肝機能を改善するミネラル4種。肝臓にいい栄養がつまった食べ物

ミネラルは体の調子を整えたり、機能を維持するためになくてはならない成分です。

肝臓が正常に働くためにも、ミネラルの存在は重要になります。

肝臓の機能が低下してしまっているときにはミネラルもしっかり摂取しなくてはいけません。

このとき、どんなミネラルを特に意識して摂取するとよいのかをみていきましょう。

生きていくための必須ミネラルは16種類

地球上の全ての物質の基本単位は元素です。人間の体もその基本単位は元素であり、大部分は炭素、酸素、窒素、水素になります。そしてこの4種類の元素を除いたものを「ミネラル」と呼びます。

人の体の中でミネラルの占める割合は約4%です。たったの4%ですが、その4%がないと人の体はうまく機能することができず健康を損ねてしまいます。

人にとって必須となるミネラルは、次の16種類とされています。

必須ミネラル(16種類)
カルシウム、ナトリウム、リン、カリウム、マグネシウム、鉄、銅、亜鉛、硫黄、塩素、クロム、マンガン、コバルト、セレン、モリブテン、ヨウ素

このうち硫黄、塩素、コバルトを除いた13種類については、厚生労働省が摂取基準を定めています。

わたしたちの体を支えるミネラルの働き

ミネラルは体の中でいろいろな働きをしています。体の骨格としても重要ですし、酵素の構成成分になることで体内の様々な反応にも関わっています。筋肉をスムーズに動かしたり、神経を正常に働かせるためにもミネラルは大切です。

肝臓は食事から摂った栄養素の代謝をしたり、有害物質を解毒するといった働きをしていますが、肝臓が正常に働くためにもミネラルの存在が欠かせません。

例えばお酒を飲んだとき、体はアルコールを有害物質と認識し、肝臓はこれを解毒するために働きます。アルコールを分解してアセトアルデヒドにし、さらに分解して無害な水と二酸化炭素として体外へ排出するのです。

この分解の際にもミネラルが必要で、ミネラルが不足するとアルコールの分解がスムーズにできなくなります。お酒をよく飲む人はミネラルがたくさん必要なため、しっかり摂取しておくことも大切です。

ではミネラルの中でも、特に肝臓の機能に関係するミネラルについてみていきましょう。

肝臓のためにも特に必要なミネラル4種類

お酒の飲み過ぎなどで肝臓を酷使してしまっているとき、また肝臓の機能が低下してしまっているときなどにはビタミンやミネラルを十分に摂取することが大切だと言われます。

ミネラルにはいろいろな種類がありますが、特に次のミネラルを意識するようにしてみてください。

  • 亜鉛
  • マグネシウム
  • セレン
  • クロム

では、詳しくみていきましょう。

亜鉛…アルコール代謝酵素に深く関係している

亜鉛はいろいろな酵素の構成成分で、様々な反応に深く関係しています。そしてタンパク質の合成、DNAの合成、免疫機能の正常化などといった重要な働きをしています。亜鉛不足になると、味覚障害になったり傷の治りが悪くなったりします。

亜鉛はアルコールを代謝する酵素の構成成分にもなります。そのためお酒をよく飲む人にとっては特に大切なミネラルです。

亜鉛は

  • 牡蠣
  • かに缶
  • ウナギ
  • レバー

などに多く含まれます。

ただし牡蠣やレバーには鉄も多いため、鉄を制限するよう指示されている場合には注意してください。

マグネシウム…アルコール依存者は不足しがち

マグネシウムも様々な酵素反応に関係しています。神経の伝達や筋肉の動きの調整を行ったり、丈夫な骨を作るためにも必要になります。

不足すると筋肉がけいれんを起こしたり、心臓の機能に異常が現れたり、イライラしやすくなったりとします。

お酒をたくさん飲むと、尿へのマグネシウム排泄が増えてしまいます。アルコール中毒患者はマグネシウム不足になっていることが多いとされます。

以前の和食中心の食生活であれば、マグネシウムが不足することはほとんどないと考えられてきました。しかし最近は白米や精製された食品を摂ることが多くなり、マグネシウムの摂取量が減ってきています。

マグネシウムは

  • 大豆製品
  • ヒジキやワカメなどの海藻類
  • ナッツ類
  • ほうれん草

などに多く含まれています。豆腐を凝固するために使うにがりの主成分は塩化マグネシウムで、そのため豆腐にはマグネシウムが豊富に含まれています。

お酒を飲む人は食事をしっかり摂っていないことも多く、そのために栄養が不足してしまっていることもあります。飲むときのつまみとして、マグネシウム豊富なナッツや豆腐を選ぶのも良いかもしれません。(もちろん、しっかり食事をしてください。)

マグネシウム不足は、2型糖尿病の発症とも関係しているのではないかと考えられています。普段の食事でマグネシウム摂取について考えることは少ないかもしれませんが、しっかり摂るようにしたいですね。

セレン…非アルコール性脂肪肝炎に効果大?

セレンは抗酸化酵素の活性化に関与していて、重要な抗酸化物質になります。抗酸化物質というとビタミンCやビタミンEがありますが、セレンにもこれらと同様に抗酸化作用があるのです。

抗酸化物質は、生活習慣病の予防に効果があるとして期待されています。非アルコール性脂肪肝炎も酸化ストレスが悪化の原因になるため、抗酸化物質が進行を抑えてくれるかもしれません。

またセレンには抗がん作用があるとして研究がされていて、セレン不足が肝臓がんのリスクを上げてしまう可能性が高いことがわかってきています。

動脈硬化を抑制する作用もあるとされますが、まだはっきりとはしていません。

魚介類や穀物などに多く含まれていて、日本人の平均的な食生活では不足してしまうことはほとんどないとされます。

バランスのとれた食生活を心がけるようにするとよいでしょう。

サプリメントで摂取する場合には過剰に摂取してしまう恐れもあるため、注意が必要です。

通常の食事による摂取の場合には、一時的にたくさん摂ってしまってもすぐに健康に問題が出ることはありません。

クロム…重要な代謝の働きに関与するミネラル

クロムは糖代謝、脂質代謝、タンパク質代謝などに関与しています。

特にインスリンの働きを高めて糖尿病を予防する効果があるとして、いろいろと研究が進められています。脂質の代謝を正常に戻す働きもあるとされます。

非アルコール性脂肪肝炎の原因には、インスリンの働きが悪くなってしまう「インスリン抵抗性」があります。クロムにはインスリン抵抗性を改善する働きがあり、そのため非アルコール性脂肪肝炎の進行にも効果があるのではないかと考えられます。

クロムは

  • 玄米
  • 海藻類
  • ココア
  • ナッツ類

などに多く含まれます。通常の日本人の食生活では、不足することはほぼありません。

アメリカでは、サプリメントからの摂取により健康被害の報告があります。これはサプリメントに高濃度のクロムが含まれていたためで、日本に流通しているサプリメントでも同じ問題があるとされます。

このようなことからサプリメントから摂取しようとするのではなく、食生活を見直してバランスのとれた食事にするようにしてみてください。

肝臓に害になるミネラルもある。肝硬変の人は鉄を控えて

ミネラルは体の機能を維持するために重要な役割を果たしていて、肝機能が低下している場合には積極的に摂ることが勧められます。

ただし肝臓の状態によっては、摂取を控えなくてはいけないミネラルもあります。

意外かもしれませんが、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)や肝硬変では過剰な鉄が症状を悪化させてしまうため、摂取を制限しなくてはいけないのです。

鉄はどちらかというと不足しやすいミネラルで、特に女性は鉄不足から貧血になってしまうことも多くなります。そのためなるべく鉄を摂るように心がけている人もいるかもしれません。

もちろん健康な人はしっかり鉄を摂ったほうがよいですし、肝機能が低下していても病状によっては鉄を控える必要はありません。

ただNASHや肝硬変では肝臓に過剰に蓄えられた鉄が脂質などを酸化させてしまい、病気をさらに悪化させてしまうことがわかっているのです。もともと肝臓は鉄を貯蔵している臓器なのですが、必要以上に溜まった鉄は害になってしまうのです。

もしも鉄を控えたほうが良い状態の場合には、主治医からのその指示があるでしょう。その指示に従って、鉄を多く含む食品は摂り過ぎないようにしてください。

鉄摂取を控えるための工夫

食品中に含まれる鉄は、次のように2種類にわけることができます。

  • ヘム鉄:吸収されやすい鉄、動物性食品に含まれる
  • 非へム鉄:吸収されにくい鉄、主に植物性食品に含まれる

野菜や海藻などに含まれる鉄は吸収されにくい非へム鉄になります。そしてこれらの食品には健康のために大切なビタミンや食物繊維が豊富に含まれます。そのため野菜や海藻などはあまり控え過ぎる必要はないでしょう。

他にも、鉄の摂取を減らすために食べ合わせにも工夫してみてください。

  • 緑茶、紅茶、コーヒーに含まれるタンニン
  • 牛乳に多いカルシウム

は鉄の吸収を妨げます。食事のときにこれらの飲み物を一緒に摂るようにすると、鉄の吸収を控えることができます。

逆にビタミンCやクエン酸は鉄の吸収を促進させてしまいます。神経質になり過ぎることはありませんが、体に良いからとレモン汁やお酢などを使ったメニューが多い場合には少し控えてください。

ビタミンCやクエン酸を多く含んだかんきつ類などをデザートで食べるときには、食後すぐよりも2~3時間あけるとよいかもしれません。

また鉄製の鍋やフライパンを使うと、鉄の摂取量が増えてしまいます。鉄製の調理器具は使わないようにしましょう。

肝臓に良いと言われるシジミ、ウコンなどには鉄も多く含まれます。肝臓のためにと思って摂っているものが逆効果になってしまうこともあるため、注意してください。

現代の食生活では、以前に比べるとミネラルが不足がちになってきています。食品に含まれるミネラル量は減少してきていますし、加工食品が増えたことなどで摂取できるミネラルのバランスが崩れてきているのです。

ただミネラルが足りないからとすぐにサプリメントに頼るより、まずは普段の食生活を見直すようにしてみてください。

栄養素は単独で働くものではなくいろいろなものが協力し合って働くため、ひとつを集中して摂っても十分ではないのです。またサプリメント自体が肝臓に負担となることもあります。

食材の種類を増やすことで、摂れる栄養素の種類も増えてきます。普段から単品のメニューでなく、いろいろな種類の食材を組み合わせた食事メニューを心がけてみてください。

主治医から鉄を控えるよう言われた場合には控えなくてはいけませんが、症状によっては控える必要がない場合もあります。鉄を制限すべきか迷った場合には、必ず主治医に相談してから行うようにしてください。

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