【AST・GOT】血液検査の数値の意味は?肝臓の状態を知ろう

血液検査で知ることができる肝機能関連の数値のひとつにAST(GOT)という項目があります。

実はこのAST(GOT)は、ALT(GPT)とは異なり、肝臓以外の部位のトラブル検知の材料にもなります。

AST(GOT)について知り、ASTの数値上昇のヒミツに迫る!

ALTだとかASTだとかGPT、γGTPだとか、血液検査の肝臓の項目には「なんのこっちゃ?」という感じの記号の羅列が見られますが、この数値が重要な意味を持っていることは、みなさんもご存じかと思います。

AST(GOT)とはいったい何モノなの?

AST(GOT)という肝機能の項目があります。ASTは「Aspartate Aminotransferase=アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ」の頭文字ASとTをつなぎ合わせた記号であり検査項目名であり物質の略称でもあります。

GOTというのは、「Glutamic Oxaloacetic Transaminase=グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ」の頭文字3文字を羅列した記号、項目名、略称です。物質は別ですが、機能はどちらも同じものとして大丈夫です。

AST(GOT)は、肝臓をはじめとするさまざまな主要臓器で生成される酵素(消化や代謝など、その臓器の機能を助けるための体内分泌物)です。わずらわしいのでここからは「AST」で統一してお話ししますね。

肝臓以外では、心筋(心臓を形成する筋肉)、さらには骨格筋でもASTを生成します。量的には肝臓が一番多いです。何しろ肝臓は「人体で最大の臓器」ですから当然といえば当然です。

ALT(GPT)やγGTP(γは「ガンマ」の読み)もASTと同じく肝臓で生成される酵素ですが、これらの酵素をつくる肝細胞(肝臓を形成する細胞)の種類が異なります。

それゆえ、血液検査ではALT(GPT)だけが高かったり、γGTPだけが高かったりと、損傷した肝細胞の種類によって差が生じることになります。

要警戒!肝細胞をはじめさまざまな臓器細胞の破壊を示すASTの上昇!

ALT(GPT)やγGTPもそうですが、ASTも肝機能を助ける重要な働きがあるため、分泌されなければ困ってしまします。酵素にはそれだけ重要な働きがあります。

ただ、酵素というのは多ければよいというものではありません。肝臓などそれぞれの臓器と脳、中枢神経などの連携により、必要な分だけ分泌されることが重要です。

血液検査をしてASTの項目周辺を注視したことがある人ならわかると思いますが、ASTには「正常範囲」が設けられています。肝臓などの臓器細胞が必要な酵素の量が、この正常範囲に入っている必要があります。

ところが、いろいろな原因で肝細胞そのた臓器、パーツの細胞の破壊が起こることで、分泌しなくてもよい酵素が過剰に分泌されることになるのです。これが、ASTなどの数値が上昇するカラクリです。

つまり、ASTが正常範囲を超えて上昇したということは、ASTを分泌する肝細胞が想定以上に破壊されているということを意味します。ですからASTの上昇は、実は非常に怖い状況なんです。

ALT(GPT)についてもほぼ同様のことが言えますが、ASTに関しては赤血球の内部にも含まれており、溶血(赤血球の破壊)によってもAST値が軽く上昇することがあります。これがALTとは異なるところです。

ASTが正常範囲にあることを重視すべき!

肝細胞も細胞なので、新陳代謝が行われます。肝細胞の新陳代謝のスピードは臓器の中で最も遅いことで知られます。つまり、肝細胞の破壊はそれだけ進行しやすいことを意味します。

もうひとつ、肝疾患が悪化しやすい理由があります。肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれますが、これは、肝臓が悪化しても自覚症状が現れない、あるいは現れにくいことの比喩(ひゆ)です。

小指の先を傷つけると激しく痛みますが、かなりの数の肝細胞の破壊が進行し、ASTが流れ出して血中に入り込んだとしても、すぐには症状が現れないんです。これが肝疾患の怖いところです。

肝疾患については、肝臓が沈黙を守っている間に状況が悪化することを避けなければなりません。つまり肝臓は黙っていても、その持ち主が、ご自身の肝臓が悪化していることに気づいてあげなければなりません。

そのために重要な方法は、「ASTをはじめとする肝機能の状態を定期的に知る」ことです。つまり、定期的な血液検査です。冒頭でも触れたとおり、血液検査をすればASTやALT(GPT)、γGTPなどの数値を知ることができます。

数値を知ることができたら、今度はその数値が正常範囲内にあるかどうかを確かめる必要があります。

ASTの基準値(JSCC法)
35IU/L以下(※)

※注意・・・基準値や正常範囲は検査機関や検査方法により異なります。また、IUはAST量の単位の1つです。

「基準値」と「正常範囲」とは多少ニュアンスが異なる部分があります。また、注意でも触れたとおり、検査機関や医療機関によってAST値の結果、解釈に多少のズレが生じることもあります。

ですから、詳細については担当医とよく相談していただきたいと思います。ただし重要なことは、基準の境界の多少ではなく、AST値が明らかに基準範囲、正常範囲を飛び出してしまわないことです。

そのためには肝疾患をはじめ、臓器細胞を破壊する疾患を避けることが大切です。そんなことは当たり前じゃないか!と思うかもしれませんが、わかっていてもかかってしまうのが、肝疾患などの生活習慣病です。

お酒の飲み方や糖質の過剰摂取など、いろいろ注意できることはありますので、ASTやALT(GPT)の数値が気になる人は注意してみてください。

AST(GOT)の数値が上昇することがある疾患は?異常の際の対処は?

AST値が上昇したからといって、その時点で肝臓の疾患が確定したわけではありません。ただ、このままAST値の上昇が続けば脂肪肝、肝炎、肝硬変、そして肝がんなどへと進行していくリスクがあることは間違いありません。

上昇の仕方によっても所見が異なるところではありますが、ASTの上昇がみられる疾患についてご紹介しておきましょう。

AST値上昇の原因となりうる代表的な疾患は?

ではさっそく、AST値上昇の原因となりうる疾患のうち、代表的なものをまとめることにしましょう。

AST値を上昇させることがある疾患 AST値の上昇の程度・度合い
急性肝炎 AST値が高値を示し、黄疸(おうだん)を呈するレベルになると500~3000IU/Lまで上昇することも
慢性肝炎(活動型) 肝硬変まで進行するリスクが高く、AST値は100IU/Lを超えることもある
慢性肝炎(非活動型) AST値は50~60IU/L程度で、節制により改善も可能
劇症肝炎 急激な症状の悪化を示して黄疸をはじめとする異常が顕著になり、ショック症状によって死に至るリスクが高い。AST値は1000IU/Lを超える。急な低下はショック症状のリスクを招くため、劇症肝炎の場合AST値の急下降は極めて危険な状況と判断すべき。
その他の疾患(肝疾患・肝臓以外の疾患) 脂肪肝、肝硬変、肝がん、胆道系のがん、溶血、うっ血性心不全、心筋梗塞、胆汁うっ滞、筋ジストロフィー

筋ジストロフィーはもちろん、原発性疾患(原発性肝がんなど)の一部は必ずしも生活習慣病とは言えないところもありますが、多くは生活習慣とのかかわりがある疾患です。

定期的な血液検査でASTの数値に変化(上昇)が見られたなら、節制してこれ以上数値を上昇させないようにすることが何よりも大切であると考えるべきです。

万一AST値が上昇したらどう対処すればいい?

AST値が上昇した原因が上記の表のようにはっきりしている場合には、劇症肝炎などの
緊急治療も含め、とにかくその疾患の解消・改善を目指す以外に方法はありません。

ただ、血液検査の結果が出たばかりで、原因も何もわかっていないケースでは、まずは原因を知るところからスタートする必要があります。要は、医療機関で検査をして、結果に応じて加療すべきであるということです。

検査の結果、たとえば軽度の脂肪肝など、そこまで重篤な状況でないということが判明したら、お医者さんのアドバイスをよく聞いて、断酒などの生活習慣の改善を含め、慎重に対処すべきです。

また、ASTはALT(GPT)やγGTPなど、肝機能のほかの項目とも密接に関係しているので、AST値単体で考えるのではなく、肝機能全体で考えるようにしていただきたいと思います。軽度の脂肪肝など、そこまで重篤な状況でないということが判明したら、お医者さんのアドバイスをよく聞いて、断酒などの生活習慣の改善を含め、慎重に対処すべきです。

また、ASTはALT(GPT)やγGTPなど、肝機能のほかの項目とも密接に関係しているので、AST値単体で考えるのではなく、肝機能全体で考えるようにしてくださいね。

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