【脂肪肝とは】肝臓はどんな状態?特に症状がなくたって放置は危険!

健康診断で「脂肪肝ですね」と言われたことはありませんか?脂肪肝だと言われたけれど、たいした病気じゃないから問題ないなんて思っていませんか?

そんなことはありません。確かに少し前まで、脂肪肝は特に治療をする必要はないと考えられてきました。

しかし最近、脂肪肝は肝硬変や肝がんへと進行することもある危険な病気とわかってきたのです。放っておいたりしては絶対にダメなのです!

「脂肪肝」とは肝臓に中性脂肪が溜まり過ぎた状態

「脂肪肝」という言葉は聞いたことがあるかと思います。ただ、脂肪肝は具体的にどのような状態なのか、ご存知ですか?

肝臓を構成している細胞を「肝細胞」と言いますが、脂肪肝とは、この肝細胞に過剰に中性脂肪が溜まってしまった状態です。約30%以上の肝細胞に中性脂肪が溜まると「脂肪肝」と診断されます。

肝臓には様々な働きがありますが、そのひとつが食事から摂り過ぎて使い切れなかったエネルギーを、エネルギー源として肝臓に貯蔵しておくことです。肝臓には元々、余った中性脂肪を蓄えておく働きがあるのです。

健康な人の肝臓でも、重量の3−5%くらいは中性脂肪があります。摂取エネルギーと消費エネルギーのバランスがとれていれば、それ以上肝臓に中性脂肪が溜まり過ぎてしまうことはありません。

しかしこのバランスが崩れて摂取エネルギーが増え過ぎてしまうと、肝臓には過剰に中性脂肪が溜まっていってしまいます。中性脂肪が溜まり過ぎ、肝細胞の中に脂肪の小さな塊(脂肪滴)がたくさん存在するようになったのが「脂肪肝」なのです。

超音波検査(エコー検査)をすると、健康な肝臓と脂肪肝とでは見え方が違ってきます。肝臓に脂肪が溜まってしまっていると健康な肝臓とは違って白っぽく見えるようになり、その結果から簡単に診断できてしまいます。

つまり「脂肪肝」とは、肝臓がフォアグラ状態になっているってことなんです。肝臓は健康なときよりも、ずっしりと重たくなっています。

飲み過ぎ食べ過ぎのせいで肝臓に脂肪がどんどん溜まっていく

肝臓に中性脂肪が溜まり過ぎてしまう原因は、飲み過ぎや食べ過ぎです。

食事から摂取したエネルギーをしっかり消費しきれていれば、肝臓に中性脂肪が溜まることはありません。消費しきれなかったエネルギーが少しずつ、中性脂肪として肝臓に溜まっていってしまうのです。

脂肪肝と診断されたなら、まず今までの生活習慣を見直してみてください。毎晩お酒を飲んでいたり、ついつい食事やおやつを食べ過ぎていたり、普段から運動不足だったりと、自分でも心当たりがあるのではないでしょうか。

それらの生活習慣を少し見直すことで、脂肪肝は改善されてきます。脂肪肝と診断されてもすぐに今までの生活を改めれば、改善はさせられるのです。しかし悪化して肝硬変や肝がんなどになってしまってからでは、もう手遅れになってしまいます。

手遅れになってから後悔しても遅すぎます。健康診断で指摘をされたら、すぐに普段の生活を見直してみましょう。

肝臓に中性脂肪が溜まっても、自覚症状はほとんどなし

脂肪肝になると、どんな問題が起きるのでしょうか?

少し前まで、脂肪肝は肝臓に中性脂肪が溜まっているだけで、特に心配する必要はない病気だと考えられていました。しかし最近になって、脂肪肝を放置してしまうと肝硬変や肝がんになってしまう危険があることがわかってきたのです。

肝硬変や肝がんにまで進行してしまうと、もう肝臓は元に戻らず、命にも関わる状態になってしまいます。

脂肪肝とは、肝細胞の中に中性脂肪の塊がどんどん占領をしていった状態です。このような状態が続くと肝細胞は風船のように大きくなり、隣同士の細胞を押し合うことになります。するとその間を流れる毛細血管は圧迫され、血流障害が起きてしまいます。

肝細胞は血液から酸素や栄養素をもらっています。しかし血流障害が起きてしまうと、肝細胞には酸素や栄養素が十分にいかなくなってしまいます。

その結果、肝臓の機能は低下していってしまうのです。肝細胞が炎症を起こしてしまうこともあります。

しかし困ったことに、そのような異常が起こっていても特に自覚症状は現れません。肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれますが、自分の肝臓に問題が起きていても、自分自身が自覚できるような症状はなかなか現れないのです。

肝臓の異常に気づくには、検査を受けるしかありません。そして検査で正常ではない結果が出たならば、そのまま放置してしまわないことが重要なのです。

ただ、脂肪肝のために次のような症状が起きていることもあります。

  • 疲れやすい
  • 体がだるい、重い
  • 頭がボーッとする
  • 食後にすぐ眠くなる など

このような症状があっても、忙しさや年齢のせいくらいにしか思わないかもしれません。しかし脂肪肝が改善されるとこれらの症状もなくなり、初めてこれが脂肪肝が原因で起きていた症状だったということに気がつくようなのです。

最近、脂肪肝と診断される人は増えてきて、人間ドック受診者の4人に1人が脂肪肝だったそうです(2011年調査)。あなたもなってしまっているかもしれません。

脂肪肝には2タイプあり!お酒をたくさん飲むか、飲まないか

脂肪肝は大きく2つのタイプに分けられます。それはお酒をたくさん飲むか、それとも飲まないかです。お酒をたくさん飲む場合には「アルコール性脂肪肝」、お酒をあまり飲まない場合には「非アルコール性脂肪肝」とされます。

お酒をたくさん飲む人は肝臓を悪くするというイメージがあると思いますが、実はお酒をそれほど飲まない人でも肝臓を悪くしてしまうことがあるのです。肝臓のことをそれほど意識していない分、気をつけなくてはいけません。

アルコール性脂肪肝

「アルコール性脂肪肝」は、長年大量に飲酒を続けたことでなってしまった脂肪肝です。脂肪肝と診断されてもそのまま同じ生活を続けてしまうと、肝臓はさらにダメージを受け続けます。

そしてそのままでは「アルコール性肝炎」「アルコール性肝線維症」「アルコール性肝硬変」へと進行してしまう恐れがあります。

アルコール性脂肪肝の治療の基本は、なんと言ってもお酒を止めることです。お酒を止めれば、肝機能はまた元に戻ってきます。

ただお酒が大好きで、今まで毎晩のように大量に飲んでいた人にとっては、突然お酒を止めなくてはいけないというのは非常に難しいことでしょう。このような人は、もしかするとアルコール依存症になってしまっているかもしれません。

自分の意思でどうしても止められないという場合には、飲酒を止めるための薬もあります。一度医師に相談してみるとよいでしょう。

ところで、肝臓に影響を与えてしまう過剰な飲酒とはどのくらいの量なのでしょう。これは日本酒に換算して毎日3合以上の飲酒を、5年間続けてきた場合を指します。

女性の場合には、男性よりもアルコールによるダメージを受けやすくなります。そのためこの2/3の量、2合を毎日続けた場合を目安にします。

飲酒が原因で起きる肝臓の病気を、全てまとめて「アルコール性肝障害」と言います。日本人は欧米人に比べて、同じ量の飲酒をしていたとしてもアルコール性肝障害になりやすいとされます。

飲酒をすると、アルコールは肝臓の働きによってアセトアルデヒドに分解されます。その後は酢酸となって、最終的には水と二酸化炭素となって体の外へと排出されます。

このアセトアルデヒドが肝臓を傷つけ、肝機能を低下させてしまう元凶です。日本人は欧米人よりもアセトアルデヒドを分解する力が弱く、そのため欧米人よりもアルコール性肝障害になりやすいのです。

最近は女性の飲酒量も増え、アルコール性肝障害になってしまう女性も増えてきています。同じ飲酒量でも、男性より女性のほうが肝臓に影響が出やすいため、気をつけるようにしましょう。

非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLDナッフルディー)

お酒は飲まない、飲んでもそれほどたくさん飲むわけではないという人も脂肪肝になってしまうことがあります。それが「非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLDナッフルディー)」です。

検査で脂肪肝があると診断されたものの過剰な飲酒の習慣はないという場合には、非アルコール性脂肪性肝疾患と診断されます。

この原因は食べ過ぎや運動不足、肥満、糖尿病などです。メタボリックシンドロームの傾向があるため、動脈硬化、心筋梗塞といった生活習慣病にもなりやすくなります。

非アルコール性脂肪性肝疾患の多くは「非アルコール性脂肪肝(NAFLナッフル)」です。この場合には肝硬変や肝がんなどになってしまう心配はそれほどないと考えられます。(生活習慣病には注意が必要です。)

しかし非アルコール性脂肪性肝疾患の一部は「非アルコール性脂肪性肝炎(NASHナッシュ)」になります。NASHはとても危険なタイプの肝臓病で、進行すると肝硬変や肝がんになってしまうのです。

NASHはアルコール性脂肪肝よりも問題が大きいとされます。進行がはやく、診断されてから6−7年で肝硬変になってしまうこともあるのです。

NASHになっていても自覚症状はないため、診断時にはすでにかなり進行しているということもあります。

なぜNASHになってしまうのかなどについては、まだよくわかっていないこともあります。ただNASHになりやすい遺伝子が存在していることがわかってきています。これからもっと詳しいことがわかるようになるでしょう。

非アルコール性脂肪性肝疾患の治療は、まず生活習慣の改善です。食べ過ぎ、運動不足、肥満などを解消することで肝機能は元に戻ってきます。

普段からお酒をよく飲む人は、健康診断での肝機能検査の結果を気にしていると思います。ですからアルコール性脂肪肝で肝機能が落ちていると言われれば、なんとかしなくてはと考えられると思います。

しかし普段それほどお酒を飲まない人は、肝臓が悪いと言われても自覚が持てないかもしれません。お酒をそれほど飲まなくても肝臓が悪くなることがあること、また場合によっては肝硬変や肝がんの危険もあることを知っておいてください。

「ただの脂肪肝」と甘くみてしまってはいけませんね。生活習慣を改善することで肝機能は戻ってきますから、放っておいたりせずちゃんと行動をしていきましょう。
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