休肝日は必要ない!?アルコール処理能力から考える肝臓を休める方法

あなたはアルコールを飲まない日、すなわち休肝日を設けていますか?

習慣的にアルコールを摂取している方は、休肝日が必要とさんざん言われていますよね。たまには休肝日を作って肝臓を休ませなければいけない、というようなことは何となく知っているでしょう。

しかし、一方で休肝日にはあまり意味がないという意見もあるようです。

実は、きちんと肝臓の働きを把握した上で肝臓を正しく休ませることができれば、休肝日は必ずしも必要ではありません。

ずばり休肝日が必要なのかどうかは、あなたの飲み方次第なのです。

ここでは、正しい肝臓の休ませ方と休肝日のあり方について、薬学博士が分かりやすく解説いたしますので、どうか日々の健康に役立ててください。


肝臓にはアルコールの分解・解毒に限界がある

休肝日とは、アルコールを飲まない日であることは誰しも知っているでしょう。

休肝日の目的は、もちろん肝臓を休めるということ。けれども、どのようにすれば肝臓が休まるのかはご存知でしょうか。

それには、少し肝臓について学ぶ必要があります。

まず、なぜ肝臓を休ませる必要があるのかについてよく知るために、アルコールを飲んだときに私たちの身体の中で肝臓がどのような働きをしているのかについて見ていきましょう。

そもそもなぜ休肝日が必要だとされるのか

肝臓は、私たちの体内に口などから取り込まれたあらゆるものを分解(代謝といいます)し、また身体の毒になる物質を解毒する働きをすることで知られています。

アルコールも肝臓で代謝を受けますが、アルコールの量に対する肝臓の処理能力には限りがあります。

すなわち、飲んだアルコール量に対して肝臓で処理するためにおおよそ必要な時間というものがあります。

ビールなら中瓶1本、日本酒なら1合を肝臓で処理するのに約4時間くらい必要だと言われています。

急性アルコール中毒は、こうした肝臓の処理スピードをはるかに上回る量を短時間で飲んでしまったがために起こる症状です。

ただし、アルコールの肝臓での処理スピードは、体重やそのひとが持つ酵素の量などに依存するため、かなりの個人差があることも知られています。

しかしながら、アルコールが過剰摂取されたとき、肝臓内ではアルコールや食べ物から代謝によって生成された脂肪酸が燃焼されずに残ってしまいます。

残った脂肪酸は、中性脂肪として肝臓内に貯えられるようになり、これが脂肪肝になる原因であることが知られています。

そうならないためにも、肝臓の処理スピードに合わせ、ゆっくりしたペースでお酒を飲んだり、一日で飲む量を制限したり、ときには肝臓を休めるのが身体によいとされています。

そうした対処法のひとつとして、休肝日という考え方があるわけです。

再生能力をもつ肝臓でも、働きっぱなしではいずれ肝不全や肝臓がんに陥る

肝臓はよく沈黙の臓器だと言われます。これは肝臓がダメージを受けても症状に表れにくいことに由来しています。

また、肝臓は修復・再生する機能があることでもよく知られています。肝臓の一部を切除しても一ヵ月もしたら元の大きさに戻ると言われています。このような再生能力を持つのは、私たちの身体の中で肝臓だけです。

肝臓がこのような機能を持つことで、肝臓がんなどの治療に切除手術や生体肝移植といった方法が可能となるわけです。

再生能力と聞くと、肝臓は何やら強くて逞しい不滅の臓器という印象を持ってしまうかもしれません。

しかし、だからといって肝臓を働きっぱなしにしていいはずはありません。

さきほど、過剰となった脂肪酸が中性脂肪として肝臓に貯えられることが脂肪肝につながると書きました。

脂肪肝とは肝臓が脂肪を蓄えて太っただけという状態ですので、何らかの体調不良に見舞われたりするような段階ではありません。

まだ脂肪肝の段階であれば、食事に気をつけたり、適度な運動をしたりすることで肝臓を元の健康な状態に戻すことができます。

しかし、脂肪肝からさらに進むと様々な肝障害につながっていきます。そして、肝硬変という肝臓の細胞が壊れた状態になってしますと、いかに再生可能な肝臓といえども、もう元には戻りません。

さらに肝硬変の先にはもっと恐ろしい病気、肝不全や肝臓がんという深刻な病気が待ち構えています。

正しい肝臓の休め方とは?肝臓の活動リズムと処理能力から考える

肝臓について少し学んできました。ここまでで得た知識を用いることで正しい肝臓の休め方への理解を深めることができます。

肝臓の活動がもっとも活発になるのは、朝から昼前くらいにかけてとされており、夕方から夜にかけて肝臓は休息時間にあたると言われています。

肝臓を休めるのにもっとも適した時間帯は、午前1時から3時の2時間とされています。つまり深夜ですね。

当たり前ですが、この時間帯に飲食をするのは、肝臓にとってたいへんな負担となります。

深夜の深酒や夜食は控えた方がよさそうだということがこのことからもよく分かります。そして、朝と昼はしっかりと食べてもよいことが分かりますね。

また、肝臓を休めるのにもっともよいのは睡眠というのもひとつのポイントです。アルコールを飲んだ夜は、きちんと睡眠を取ることが肝臓の疲れをしっかり取ることにもつながります。

休肝日がいらない?肝臓に負担をかけない飲み方とは

「夜にお酒を飲まないで、朝や昼に飲む」というわけにもいきませんので、肝臓にできるだけ負担のかからない飲み方を考えてみましょう。

これまでの情報をまとめると、ビール中瓶1本か日本酒1合を遅くとも午後9時くらいに飲み終えれば、午前0時までアルコールはほとんど代謝されることになります。

眠ってしまうと肝臓の働きも弱まると言われていますので、アルコールが十分に代謝されるまで起きておくということも重要です。

そして十分にアルコールが代謝された後は、しっかり睡眠を取りましょう。そうすることで肝臓を休ませることができます。

午後9時までなんて早すぎるし、しかもビール中瓶1本か日本酒1合なんて少ないと思われるかもしれませんね。

ですが、この程度の飲み方をしていれば、とくに休肝日を設けなくてもいいとも言えます。その程度であれば、一日の中できちんと肝臓を休ませることができているわけですから。

肝臓に負担をかけないお酒の飲み方まとめ
  • 遅くとも午後9時くらいに飲み終えるようにする
  • アルコールが代謝されるまで、できるだけ眠らない
  • 代謝された後はぐっすり眠る

肝臓は完全週休二日制!?正しい休肝日の取り方

肝臓に負担をかけない飲み方であれば、わざわざ休肝日を設ける必要はないのかもしれません。

けれど、実際には仕事上の付き合いで飲まなければならないこともあれば、何よりそんな量では飲み足りないという方も多いでしょう。

もっと飲みたい!けど、それだと肝臓は休まらない?

それでは、正しい休肝日の取り方を考える上で、先ほどの目安を超えた場合を考えてみましょう。

例えば、ビール中瓶2本か日本酒2合と先ほどの目安の2倍のアルコール量なら処理にどれくらいかかるかというと、単純に倍かかると考えてよいようです。つまり、この場合は約8時間が必要ということになります。

この場合、睡眠時に肝臓を休ませるということを考慮に入れて、午前0時に就寝すると仮定すると、夕方の4時(※)に飲まなければならないことになります。

このような飲み方は、休日でもない限り難しいでしょう。

(※)注意:実際には、アルコールを一気に飲むものでもありませんし、また飲み始めてから身体の中でアルコールは逐次代謝されていくので、正確な目安ではありません。

ここまで律儀に考える必要はないかもしれませんが、これまで上げたような目安をきちんと把握しておくことが必要です。

つまり、これらの目安以上のアルコール量は、肝臓の一日の処理能力を超えており、十分に肝臓を休ませることができていないと認識しておく必要があります。

タクシーの運転手さんのような交通関係にお勤めの方や、そのような職業でなくても車通勤をする方などは、とくに注意が必要です。

これらの目安以上に飲むということは、次の日の朝にアルコールがまだ代謝されずに残っている。つまり酒気帯びの可能性があるからです。

もちろんこうした状況には必ず個人差があります。先ほどの目安以上に飲んでいるけど、次の日の朝にはすっかりアルコールは抜けているというひともいるでしょう。

ただ、それはあくまで表面上アルコールが残っているような状態にないだけであって、呼気検査をした場合に酒気帯びとなってしまう可能性がありますので、注意が必要です。

アルコールを処理するのにかかる時間を体重から換算する方法がありますが、ここでは計算方法などの詳細は割愛します。

興味のある方は、インターネットでチェックするか、最近ではスマホのアプリでもそのような確認ができるようですので見てみてください。

正しい休肝日は連続しての二日間が必要

先ほど上げたような目安を超えた飲み方は、肝臓に負担をかけていることになりますので、毎日飲み続けることで、あなたの肝臓は休まないで働き続けていることになります。

沈黙の臓器ですから、肝臓はあくまで黙して語らず、ですが、肝臓の細胞は確実に壊れていく一方、気がついたときにはもう元には戻らない状態になっています。

そこで肝臓を休ませる日、休肝日が必要になってきます。

一般的に休肝日は、一週間のうちに連続して二日を取ることがよいとされています。

これはアルコールが体内から完全になくなってしまうまでに48時間以上が必要とされているからです。肝臓は完全週休二日制だとおぼえると分かりやすいでしょう。

一般的な会社だと土日休みの完全週休二日制のところが多いと思います。肝臓もそれと同じなんです。二日を連休にすることがくれぐれも大事です。おぼえておきましょう。

きちんと肝臓を休めることは、より長くお酒を楽しむ未来につながる

飲むのが好きでたまらないひとにとって、休肝日はとても寂しいかもしれません。

最近では、ノンアルコール飲料もたくさん売られていますし、中には美容と健康を意識したノンアル商品もあります。

休肝日にこうしたノンアルコール飲料を使って少し飲む気分を味わうこともいいかもしれません。

また、休肝日には、毎日使っていたお酒代を節約することにもなりますから、その分、少し夜のおかずにお金をかけて豪華な食卓にしてもいいかもしれません。

もちろん休肝日でお酒を我慢しているからとストレス発散といって脂っこい食事とかやけ食いをしてしまっては肝臓を休めることにはなりません。

自分の好きなメニューの中からヘルシーで少しリッチな気分になれるような工夫を施した食卓にすると休肝日もそれなりに楽しみになってくるのではないでしょうか。

また、これまで休肝日を設けていなかったひとは、ウォーキングなどのように軽めの運動を同時に取り入れることで、貯まった中性脂肪を減らすことができるのでよいかもしれません。

休肝日を設けるなどして、ご自身の身体を労りながら、健康で長く生き続けることは、結果として、より長くお酒を愉しめると考えることもできるかと思います。

この記事をシェア

合わせて読みたい

ページ先頭に戻る