【ZTT・TTT】膠質反応検査の数値が高いとき、低いときの異常とは

血液を採取して放置すると、沈殿する部分と上澄み液の部分とに分かれます。この上澄みの部分を「血清(けっせい)」と呼びます。

血清には100ほどのたんぱく質成分が含まれており、中でもアルブミンとグロブリンは非常に重要で中心的な働きを担います。

アルブミンとグロブリンについてはA/G比の記事をご覧いただきたいのですが、重要なのはアルブミンやグロブリンだけではありません。

これらのたんぱく質は、一部を除いてあらかた肝臓でつくられます。そこでひとつ問題になるのは、肝機能障害などのトラブルによって、重要な働きを持つたんぱく質が肝臓で正しくつくられないことがある、という点です。

今回はそのトラブルに対処するための検査でZTT、TTTなどの種類がある「膠質(こうしつ)反応検査」に着目します。

膠質反応検査はどんな検査で、その検査で何がわかるのか

肝臓でつくられる血清たんぱく質の状態や変化を調べる方法はいくつかありますが、ZTTやTTTは最もポピュラーな方法であるといえます。まずはその概要から説明します。

膠質反応検査ZTTとTTTの概要

まずはZTT、TTTという、血液検査としてはいかにもシンボリックな検査方法をそれぞれご紹介します。

ZTT
「硫酸亜鉛試験」と呼ばれます。ZTTは”Zinc surfate Turbidity Tes”の略。
TTT
「チモール混濁試験」のことを指します。TTTは”Thymol Turbidity Test”の略。

ZTTのほうは「クルケン試験」などと呼ばれることもあります。

ZTTとTTTのメリットは、検査結果を早く得ることができることをはじめ、検査をする側にとって検査しやすいファクターが多い点です。いくつかある方法の中でもZTTとTTTが主に採用されるのはそのためなんですね。

膠質反応検査をするとどんなことがわかるの?

肝臓は非常に多彩な仕事をする臓器であり、肝機能に分類される検査項目が多数にのぼります。そのため肝機能値単体ではっきりした病気を把握できないことも多く、その場合さらに詳細な検査が必要になります。

膠質反応検査は、いわゆる「精密検査」とはニュアンスが少々異なりますが、精密検査へのアプローチとして行われる検査プロセスであると解釈できます。一般に「スクリーニング検査」と呼ばれる種類の検査です。

ZTTやTTTを実施して血清たんぱく質の状態を知ることで、精密検査の重要なヒントになります。冒頭で触れた「A/G比」をはじめ、血清たんぱく質に何らかの異常がみられた場合に実施されることが多いです。

膠質反応検査によって具体的な疾患がわかる場合もあります。

膠質反応検査による具体的リスクの測定(高値の場合のリスク)
  • ZTT・・・Mたんぱく血症(骨髄腫など)
  • TTT・・・γグロブリン上昇のリスク(特にIgM、肝疾患、多発性骨髄腫などで上昇傾向あり)

※γは「ガンマ」の読み

γグロブリンについて詳しくはこちの記事でご覧ください。
【A/G比】血液検査で低いと言われたらどんな病気が疑われるのか

ZTT、TTTの正常範囲と、高い数値の場合の傾向

ZTTにしてもTTTにしても、膠質反応検査はスクリーニング検査(精密な検査の方向性をふりわけるための検査)なので、万一数値に異常がみられた場合、これを放置することはありえません。

ですからまずは正常範囲を知り、異常がみられた場合にどういった対処が必要になるかにも意識を向けておかなければなりません。

ZTT、TTTの正常範囲

膠質反応検査では「クンケル単位」という特殊な単位を用います。詳細には触れませんが、ZTTで硫酸亜鉛系の緩衝液の血清との混濁の程度を検査結果に用いたクンケル(Kunkel)という人名を採用した単位です。

ZTTが「クンケル試験」と呼ばれるのはそのためです。

ZTT、TTTの正常範囲
  • ZTT・・・2~14クンケル単位
  • TTT・・・0~5クンケル単位

ZTT、TTTの異常に関しては、基本的には高値の異常へのケアが必要になります。ただし、TTTが低値を示して異常と判定されるケースもありますので、いずれにしても異常の有無が最大の注目点となります。

高値が計測された際の大きなリスクについては上記に示しましたが、ZTT、TTTの異常の組み合わせによってはさらに詳細なリスクを知ることができる場合もあります。

ZTT、TTTの異常の組み合わせでわかるさまざまな疾患リスク

ZTT、TTTの高値異常の際に考えられるリスクについてはすでにお話しましたが、両方とも高値を計測した場合とどちらか一方だけが高値異常だった場合とでは、リスクの範囲が異なることがあります。

ZTT、TTTの高値異常およびTTTが低値を示す異常(0≦TTT<2)の組み合わせとして起こりうるすべての場合のリスク傾向をそれぞれ示します。

▼ZTT、TTTの高値異常とTTTの低値異常の組み合わせごとのリスク

ZTT、TTTのいずれもが高値 慢性肝炎
ZTTだけが高値 肝硬変、急性・慢性肝炎、肝がん、膠原病(こうげんびょう)、骨髄腫、悪性腫瘍
TTTだけが高値 急性・慢性肝炎、脂質異常症(高脂血症)、膠原病、脂肪肝、肝硬変など
TTTが低値 胆汁うっ滞症、ネフローゼ症候群、糸球腎炎、骨髄腫

膠質反応検査で異常がみられた場合は?

膠質反応検査はスクリーニング検査なので、異常があった場合「まあこのくらいなら大丈夫でしょう」という判断は基本的には下されません。ZTT、TTTの少なくとも一方に異常がみられた場合、精密な検査が必要になります。

異常が見られたときに行われる検査も多様ですが、考えられる検査としては以下が挙げられます。まずは肝機能障害に原因がある異常であるか否かを知ることを目的とした精密検査になります。

ALT(GPT)、AST(GOT)、γGTP、ALP、LDH(LD)、γグロブリン、血清総たんぱく分画、コレステロール、CTスキャン、造影検査、A型肝炎の有無を調べる検査など

膠質反応検査で異常がみられると、その後の検査は非常に多岐にわたりますので、病院サイドからのガイダンスにはよく耳を傾けるようにしていただきたいと思います。

検査のための検査を受ける意義は大きい

ZTTにしてもTTTにしてもその他の方法にしても、膠質反応検査はスクリーニング検査、すなわち「検査のための検査」です。とはいえ、健康診断や単なる血液検査とは意味合いが異なります。

健康診断や単なる血液検査では、精密な検査をしたほうがよさそうだと判断された場合に実施されるスクリーニング血清血液検査です。それだけに、スルーするという選択肢はありえません。

上記に示したとおり、中にはかなり重大な疾患のリスクも含まれますので、膠質反応検査が必要との診断が下された場合には、先々のためにもしっかりと血清検査をしていただきたいと思います。

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