急性肝炎の症状一覧。風邪に似た発熱やのどの痛みに要注意!

肝臓病のひとつに「肝炎」という疾患があり、この肝炎にもいくつかの種類があります。

アルコールやウイルスなどの原因によって主に種類分けさる場合もありますが、原因ではなく、症状のタイプによって種類分けされることもあります。

アルコール性脂肪性肝障害・肝炎や非アルコール性脂肪性肝炎、そしてウイルス性肝炎は原因によって分類されますが、それぞれ慢性肝炎や急性肝炎、劇症肝炎など、症状タイプごとに分類されるわけです。

今回はこの中でも非常に怖い、急性肝炎についてお話します。

急性肝炎は風邪に似た症状がでる!

急性肝炎とは、主にウイルス性肝炎(A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、さらには日本では少ないD型、E型肝炎)でみられる症状タイプの肝炎です。

急性肝炎の症状は、通常潜伏期間が長いウイルス性肝炎(多くは慢性肝炎)でありながら、感染後すぐに現れる種類の肝炎の症状(肝機能障害)を指します。特にA型肝炎やE型肝炎では急性肝炎を発症しやすい特徴があります。

「急性」というと、急性心不全や急性アルコール中毒など「重くて死の危険があるのか・・・?」とイメージするかもしれませんが、急性肝炎の場合は「症状が出るのが早い」という、医学的見地では従来通りの症状になります。

急性肝炎でみられる症状一覧

急性肝炎の症状にはいくつかの段階があって、徐々に悪化をたどっていきます。急性アルコール中毒や急性心不全などとは症状のタイプが異なりますが、最悪の場合死に至ることがないわけではありません。

まあこういうことを言い出したら風邪でも慢性肝炎でもなんでも同じことなのですが。

急性肝炎の症状
  1. 発熱、咽頭痛(のどの痛み)、頭痛などの感冒様症状(風邪気味)
  2. 黄疸(おうだん=白目や皮膚の一部が黄変する症状)、褐色尿(尿の黄疸のイメージ)
  3. 食欲不振
  4. 全身倦怠感(強いだるさ)
  5. 吐き気、嘔吐
  6. 腹痛
  7. その他関節痛、発疹など

(参考:臨床所見・症状-国立研究開発法人国立国際医療研究センター肝炎情報センター より)

だるさやのどの痛み、頭痛など、初期症状はとにかく「風邪」に似ているため、病院に行ってもかぜ薬で様子を見てくださいという程度に扱われてしまうくらい、典型的な体調不良がみられます。

しかし「黄疸」は最も代表的な肝機能障害ですから、この段階で肝臓の異常を察知し、これは急性肝炎だ!とは思わないにしても、対処していただくことが重要です。

急性肝炎の診断基準って?検査ではこんなことを行う

  • 血液検査
  • ウイルスチェック
  • プロトロンビン時間の測定

まずは血液検査が実施されることが多いです。

早期段階だと風邪に似た症状なので、黄疸が出た時点で血液検査が実施される可能性が高いでしょう。主に肝機能検査を目的とした血液検査になります。

急性肝炎の際にひっかかってくる検査項目は、ALT(GPT)AST(GOT)などで、これらが明らかに上昇したとわかる数値を示します。また、「黄疸の黄色い色素」の原料となるビリルビンの数値も上昇します。

血液検査で急性肝炎が強く疑われたら、今度はウイルスチェックを行います。急性肝炎はウイルス性肝炎でのみ発症するからです。ウイルスチェックの内容は以下のとおりです。

急性肝炎のウイルスチェック(ウイルス感染が認められるケース)
  • A型急性肝炎・・・IgM-HA抗体が陽性
  • B型急性肝炎・・・IgM-HBc抗体およびHBs抗原が陽性
  • C型急性肝炎・・・HCV-RNAおよびHCV抗体が陽性
  • E型急性肝炎・・・IgA-HEV抗体陽性、HEV-RNA陽性(健康保険適用外の検査です)
  • 非A非B非C非E型急性肝炎(※)・・・D型を除くA型~E型の肝炎ウイルス抗体・抗原がすべて陰性であり、なおかつ抗核抗体陰性(自己免疫性肝炎ではないことの証明)、さらに既知のウイルス感染症が否定される

(参考:起因ウイルスの診断-国立研究開発法人国立国際医療研究センター肝炎情報センターより)

また、急性症状が重度の場合、血液検査でプロトロンビン時間を計測して重症度をはかる検査を行うこともあります。重度の場合劇症肝炎発症の危険性を考慮し、予防的治療を急ぎます。

※注意
非A非B・・・というのはつまり、A型急性肝炎でもなくB型急性肝炎でもなく・・・ということになります。じゃあなんなのさ!「D型急性肝炎」ということ?と思うと思いますが、これについて簡単に説明を加えます。

実はD型肝炎には急性肝炎がありません。もちろんD型肝炎ウイルスが感染して急性症状が現れる肝炎もあるのですが、このケースについては、「D型急性肝炎」とは通常呼ばないのです。

というのもD型肝炎は、B型肝炎ウイルスのなかに寄生虫のように入り込む特殊な肝炎ウイルスなので、感染するとB型肝炎を悪化させる危険性が増すだけで、D型肝炎ウイルス単体で何か悪さをするわけではないからです。

それでは非A非B・・・はいったいなんなのかというと、実は肝炎ウイルスには、A型~E型以外にもG型、TT型肝炎ウイルスが発見されており、今後も新たな肝炎ウイルスが発見させる可能性も十分考えられることと関係します。

そのためやむを得ず、非A非B・・・(A型でもなくB型でもなく・・・)というまどろっこしい名前の抗体抗原検査になってしまうのです。なお、非A非B・・・の説明中にある「抗核抗体」というのは、自己免疫抗体のことです。

自己免疫抗体とは、体外から不当に侵入してきたウイルスや細菌、アレルギー原因物質などの危険物を攻撃する一般的な抗体に対し、何も悪くない自身の細胞や組織を攻撃してしまう、免疫機能を損なった抗体のことです。

急性肝炎の潜伏期間、感染経路、治療法

急性肝炎の場合、症状が現れるまでの潜伏期間が一般的な肝炎にくらべて短いという特徴があります。

急性肝炎の症状が出てから6か月以上症状が継続した場合、その時点で「慢性肝炎」となります。

ですから肝炎の場合、「急性」と「慢性」のちがいが潜伏期間のちがいにあるわけではありません。急性肝炎の潜伏期間は、通常3~8週間です。

ただB型、C型急性肝炎の場合、発症までに6か月程度要することもあります。しかしB型、C型肝炎は発症までに10年、20年、さらには30年かかるといった無症候性キャリアも多いですから、半年程度は「急性」に分類されます。

急性肝炎の感染経路についてですが、こちらは急性か否かのちがいがあるだけで、基本的には通常のウイルス性肝炎それぞれの感染経路と同じと考えて問題ありません。

感染経路や潜伏期間よりも、急性肝炎でより注意すべきことは劇症化して死の危険を招く危険性が慢性肝炎よりも高いということです。逆に慢性化すれば劇症化のリスクは軽減されます(ゼロではありません)。

急性肝炎の治療の目的は、劇症化、慢性化を避け、症状をできるだけ軽減することにあります。そのための手法としては、

  • インターフェロン療法
  • 薬物治療
  • 食事療法
  • 安静

など、多方面からアプローチします。

急性肝炎は早期発見・早期治療が最大のポイント!

急性肝炎は、できるだけ早期に発見して早期に治療することが最大のポイントです。

そんなのどんな病気だって同じじゃないかと思われるかもしれませんが、悪化しはじめるとみるみる悪化する危険性もあるのが急性肝炎です。

ただし、風邪のような症状が実は急性肝炎だったということが多いので、早期発見はなかなか難しい部分があることも事実です。とはいえ、黄疸などの特徴的な肝機能障害が現れるので、早期発見が不可能なわけではありません。

できるだけ早く発見するためにも、まずは定期的に健康診断を受けて血液検査(肝機能検査)をこまめに行うことが重要であるといえます。大事にならないよう、できる範囲で予防に努めていただきたいと思います。

この記事をシェア

合わせて読みたい

ページ先頭に戻る