病院で受ける脂肪肝の治療。悪化させないための治療目標とは

脂肪肝(肝組織の30%以上に過剰な脂肪が付着する肝障害)の治療というと、どちらかといえば自宅で行う治療というイメージがあるかもしれませんが、脂肪肝には放置するとたいへんなことになる種類もあります。

そういったケースでは、自宅で行う治療(食事療法、運動療法など)は補助的治療とし、病院での治療をメインに実施していくという考え方が重要になってきます。

今回は「病院で行う脂肪肝の治療」をテーマにお話しします。

脂肪肝の治療を病院で受けるには:治療を行う病院、診療科の選び方

脂肪肝を病院で治療することになる経緯として考えうるのは、検査の結果、

  • 担当医から病院での治療を打診されたケース
  • 打診はなかったけれど自発的に病院での治療を選択するケース

このふたつでしょう。

脂肪肝の診断を下したその病院でそのまま治療に移行することも可能ですが、ご自身の判断で、病院での専門的な治療をした方がよいと考えたケースでは、「どこで治療すればよいか」がまず問題になります。

脂肪肝治療は、軽度な症状であれば一般的な内科でも十分可能ですが、「これ以上脂肪肝を悪化させるわけにはいかない」という状況では、専門的な診療科を選択したほうがよいのです。

肝臓の専門的治療には「肝臓外来」などと呼ばれる診療科がベターです。さらには「脂肪肝外来」なる診療科を設置している病院もあります。今では肝臓専門の医療機関も増えてきているんです。

ですからまずはかかりつけのお医者さんに相談してみて、紹介状を書いてもらったり、あるいは「こういう病院がありますよ」といった情報を入手するところからスタートしてもよいでしょう。

肝機能検査(一般の血液検査)だけならかかりつけの病院で実施しても問題ありませんので、その検査結果を肝臓外来や脂肪肝外来の病院に提出する形でもよいのではないしょうか。

ちなみに、肝機能検査における脂肪肝の検査項目は

などを参照することが多いです。

肝臓外来や脂肪肝外来で専門的治療を受ける際には、上記の検査結果があれば持参してください。

病院での脂肪肝治療ではどんな治療が行われるのか

病院での脂肪肝治療の方針はすでに確立されていますので、現状どういったタイプの脂肪肝であるかをはっきりさせ、そのタイプによって治療の方針を決定づけることになります。

脂肪肝は、肝疾患の大きなくくりのなかでは

  • 非アルコール性脂肪(NAFLD/ナッフルディー)
  • アルコール性脂肪肝

とにわかれます。このそれぞれで治療方法が異なるのが一般的です。

病院におけるNAFLDの治療方法の例

肝障害というと、アルコールとの関係が密接で、アルコールは肝臓にとって諸悪の根源といったイメージがありますが、脂肪肝の重症度でいうと、非アルコール性脂肪肝・NAFLDのほうが重症とされることが多いです。

というのもNAFLDの場合、肝組織が線維化して将来肝硬変へとステップアップするリスクがより高いと考えられる種類もあるからです。

NAFLDから肝炎へとステージ進行すると、非常に危険な肝炎とみなされます。

上記で、「放置したらたいへんなことになる脂肪肝」と表現したのは、まさにこのタイプの脂肪肝です。ちなみに、NAFLDから進行した肝炎をNASH(ナッシュ=非アルコール性脂肪性肝炎)と呼びます。

NASHへのステージ進行の可能性が高い脂肪肝の治療
  • 治療の目標・・・肥満、2型糖尿病、高血圧、脂質異常症等合併症に対する治療ならびに予防
  • 服用する薬物・・・ウルソデオキシコール酸(UDCA)、ビタミンEやビタミンC、あるいはポリエンホスファジルコリン(販売名:EPL)等の投与。糖尿病治療薬pioglitazone(販売名:アクトス)が奏効する症例あり

(参考:NAFLD・NASHではどんな治療を行いますか?-NAFLD・NASH外来(医療法人社団Veritas Medical Partners麻布医院))

一方で、NAFLDのうちの90%はNASHへの移行のリスクが現状では低い分類の脂肪肝に属します。もちろんあくまでも現状でのリスクなので、これ以上悪化させないための治療は重要です。

NASHへの移行リスクが現状低いタイプの非アルコール性脂肪肝を「単純性脂肪肝」と呼びます。とはいえ、リスクが低いだけで、実際にはNASHへと移行した例もある脂肪肝です。

単純性脂肪肝は、メタボリック症候群(太りすぎ、糖質・脂質の取りすぎなど)に起因している、あるいは糖尿病の合併症として現れることが多いので、これら生活習慣病の治療や予防をベースとした治療が必要です。

単純性脂肪肝の治療方法の例
    治療の目標・・・メタボリックシンドローム、高血圧、糖尿病など生活習慣病を治療・予防し、NASHへの移行を食い止める

(参考:非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)-KOMPAS(慶應義塾大学病院医療・健康情報サイト))

NASHへの移行のリスクの高低にかかわらず、自宅での食事療法や運動療法なども併用される必要があります。自宅での脂肪肝治療については、病院サイドからも厳密な指導があるかと思います。

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脂肪肝と診断されたら治療開始!自分で意識すべき運動療法・食事療法

油断はしないで!脂肪肝は早めの対処が超重要

今回は、脂肪肝の治療方法についてお話してきました。脂肪肝の場合、肝炎や肝硬変などにくらべると、比較的軽症であると考えられがちです。もちろん肝炎や肝硬変にくらべれば確かに軽症ではあります。

ただし、軽症だからといって放置してよいというものでは決してありません。小さな傷口を治療もせず放置すれば、化膿したりばい菌が入ったりしてたいへんなことになります。リスクは脂肪肝もまったく同じです。

そのことを踏まえつつ、脂肪肝になってしまったら、油断だけは絶対にせず、早めの対処を絶対視していただきたいと思います。また、そのために医療機関を利用することも思われている以上に有効です。

その意味でも、今回のお話をぜひご参考いただきたいと思います。

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