薬の副作用で肝臓障害がおこる!薬物性肝障害であらわれる症状と対策


肝臓の疾患にはいろいろな種類があります。多くの現代日本人がかかっている「脂肪肝」や、最も重大な肝疾患である「肝硬変」は、肝疾患の代表的な障害です。肝硬変の前段階的な肝疾患には「肝炎」もあります。

肝炎にも種類はいろいろあります。たとえばB型肝炎やC型肝炎に代表される「ウイルス性肝炎」や、「アルコール性脂肪性肝炎」などがあります。

これら肝炎の症状に近い「薬物性肝障害(薬物性肝炎)」も怖い肝障害です。今回はこの薬物性肝障害について解説します。

薬物性肝障害は他人事じゃない!どんな薬でも起こり得る

病名からしてだいたいどんな肝疾患であるか想像できると思いますが、薬物性肝障害は、薬を服用することで肝臓がダメージを受けて起こる肝機能障害の総称です。

薬は誰でも服用すると思いますが、そう簡単に起こるものではありません。

ただ、薬物性肝障害が起こる可能性は誰にでもあり、副作用がない(極めて小さい)とされる漢方薬を含め、内服薬であればどんな薬にもその危険性があることは知っておいたほうがよいといえるでしょう。

ひとことで言えば、「飲み薬の副作用によって引き起こされることがまれにある肝障害の総称」が、薬物性肝障害です。

薬物性肝障害が起こる代表的な薬、パターン

薬物性肝障害は、どの薬なら起こるとか、どの薬だから大丈夫などといった具体的な臨床データがあるわけではありません。ありとあらゆる薬で起こると考えるべきです。

▼薬物性肝障害が起こりうる代表的な薬の種類

処方薬
  • 解熱消炎鎮痛薬
  • 抗がん剤
  • 抗真菌薬(水虫や真菌症の飲み薬)
  • 漢方薬
市販薬
  • 解熱消炎鎮痛薬
  • 総合感冒薬(かぜ薬)
  • 漢方薬

(参考:薬物性肝障害とは?-薬物性肝障害(厚生労働省)より)

ということで、代表的な種類としては、当てはまらない薬はないといえるでしょう。どれか1種類だけ単独で服用した場合に発症する場合と、複数の種類を同時に服用して発症する場合と、どちらの場合も考えられます。

しかし薬物性肝障害を発症するいくつかのパターンがありますので、薬を飲んだら肝臓がやられてしまうと安易に考えるのではなく、パターンを理解して肝臓にダメージがおよばないような服用方法を検討する必要があります。

いずれも薬を服用したときの副作用として薬物性肝障害を発症しますので、まずは副作用が起こらないような薬の飲み方が大切です。

副作用(特に肝機能障害)が出るパターンは以下のように分類されます。

パターン 副作用のタイプ 副作用の説明 副作用を起こさない・悪化させない・万一起こったときのための対策・対処
量をたくさん飲んで出やすい副作用 中毒性肝障害(アセトアミノフェン中毒) かぜ薬・解熱鎮痛剤などに含まれるアセトアミノフェンを1回で大量に服用することで起こる副作用(肝障害) 定められた用法容量を遵守する
服用する量と無関係に現れる副作用 アレルギー性副作用(アレルギー体質以外の人にも起こりうる) 少量であっても、主にアレルギー体質の人が服用することで、肝機能障害以外に肝障害が原因のかゆみ、発疹、じんましんなどがみられる副作用 急性症状が多いため、服用後少しでも違和感があればただちに服用をやめ、速やかに医療機関で診察を受ける(※)
特定の人に現れ、傾向がない副作用 代謝性副作用(肝臓における薬物代謝能力の個人差によって生じることがある副作用) アルコールを肝臓で代謝する能力が個々に異なるのと同様、薬への代謝能力、免疫力の個人差がもたらす種類の副作用で、一定期間(6か月とか2年とか)の継続的服用後にみられることがある肝機能障害 長期的な時間経過によって徐々に肝臓がダメージを受けるため、副作用に気づきにくいことが多く、定期的に肝機能検査(血液検査)を受けることが推奨される

(参考:薬物性肝障害とは?-薬物性肝障害(厚生労働省)より)

※注意
薬物性肝障害の悪化を防ぐことだけに目的を絞るなら、その時点で薬の服用をストップしてしまえばよいわけですが、薬の服用をストップすることで発作が現れるなど重大な問題が生じる可能性もあります。

そのため、ご自身の判断だけでは危険な場合もあります。まずは医師の判断・診断をもとにして対処してください。

薬物性肝障害の対策で最も重要なのは副作用の早期発見・対応

▼薬物性肝障害の最も典型的な症状

全身症状
  • 倦怠感(だるさ)
  • 発熱
  • 黄疸(おうだん=白目部分や爪、皮膚の一部、尿などにみられる黄変)など
消化器症状
  • 食欲不振
  • 吐き気や嘔吐
  • 腹痛など
皮膚症状
  • 発疹
  • じんましん
  • かゆみなど

(参考:主な症状と具体的な身体所見-薬物性肝障害(厚生労働省)より)

長期的な場合も含め、薬を飲んだあと上記の症状が現れた場合、薬物性肝障害の可能性が考えられます。

いずれも肝機能障害でみられる典型的な症状なので、悪化を防ぐため、薬を服用したあと上記の症状を自覚したら、必ず医療機関で検査や診察を受けるようにしてください。

その際に、

  • 服用した薬の種類
  • 服用後の経過時間(服用の継続期間)

などの情報を正確に伝える必要があります。

また、副作用はできるだけ早く察知・発見し、早期に対応することが重要です。早期察知・発見、早期対処により、最小限の肝障害にとどめることができることが多いです。

逆に、放置はそれだけ危険であることを意味します。

早期察知・発見のポイントを、順にご紹介します。

起こりうる副作用の把握

服用する薬にどのような副作用が現れるか、事前に医師や薬剤師から説明を受けておく(「おくすり手帳」の活用が有効)。

特に抗がん剤、抗糖尿病薬、高脂血症薬、痛風薬、睡眠薬や抗うつ剤などについては肝障害の副作用の可能性が比較的高いので、担当医からの説明を必ず受け、定期的に肝機能検査を受ける必要がある。

服用開始後に注意すべきこと

服用後、上記副作用の兆候がないか注意し、万一副作用を自覚したら、症状を自覚した日時、そのときの状況や自覚症状についてメモをとり、ただちに医療機関で検査・診察を受ける。

用法・用量の遵守

服用を要する薬を飲み忘れた場合(特に会社、外出先などで昼食後の飲み忘れが多い)、忘れた分をあとでまとめて服用することがあっては絶対にならない。

服用時の十分な水分補給(副作用の予防)

舌下薬など、当該薬に関する特別な規定がない限り、薬の服用に際しては十分な水、お湯で服用する。

持病がある患者やアレルギー体質患者の注意事項

特に肝疾患、腎疾患がある患者、およびアレルギー体質の患者は、薬物代謝が悪い、排泄ができない、アレルギー反応などの理由で副作用が現れやすいので、事前に医師からアドバイスを受けておくようにする。

ほかの病院における処方との兼ね合い

すでにほかの病院で処方を受けている場合、おくすり手帳や説明書きなどを新たな医療機関で提示し、医師や薬剤師の判断のもとに新たな薬を服用する必要がある。

血液検査(肝機能検査)を受ける

肝疾患は自覚症状に乏しいため、自覚症状がなくても副作用による肝機能低下が始まっている可能性がある。特に、継続的に薬を服用している患者は、定期的な血液検査を実施することを心がける。

(参考:早期発見と早期対応のポイント-薬物性肝障害(厚生労働省)より)

意外と気づきにくいポイントがいくつか確認できたかと思いますので、お薬を服用する際には、上記ポイントに十分留意していただきたいと思います。

身近だからこそ油断しやすい薬の服用

日本は薬に関する規定が非常に厳しい国です。それだけ他国にくらべれば薬の安全性が高いことは事実です。とはいえ、化学的な薬物を服用する以上、危険がないわけでは決してありません。

日本は数多くの薬が流通し、だれにでも簡単に手に入るため、薬がとても身近な存在になっています。しかし身近だからこそ油断が起こりやすくなります。薬を飲んだあと違和感を覚えたときは、今回のお話を思い出していただければ幸いです。

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