オルニチンの効果一覧。肝臓のオルニチンサイクルを活発に!


昔から「お酒を飲んだ後はシジミ汁」と言われてきました。江戸時代には街にシジミ売りの姿が見られ、経験的にもシジミは体に良いと知られていたようです。落語にもシジミ売りの登場する噺があります(ちなみに主人公は、あの鼠小憎次郎吉です)。

シジミ汁が飲酒後に良いとされるのは、シジミに含まれるオルニチンの作用のおかげだとされます。江戸時代の人々はまだ「オルニチン」なんて成分は知らなかったでしょうが、そのパワーは実感していたようです。

オルニチンとはどんな成分なのか、そして私たちの健康にどんな効果があるのか!詳しくみていきましょう。

オルニチンはアミノ酸の一種で肝臓と深く関わっている

オルニチンはアミノ酸の一種で、「遊離アミノ酸」に分類されます。

人の体の20%はアミノ酸でできていて、そのアミノ酸がいろいろと複雑に組み合わさってタンパク質を構成しています。タンパク質は筋肉や血管や内臓などを作ります。

ただタンパク質を構成しているのは、アミノ酸のうちのたった20種類だけです。アミノ酸にはこの20種類以外にもたくさん種類があり、アミノ酸の状態で体内に存在していろいろな働きをしているものもあります。それが遊離アミノ酸です。

オルニチンは遊離アミノ酸として体内に存在し、血液に溶け込んで全身を循環しています。そして肝臓では「オルニチンサイクル」として働き、重要な役割を果たしているのです。

オルニチンは食品からの摂取だけでなく、体内で合成することもできるアミノ酸なのです。

アンモニアを解毒する「オルニチンサイクル」

オルニチンは肝臓で行われている代謝経路の「オルニチンサイクル」を構成する成分です。この代謝経路を活発にすることで、肝臓の機能を高める効果があると考えられてます。

オルニチンの効果の話をする前に、このオルニチンサイクルについて説明します。

オルニチンサイクルはアンモニアを無毒化する代謝経路で、「尿素回路」とも言われます。わかりやすく言うと、有毒なアンモニアを分解し無毒な尿素へと変換していく経路です。

この代謝経路は肝臓の細胞のミトコンドリアと細胞質で行われています。

肉などのタンパク質を摂取すると、体内で分解されてアンモニアが発生します。激しい運動の後にもアンモニアが発生しやすくなります。アンモニアは体にとって不必要な老廃物です。

もしもアンモニアが体内に過剰に溜まってしまうとエネルギーをうまく作れなくなってしまい、そして疲労を感じるようにもなってしまうのです。ですから、アンモニアはすぐに除去しなくてはいけません。

そんな有毒なアンモニアを、無毒な尿素に変えてくれるのがオルニチンサイクルなのです。生成された尿素は尿として、体の外へ排出されていきます。

この反応が起こるためにはオルニチンが必要で、オルニチンと反応したアンモニアがいくつかの段階を経て最終的に尿素が生成されます。

尿素が生成されたとき、同時にオルニチンも生成されています。そのオルニチンが再利用され次のアンモニアとまた反応して、また尿素が作られていくのです。

オルニチンサイクルがきちんと機能していれば、アンモニアはしっかりと除去されていきます。しかし肝機能が低下していたりアンモニアの発生が増えてしまうと、アンモニアの解毒がスムーズにいかなくなってしまいます。

オルニチンを摂取することでオルニチンサイクルの働きが活発になり、疲労が改善されて肝臓の機能も保たれると考えられています。

オルニチンの効果は肝機能の改善から疲労回復、脂肪燃焼も

オルニチンは肝臓の働きを助けると考えられます。そして次のような効果があると期待されています。

疲労回復の効果

オルニチンを摂取することで、有毒なアンモニアを無毒な尿素に変換するオルニチンサイクルの働きが活発になると考えられます。

アンモニアが体内にたくさん溜まってくるとエネルギーがうまく作れなくなり、疲労を感じやすくなります。オルニチン摂取することで有毒なアンモニアが減り、そのおかげでエネルギーが十分に作れるようになって疲労回復の効果が期待できます。

協和発酵バイオ株式会社の研究によると、朝の目覚めが良くなったり、考えがまとまらないといった状態も改善したと感じる人が多いという結果が出ました。また動物での試験ですが、お酒を飲んだ次の日の疲労にも効果があるという結果でした。

そして運動によるアンモニア上昇に対しても効果が確認できました。運動をするとアンモニアが発生しやすくなるのですが、オルニチンを摂取することでそのアンモニアの上昇が抑えられたのです。

アンモニアの上昇が抑えられることで運動中の疲労が抑えられ、それにより持久力の向上もできると期待されます。

肝機能を改善させる効果

オルニチンは肝臓のオルニチンサイクルを活発にさせます。オルニチンサイクルが活発に働くようになることで肝臓の機能が助けられます。

つまりオルニチンを摂取することで、低下してしまっていた肝臓の機能を改善させる効果が期待できるのです。

成長ホルモンの分泌を促す効果

オルニチンはアルギニンというアミノ酸とともに、成長ホルモンの分泌を促すとされます。成長ホルモンには脂肪を分解させる、新陳代謝を活発にするといった働きがあり、ダイエットや美肌、アンチエイジングにとっても重要なものです。

オルニチンによって肌の細胞の新陳代謝も活発になるため、美肌の効果も期待できます。また脂肪を燃焼しやすくなり、筋肉を強化させる効果もあるとして研究がされています。

このようにオルニチンには様々な効果が期待されています。しかしこれらの研究はまだ規模の小さなものもが多く、ヒトで本当にどのくらいの効果があるかといったことについて十分に確認されているとは言えないものも多くなります。

それでも期待される効果はいろいろとあり、これからもっと研究が進んでくることではっきりしたことがわかってくるといった感じでしょう。

オルニチンを多く含む食品ランキング

オルニチンを多く含む食品の代表として、すぐに思いつくのはシジミでしょう。その他にもキハダマグロやヒラメ、チーズにも含まれます。

そしてオルニチンを多く含んで調理もしやすい意外な食品としてキノコ類があります。シメジはシジミと比べてもだいぶ多くオルニチンを含んでいます。そして調理がしやすいという利点もあります。食物繊維もたっぷりです。

シメジなどのキノコ類でしたらメニューもいろいろ考えられます。たまにはキノコ類を取り入れるのもお勧めでしょう。

各食品に含まれるオルニチン量は、次のようになります。

食品100gあたりのオルニチン量 100gの目安量
シジミ 10.7-15.3mg 約35個
ヒラメ 0.6-4.2mg 約1切れ
キハダマグロ 1.9-7.2mg 刺身7-10切れ
チーズ 0.8-8.5mg スライスチーズ約5枚
ブナシメジ 100mg 約1パック
ヒラタケ 50mg 約1パック強
エリンギ 30mg 約1パック
エノキ 14mg 約1袋

(出典:協和発酵バイオの健康成分研究所、ホクト株式会社)

シジミを冷凍させるとオルニチンが増える!

もともとオルニチンを多く含んでいるシジミですが、実は一度冷凍させることでそのオルニチンを7−8倍にまで増やすことができます。

シジミにとって命の危険を感じる状態にすることで、生体防御作用が働いてオルニチンが増えるのではないかとされています。

ちょっとしたコツでオルニチンが増えるようですから、ぜひ一度試してみてください。

シジミはオルニチンをたくさん含み肝臓にも良い食品ですが、鉄分も多く含んでいます。C型肝炎、NASH(非アルコール性脂肪肝炎)の患者は鉄分の摂取が制限されているため、シジミは食べないようにしてください。

オルニチンは肝臓を助けてくれる!1日500−1000mgくらいを目安に

以上のように、オルニチンにはいろいろな効果が期待できます。ただし本当にそれらの効果があるのかどうかについては、まだ研究段階ということも多いようです。今後もっと詳しいことがわかってくるでしょう。

オルニチンには肝臓の機能を助ける働きがあるとされます。アルコールは体にとっては有害物質で、そのアルコールを解毒するのも肝臓の役割になります。

お酒をたくさん飲む人は、肝臓もフル稼働している状態です。この状態が続いていては、いつか肝臓はダウンしてしまいます。そんなときにオルニチンを摂取することで、肝臓の負担を少し助けてくれるかもしれません。

ただ肝臓に負担がかかり過ぎているかなと感じたときに、まず重要なのは生活習慣を見直すことです。お酒の量を抑えたり、疲労やストレスを溜めない、バランスのよい食生活にするといったことも気をつけてみてください。

肝臓は「沈黙の臓器」とも言われ、多少問題が起きていても自覚症状はなかなか出ません。何も意識しないまま肝臓を酷使し続けてしまうと、かなり悪化してから慌てることになってしまいます。

飲酒はほどほどにし、定期的に検査も受けるようにしておきましょう。

オルニチンは1日500−1000mgくらいを目安に摂取するとよいとされます。食品からだけで摂取するのは、やや難しいかもしれません。

またオルニチンは体に良いからと、それだけに偏らないようにはしてください。栄養素はいろいろなものが協力しあって効果を発揮します。バランスのよい食事を心がけるようにしましょう。

オルニチンは食品に含まれる成分のため、安全性は高いと考えられています。ただしサプリメントとして摂ったときには、その量を守るようにしてください。また合わないと感じたときにはすぐに止めましょう。

妊婦さんや他にも薬を飲んでいるという人の場合には、勝手に始めず医師に相談してみてください。きわめてまれですが、遺伝子の病気のためにオルニチンを体内でうまく使えないという人もいるため、注意してください。

肝臓のためには、まず普段の生活を見直すことが大切ですね。一番重要なのはお酒の飲み過ぎは止めること。たまには休肝日だって必要です。

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