもALT(GPT)と同じ肝臓酵素の1つですので、ここまでお話したALT(GPT)と同じ感覚で脂肪肝の可能性を模索していただいてかまいません。

ただし、1点だけ注意していただきたいことがあります。

それは、AST(GPT)は心臓や筋肉細胞にも含まれ、肝障害以外の問題でも上昇することがある数値であるという点です。ALT(GPT)とともにAST(GOT)が少々高いかな、というときは脂肪肝の可能性が高いです。

しかし、ALT(GPT)はそれほどの異常ではないのに、AST(GPT)だけに強い上昇傾向がみられるケースでは、脂肪肝などの肝疾患ではなく、心臓や筋肉、血液などに何らかの問題が隠されていることもあります。

この点には十分注意していただきたいと思います。

脂肪肝の目安となる検査数値。その組み合わせにごとの脂肪肝の可能性は?

ALT(GPT)にしてもAST(GOT)にしても、基準値を上回る検査結果が出た場合「肝細胞が破壊されている」という診断が確定します。

しかしいくつになったら脂肪肝という明確な基準はありません。

肝臓という臓器は重要な臓器であるため、数値からの判断には厳密を要するわりに、個人差が大きい臓器でもあります。それだけに、安易に「この数値以上は脂肪肝」などと決定できない側面もあります。

ただ、あくまでも一般論ではありますが、どのお医者さんもたいていは、

「ALT(GPT)、AST(GOT)の数値が50~100前後の上昇がみられた場合、脂肪肝の可能性が極めて高い」

と診断します。ちなみに筆者が昔からかよう信頼に足る病院の担当医によれば、肝臓は80(IU/L)を超えたら本気で治療になっちまうぞ!、とのことでした。

ということは、ALT(GPT)、AST(GOT)の数値が100以上(80以上?)を示した場合には、脂肪肝よりももっと重大な肝疾患(たとえば脂肪性肝炎など)の可能性が強く疑われることになります。

上のほうで少し触れましたが、AST(GOT)だけが高値異常の場合、脂肪肝とは別のリスクも想定されますので、ALT(GPT)、AST(GOT)の数値の組み合わせごとに、脂肪肝のリスクを検証してみることにしましょう。

ALT(GPT)、AST(GOT)ともに30IU/L以下の場合を○(異常なし)、31~49IU/Lの場合を△(高値異常)、50~100を×(脂肪肝ゾーン)で表すとき、脂肪肝のリスクは以下のようにまとめることができます。

 

 

ALT(GPT) × × ×
AST(GOT) × × ×
脂肪肝リスク 低~中 中~高

上記はあくまでも目安でしかありませんが、脂肪肝リスクでピンク帯がかかった部分は、AST(GOT)の高値異常なので肝疾患以外のリスクも想定しておく必要があります。

アルコールによる脂肪肝は血液検査のγGTPを見る

脂肪肝の中でも、飲酒習慣がある人に限定的に起こる脂肪肝を、「アルコール性脂肪肝」と呼びます。アルコール性脂肪肝の主な指標となるのが、こちらも一般的な血液検査で知ることができるγGTP(ガンマGTP)です。

γGTPの値が上昇するのは、お酒以外のファクター(たとえば肥満、薬物の影響など)も考えられますが、やはりアルコールとの関係が特に強固な検査項目です。γGTPは胆汁に含まれ、飲酒量が増えると増加する酵素です。

脂肪肝には自覚症状がほとんどありませんので、飲酒習慣がある人で、γGTPの数値に高値異常がみられたときには、アルコール性脂肪肝が強く疑われます。

飲酒習慣がある人でγGTPの値に高値異常がみられたら、お酒の量をコントロールすることをはじめとした何らかの対処が必要になります。

脂肪肝の画像診断ではこう見える!

肝機能検査というと、どうしても血液検査のイメージが強いですが、実際には血液検査以外の方法もたくさんあります。

中でも「画像検査」に属する検査は、具体的な組織損傷をピンポイントで指摘することができます。

脂肪肝の検査もその1つです。「ほらね!」と言われてしまうと言い訳のしようもありませんが、患者さんにとっても診断するお医者さんにとっても「わかりやすい」という意味で非常に大きなメリットがあります。

画像による検査といってもそんなに難しいことをするわけではありません。一般的な断層写真(CTやMRIなど)や超音波画像などで肝臓組織に脂肪が付着しているところがヴィジュアルに把握できます。

▼超音波検査 腹部エコー画像:脂肪肝は肝臓が白くうつります
脂肪肝の腹部エコー写真
(出典:腹部超音波検査 腹部エコー|北海道中央労災病院 エコー室)

ただ、脂肪肝の影響で肝臓の組織がダメージを受けているその度合いを知るためには、やはり血液検査でALT(GPT)やAST(GOT)などの数値を参照することが大切であるといえます。

音もなく忍び寄る脂肪肝!そして音もなく肝臓をむしばむ…

肝臓の病気全般にいえることですが、脂肪肝についても「自覚症状がない」という点でほかの肝疾患と共通します。

今回ご紹介した検査数値の意味をよく理解して、予防や対処に活かしていただきたいと思います。

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なお、今回主にご紹介したALT(GPT)、AST(GOT)、γGTP以外にも、脂肪肝で数値に異常が現れる検査項目はいくつかあります。

また、脂肪肝では特にコリンエステラーゼ(CeE)の値に上昇がみられることもありますので、ALT(GPT)、AST(GOT)、γGTPの値が高かった人は、こちらにも少し注意してみてくださいね。

脂肪肝を抱える日本人は多いといわれますが、多いから大丈夫というわけではありません。

また、脂肪肝は最初期の肝障害なので、脂肪肝のレベルであればまだ大丈夫との見解も主流ではあります。

しかし脂肪肝が進行して悪化すれば、すぐに生命の危険を伴うレベルの重度肝疾患のステージに突入です。脂肪肝は音もなく襲い掛かり、音もなく肝臓をむしばむ・・・そんなイメージでとらえるべきです。

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