【総蛋白】低いと肝臓が危険な状態?血液検査でわかる数値の意味とは
血中のたんぱく質にはどれだけの数があるかご存知でしょうか?なんと、100種類以上ものたんぱく質が私たちに流れる血液中に存在しています。これらすべてをひっくるめて「総蛋白」(そうたんぱく)と呼びます。
総蛋白とはいっても、肝機能とのかかわり、そしてアルブミンとグロブリンについて知っておく必要があります。アルブミンについてはこちらをご覧ください。
それでは、肝機能の重要性がわかる「総蛋白」についてお話ししていきましょう。
総蛋白とは?なぜ肝臓とかかわりが大きいのか
総蛋白というといかにも医学的なにおいがする難しい物質のように感じられるかもしれませんが、早い話が「たんぱく質」のことです。厳密には冒頭で触れた血中に含まれているたんぱく質のすべてです。
食事から摂取するたんぱく質の働き
そもそもたんぱく質とはいったい何者なのかというと、これを細かくお話しするとたいへんなことになってしまうので簡単にまとめますと、「アミノ酸(20種類ほど)の集合体」と考えて問題ありません。
ではアミノ酸とは何か、という話になるとキリがありませんので、アミノ酸にしてもたんぱく質にしても、皮膚や骨、細胞、酵素など、身体の基底となる物質・栄養素であると解釈してください。
みなさんもご存じかと思いますが、たんぱく質は食品から摂取することができる物質です。物質というよりも、栄養素といったほうが適当かもしれませんね。小中学でも学習されたかと思います。
私たちの身体を構築する三大栄養素の1つであるたんぱく質は、肉、魚、卵、大豆、乳製品などに多く含まれることはよく知られていますが、ちょっと復習がてら、たんぱく質を多く含む食材をご紹介しておきましょう。
▼たんぱく質を豊富に含む食材(各種上位3食材、各100gあたり含有量)
肉類 | 生ハム(24.0g)、鶏ささみ(23.0g)、ローストビーフ(21.7g) |
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魚類 | いわし丸干し(32.8g)、いくら(32.6g)、焼きたらこ(28.6g) |
卵類(非魚介) | 卵黄(16.5g)、ピータン(13.7g)、ゆで卵(12.9g) |
大豆製品 | きなこ(35.5g)、油揚げ(18.6g)、納豆(16.5g) |
乳製品 | パルメザンチーズ(44.0g)、脱脂粉乳(34.0g)、プロセスチーズ(22.7g) |
という具合に、たんぱく質を摂取したい、摂取する必要があるというときには、上記の食材を常識の範囲で摂取していただければよろしいかと思います。
もちろん、食品からアミノ酸(要はたんぱく質)を摂取すること自体は健康な身体をつくり、維持する上で非常に重要ではあります。その意味で、上記は大いに参考にしていただきたいデータではあります。
ただ、実は「総蛋白」に関しては、上記の食品、これに含まれるたんぱく質の量などは、基本的に関係ないのです。ところが、「総蛋白と肝臓の関係」を知る上では対照的に有効なデータになります。
総蛋白は肝細胞と密接にかかわる!食事と直接的にかかわらない
食事から摂取したたんぱく質が血中に入り込んで、総蛋白が上昇するのであれば、上記データと総蛋白は直接的な関係があることになります。しかし実際にはそうではありません。
このプロセスでたんぱく質が分解されると、その断片は「ペプチド」と呼ばれる物質になり、ペプチドがさらに分解されると、再びアミノ酸となります。
血中のアミノ酸は肝臓に運ばれて、再びたんぱく質が構築されます。このときできるたんぱく質が、私たちの健康を保つ上で極めて重要なアルブミンをはじめとする主要なたんぱく質です。
ところで、「総蛋白」というのは、「血中にあるたんぱく質のすべて」と定義されますが、実は、総蛋白の主成分となるのが、肝臓でつくられたアルブミンや、リンパ節などでつくられるグロブリンです。
つまり、食事によって摂取したたんぱく質自体は、総蛋白とは、直接的にはほぼ無関係であるといえるのです。無論、総蛋白の原料となるのは摂取したたんぱく質ですから、間接的には大いに関係します。
ただ、総蛋白が直接影響を受けるのは、食事ではなく、特にアルブミンを生成する肝機能、つまりは「肝細胞」のほうであるといえます。
これまでいろいろなところで「肝臓は大事ですよ!」と言われてきたのは、こういう理由も含まれているんですね。
総蛋白は血液検査でわかる!総蛋白の正常範囲は?
総蛋白は、その他の肝機能値と同じく、血液検査を実施することで把握することができます。一般的な血液検査でも項目に含まれることが多く、気にして見てみると、発見できる確率は高いです。
総蛋白は、主にアルブミンとグロブリンから成るというお話しをしましたが、総蛋白数自体だけでなく、アルブミン、グロブリンとの比率も正常値・基準値の判定材料になります。
アルブミンとグロブリンの比を「A/G比」と呼びますが、これはアルブミン値をA、グロブリン値をGとするときの「A÷G」の割り算の計算結果です。
- 総蛋白の正常範囲(※)
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- 総蛋白・・・6.7~8.3g/dL、アルブミン・・・3.8~5.3g/dL
- A/G比・・・1.0≦A/G≦2.0、A≧4.0g/dL
※注意・・・検査方法により数値は異なり、医療機関によって正常範囲、基準値の解釈は異なることがあります。
総蛋白絡みでなぜ2とおりの検査方法があるのかというと、これはやはり、総蛋白のメインとなる成分アルブミンとグロブリンのどちらもが健康にとって重要な意味を持つからです。
というのも、たとえば「総蛋白」が正常であったとしても、アルブミンとグロブリンのバランス(比率)が保たれていなければ、肝機能のどこかに異常が起こっている可能性があります。
逆に、A/G比が正常であったとしても、総蛋白の数値に異常があってはいけませんよね・・・という具合に、数と比率のどちらも正しい必要があることから、2ウェイの検査が必要になる場合があるのです。
総蛋白の異常は、肝機能の低下によって起こりやすくなります。食事の問題で総蛋白に異常が起こらないとはいえませんが、食事(飲酒含む)の問題で肝機能が低下することによる異常がより一般的です。
では、総蛋白に異常が見られるとき、何が悪く、どんな悪いことを引き起こすのかというと・・・
総蛋白に異常が起こる理由は?そしてどんな悪影響が現れる?
アルブミンは肝臓でつくられますが、グロブリンはリンパ球や脾臓(ひぞう)などでつくられます。なじみは薄い臓器かもしれませんが、脾臓は血液、免疫と関連が深い、小さいながら実は重要な臓器です。
総蛋白に異常が起こるということは、アルブミンやグロブリンの数に異常が見られるということですから、肝機能の低下や免疫の問題が原因になっていることが原因として考えられます。
- 総蛋白に異常の原因
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- アルブミン異常(減少)・・・主に肝疾患・肝機能障害、腎障害
- グロブリン異常(増加)・・・悪性腫瘍、膠原病(こうげんびょう)などの自己免疫疾患
ということは、総蛋白異常による悪影響は、肝疾患・肝機能障害、腎障害、がん、自己免疫疾患など、(症状により)重篤な疾患による悪影響とほぼ同義であることになります。
ただ、肝機能障害に関しては、疾患ではなく「栄養不足」など、食生活に問題がある可能性もあります。とはいえ、疾患でないからよいというものでもありませんので、早急の改善が必要であることは疾患と同様です。
炎症反応による総蛋白異常の可能性も
それと、少し特殊な例といいますか、一部上記の原因と重なるところもあるのですが、「炎症反応」と呼ばれる生体反応によって、総蛋白数が急激に増減することがあります。
これは、細胞破壊や骨折など、重篤な疾患(上記のがんや膠原病などに相当)、重度の大けがによってしばしば起こる反応です。中でも「多発性骨髄腫(たはつせいこつずいしゅ)」などは炎症反応が顕著です。
そういった意味では、総蛋白と炎症反応のセットで病気の「マーカー」としての機能も果たすともいえるのです。
ですから、総蛋白の異常というのは、そうそう起こることではない反面、けがなど、意外な原因によって引き起こされることもあることを頭に入れておくと、いざというとき少し安心ですよね。
もちろんちょっとした炎症ではこんなトラブルが起こることはありません。炎症の程度は簡単に判断できるものではないですが、早い話、「激しい痛み」があるときには総蛋白変動も考えられます。
実は筆者にも経験があるのですが(腰痛他、けが、かぜなどが重なったとき)、お医者さんから「総蛋白が高いですね」などと宣告されたら、ちょっとびっくりしますものね・・・
まずは「何が起こっているのか」を把握!総蛋白異常時の対処
総蛋白の異常は、上記のとおりさまざまな原因が考えられます。肝機能の問題、腎疾患や重篤な疾患、栄養不良、痛みなど、原因は非常に多様です。
ですから総蛋白に異常が見られた際には、まずは「自分の身体で今何が起こっているのか」を把握することが必要になります。その後、冷静にしかるべき対処へと移行することが求められます。
多少正常範囲を超えたということなら、筆者も経験したとおり、痛みや風邪など、症状以上に思いのほか炎症が強いときには起こることもあるようですが、大きな数値異常となると、看過は非常に危険です。
万一そういう不慮の事態に遭遇したら、これはもうお医者さんの力を借りるしかありませんので、肝機能検査など、医療機関でしかるべき詳細な検査をしていただきたいと思います。
また、軽度肝機能障害による肝機能の低下でアルブミンが十分に生成されないケースでも、低アルブミン血症を発症しますので、総蛋白異常の可能性が考えられます。
さらに肝炎の場合は痛みがなくても炎症反応が見られることがありますので、こちらも総蛋白異常が起こり得ます。肝炎では、AST(GOT)、ALT(GPT)などの肝機能値とも照合して、お医者さんに相談してください。
まずは肝機能のコントロールにより総蛋白を管理する!
総蛋白は、肝機能と密接にかかわっています。とはいえ、総蛋白は肝臓以外とも密接にかかわっているということを忘れるべきではありません。
たんぱく質は私たちの身体の基底となるべき栄養素です。それはすなわち、私たちの健康の基底となるべき栄養素でもあるのです。だからこそ、肝機能をはじめさまざまな情報が総蛋白という数値に反映されるのです。
大きな問題がなければそこまで気にする必要はありませんが、血液検査を実施したときくらいは、ちょっと総蛋白の数値をながめてみてもいいかもしれませんね。