スクワレンの効果と副作用。肝機能への作用の根拠とサプリの安全性とは

深海サメの生きる環境はとても過酷です。彼らは太陽の光も届かない、深い深い海の中で生きています。そこは私たちの住む陸上とは違い、高水圧で低酸素な世界です。

そんな彼らの肝臓は、陸上に住む生き物に比べて巨大です。その肝臓には「肝油」と呼ばれる液体が存在し、肝油の中には「スクワレン」という成分が多く含まれています。

スクワレンは過酷な環境で生きる深海サメの体内で、重要な働きをしているのではないかと考えられています。そして人の体内でも、抗酸化作用や肝機能を保護する作用などがあるのではないかと研究がされています。詳しいことをみていきましょう。

スクワレンは日本人によって発見された栄養成分

「スクワレン」はサメ類の肝臓に多く含まれている油性物質で、その発見者は日本人です。1906年、辻本満丸博士によってサメの肝油の中から発見されました。「スクアレン」と呼ばれることもあります。

深海サメの肝臓は、体重の25%を占めるほど巨大です。(人の肝臓は、体重の2.8%くらいです。)その中には「肝油」と呼ばれる液体の油が存在しています。

サメには他の魚のような、気体の詰まった「浮き袋」という器官がありません。普通、魚は浮き袋の中の気体を利用して浮力を得ています。サメやエイは浮き袋がない替わりに海水よりも比重の軽い油を肝臓に持ち、それを利用して浮力を得ているのです。

そして肝油の中にはスクワレン、アルキルグリセロール、ビタミンA、ビタミンDといった様々な栄養分が含まれています。

スクワレンは、サメの肝油の中でも特に多く含まれている成分です。スクワレン自体は無色透明の液体で、においもありません。

人もスクワレンを合成できる

スクワレンはサメの肝油に多く含まれていますが、実はサメだけでなく多くの動物が持っている成分です。そしてなんと、人の体内でも合成されています。

私たちの体内には、コレステロールの合成に関係するメバロン酸経路という生合成経路があります。スクワレンはこの経路を通じて、アセチルCoAという物質を原料にして合成されています。

合成量は1日800mgくらいなのですが、そのままコレステロールに変化していくために体内に存在するスクワレンの量としてはそれほど多くありません。

また体内で合成できる量は、加齢とともに減っていきます。25歳頃がピークで、その後は少しずつ減少していってしまうのです。

肝油にはスクワレン以外にも様々な栄養が含まれる

肝油の中にスクワレンが発見されたのは1906年ですが、肝油自体が健康に良いということは古くから知られていました。

肝油には次のような成分が含まれています。

  • スクワレン
  • アルキルグリセロール
  • 50種以上もの脂肪酸
  • ビタミンA
  • ビタミンD など

子供の頃、幼稚園で肝油ドロップをもらったことはありませんか。肝油には様々な栄養が含まれていて、そのため戦後の栄養が十分に摂れない時代には、栄養補助のために配られていたそうです。

昔は本物の魚の油から作られていた肝油ドロップですが、現在は肝油からではなくビタミン類だけを使って作られています。ですからスクワレンなどのようなビタミン以外の成分は入っていません。

ちなみに今でも、栄養補助のために使われているそうです。

スクワレンを摂りたくて肝油ドロップを摂取しても、スクワレンは入っていません。もちろん肝油サプリメントには本物の肝油が使われていますから、スクワレンが含まれます。(含有量についてはメーカーに確認してください。)

スクワレンや肝油エキスの持つ作用とは

スクワレンや肝油エキスにはどのような作用があるのでしょうか。まだ人に対して確実に効果があるとわかっていない作用も多いのですが、次のような作用があるのではないかと期待されています。

抗酸化作用

スクワレンには抗酸化作用があるとして報告がされています。

歳を重ねるにつれ体は徐々に酸化されさびていき、それが原因でいろいろな問題が起きるようになります。抗酸化作用は、このような酸化による問題を抑えると期待できます。

肝機能保護作用

スクワレンには肝機能保護作用もあると報告がされています。

肝臓は体の中でも非常に働き者の臓器で、栄養素を代謝したり有害物質を解毒したりといろいろな役割があります。そして気をつけなくてはいけないのは、多少の問題が起きていても何の自覚症状も出ないことです。

肝機能保護作用は、気づかないうちに起きている肝臓の問題に対して改善が期待できます。

免疫調節作用

肝油に含まれるアルキルグリセロールには免疫調節作用があるとされます。

アルキルグリセロールの作用により血小板やマクロファージが活性化され、また白血球や血小板が増加することがわかっています。マクロファージや白血球は免疫機能を担う成分です。

がんに対する作用

肝油由来の成分が抗がん作用を示すという報告があります。

またデンマークにおいて子宮がん患者に対して行われた放射線治療で、その際に現れた副作用がアルキルグリセロールで軽減したという研究があります。(ただし他のがん患者も対象にした研究でははっきりとした効果が出ませんでした。)

スカンジナビアでは40年以上、がんや皮膚疾患にサメ肝油エキスが利用されてきたそうです。何らかの効果は期待できるのかもしれません。

慢性肝炎に対する作用

B型慢性肝炎患者、C型慢性肝炎患者が深海サメ肝油エキスを摂取したところ、症状が改善されたという報告があります。

このようにスクワレンや肝油エキスにはいろいろな作用があると期待されます。

ただしこれらの作用に対する研究は、まだ十分にされているとは言えない状態です。いろいろな効果は期待されていますが、今度さらに研究がされていけばもっとはっきりとしたことがわかってくるでしょう。

スクワレンを摂取するためには?

スクワレンはサメの肝油に多く含まれています。特に深海に住むアイザメの肝油にはスクワレンが豊富に含まれていて、他の深海サメの肝油に比べても良質とされます。

スクワレンは肝油以外にも、オリーブオイルやアボカド油などといった食品にも含まれます。ただ肝油に比べるとスクワレンの含有量はそれほど多くないため、これらの食品から摂ることは難しいでしょう。

そのような場合には、サプリメントで摂るようにしてもよいかもしれません。ただしメーカーによって内容に多少の違いがあるため、確認してから買うようにしてください。

スクワレンの副作用。肺炎症例があるが因果関係ははっきりしていない

摂取のしかたを守り、適切に使用する場合には特に副作用などはありません。

ただし多量に摂取した場合には、コレステロール値や中性脂肪値が上昇したという報告があります。摂取のしかたを守って使用している場合には問題ないと思われますから、使い方は守るようにしましょう。

因果関係がはっきりとはしていないものの、肝油エキスを使用中に肺炎になってしまったという症例もあるようです。肝油エキスに原因があるのかどうかは明らかではありませんが、念のため注意しておきましょう。

一般的に、深海サメの肝油にはスクワレンが多く含まれているとされます。ただし全ての深海サメの肝油に多くのスクワレンが含まれているというわけでもありません。肝油サプリを買うときには注意してください。

スクワレンとスクワラン、その違いとは?

「スクワレン」という成分の名前は、もしかするとあまり聞いたことがなかったかもしれません。しかし化粧品に使われる「スクワラン」なら、特に女性は聞いたことがあるのではないでしょうか。

スクワレンとスクワランはよく似た名前ですが、少しだけ違いがあります。スクワレンに水素を添加して、化学的に安定化させたものがスクワランになるのです。

スクワレンはとても酸化されやすい物質です。サプリメントとして使う場合には、カプセル化して酸化を防ぐように作られています。

しかし化粧品などに使う場合には、スクワレンのままではどんどん酸化していってしまいます。それを防ぐために水素を添加したものが、スクワランなのです。水素を添加してスクワランになると安定性が高くなり、酸化してしまうことはなくなります。

スクワランなら化粧品などとして皮膚の上につけても、安定しているため問題ありません。そのため乳液やクリームなどを作る際には、スクワランが使われます。スクワランは皮膚への浸透性がとても高い成分です。

このように深海サメの肝油に含まれるスクワレンは、抗酸化作用や肝臓保護作用など様々な作用があるとして研究が行われています。

現時点では人に対して確実に効果があると言える研究結果は出ていないのですが、今後いろいろな研究が行われて良い結果が出ることが期待されてます。

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