【PT】血液検査のプロトロンビン時間が異常なら要入院の可能性も

健康な人の場合、ょっとしたケガであればたとえ出血があったとしても少しすればすぐに止まります。

出血を止めることを「止血」と呼び、血液に含まれる「血小板」という止血の役割を担う成分がこれを担っています。

しかし重要な役割だけに、止血を血小板に丸投げするわけにはいきません。血小板をサポートする、つまりは止血をサポートする役割として重要なのが、プロトロンビンという血液成分(肝臓酵素)です。

出血と深い関係があるプロトロンビンの働きと基準値を知ろう

あまり耳慣れないプロトロンビンという物質ですが、役割としては非常に重要です。ふだんはほとんど目立たないというか、あまり活動的でなく、数も多くない物質ですが、いざというときには非常に役立ちます。

プロトロンビンは、血液検査ではPTで表記されることが多いです。

止血の仕組みとプロトロンビンの働き

出血が起こっても、小規模であれば一定の時間が経過すると血は止まります。しかし小規模の出血であったとしても、ある瞬間にピタッと止まるわけではありません。血液の様子が徐々に変化し、やがて止血に至ります。

血液の様子が変化しているのは、血中の血小板が傷口(出血が起こっている部位)周辺に寄り集まって、血液を固めているからです。この作用を「凝血(ぎょうけつ)」と呼び、血小板が固めた血液を「血栓(けっせん)」と呼びます。

主に血小板が活躍するここまでのプロセスを、一次止血と呼びます。

血圧の数値からもおわかりかと思いますが、血管内の血液はなかなかの力で血管壁を外側に圧し続けています。そうなると、血小板がつくる血栓だけでは有効に止血できない可能性が高いです。

そこで活躍するのがプロトロンビン(PT)です。肝臓は、代謝(たいしゃ)や解毒(げどく)を行うためにさまざまな酵素を生成し、分泌しますが、身体のどこかで出血が起こると、肝臓はプロトロンビンを生成、分泌します。

プロトロンビンが肝臓から放たれて活性を帯びると、「プロ」がとれて「トロンビン」という物質に変化します。実際に止血作用を持つのはプロトロンビンではなくトロンビンのほうです。

トロンビンはほかの血液凝固因子と協力して網のような物質(フィブリン網)の一部を形成し、血小板を保護する、あるいは血栓に強度を持たせる糊(のり)のような役割を果たします。

プロとロビン(トロンビン)が活躍する段階の止血を二次止血と呼びます。

このようにして、2段階に分けて、厳重なプロセスを踏まえて止血が行われるんですね。

ちなみに「血友病」など、凝血作用にトラブルが起こるのは、二次止血がうまくいっていない場合が多いです。

プロトロンビンの基準範囲

プロトロンビンは、肝臓でつくられ分泌されるさまざまな酵素のひとつです。一般的に肝機能値は、肝細胞の破壊によって血中に漏れ出した「量(数)」の多少に疾患やリスクの有無の可能性を求めるための数値です。

ところが凝血作用と深くかかわるプロトロンビン(トロンビン)の場合は、量や数ではなく、「凝血までに要する時間」がより重要になってくるため、「時間」を計測することのほうが重要なのです。

採血してクエン酸ナトリウムなどを混ぜ、37℃の水に入れて凝固するまでの時間を計測し、プロトロンビンが凝固するまでの時間を「プロトロンビン時間」と呼びます。そのプロトロンビン時間から正常・異常を判断します。

プロトロンビン時間
37℃の水槽中で血液が凝固するまでに10~13秒

特に、凝固まで15秒以上時間を要するときには、何らかの異常がどこかに起こっている可能性が強く疑われます。

プロトロンビン時間に異常がみられた場合のリスクの範囲と対処

血液凝固と関係する因子は全部で12あります。プロトロンビン(トロンビン)も当然そのひとつです。プロトロンビン時間に異常がみられたときには、プロトロンビン以外の因子も詳細に検査する必要があります。

プロトロンビン時間に異常がみられた場合のリスクの範囲

12ある血液凝固因子のうち、第Ⅷ(8)因子以外の11の因子は、プロトロンビンを含めすべて肝臓で生成されます。ということは、プロとロビン時間に異常がみられた場合、肝臓に何らかの問題が起こっている可能性が高いです。

ただし、肝臓以外の問題の可能性も考えられます。

プロトロンビン時間に異常がみられた時に疑われる疾患
  • 肝疾患・・・急性肝炎、劇症肝炎、肝硬変、閉塞性黄疸(へいそくせいおうだん)
  • 肝臓外疾患・・・心不全、悪性腫瘍、ビタミンK欠乏症、プロトロンビン欠乏症、播種(はしゅ)性血管内凝固症候群(DIC)

肝硬変や劇症肝炎、急性肝炎も危険ですが、ビタミンK欠乏症は特に、緊急を要する疾患なので、すぐに入院して適切な治療が行われる必要があります。

プロトロンビン時間に異常が見られた場合の対処は?

疾患のリスクという意味では上記のとおりですが、そのリスクを認知するためには、まずはしっかりと精密検査を受ける必要があります。血液疾患ですから、上記を含め、免疫疾患が原因になっていることも考えられます。

プロトロンビン時間に異常がみられた時点で、さらなる検査や治療など何らかの打診が病院側からあると思いますので、患者さんのほうで大切なことは、その打診にちゃんと応じること、これ以外にありません。

プロトロンビン時間の異常を軽視するのは危険!

今回みなさんに認知していただきたい最大のことは、「プロトロンビン時間の異常を軽視するようなことは絶対にしないでください」ということです。

検査結果としては、ほかの項目とまったく同じ字体で強調されることなく「プロトロンビン(時間)」とか「PT」などと記されることが多いですから、異常があっても大したことがないように感じられるかもしれません。

しかし実際には上記に挙げた重大なリスク因子となりえます。肝硬変など出血を伴う肝疾患を除いて肝臓に直接影響をもたらす問題ではありませんが、原因が重大な肝疾患にある可能性は高いです。

原因が肝臓になかったとしたら、事態はさらに深刻な可能性も考えられますので、とにかくプロトロンビン時間の異常だけは軽視すべきではないと認識していただきたいと思います。

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