非アルコール性脂肪肝炎NASHの原因。飲酒は関係ない危険な脂肪肝

脂肪肝の原因というと、真っ先にアルコールが思い出されるかもしれませんね。

実際アルコール性脂肪肝は、アルコール性肝障害の代表的な症状ではあります。しかしアルコールが脂肪肝の原因のすべてではありません。

むしろ、アルコールとは無関係に起こる脂肪肝や肝障害のほうがより深刻なことが多いです。中でもアルコールとは無関係に起こる肝炎は非常に深刻なことが多く、これを非アルコール性脂肪肝炎(NASH=ナッシュ)と呼びます。

非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の原因

肝炎の原因はいろいろ考えられますが、非アルコール性脂肪肝炎(NASH・以下NASH)の原因を考える上で、まずは「アルコール」の要素は排除して問題ありません。アルコールを飲んでいない人がかかる脂肪性肝炎がNASHです。

NASHの場合、アルコール性脂肪肝・肝炎よりも、肝硬変や肝臓がんへと移行する危険性が高いという統計データがありますので、NASHの診断を受けた人は、まずはその原因を特定し、しっかりと治療しなければなりません。

アルコールが肝臓を傷める原因は、アルコールを肝臓で代謝する際に生成される有害物質です。しかしアルコールの代謝能力は人によって差異が大きいため、お酒が肝臓に影響を与えるか否かは人によって異なります。

そのため、イメージほどアルコールと肝臓の関係は密接ではなく、むしろアルコールの摂取量やその人の体質(アルコール代謝能力の高さ)のほうにアルコール性脂肪肝・肝炎の直接的な原因があるともいえます。

アルコール代謝と異なり、有害物質を生成しないにもかかわらず脂肪性肝炎が起こるということは、NASHが私たちにとって潜在的なリスクであることを意味します。

なお、NASHほど深刻ではないものの、アルコールと無関係に起こる脂肪肝を非アルコール性脂肪肝・NAFLD(ナッフルディー)、NAFLDのうち、NASHではないものを非アルコール性単純性脂肪肝・NAFL(ナッフル)と呼びます。

脂肪肝の分類をあわらした画像

NAFLにしろNAFLDにしろNASHにしろ、すべて広義の「脂肪性肝疾患」なので、NASHがNAFLおよびNAFLDから発展して起こる可能性が高いです。ということは、NAFLやNAFLDがNASHの間接的な原因であるとも解釈できます。

事実、人間ドックなどのデータによると、健康な人も含み、約50人に1人という高い確率で脂肪肝が原因であるNASHの診断を受ける健診者がいるというデータがあります。これはかなり危機的状況であるといえます。

つまり警戒すべきNASHの原因は、NAFLやNAFLDの原因となる「肝臓への過度な脂肪の付着(つまり脂肪肝)」です。さらにその原因を考えるなら、食べすぎやジュース類の飲みすぎ、運動不足などがあげられます。

NAFLDにならなければNASHになる危険は、よほど特殊の事情がなければほとんどゼロです。そこで、NAFLDの原因となる具体的な危険因子をピックアップしてみましょう。

NAFLDにならなければNASHにはならない!

NASHは、ある日突然発症するわけではなく、肝臓のケアを怠り続けることが原因で起こると考えられます。ですからNASHはNAFLDにならなければその危険は最小限にとどめられます(NAFLがNASHに移行することもある)。

そこで、NASHの直接的な原因を考察するのではなく、NAFLDをまずは予防する意識が重要であると考えることも重要です。上でも少しだけ触れましたが、NAFLDの危険因子を詳しくまとめます。

NAFLDになりやすい因子
  • 休肝日を設けない飲酒習慣(※)
  • 肥満・メタボである、あるいは最近そういう傾向が顕著である
  • 夜食を欠かさない(夜食の頻度が高い)
  • 早食い、やけ食い、不規則な食生活、暴飲暴食が多い
  • 偏食(特に肉ばかり食べて野菜や魚を食べない場合)
  • 糖質(甘いもの、炭水化物)、脂質を豊富に摂取する習慣
  • カロリーオーバーの食生活
  • 長期にわたる運動不足
  • 塩分の過剰摂取
  • そもそも生活自体が不規則

NAFLDの診断を受ける人の多くが、上記のすべてに当てはまってしまう(高橋医院より)ということで、これはストレスが多い現代人の生活習慣を反映しているといえますよね・・・

かつて「脂肪肝なら大丈夫」といわれた時代も長かったようですが、そのうちの10~20%が5~10年後にはNASHへと移行し、やがて肝硬変など重大な肝疾患を発病するということですから、ほんとうに事態は深刻なんです。

アルコール代謝能力が高いとNAFLD、NASHの原因になる!?

ところで、上の囲みの(※)で示した「休肝日を設けない飲酒習慣」という部分にちょっとひっかかった人もいると思います。つまり、「非アルコール性脂肪肝」であるにもかかわらず、なぜ「飲酒」がかかわってくるのか・・・という疑問ですね。

上でもお話しましたが、アルコールと肝臓の関係は、思われているほど密接ではないと解釈できないこともありません。反面、アルコール摂取は肥満やメタボリックシンドロームの原因には確実になります。

すなわち、肝臓のアルコール代謝能力が高い人は、アルコール性脂肪肝にはなりづらい代わりに、肥満やメタボによるNAFLD、さらにはNASHの原因になると考えられるのです。

NASHになったら一大事!まずはNAFLDの予防の徹底を

生命にかかわることですから、NASHの原因をもう一度まとめておくことにしましょう。

  • NASHの原因・・・NAFLDやNAFL
  • NAFLDやNAFLの原因・・・食習慣や運動習慣など日々の生活習慣に問題がある

NA・・・からはじまる少々ややこしい肝臓病のお話になりましたが、その最も危険な状態が、非アルコール性脂肪肝炎の「NASH」です。NASHにならないためにはNAFLD(NAFL)にならないことが重要であるとご理解いただけたでしょう。

しかしストレス社会のど真ん中を日々送る現代人は、NAFLDやNAFLに陥りやすい生活習慣を余儀なくされる部分も少なからずあるはずです。これをどう予防すべきかは個々の問題ですが、「予防の意識」は大切です。

意識がなければ何もはじまりませんので、今回お読みいただいた読者の方には、まずは「NASH・NAFLD・NAFLを予防するマインド」がこころに芽生えたことを確認していただき、予防に励んでいただきたいと思います。

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