Lシステインは肝臓にも効果あり!美白成分の二日酔い予防パワー

「L-システイン」と言うと、シミやソバカスに効果のあるサプリメントというイメージでしょう。CMなどにもなっているため、女性だけでなく男性も聞いたことのある成分かと思います。

美容のためのサプリメントと思われがちなL-システインですが、実は肝臓に対しても良い影響があります。アルコールの分解を速めることで二日酔いを予防してくれるのです。

L-システインの効果と肝臓との関係について、詳しくみていきましょう。

L-システインはタンパク質を構成するアミノ酸のひとつ

私たちの体の約20%はタンパク質でできています。タンパク質はアミノ酸がたくさん結合して作られたものです。

自然界には約500種類ものアミノ酸が存在しますが、タンパク質を構成するアミノ酸はその中のたった20種類だけになります。20種類のアミノ酸が組み合わせを変えることで、いろいろなタンパク質を作るのです。

L-システインはタンパク質を構成する20種類のアミノ酸のひとつになります。構造の中に硫黄を含んでいて、「含硫アミノ酸」と呼ばれます。

体内ではメチオニンというアミノ酸から合成することができ、「非必須アミノ酸」に分類されます。ちなみにメチオニンは体内で合成できない必須アミノ酸です。

アミノ酸にはL体とD体がありますが、自然界に存在するアミノ酸はほぼ全てL体です。システインも自然界ではL-システインとして存在しています。(L体とD体は鏡に映すと同一の構造となるもので、右手と左手のような関係です。)

L-システインには抗酸化作用があり、肝臓の代謝や解毒作用を促進させたり、黒色メラニン色素の産生を抑えたりといった作用をします。

サプリメントや医薬品としては、次のような作用があるとして使われます。

  • 肝臓保護作用、二日酔いの予防など
  • 黒色メラニン産生抑制による美白作用

それぞれの作用について、詳しくは後の章で説明します。

2つのシステインが結合するとシスチンになる

L-シスチンという成分の名前は聞いたことがあるでしょうか。シミやソバカスに効果があって、美白・美肌によいとされるサプリメントです。システインとシスチンでよく似た名前ですが、どう違うのかと迷われたことのある人もいるかもしれません。

実は2分子のシステインが酸化されて結合したものが、シスチンになります。体内では酸化還元反応によって、システインとシスチンが相互に転換されています。そのため、どちらもほぼ同じ作用を示すと考えられます。

シスチンは、特にケラチンというタンパク質の中に多く含まれています。ケラチンは髪の毛や爪などを構成するタンパク質で、18種類のアミノ酸からできています。

人の髪の毛の場合、ケラチンのうちの18%はシスチンです。髪の毛を燃やすと独特な臭いがしますが、あれはシスチンに含まれる硫黄の臭いです。シスチンが不足すると、髪が抜けやすくなったり爪がもろくなったりしてしまいます。

L-システインもL-シスチンも体にとって大切な成分で、アミノ酸を補給するための総合アミノ酸製剤の点滴にも含まれています(製品によってL-システイン、またはL-シスチンのどちらかが含まれます)。

L-システインが二日酔いを予防する

お酒を飲むとアルコールは肝臓で分解されて有害物質のアセトアルデヒドとなり、さらに分解されて最終的に水と二酸化炭素となって体外へ排出されます。二日酔いの原因は、アルコール分解の途中で作られるアセトアルデヒドです。

L-システインはアセトアルデヒドと直接反応して、無害なものへ変えていきます。アセトアルデヒドの毒性が解毒されれば、二日酔いを予防することができます。

またL−システインは、アルコールを分解する酵素の働きを助けます。アルコールは肝臓で酵素の働きにより分解されますが、酵素の働きがよくなればアルコールの分解も進み、アセトアルデヒドが残らなくなります。

その他、L−システインは代謝酵素の働きを助けることにより、疲労感を改善する働きも期待できます。二日酔いによる倦怠感などにも効果があると思われます。

システインは、同じアミノ酸のグルタミン酸やグリシンとともにグルタチオンを合成します。グルタチオンには抗酸化作用があり、また有害物質の解毒作用もあります。

肝臓の機能を高めるタウリンの合成にも、システインが必要です。システインに酵素が働くことでタウリンが合成されます。

このようにL−システインには二日酔いを予防したり、肝臓の機能を改善したりする作用があります。肝臓の機能を改善させるための医薬品としても使われています。またシステインの誘導体は去痰剤としても使われます。

さらにL−システインは、胃がんのリスクを減らす効果もあるのではないかと期待されています。

胃がんの原因にはピロリ菌の感染や喫煙などがありますが、飲酒によってアセトアルデヒドが増えることでも胃がん発生のリスクが高まると考えられています。

L−システインにはアセトアルデヒドを減らす働きがあります。そのため胃がんのリスクも減るのではないかと期待がされているのです。今後、もっと詳しいことが研究されていくと思われます。

L−システインの美白への効果

L-システインはシミやソバカスを防いで、美白にも効果があるとされます。これはL−システインがメラニン色素の産生に関係するためです。

メラニンというと黒いイメージですが、実際には「黒色メラニン」と「黄色メラニン」があります。この2種類のメラニンの割合によって肌の色などが決まってきます。

メラニンは、アミノ酸のチロシンに酵素が働くなどして産生されます。通常は黒色メラニンが産生されるのですが、このときにシステインがあると途中でシステインとも結合し黄色メラニンとなるのです。

黒色メラニンの産生が減り黄色メラニンの産生が増えれば、美白の効果が出てくることになります。さらにL−システインには皮膚の新陳代謝を促す働きもあり、これも美肌に繋がります。

このようにL-システインには二日酔いを予防するだけでなく、美容にも良い効果が期待できるのです。男性にも女性にも大切な成分かもしれません。

L−システインを摂るには

では、L−システインを食品から摂るにはどうすればよいのでしょうか。

L−システインは、体内でメチオニンから合成されます。そのためメチオニンを多く含む食品を摂るようにすることで、L−システインを増やすことができます。

またL−システインは食品の中ではシスチンとして存在しています。そのためシスチンを多く含む食品を摂ることでも、L−システインを増やすことができます。

メチオニンやシスチンを多く含む食品は、肉類や魚介類です。他に大豆や大豆製品、ナッツ類、穀類などにも含まれます。アミノ酸ですから、タンパク質を多く含む食品に含まれることになります。野菜や果物にはあまり含まれません。

メチオニンやシスチンを多く含む食品

  • 牛肉、豚肉、鶏肉、羊肉などの肉類(脂質を摂り過ぎないように注意)
  • カツオ
  • ホッケ
  • サケ
  • サンマ
  • イワシ
  • カシューナッツ、クルミなどのナッツ類
  • 納豆、高野豆腐などの大豆製品
  • 玄米 など

通常の食事をしていれば、L−システインが不足してしまうことはほぼありません。栄養素はいろいろなものが協力して効果を発揮します。摂りたい栄養があるからと偏った食事をするのではなく、バランスのとれた食生活を心がけてください。

システインやシスチンはサプリメントや医薬品としてもあるため、不足が気になるときには使ってみてもよいでしょう。ただし、たくさん摂れば摂るだけよい効果があるというものでもありません。量を守って使うようにしてください。

食事から一時的に過剰に摂ってしまう場合に関しては、特に心配する必要はありません。

L−システインの摂り過ぎると、糖尿病のリスク大かも!

どんな栄養素にも言えることですが、不足も問題ですが過剰に摂り過ぎてしまうことも問題です。使い方は必ず守るようにしましょう。

L−システインの副作用としては、吐き気や嘔吐・食欲不振などが現れてしまうことがあります。

そして実は最近、L−システインの摂り過ぎが糖尿病を招いてしまうかもしれないということがわかってきました。健康や美容のためにと飲み続けているL−システインが原因で、糖尿病になるリスクがあるのです。

食事をして血液中のブドウ糖が増えると、すい臓のβ細胞からインスリンが分泌されます。そしてインスリンの働きにより、血液中のブドウ糖が減る、つまり血糖値が下がります。インスリンの分泌が悪いとなかなか血糖値が下がらず、糖尿病になります。

マウスの細胞を使った実験で、血液中のL−システインが増えるとβ細胞からのインスリン分泌が悪くなるということがわかりました。この状態が続いてしまうと、2型糖尿病を発症したり悪化させてしまったりする恐れがあります。

ただこの実験では、もうひとつわかったことがあります。L−システインを取り除くことで、β細胞からのインスリン分泌が元の状態に戻ったのです。

実際に2型糖尿病などの患者は、血液中のL−システイン濃度が高くなるようです。

L−システインのサプリメントにはいろいろと良い効果があることはわかっていますが、もしかすると摂り過ぎによるマイナス面もあるかもしれません。安全性は高いとされますが、適切な品質の製品を、使い方を守って使用するようにしてください。

また一番大切なことは、バランスのとれた食生活を送るようにすることです。不足が心配なときに使うことは問題ありませんが、サプリメントに頼り過ぎることのないようにしましょう。

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