お酒を飲んで寒気や頭痛…それは危険な急性アルコール中毒かも

寒い季節。冷えた身体を温めるにはストーブやエアコンもいいですが、やっぱり日本酒・・・そう、熱燗(あつかん)が最高です!

鍋でもつつきながら熱燗をちびちびやれば、お酒が好きな日本人は寒さなんて怖くありません。

ただ、普段お酒をあまり飲まない人が、寒さやウサ晴らしを理由にお酒を飲んだりすると、飲みはじめてすぐに寒気や頭痛を感じることがあります。温まるはずのお酒でなぜ?

その理由を肝臓と絡めながら解説します。

お酒を飲んだら寒気を感じる原因は急性アルコール中毒かも

お酒を飲むと、たいていの人は「身体が温まる」という感覚を得るはずです。普段あまりお酒を飲まない人でも、イメージ的には寒くなるよりも「温まる」ほうのイメージを持っていると思います。

もちろん真冬の寒空の下でキンキンのビールを飲んだら寒くなりました・・・といった特殊なケースは例外中の例外ですが、しかし熱燗なのに寒気を感じたとしたら、そこにははっきりとした原因があると考える必要があります。

飲んですぐに頭痛や寒気を感じたら注意!

お酒に対する耐性は人それぞれです。お酒の耐性が高い人は一般的に「お酒に強い」という言い方をします。逆に、少量でもすぐに酔っぱらってしまう人は「お酒に弱い」といわれます。

お酒と戦っているわけでもないのに強いとか弱いとか、考えてみれば不思議な表現ですが、昔からそういわれているので仕方ありませんね。しかしお酒への耐性の高さは、お酒を飲む量や経験とはあまり関係がないんです。

お酒に含まれるアルコールが代謝されるのが肝臓です。お酒を飲みながら血中に入り込んだアルコールが肝臓に届くと、届いた順に肝臓はどんどんアルコールを代謝していきます。

ところが肝臓は、ある時点でアルコールの代謝をやめてしまいます。アルコール代謝は肝臓でつくられる「アルコール脱水素酵素」と呼ばれる酵素によって行われます。

しかし一定量のアルコールを代謝してしまうと、アルコール脱水素酵素をつくるのが間に合わなくなってしまうことになります。そうすると、血中にアルコールが含まれたまま全身をめぐり、「酔い」の症状になります。

厳密には、アルコールが代謝されたあとのアセトアルデヒドという有害物質も大きく影響しているのですが、簡単に説明するなら「酔い」のメカニズムはこのように説明されます。

肝臓におけるアルコール代謝のメカニズムをあらわしたイラスト
(出典:肝臓におけるアルコール代謝のメカニズム-アミノ酸大百科(味の素グループ)より)

肝臓がアルコールの代謝をやめてしまう「ある時点」が飲酒後すぐに訪れる人は、一般に「お酒が弱い」といわれることになります。それでもお酒が好きで、「俺は酒があんまり強くないからなぁ」などと陽気に言える人なら問題ありません。

問題は、普段めったにお酒を飲まないために、自分がどれくらいお酒を飲めるのかをよく把握していない人のほうです。なぜなら、おちょこ1杯で「ある時点」がすでに訪れているかもしれないからです。

肝臓がアルコール代謝という重要な仕事を放棄した状態で、さらなるお酒を飲み続けると、「急性アルコール中毒」の状態に陥ります。アルコール中毒というと、かつては「アルコール依存症」のことを指しました。

しかしここではアルコール依存症とは別の、「お酒にあたる」という意味での「中毒」です。悪酔いにも近いニュアンスがあるかもしれません。これはお酒に強いか弱いかは関係ありません。

しかしお酒に弱い人は、お酒を飲んで間もない時点でアルコール中毒の状態に陥ります。その人の肝臓からすれば「当たり前のこと」に見えますが、第三者からすれば、「酔うのが速い」と見えます。

これがいわゆる「急性アルコール中毒」の症状です。ただし、本来ならお酒に強い人が時間をかけてしたたかに酔っぱらって泥酔・酩酊(めいてい)状態になったとしても、これも同じ「急性アルコール中毒」です。

お酒への耐性や肝臓のアルコール代謝機能や健康状態などとは一切無関係に、「慢性」ではないから「急性」のアルコール中毒となります。場合によっては命を落とすこともある危険な状態です。

お酒が大好きな人で、ひどい二日酔いとか、さらには三日酔いなどのレベルの飲みすぎを経験した人なら、急性アルコール中毒の際の寒気は誰しも経験していることでしょう。

しかしお酒に極端に弱い人は、ほんのちょっとしか飲んでいないのに急な寒気に襲われるわけですから、ちょっとびっくりしますよね・・・急性アルコール中毒の症状は寒気だけではありません。頭痛も典型的症状です。

急性アルコール中毒は、短時間で猛烈な量のお酒を飲む(昔はやった「イッキ飲み」など)ことによって起こる症状です。しかし極度にお酒に弱い人は、ほんのひと口でも「イッキ飲み」と同様の行為といえてしまいます。

ここまでは、急性アルコール中毒になると頭痛や寒気に襲われますよ、という事例を紹介してきました。では、アルコール中毒になるとどうして寒気を感じるのかという、本テーマの本丸にいよいよ迫ります。

急性アルコール中毒と寒気の意外な関係

急性アルコール中毒になると、頭痛はもちろん寒気を感じることもあるというところまでお話してきました。アルコール耐性が高くても低くても、お酒を飲む人ならだれでも起こす可能性がある怖い症状です。

ただ、急性アルコール中毒であろうとなかろうと、お酒を飲んでいるわけですから、温かくこそなれ寒気というのは相変わらず不思議ですよね?今回の本質は「お酒なのになぜ寒気なのか」という点でした。

そこには、実に意外な関係があります。ちょっと考えてみてください。なぜ急性アルコール中毒のレベルまでお酒を飲むと寒気を感じるようになるのか・・・想像がつくでしょうか?

実は、お酒(急性アルコール中毒)と寒気の関係は複数の誘因によって成り立っています。しかし中でも最も大きな原因は、「低血糖」にあります。急性アルコール中毒と低血糖の関係は意外にも密接なのです。

お酒を飲んだあとの寒気の原因となる低血糖を特に「アルコール性低血糖」と呼びます。

アルコール性低血糖
飲酒が原因で起こる低血糖で、特に18時間以上過度の空腹(飢餓(きが)状態)が継続している状態で大量の飲酒行動を短時間で行ったときに起こりやすい低血糖

(参考:アルコール性低血糖-人とお酒のイイ関係(アサヒビール株式会社)より)

「何も食べないでお酒を飲むのは身体に悪い」と昔から言われてきましたが、アルコール性低血糖のリスクを指して「身体に悪い」と表現していたなら、やはり昔の人のことばは正しかったことになりますね。

血糖値の経時変化グラフ
(出典:血糖値の経時変化-アサヒビール株式会社より)

低血糖の場合、お酒が原因であるか否かにかかわらず、足の先のほうからぞわぞわと徐々に這い上がるような寒気が襲ってきます。まさに「寒気」なのです。そういう種類の寒気は、危険の序曲でもあります。

寒気を感じるようなお酒の飲み方はひかえて!

アルコール性低血糖の危険度は、たとえばインスリン過剰接種などによる一般的な低血糖と同等です。お酒を飲んで気分が良いからといって、低血糖のリスクが軽減されるわけではありません。

つまり、お酒を飲んで寒気を感じるということは、最悪の場合命を落とすおそれもあるくらい危険な状態であるといえるのです。アルコール性低血糖は、早ければ30~60分程度で頭痛を伴う寒気を感じます。

万一お酒を飲みながら寒気を感じたら、すぐにでもそれ以上の飲酒行動は一切ストップしてください。そういう飲酒は肝機能低下を起こすだけではなく、生命の危険も招きます。

寒気を感じるようなお酒の飲み方は絶対にひかえてくださいね!

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