【LD・LDH】血液検査でわかる乳酸脱水素酵素の数値が高い意味

今の時代、「糖」というだけでとかく「悪」とみなされがちですが、糖は私たち人間にとって、そして多くの動物にとって重要なエネルギー源であることは間違いありません。

しかし糖がエネルギー源として活用されるためには、しかるべきエネルギーに代謝され、つかいやすい状態である必要があります。

原油そのままではなく、灯油やガソリンに精製される必要があるのと同じです。

肝臓は運ばれてきたさまざまな物質を代謝する臓器で、糖もその物質のひとつです。

今回は糖をエネルギーとして活用できるように肝臓で代謝する際の重要な酵素であるLD(LDH)についてお話しします。

血液検査でみられるLD(LDH)とはどんな酵素で、どんな働きをする?

LD(LDH)は、「乳酸脱水素酵素」と呼ばれる肝臓の酵素です。

「Lactate DeHydrogenase」の頭文字L、D、そして時にHを採用し、LD、LDHなどと記号化して酵素の略称と解釈され、検査項目にも含まれます。

ここからは「LD」に統一してお話ししていきます。

LDは糖をエネルギーに換える役割を果たす酵素

糖は、肝臓だけでなく、脳や筋肉をはじめ、体内の至るところでエネルギーに変換される必要があります。ということは、LDも身体中のあちこちで産生される必要があります。

とはいえ、特に肝臓、腎臓、心筋、骨格筋、赤血球などには豊富に含まれなければならない酵素で、身体の何らかの異常を示すマーカーとしての役割を果たすためには、血中のLD値を調べる必要があります。

マーカー(検査項目)としてのLDの働き

体内のあちこちにLDが存在するということは、LD値の異常が何らかの病気のマーカーとなる可能性が高いことになります。実際LD値は、いろいろな病気のマーカーとして有効なデータとなります。

上記で触れた肝臓、腎臓、心筋、骨格筋、赤血球などの細胞組織に異常が起こり、LDが大量に血中へと流れ出すことで、血中のLD値は上昇します。つまり、LD値は血液検査によって有意なデータとなります。

LD値の正常範囲と異常時に疑われる疾患は?

LD値の正常範囲を理解しておくと、これに異常が認められた際には何らかの原因が考えられます。

LD値だけではいきなりはっきりした原因の特定は難しいかもしれませんが、ほかの数値との組み合わせで原因が判明することもあります。

まずはLD値の基準値を知る

LD値を疾患のマーカーとして知るためには、まずはLDの正常範囲を知っておく必要があります。

LDが不当に血中に漏れ出すことで、上記の臓器や筋肉などの細胞組織のいずれかに、何らかの異常の疑いがあることになります。

LDの基準値
180~370IU/L(SFBC準拠法による)(※)

※注意・・・ほかにUV法、PL反応法などの検査方法があり、この場合、上記の数値とは異なる。また、医療機関によっても正常の解釈が異なることがある。

検査方法ごとの基準値が異なる点には要注意ですが、検査結果の表には、異常があるときにはL、H、赤字印字などの何らかのアラームを伴って記されます。

LD値異常は重篤な疾患の可能性を示す!可能性がある具体的リスクは?

何しろ全身の至るところにある細胞内に含まれている酵素ですから、多少体調が良くないなどのケースでは、LD値に異常が見られることもあります。

しかし正常範囲を大きく逸脱した場合は心配です。

LD値異常が起こる原因と可能性を知る!

中にはかなり重篤な疾患が原因となってLD値異常が起こっていることもありますので、正常範囲を大きく逸脱しているときには、病院で相談するなどの対処が必要になります。

LD異常の原因となりうるリスク
  • 重度高値異常(基準値上限の4~5倍)・・・急性肝炎、肝臓がん、心筋梗塞など
  • 中等度高値異常・・・慢性肝炎、肝硬変、腎不全、悪性貧血(※)、筋ジストロフィー、間質性肺炎(※)、さまざまな臓器のがん

※注意・・・悪性貧血は、主に再生不良貧血を指す。また、間質性肺炎は、「間質」と呼ばれる肺組織が線維化して起こる肺疾患の総称。

ちょっとした誤差の範囲ではなく、LD値が血中で大幅に増加するのは、病変などにより損傷が進んだ細胞からLDが漏れ出し、これが血中に流れ込んでいることを意味します。

つまり肝臓、腎臓、心筋、骨格筋、赤血球、肺などの臓器の異常で、LD値は高値を示します。また、部位によらず、細菌感染症や外傷でもLD値が上昇することがあります。

細菌感染症にしても外傷にしても、症状が重度であればあるほど、LD値が大きく上昇することになりますので、LD値は疾患マーカーとしてだけではなく、感染症や外傷の程度を知るデータとしても有効です。

なお、LDは有意な性差はありませんが、妊娠している女性はLD値が多少上昇することもあります。

LDをさらに細分化すればLD値異常の原因特定に役立つ!

上記でお話ししたとおり、LDは全身の至るところに内包される酵素なので、LD値異常により「どこかに何らかの異常がありそうだ」という重要な手がかりには確かになります。

ただ、全身のどこかというと、米袋をぶちまけてブランドがちがう米粒1粒を探すようなものですから、LD異常の原因や疾患を特定するためには、もう少し詳細なデータが必要になります。

そのための手段として、LDをさらに5段階に細分化したLDH1~LDH5までの分析する検査が現在は主流です。

この方法を「アイソザイム検査」と呼びます。検査で知ることができる臓器とLDの組み合わせは以下のとおりです。

LDの系統(種類)[基準値(%)] 異常の際に疑われる疾患
LDH1[20.0~31.0] 心筋梗塞、溶血性貧血(赤血球細胞の破壊が起こるタイプの貧血)
LDH2[28.8~37.0] 筋ジストロフィー、肺梗塞、慢性骨髄性白血病
LDH3[21.5~27.6] 悪性腫瘍、大腸がん、肺梗塞、慢性骨髄性白血病
LDH4[6.3~12.4] 悪性腫瘍
LDH5[5.4~13.2] 悪性腫瘍、急性肝炎(特に初期)、(特に転移性)肝臓がん(慢性肝炎、肝硬変では上昇しない)

LD値に異常があったらすみやかに医療機関へ!

今回は、乳酸脱水素酵素LD(LDH)の役割や疾患マーカーについてお話ししてきました。上記のとおり、LD値が大きく跳ね上がるようなことがあるなら、なにか重大な疾患が隠れている可能性があります。

おそらく検査を担当する医療機関のほうからも、何らかの指摘があると思いますが、これに従い、しっかりと原因を特定し、治療をうけるなどの対処を踏まえていただきたいと思います。

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