危険な脂肪肝NASHの治療。検査で判明したら専念すべき3つの方針

NASHは重篤な肝疾患へと移行する可能性が高い脂肪性肝炎ですから、検査の結果NASHの診断を受けたらすみやかな治療へと移行する必要があります。

とはいえ「NASHの治療」と軽くいえるほど簡単ではありません。

  • NASHがほかの病気からの影響で起こったものなのか
  • 脂肪肝からの肝炎への移行によるものなのか

によって治療の方法が大きく異なります。また疾患の有無だけでなく、肥満であるか否かによっても方針が変わります。

今回はNASHの治療方法についてお話します。

危険脂肪性肝炎NASH!万一NASHになったとき受ける治療

脂肪肝をはじめ、肝臓に過剰な脂肪が付着・蓄積されて起こる肝疾患ののうち、アルコールと無関係に起こる肝疾患の総称を、非アルコール性肝障害と呼び、NAFLD(ナッフルディー)の通称を持ちます。

NADLDのうち、将来に肝硬変や肝臓がんへと移行する危険が高い肝炎を非アルコール性脂肪肝炎と呼び、NASH(ナッシュ)と通称されます。

NASHではない脂肪肝が単純性脂肪肝のNAFL(ナッフル)と呼ばれます。

nashとnafldの治療フローチャート図
(出典:日本消化器病学会-日本消化器病学会 より)

ほかに病気がないのにNASHになるということは、脂肪肝が直接的に影響して肝炎を発症していることになります。ということは、肥満そのものがNASHの原因になっている可能性が高いことにもなります。

そのため、肥満の有無がNASH治療の重要な方針決定要因になります。詳細に関しては、担当医とよく相談して決定していただきたいと思います。

NASHの具体的な治療方法

まずは、NASHの原因となっている何らかの疾患が認められる患者さんに対しては、その疾患が改善されない限りNASHの改善は見えてきませんので、原因となっていると考えられる疾患の治療を行います。

ただし、肝疾患であるNASHを放置するということはありません。すでに疾患を持つ患者さんに対するNASHの具体的な治療方法は、以下をご参照いただきたいと思います。

NASHの具体的な治療方法は以下に代表されます。

NASH治療の具体的な方針
  • 食事療法・運動療法などによる体重減少
  • 投薬・栄養療法による肝機能改善
  • インスリン抵抗性、高コレステロール血症など別の疾患に原因があるNASHの投薬治療

(参考:治療-日本消化器病学会 より)

いずれにしても、NASHを直接的に治療するということではなく、多くの肝臓病の治療で行われるように、いろいろな方法で肝機能改善を目指す治療がメインとなる治療が、NASHの治療の方針であることがわかります。

それでは、それぞれの項目ごとに具体的な治療方法の概要をまとめます。

NASHの治療法 治療の目的/治療の対象 治療の内容
食事療法 体重減少 低カロリー食の導入は肝機能低下や脂肪肝を改善させる。脂質の摂取を極力制限し、エネルギー摂取量の最適化を優先する。
運動療法 体重減少 詳細なメカニズムは判明していないものの、運動療法によりNAFLD・NASHが改善される事例は数多く報告されており、治療法として強く推奨される。
栄養療法 肝機能改善/肥満・既往疾患なしの患者が対象 ビタミンE摂取・投与が推奨される。ビグアナイドなど、肝機能改善の効果が期待される肝臓病薬が導入されることもあるが、ビタミンEには副作用がなく、ビグアナイドなどと同等の効果があることから、ビタミンE摂取・投与がより推奨される。
投薬治療 肝機能改善/インスリン抵抗性(糖尿病)合併がない患者が対象 ピオグリタゾンなどチアゾリジン誘導体治療薬は、短期投与で肝機能改善が実現されやすく、推奨される。インスリン抵抗性合併の患者に対してはその高い効果がすでに認められており、強く推奨される。
投薬治療 肝機能改善/高コレステロール血症の患者が対象 高コレステロール血症の患者に対しては、HMG-CoA還元酵素阻害薬の投与により肝機能改善の効果が認められている。当該患者に対しては、HMG-CoA還元酵素阻害薬の投与が推奨される。

上記は日本消化器病学会様のデータを参照したものですが、あくまでも学会員の推奨率が100%の治療法を抜粋的にご紹介したものです。つまり、体質によっては最良の(別の)NASH治療法の可能性も示唆します。

そういう意味も含め、NASHの治療方法の詳細については、担当医とよく相談していただきたいと思います。

NASHは精密検査ではじめて判明する。脂肪肝と言われたら一度検査を

NASHの診断にはけっこう微妙な判断を要するところがあります。明らかな肝機能障害があらわれて、「あなたはNASHです」と簡単に診断できる種類の肝臓病ではありません。

もちろん脂肪肝、肝炎といった肝障害が起こっているわけですから、一般的な血液検査でわかるALT(GPT)やAST(GOT)など肝機能値に異常がみられます。(血液検査についてくわしくはコチラ)

要は肝機能低下が起こっていることが血液検査からでもわかります。しかしここまではNAFLDの症状にも共通します。

NASHにしろNAFLDにしろ自覚症状には乏しく、NASHの診断には精密な検査が必要です。

「ただの脂肪肝(NAFL)」だと思い込んでいても、精密な検査をしてみたところNASHだったということもありえますので、安全のためには、脂肪肝の診断を受けた人は一度検査をしたほうが無難です。

NASHの治療方針は担当医との信頼関係がベース!決まったらひたすら治療を!

今回はNASHの治療方針、治療方法についてお話してきました。NASHは、その診断自体が少々難しい肝臓病です。それだけに、医師の解釈に見解の相違がみられる可能性も考えられます。

とはいえ、NASHは肝硬変や肝臓がんなど、終末的な肝臓病の危険も常に視野に入れながら治療しなければならない疾患ですから、治療するとなったらひたすら治療する姿勢が非常に重要です。

そのためにも、信頼に値するお医者さんが担当医であることが望まれる疾患であるといえます。まずは治療の環境をベストに近づけ、治療が決まったらひたすらNASH解消に励みましょう。

この記事をシェア

合わせて読みたい

ページ先頭に戻る