非アルコール性脂肪肝NAFLの原因は酒じゃない?メタボや高血圧に注意
お酒はそれほど飲まないのに、肝臓に中性脂肪がたくさん溜まってしまう非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)。
NAFLDには肝硬変や肝がんへ進行する可能性のあるNASHと、そのように進行する恐れはないNAFLがあります。
お酒はあまり飲まないはずなのに、なぜ肝臓に問題が起きてしまうのでしょうか。肝硬変などに進行する心配のないNAFLの原因についてみていきましょう。
NAFLの原因は肥満を招く生活習慣にあり!メタボも関係している
お酒をそれほど飲まないのにも関わらず、肝臓に中性脂肪がたくさん溜まってしまう脂肪肝のことを「非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)」と言います。
NAFLDは肝硬変や肝がんに進行してしまう可能性のある「非アルコール性脂肪肝炎(NASH)」と、肝硬変などへの進行の心配はない「非アルコール性脂肪肝(NAFL)」とに分けられます。NAFLDの多くはNAFLになります。
アルコール性脂肪肝の原因は長年にわたる過剰な飲酒歴です。それに対してNAFLやNASHの原因は食べ過ぎや運動不足です。
NAFLもNASHも、その発症の原因は同じと言えます。食べ過ぎや運動不足といった生活習慣を続けることで肥満になってしまい、それらの影響によって肝臓に中性脂肪がどんどん溜まって脂肪肝になってしまったのです。
NAFLやNASHを発症してしまう患者には、次のような病気が関係していることが多くなります。
- 肥満症
- 糖尿病
- 脂質異常症
- 高血圧症
- メタボリックシンドローム など
NAFL(NASHも)には、メタボリックシンドロームが深く関係しています。
メタボリックシンドロームとは、肥満(特に内臓肥満)や糖尿病、脂質異常症、高血圧などといった病気を合併してしまっている状態を言います。
これらの病気はもちろん単独でも危険ですが、合併してしまうことでさらに動脈硬化を進行させやすくなってしまいます。そして動脈硬化が進行すると心筋梗塞や脳梗塞を起こしやすくなり、死と直結してしまいます。
NAFLはメタボリックシンドロームの症状が肝臓に現れた状態とも言えます。食べ過ぎや運動不足などが原因で、肝臓にまで脂肪が溜まってしまった状態なのです。
注意!こんな人はNAFLやNASHの危険あり
NAFLやNASHの発症には、生活習慣が大きく関わっています。メタボリックシンドロームになりやすい生活習慣は、肝臓にも脂肪を溜め込みやすい生活習慣と言えるのです。
あなたには次のような心当たりはありませんか?
- 普段から食べ過ぎである
- 大食いや早食いである
- 食事が偏っている
- 運動不足になっている
- 生活が不規則である
- 肥満がある
- 20歳の頃の体重より10kg以上増えている
- おへそ辺りの腹囲が男性は85cm以上、女性は95cm以上ある
- 血糖値が高め
- 中性脂肪値や悪玉コレステロール値が高め、善玉コレステロール値は低め
- 血圧が高め
もしも心当たりがあるようでしたら、一度肝臓の状態もみてもらうようにしたほうがよいかもしれません。
NAFLやNASHになっていても、自分で気になるような自覚症状は何も現れません。倦怠感などが出ることはありますが、それだけでは肝臓の異常には気がつけないでしょう。
また毎年健康診断を受けているという人も、血液検査の結果だけでは大きな異常がでないため見逃してしまうこともあります。超音波(エコー)検査やCT検査を行うことでさらにはっきりとした診断ができるため、受けるようにするとよいでしょう。
腹部超音波(エコー)検査は痛みもなく、レントゲンなどのような被爆の心配もありません。簡単に受けることができますから、迷ったならまずは医療機関で相談してみるとよいでしょう。
エネルギーの消費と摂取のバランスがくずれてしまうことが原因に
どうして食べ過ぎや運動不足、肥満などがあると肝臓に脂肪が溜まってしまうのでしょうか。それはもともと肝臓には、脂肪を貯蔵する働きがあるためです。
人は食事からエネルギーを摂取し、そのエネルギーを中性脂肪として肝臓に蓄えています。そしてその中性脂肪をエネルギー源として体を動かし消費していくのです。正常な肝臓の場合には、3−5%ほどの中性脂肪が蓄えられています。
しかし摂取エネルギーと消費エネルギーのバランスが崩れてしまうと、肝臓には過剰に中性脂肪が蓄えられていくことになります。そして30%以上の肝細胞に脂肪が溜まると、「脂肪肝」と診断されることになるのです。
食べ過ぎてエネルギーを摂取し過ぎたり、運動不足でエネルギー消費が減ってしまうと、肝臓には余った中性脂肪がどんどん溜まっていって「脂肪肝」になってしまいます。
▼脂肪肝の原因については、こちらで詳しく解説しています。
脂肪肝の原因は食べ過ぎ・飲み過ぎだけじゃない!
NAFL発症には、インスリン抵抗性が重要な要因
インスリンは血糖値を下げる働きをするホルモンです。食事をして血糖値が上がるとインスリンが分泌され、そのインスリンの働きにより全身の臓器で血糖(ブドウ糖)が効率的に取り込まれエネルギーになります。そしてそれにより血糖値は下がります。
このインスリンの働きが悪くなった状態を「インスリン抵抗性」と言います。インスリンが分泌されていても十分に働けないと血糖値が下がらなくなり、さらにもっと多くのインスリンが分泌されるようになります。
インスリン抵抗性があると、血糖値が下がらなくなり糖尿病になります。そして肥満がある人のほうが、インスリン抵抗性があるとされます。
そしてインスリン抵抗性があると、肝臓に中性脂肪が溜まりやすくなってNAFLを発症しやすくなってしまうことがわかっています。NAFL発症と糖尿病や肥満には深い関係があるのです。
また脂肪組織からは「アディポネクチン」という善玉ホルモンが分泌されています。このアディポネクチンには脂肪酸の分解を促したり、インスリンの働きをよくするなど生活習慣病を改善させる働きがあります。
しかし肥満になると、このアディポネクチンの分泌が悪くなってしまいます。それにより脂肪酸は分解されにくくなり、中性脂肪が肝臓に溜まるためにNAFLを発症しやすくなるとされます。
NAFLもNASHも、その発症の原因は同じです。そしてNAFLに酸化ストレスなどが関与することで、NASHへと進行していくと考えられています。最近、NASHになりやすい遺伝子が存在することなどもわかってきています。
今のところなぜ人によってNAFLなのか、それともNASHになってしまうのかなどについては詳しいことはまだわかっていません。今後もっと詳しいことがわかれば、それに対する薬も開発されてくるでしょう。