【血小板】血液検査での基準値。多い、少ないどちらも危険

血小板は血液成分の1つで、主に止血の機能を果たすことはよく知られます。

そしてこの血小板、実は肝臓とも深くかかわっています。何しろ大量の血液を扱う臓器だけに、肝臓における血小板の働きは重要です。

今回は、主に肝臓における血小板の働き、そして肝臓(肝細胞、組織)の状態が血小板数に与える影響についてお話していきます。

肝臓と血小板数の関係は非常に密接

たとえば急性白血病など、血小板異常は血液の代表的な疾患の症状です。ただ、白血病などの重篤な血小板異常ではなくても、大量の血液を受け入れ、送り出す肝臓への影響は大きいです。

血小板が多くなりすぎる「血小板増多症」では、通常よりも血液の凝固作用が高まり、脳血栓(脳血管に流れ込んだ血液の塊が血管をふさいで血流を阻害する)などのリスクが高まります。

逆に血小板が少なすぎると、今度は止血できないリスクが高まり、脳出血などのリスクも同時に高まります。いずれにしても、血液の異常は生命を脅かすだけに、事態は深刻です。

血小板をつくるもこわすも肝臓次第

血小板を含み、血液は骨髄にある幹細胞(かんさいぼう)というところでつくられますが、実は肝臓も血液をつくる上で無関係な臓器ではありません。特に、肝臓は血小板をつくる上で重要な働きをしています。

血小板は止血の作用がある血液成分なので、多すぎても少なすぎても問題を生じます。肝臓の障害によって主に起こるのは、血小板数の減少です。つくられない、血小板細胞が壊れやすいなどの悪影響を与えます。

アルコールの過剰摂取や糖質過剰摂取が習慣化すると、肝臓に必要以上の脂肪が付着する事態に陥ります。この状況を「脂肪肝」と呼びます。脂肪肝が悪化すると、肝炎の発症、肝臓の線維化のリスクが高まります。

肝臓の線維化というのは、私たちが知る「レバー」のように滑らかな材質ではなく、水分を失ってガサガサとした肝組織をイメージしていただけると、これに近いかな、という気がします。

線維化が進むと、やがて肝硬変へと移行する確率が上昇します。

肝硬変にまで至らなくても、肝臓の線維化が進行することによって、血小板数は減少します。肝硬変では血小板数が大幅に減少して止血能力が低下し、特に肝臓からの出血が多くなります。

肝硬変の場合、血小板数は10万/μLを下回るともいわれますが、では、血小板数の正常値はどうか、そして異常の度合いについても知っておかなければなりません。

10万というと、とてつもなく多いように感じられるかもしれませんが、細胞の数なので実生活で目にする数値とはケタが異なるのは仕方がありません。

血小板数の基準値。正常範囲から高いか、低いか?

血小板数の基準値
14万~34万/μL(μは「マイクロ」で、100万分の1を表す。1μLは0.001mL)

肝臓が線維化すると肝臓を通る小さな血管も無事ではすまないので、肝臓の血流が当然悪化します。その結果、血液が肝臓に流れ込む前の「脾臓(ひぞう)」に血液のうっ滞が見られ、脾臓の肥大が起こります。

川の上流で山崩れが起こって川がせき止められてしまうと、その下流に水が流れ込まないかわりに、本来頼りない流れのはずの上流域がちょっとしたダムのような水の「たまり」になることがあります。

脾臓の肥大はこの状況に似ています。肝臓組織の血流が悪化して、脾臓に血液の「たまり」のような状況が起こります。ただ、問題はそのあと、脾臓が肥大化してからです。

脾臓が肥大することで、血小板細胞が破壊されやすくなってしまうのです。これだけでもだいぶ血小板数は減少します。そしてもうひとつ、肝臓の線維化は非常に重大問題を及ぼします。

実は、血小板産生の促進と関係する「トロンボポエチン」という重要な物質があるのですが、この物質は、健全な肝臓でつくられます。線維化が進んだ肝臓ではつくられる量が大幅に減少します。

肝臓におけるトロンボポエチンの生成が停滞すると、残念ながら血小板の産生も大幅に減少することになるのです。

血小板数の異常から考えられる疾患

血小板の減少が見られると、たとえば急性白血病の可能性が考えられます。急性白血病は、肝細胞ががん化しているため、血小板数が減少するだけでなく、急に増加することもあります。

要は、幹細胞ががん化して白血球や血小板をつくる量をうまくコントロールできなくなってしまうのが白血病です(ものすごく簡単な説明ですが)。ほかにも、再生不良貧血などの重篤な疾患で血小板減少が見られます。

白血病や再生不良貧血は「いかにも」の血小板異常ですが、血小板数減少は多くの肝疾患の際に見られる症状でもあります。時に、血小板数が異常に増加する肝疾患もあります。

血小板の減少が見られる疾患

肝硬変など、かなり重篤な肝疾患で血小板数の減少傾向が顕著になります。ほかにもいろいろな肝疾患で血小板数減少が見られます。肝疾患以外の主な疾患についても少しだけ触れておきます。

血小板数減少が見られる主な疾患
  • 肝疾患・・・慢性肝炎、肝硬変、重症肝炎(劇症肝炎)、DIC(※)の合併
  • 肝臓外疾患・・・薬剤性血小板減少症、特発性血小板減少性紫斑(しはん)病、免疫性血小板減少症

※DIC・・・播種(はしゅ)性血管内凝固症候群の略。全身の血管内で微小血栓が起こり、臓器障害の原因になる。肝硬変や劇症肝炎、急性膵炎などの合併症として現れることが多い。

また、病気とは直接関係ないですが、閉経前の女性の場合、月経前1~2週間前に多少血小板減少が見られることがあります。ほかにも、男性も含め体調次第で血小板数が安定しないこともあります。

血小板の増加が見られる疾患

肝疾患の悪影響の一端が、主に「血小板数の減少」に現れることが多いですが、逆に血小板数が異常に増加してしまう種類の疾患もあります。肝疾患、肝臓外疾患のそれぞれのケースをまとめます。

血小板数増加が見られる主な疾患
  • 肝疾患・・・急性肝炎、慢性肝炎(※)、肝硬変(※)、肝臓がん
  • 肝臓外疾患・・・悪性腫瘍、栄養不足、拒食症

※注意・・・慢性肝炎と肝硬変の場合多くは血小板数が減少するが、これらの疾患が原因で「血小板増多症」を発症したケースでは、血小板数が著しく増加することがある。

肝疾患はもちろんですが、肝臓外疾患で血小板数減少の原因になっているのが肝疾患や肝機能障害であるというケースも考えられます。ですから肝臓と血小板数異常は、双方向でケアする必要があるのです。

血小板異常が起こったらどうする?数値が基準値から外れていたときの対処法

血小板が大幅に減少した、あるいは異常な増加が見られたケースでは、可能性として、上記に挙げた疾患を疑う必要があります。いずれも重篤な疾患なので、医療機関で相談することを前提に考えましょう。

特に肝疾患や肝機能障害に起因する血小板数異常の場合、ほかの肝機能値(AST(GOT)、ALT(GPT)など)にも異常が現れる確率が高いので、血小板の値にとらわれすぎず、いろいろな数値を参考にすることが大切です。

というよりも、血小板数ではなく、先に肝機能値の異常が起こることのほうがむしろ多いので、肝機能値にはふだんから注意を払うようにしていただきたいと思います。

重要な数値、しかしあまりナーバスになる必要はない

血小板の異常は、それ自体生命の危険の可能性をはらみますし、また、血小板異常の原因となっている疾患が生命を脅かす可能性も十分考えられます。

しかしだからといって、上記でも少し触れたとおり、血小板数は体調の変化や月経の有無によっても増減します。ですから血小板数は、日々めまぐるしく増減を繰り返していると考えても問題ありません。

健康診断の血液検査などで、仮に血小板数が高かったり低かったりしても、少し間を空けて再検査し、それで問題なければOKというくらいの考え方でよいでしょう。

血小板数に異常が認められた場合、正常範囲からどれくらいはずれているのかを重視すべきです。そして肝機能値など、ほかの数値の異常の有無とセットで考えるようにしましょう。

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