脂肪肝の改善方法。取り組むべき3ステップの治し方

脂肪肝の治療には、病院主導で実施する治療法と、病院は経由せず自力で改善する方法とがあります。比較的軽度の脂肪肝であれば自力でも十分改善可能ですので、ここではその方法についてお話します。

自分で脂肪肝を改善するための方法としてまず思い浮かぶのが「食事療法」でしょう。そして「運動療法」が有効であることもよく知られます。ほかにもまだあります。

今回は「脂肪肝は自分で改善!」がテーマです。

ちょっと飲み過ぎ(食べ過ぎ)ちゃったなぁ…と思う機会が多いあなたは必見ですよ。

脂肪肝改善のために:1.まず「脂肪肝改善宣言」を公言する!

何らかの病気にかかった場合、なんとかして改善するためにいろいろ工夫を凝らすわけですが、多くは、その病気を改善するに際して「黙々とひたすら治療」というスタンスになるでしょう。

病気を治すことは、確かにその病気の重さによってはその人の人生を大きく左右することになるかもしれませんが、患者さんの側でいちいち周知するようなものでもありません。宣言しなくたって治るものは治ります。

ではなぜ、ここでわざわざ「脂肪肝改善宣言」などとして脂肪肝からの脱却を周知することをおすすめしているのかというと、そこにはちゃんとワケがあるからです。というのも、脂肪肝は体重とのかかわりが非常に強い!…からなのです。

脂肪肝と呼ばれる肝障害の多くは、血液検査で

の数値が高いことで疑われ、またγGTP(ガンマGTP)の数値が高いときは、「アルコール性脂肪肝」と呼ばれる飲酒習慣が原因の脂肪肝の可能性が高いです。

重要なことは、アルコール性であれ非アルコール性であれ、「(軽度な)脂肪肝」の場合、体重を減らすことですぐに脂肪肝を脱却することができる、という事実です。(個人差はありますが…)

アルコール性脂肪肝の場合は、広義の「食事療法」になるかもしれませんが、とりあえずアルコールの量をコントロールする必要があります。

お酒が好きな人にとっては飲酒量をコントロールするのは難しいですね。

だからこそ、「宣言」して飲酒量を控えることを周囲に公言することで、ご家族や職場の人などの周囲の協力を得やすくなるのです。

とすると、食事療法にも同じことがいえますよね。

脂肪肝にとって糖質(炭水化物)や脂質の過剰摂取は大敵です。ALT(GPT)の数値は中性脂肪が増加することで上昇しやすくなりますので、糖質も脂質も(特に糖質!)過剰摂取は言語道断なのです。

宣言して周知したからといって、物理的な改善が期待されるわけではもちろんありません。ただ、人間にとって最大の幸せである「おいしいものを食べる・飲む」ことを制限しなければならない特殊な事情です。

こういうときは、あえて「脂肪肝改善宣言」を周知して脂肪肝からの脱却を試みるのも悪くないでしょう。

体重さえ落とせば脂肪肝からの脱却は比較的容易です。しかしその「体重を落とすこと」が難題です。

難題打破のためには、医学的根拠がない言動をあえて採用するのもアリでしょう。つまり、基本的には「ダイエットしていることを公表する」というよくあるスタンスで脂肪肝脱却にトライしましょう、というお話です。

脂肪肝改善のために:2.脱・脂肪肝には欠かせない食事療法

方法などというと少々大げさに聞こえるかもしれませんが、こちらもあえて、このように表現したいと思います。なぜかというと、今回テーマとしている「脂肪肝からの脱却」は、「ダイエット」のお話でもあるからです。

ダイエットの成功がどれだけ難しいかということは、おそらくみなさんもよくご存知かと思います。ダイエットを成功させることは、「摂取したカロリーよりも多くのカロリーを消費する」という単純な話ではありません。

一時的に体重が減っても、元の生活習慣に戻ればすぐに体重も元通りになるでしょう。

脂肪肝が一時的に改善しても、体重のゲインに比例して、肝機能の数値もゲインすることになるのです。

正直者と検査数値はウソをつきません。まずはご自身がウソをつかず、徹底的に理詰めでのダイエットを試みることが大切です。

脂肪肝は、すでに健康を害している状況です。自分でやると決めたなら、自分に厳しくあるべきです。

食事から見直して脂肪肝脱却をはかるには

食わないで体重を落とすのは健康のためにはかえってよくない!という意見はよく耳にします。確かにそのとおりなのですが、原理的には「食べなければ太らない」ことも間違いありません。

そこをあえて「食べる(太るかもしれない)」という方向で主張する以上は、そこに何らかの「対案」がなければなりません。つまり、食べても体重を減らすことができる「方法論」が必要になります。

ダイエットの方法に関しては、多くの人がいろいろな意見をお持ちかと思いますが、上の章でお話したことは、「マインド」の部分でした。ここもまた「マインド」の部分をメインにお話します。

まずは、すでに糖尿病や、基準値をはるかに超えた継続的高血圧の持病がある方は、食事療法はもちろん必要ですが、それ以前に「自分で治す」という発想は捨ててください。

糖尿病や高血圧の継続は、もちろん多くは生活習慣に問題がある疾患ですが、優先順位をつけるなら、脂肪肝よりも糖尿病や高血圧の治療が先です。こちらが改善されれば、脂肪肝も改善することが多いからです。

どう考えてもすでに深刻な状況に至っている人は、病院でしっかりと治療をしましょう。

糖尿病もないし高血圧もないという人の比較的軽度な脂肪肝の場合、ちょっと思い返していただきたいのですが…

「いつもよりも少し食べすぎてしまったかな、飲みすぎてしまったかな…」というシチュエーションがどのくらいの頻度で発生するか。

まずはこの部分に着目します。

これをゼロにすることが最大の目標です!人間は食べて飲まなければ死んでしまいます。しかし食べすぎて飲みすぎなければ死んでしまう人間などこの世に1人として存在しません。

食べすぎた分、飲みすぎた分の多くが、肝臓への負担となり、結果的に脂肪肝を発症させてしまっています。

しかし、「私は毎日食べすぎて飲みすぎているんです…(泣)」という方、泣かなくてもまったく大丈夫です。月1回の食べすぎ、飲みすぎが脂肪肝を招いてしまう人にくらべれば、よほど脂肪肝の脱却は簡単です。

難しく考えず、次のものを全体的に減らしてください。

  • 毎日の食事量
  • 飲酒量
  • ジュースを飲む量
  • 間食

目標を決めたらそれ以上は米ひと粒、水やお茶以外の液体1滴も口にしないでください。

食べるな、飲むなとは言っていません。コントロールできそうな量をご自身で決めていただき、その量を守っていただければよいのです。まずはひと月お試しください。それから肝臓の数値を検査してみてください。

これは「チャレンジ」ではなく「トライ」です。もちろん自分でできる比較的軽度な脂肪肝だからこそできるトライです。トライしなければ良いことは何も起こりません。

トライが「何か良いこと」を生むのです。軽度脂肪肝が悪化すれば、自分でできる改善へのトライさえ不可能な脂肪肝になってしまいます。そのあとに待っているのは、脂肪肝の次のステージ「肝炎」です。

次に、そんなにたくさんの量を食べたり飲んだりしてはいない!という人、こちらは少々厄介かもしれませんね。

まずはやっぱり食べすぎ、飲みすぎ禁止令の「徹底」です。

肝臓は体質によって機能が異なる臓器、つまりは個人差があります。肝機能が盛んな人は水以上にお酒を飲めるのにおちょこ1杯でもアウトになってしまう人もいるのは、そういった事情も関係しています。

ですから、月1回の食べすぎ、飲みすぎさえ断絶するといった厳しい条件までしっかり踏み込んで、厳密に約束を守ってみてください。

それでも効果が出なかったら…

ここではじめて「栄養素」にも着目してみましょう。つまり、糖質や脂質の摂取を控えるのです。

飲食の量はそれほどでもないのに脂肪肝の診断が下された人は、肝機能がそれほど活発ではない可能性が考えられます。

ほかの人と同じだけの量を食べたり飲んだりすることができない人(肝臓)なのかもしれません。その場合、糖質(炭水化物、アルコール)や脂質の摂取を気持ち控えて、やはりひと月くらい生活してみましょう。

糖質とか脂質とか言われても…と、難しく感じられる人もいると思いますが、糖質制限のイメージとしては、ご飯、パン、麺類などの主食とお酒を減らし、おかずの比重を大きくするイメージです。

そしておかずも炭水化物と脂質は少なめにして、野菜中心の食生活を心がけましょう!という考え方が、糖質・脂質の制限のイメージになります。

アルコール摂取量については厚生労働省のガイドラインに明記されています。

1日あたりに推奨されるアルコール摂取量の上限のめやすは
「20mL」…次に相当

  • 500mL缶ビール1本
  • 日本酒180mL
  • ウイスキーダブル1杯程度

もちろんこれも個人差はありますが、お酒が好きな人はぜひこちらもご参考いただきたいと思います。

毎日食べすぎ飲みすぎている人も、月1回しか食べすぎ飲みすぎない人も、上記の実験的改善策によってもし脂肪肝から脱却できたのであれば、これ以上めでたいことはありません。まずはトライです!

噛む回数を増やしてゆっくり食べる食事習慣が有効

脂肪肝の診断が下された人は、もしかしたら

  • 早食い
  • 食べものを噛む回数が少ない

といった傾向があるかもしれませんね。無関係に思われるかもしれませんが、食べ方も脂肪肝と関係があります。

一般に「食事療法」は「栄養療法」なので、食べ方は食事療法には当てはまりませんが、脱・脂肪肝のためには食べる際によく噛むこと、ゆっくり食べることをおすすめします。

なぜゆっくり噛んで食べることが肝臓をケアすることになるかというと、噛むことは消化酵素やインスリンと関係あるからです。ざっと説明してみましょう。

唾液のなかには、すい臓の消化液であるすい液に含まれるアミラーゼとは少し異なる「唾液アミラーゼ」と呼ばれる消化酵素が含まれています。消化酵素ですから、アミラーゼは消化を助けてくれるのです。

またアミラーゼの具体的な働きは、デンプンを分解して糖(マルトース)をつくることです。マルトースはやがてすい液中のマルターゼという消化酵素によってブドウ糖(グルコース)に分解されます。

よく噛むことで、グルコースがつくられる効率が高まり、これによって血糖値を下げるインスリンの働きが活発になります。インスリンは糖を脂肪に変えて肝臓に送り込んでくれるので、肝臓は脂肪の代謝により多くの時間を割くことができるようになるわけです。

唾液アミラーゼの働きが少ないと、胃や腸ががんばってデンプンを糖に変換しなければならず、肝臓には一気にドバっと脂肪が入り込みやすくなります。そうなると、肝臓が脂肪を代謝しきれず、脂肪肝のリスクが上昇します。

一方で、「早食い」をすると今度は血糖値が急上昇しますので、インスリンが総力を挙げてその処理に当たらなければなりません。これによって脂肪が短時間で急に肝臓に送り込まれることになります。

結果、やはり脂肪肝のリスクを高めることになります。

しかも、インスリンがあまりにも過剰な労働を要求されると、「もうやーめた!」といって血糖値を下げなくなることもあるのです。

糖尿病の合併症として脂肪肝や肝炎が多い背景には、こういった事情も隠されているのです。

ここに「大食い」のファクターが絡めば、糖も脂肪もたくさんつくられることになるのでリスクはさらに高まります。

当然すい臓(インスリンを分泌)も肝臓も疲弊するので、糖尿病や脂肪肝・肝炎などのリスクが上昇するのは明らかですね。

ここまでのお話をちょっとまとめてみましょうか・・・

噛む回数の少なさによる弊害 早食いによる弊害
  1. 唾液アミラーゼの分泌量が少なく働きも小さい
  2. グルコースが遅れてつくられる
  3. 脂肪が遅れてつくられる
  4. 肝臓が忙しくなる→脂肪肝のリスク上昇
  1. 食後血糖値の急上昇
  2. インスリンが激務を強いられる→糖尿病のリスク上昇
  3. 脂肪が急激につくられる
  4. 肝臓で脂肪代謝が間に合わなくなる→脂肪肝のリスク上昇

(参考:「早食い」は 百害あって 一利なし-癒しの森内科クリニック)

「食べ物は、よく噛んでゆっくり食べましょう」と言い続けてきた昔の人はエライなぁ…と痛感させられるようなお話でした。

さらに理想を言えば、「少しの量(多すぎない食べ物)を、よく噛んでゆっくり食べましょう」ということですね。腹八分目、といった昔の人はこれまたあっぱれですね。

脂肪肝改善のために:3.運動習慣で脂肪肝脱却をはかるには

まずは、運動習慣がまったく、あるいはほぼない人。軽く汗をかく程度の有酸素運動を生活習慣のなかに組み込んでください。

簡単なところでウォーキングやスイミングは有効です。

運動が好きな人であれば、1日1~2時間程度の有酸素運動で効果があらわれるはずです。ちょっとした山登りのような、いわゆる「トレッキング」でもいいかもしれませんね。

運動はどうも苦手だという人は、平らな道でかまわないので、30分程度のウォーキングを日課としていただきたいと思います。問題となるのは、昼間はお仕事で運動をする時間がない人です。

少し早起きしてウォーキングの時間をつくるのもよいかもしれませんが、エレベータやエスカレータは使用せず、できるだけ階段を上り下りするというだけでも、カロリー消費の効果は大きいです。

あとは、自宅や(事情が許せば)オフィス、ジムなどで筋トレ、ストレッチを実施といった運動の方法も、脂肪肝の改善には有効です。

イメージとしては、食事療法は絶対、運動療法はできるだけの努力を!というスタンスで、脂肪肝からの脱却を目指しましょう!

食事療法(栄養療法)、運動療法以外にもできることはある

脂肪肝を自分で改善するためには、食事療法(栄養療法)は絶対、運動療法はできる限り実施する、これでピシッと気持ちを切り替えていただきたいものです。ただ、

「これだけではまだ不安、もっとほかにできることはないのか?」

…そんな思いもあるかもしれませんね。重要なことは、食事療法だけ、運動療法だけということではなく、できることは同時に実施すべきところです。

ほかにできる方法があったとしても、食事療法と運動療法は無視できませんよ、という前提で、「もっとほかにできること」についてお話します。

サプリメントの活用もひとつの方法かも

自分で脂肪肝を改善する!という威勢の良さからすると、サプリメントを使用するというのも正直どうなんだ?という気がしないでもありませんが、アリかナシかでいえば、アリでしょう。

ただし、サプリメントに関してはご自身に知識があるならまだしも、知識なくサプリメントに頼るとマイナスの要因を招くこともありえます。

例えば脂肪肝対策や肝機能改善には「オルニチン」という栄養素が効果的です。

ただ、オルニチンが含まれていればなんでもよいというわけでもないので、知識なくサプリメントを利用するよりは、病院でお医者さんにアドバイスをもらってからサプリメント選びをしたほうが無難です。

お医者さんでなくても、少なくともドラッグストアの薬剤師さんにはアドバイスをもらったほうがいいでしょう。安全のためには「自分で改善!」の部分にはあまりこだわりすぎないほうがいいですよ。

自分で脂肪肝を改善するためには「普段の生活」をまずは大切に!

自分で改善しようと思える程度の脂肪肝であれば、基本的には「生活習慣を見直す」ことで目標達成できるでしょう。逆にいえば、ほかにやりようがないともいえます。

おそらく今回のお話のほとんどは、「そんなことはわかっている!」という内容だったかと思います。だからこそ、無機質な数値とにらめっこをするのではなく、あえて「マインド」の部分を強調してみました。

「自分で脂肪肝を改善する」ということは、「生活習慣を見直して改善する」ということとほぼ同義です。しかしここで大切なことは、それができていなかったから今脂肪肝なんでしょ!というところです。

脂肪肝なんてそんなに重病ではないし自分でなんとかできるだろう・・・と考えるのであれば、その人は危険です。「脂肪肝、あなどるべからず」のことばをおくって今回のお話はおしまいです。

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