血液検査の数値の意味。これで肝臓の状態がまるわかり
血液検査を受けることは受けても、そして仮に数値に異常がみられたとしても、検査項目は暗号のような表記が羅列されることが多いため、なにが悪いのかを考えるための思考回路が停止してしまうこともしばしばあります。
特に肝機能の状況を示す検査項目は多様で、「よくわからないなぁ」の傾向は顕著です。
そこで今回は、一般的な血液検査やさらに詳細な検査で知ることができる肝機能を示す項目と数値についてまとめます。
肝機能とかかわりがある検査項目とその意味、基準値をひとつずつご紹介!
肝機能の数値は、一般的な血液検査を受ければまず例外なく知ることができる項目と、かなり詳細な検査をしなければ知ることができない項目とがあります。どちらが大事という区別があるわけではありません。
自分の身体のことですから、一般的な血液検査であろうとなかろうと、どちらも重要であるということを忘れるべきではありません。ただ、一般的な血液検査でわかる項目とそうでない項目があることも事実です。
一般的な検査で異常があった場合、さらに詳細な検査でさらなる異常がわかる可能性があるという意味では、まずは一般的な血液検査を受けて、肝機能をチェックしましょうよ・・・とはいえるのです。
そのために、肝機能の項目ごとに概要を知っていただきたいと思います。
一般的な血液検査で知ることができる肝機能の項目・基準値を知る!
たとえばグルコース(空腹時血糖)、ヘモグロビンA1c(HbA1c)、クレアチニン(CRE)、尿酸など、一般的な血液検査で知ることができる検査項目はいろいろありますが、肝機能を示す検査項目は主に3種類です。
なぜ血液検査で肝臓にかかわる数値がわかるのかというと、肝細胞(肝臓をつくる細胞)が破壊されて必要以上の肝臓酵素が血中に流れ出しているからです。つまり、物理的に肝臓がダメージを受けていると上昇する数値です。
ただしγGTPは、肝細胞ではなく胆汁の流出により検知されます。あくまでも概要だけをご紹介しますので、数値の異常から疑われる具体的な疾患など詳細な情報については、それぞれのリンクをご参照いただきたいと思います。
検査項目 | 説明 | 基準値 |
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ALT(GPT) | 主に肝細胞が破壊されることで血中に流れ込む肝臓酵素。異常の場合脂肪肝の疑いがある。 | 30IU/L以下 |
AST(GOT) | ALT(GPT)も同時に高値の場合、肝細胞の破壊が起こっている可能性が高く、単独でAST(GOT)が高値の場合、心臓などの臓器疾患や筋肉細胞の破壊などが疑われる。 | 30IU/L以下 |
γGTP(γ:ガンマ) | 高値異常がみられる場合、アルコール性脂肪肝による胆汁の流出障害が起こっている可能性が高い。悪化するとアルコール性脂肪性肝炎への移行のリスクがあるが、アルコール摂取をコントロールすることで正常化することもある。 | 50IU/L以下 |
「肝細胞の破壊」というと何かとてつもなく不吉なイメージがありますが、最大の臓器である肝臓を構築する肝細胞の数は非常に多く、肝臓の仕事もハードなので、ある程度肝細胞がダメージを受けることはあります。
上記に異常がみられた場合、肝細胞などのダメージが「ある程度」を超えた可能性がある、と解釈しましょう。そして、これらの項目に異常がみられた場合は、詳細な検査を受けることが望ましいでしょう。
ただ、肝細胞の破壊によって酵素などが血中に流れ込むタイプの肝機能障害は、上記以外にもあります。
肝細胞に破壊が起こって発症する肝機能障害のマーカーとなる検査項目は?
肝臓のトラブルや、肝臓自体に問題がなくても肝臓の数値に変化が現れるなど、数値の異常から特定の疾患のリスクを想定することができるとき、その検査項目および検査値を「マーカー」と呼びます。
がんの検査では「腫瘍マーカー」などとしてよく用いられるワードですが、どんな検査項目でも、基本的にはマーカーとなりえます。肝細胞のダメージを示すマーカーとなる主な検査項目は上記2種を含む3種類です。
残りの1つが以下の項目になります。
検査項目 | 説明 | 基準値 |
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LD(LDH) | 肝細胞破壊により血中に流れ出す酵素。ただし心臓、腎臓、赤血球などの異常でも検知されることがあるので、LD値に高値異常がみられた場合、肝疾患以外の疾患にも注意が必要。進行性、転移性がんなど重度疾患で上昇しやすい。 | 120~240IU/L |
LD(LDH)は、ALT(GPT)、AST(GOT)、γGTPのように一般的な血液検査では触れられないこともある検査項目です。ただ、肝細胞の破壊で起こるという意味ではALT(GPT)、AST(GOT)と同じ種類の項目になります。
肝疾患により酵素などの産生能力減少・喪失が起こり低値を示すマーカーについて
細胞破壊が起こってそこから肝臓酵素が漏れ出すタイプの肝機能障害に対し、酵素など、肝臓生成物を産生する細胞がダメージを受け、数値が低下することで異常と判断されることが多い検査項目についてまとめます。
検査項目 | 説明 | 基準値 |
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血小板 | 止血の機能を担う血液成分の1つ。肝硬変などにより肝組織が線維化することで、血小板の産生が滞ったり血小板細胞が大量に破壊されたりする。肝疾患による主な異常は低値異常。 | 14万~34万/μL(μ:マイクロ、1μL=0.001mL) |
コリンエステラーゼ(ChE) | 肝臓だけでつくられる分解酵素なので、肝疾患の重要なマーカーとなる。肝硬変など、肝機能障害時にコリンエステラーゼの産生が停滞し、著しく低下する。 | 男性:234~493IU/L、女性:200~452IU/L |
アルブミン | 肝機能障害によりアルブミン産生が低下し、血中のアルブミン濃度が低下する。肝臓だけでつくられるたんぱく質で、低アルブミンにより肝疾患が強く疑われる。また、アルブミンは総たんぱくのおよそ67%を占めるため、総たんぱくが減少することもあり、両者を参照しながら判断する。 | 総たんぱく:6.7~8.3g/dL、アルブミン:3.8~5.3g/dL |
アルブミン値については、あとにお話しする「A/G比(エージーひ)」とのかかわりも密接です。
肝疾患による胆汁の流れや成分の異常が起こる検査項目は?
肝疾患により、肝臓で産生される胆汁の流れが悪化したり、胆汁中成分の異常な増加、減少が起ったりすることでマーカーとなる検査項目をまとめます。
検査項目 | 説明 | 基準値 |
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ALP | 胆汁うっ滞(胆汁の流れが滞る)ことによって血中に流れ出す胆汁中の分解酵素。なんらかの肝機能障害が胆汁うっ滞の原因となる可能性が高い。 | 100~325IU/L |
LAP | 肝機能障害が原因の胆汁うっ滞により、胆汁中の分解酵素LAPが逆流して血中に流れ込むことで高値異常が起こる。LAPは肝臓や胆道だけでなく、すい臓、腎臓、腸管などあらゆるところに存在するが、数値に現れやすいのが肝臓と胆道系のトラブル。 | LPNA法で30~80IU/L |
総ビリルビン | 胆汁うっ滞によって血中に流れ出す胆汁中の黄色色素。なんらかの肝機能障害が胆汁うっ滞の原因となる可能性が高い。 | 0.2~1.2mg/dL |
ALPとLAPは、項目としてもそうですが、酵素としての働きもよく似通っていますね・・・取り違えないように注意しましょう。また、ビリルビンは肝機能障害の代表格である「黄疸(おうだん)」でみられる黄色い色素です。
免疫系マーカーも見逃せない!ウイルス性肝炎のマーカーは抗原や抗体そのもの!
肝臓は大量の血液が流れ込む臓器ですから、ウイルスの血液感染の影響を受けやすい臓器でもあります。ウイルス性肝炎といえば、なんといってもB型肝炎、C型肝炎がよく知られますね。
まずは「B型肝炎ウイルスのマーカー」を以下にまとめます。
抗体・抗原の種類 | 陽性(+)の場合の説明 |
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HBs抗原 | B型肝炎ウイルスに検査時点で感染していることを示す。 |
HBs抗体 | 検査以前の過去に、B型肝炎ウイルスに感染していたことを示す。 |
HBe抗原 | B型肝炎ウイルスに検査時点で感染しており、感染性が強いことを示す。 |
HBe抗体 | B型肝炎ウイルスに検査時点で感染しているが、感染性が弱いことを示す。 |
▼B型肝炎ウイルスのマーカーについて、詳しくはこちらをご覧ください。
【HBV抗原・抗体】血液検査でみるHBsはB型肝炎感染の有無をみる
続いて「C型肝炎のマーカー」について以下にまとめます。
- C型肝炎ウイルス抗体
- 陽性(+)の場合、検査時点でC型肝炎ウイルスに感染している、あるいは検査以前の過去にC型肝炎ウイルスに感染していたことを示す。
B型肝炎やC型肝炎は、ウイルス性肝炎なので、基準値ということではなく、抗体や抗原があるかないかで判断します。いうなれば、基準値は「陰性(-)」ということになるでしょうか。
▼C型肝炎ウイルスのマーカーについて、詳しくはこちらをご覧ください。
【HCV抗原・抗体】血液検査でC型肝炎の感染有無を知る重要性
その他の主要検査項目についてのまとめ
肝臓に影響をおよぼす、あるいは肝機能障害や肝疾患が原因で肝臓以外の臓器のマーカーとなる検査項目もあります。それぞれの基準値など詳しい情報については、詳細ページ(検査項目のリンク)をご覧ください。
検査項目 | 説明 |
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アミラーゼ | 膵炎、すい臓がんなど、あるいはその他のすい臓のトラブルによって消化酵素アミラーゼの流れに阻害が起こることで、血中のアミラーゼ濃度が上昇する。肝疾患の多くで上昇がみられるが、肝硬変では逆に低下の傾向。 |
γグロブリン | 主に細菌やウイルスなどをブロックする抗体5種(IgG、IgM、IgA、IgD、IgE)の総称で、多くは肝臓でつくられるたんぱく質グロブリンの一種。ただしγグロブリンは肝臓以外のさまざまな部位でつくられる「免疫グロブリン」の一種。 |
A/G比 | 「アルブミン÷グロブリン」の比の値。肝疾患をはじめ、ネフローゼ症候群やがんなど、さまざまな重大疾患の有効なマーカーとなる。アルブミン値を参照する必要がある。 |
膠質試験(ZTT・TTT) | 主にZTT、TTTの値を調べる。詳細な肝機能検査のためのスクリーニングテストとして行われることが多い。 |
プロトロンビン(PT)時間の測定 | 体表および体内で起こる出血の際に肝臓で生成・分泌される凝血酵素プロトロンビンが正しく機能しているかどうかを調べる検査。プロトロンビンは止血の役割を担う酵素。 |
全身の健康とかかわる肝臓の機能!だからこそ肝機能に関する検査数値が重要!
肝臓は全身から大量の血液が集まり、適切な処理を施したら再び全身に向けて血液を送り出します。ですから肝臓がダメになるということは、血液が循環する過程で全身にさまざまな異常が現れるということを意味します。
だからこそ、肝機能を示す数値には多くの人が敏感になるのです。万一肝機能の数値に何らかの異常がみられた場合、詳細な検査や治療などの対処をすみやかに行うよう心がけていただきたいと思います。
もちろん上記は主要な肝機能の検査項目にしかすぎませんが、数としては相当多いですよね。ですから、お医者さんでもない限り、これらをすべて暗記する必要はまったくありません。
ただ、ご自身が肝機能検査でひっかかったときなどは、辞書的にこれらの検査項目を調べる際の参考にしていただければと思います。なお、基準値の解釈は検査機関や医療機関によって異なることもありますので、ご注意ください。