【肝臓の病気一覧】肝疾患を引き起こす原因とそれぞれの特徴

肝臓は「沈黙の臓器」とも言われ、問題が起きても自覚症状はあまり出ません。検診で肝機能の異常を指摘され、初めて気がつくということがほとんどです。

しかし自覚症状がないからといって放っておいては取り返しのつかないことになってしまいます。

肝臓に問題を起こしてしまう原因はウイルス、アルコール、薬物など実に様々です。

どんな原因によって肝臓にどのような病気をもたらしてしまうのか、詳しいことをみていきましょう。

肝臓病、肝疾患の種類!原因はアルコール以外にもいろいろある

「肝臓が悪い」と聞くと、お酒の飲み過ぎが原因というイメージがあるかもしれません。

しかし肝機能を悪化させてしまう原因はアルコール以外にもいろいろあります。ウイルスや肥満、薬物などが原因になることもあるのです。

肝臓病は次のように分類できます。

肝臓病の原因による分類 肝臓病の症状による分類
ウイルス性肝炎
アルコール性肝障害
脂肪肝
薬物性肝障害
自己免疫性肝疾患 など
急性肝炎
慢性肝炎
劇症肝炎
肝硬変
肝がん

ではそれぞれの病気について、詳しく説明していきましょう。まずは病気を起こした原因から、それぞれの肝臓病の特徴などについて説明します。

ウイルス性肝炎

ウイルス性肝炎は、肝炎ウイルスに感染したことが原因で発症してしまう肝臓病です。重症化して、肝硬変や肝がんなどにまで進行してしまいやすくなります。

ウイルス性肝炎には次のような種類があります。

  • A型肝炎
  • B型肝炎
  • C型肝炎
  • D型肝炎
  • E型肝炎 など

A型肝炎は「A型肝炎ウイルス」に感染して引き起こされた肝炎です。同じようにB型肝炎は「B型肝炎ウイルス」に感染したもの、C型肝炎は「C型肝炎ウイルス」に感染したもの・・・というようになっています。

他にもG型、TT型などがあります。これらの中で特に日本に多いのは、A型肝炎・B型肝炎・C型肝炎です。

それぞれの肝炎の症状は、感染した肝炎ウイルスの種類によって違ってきます。

例えばA型肝炎ウイルスの場合には、感染すると急性肝炎を引き起こすものの慢性化はしません。C型肝炎ウイルスの場合には、感染したときにはそれほど症状が出ませんがそのまま慢性肝炎となってしまい、肝硬変や肝がんのリスクも高くなります。

A型肝炎

A型肝炎ウイルスに感染すると、2−6週間の潜伏期間の後で急性肝炎を発症します。ほとんどの場合はそのまま治っていくのですが、ごくまれに劇症肝炎となり死亡することもあります。

急性肝炎による症状は倦怠感、食欲不振、発熱、嘔吐、黄疸、かゆみなどです。入院して安静にし、栄養補給をしっかり行うことで治っていきます。人によっては特に症状が出ないまま治ってしまうこともあります。

そして一度感染すると免疫がついて、もう二度と感染することはなくなります。慢性肝炎になってしまうこともありません。

感染源は、感染している患者の糞便中に排泄されたウイルスに汚染された生水や生ものです。衛生環境の良くない地域を旅行した際に、生水などを飲んで発症することが多くなります。日本国内でも、生ガキなどが原因で発症してしまうことがあります。

B型肝炎

B型肝炎には出生時に母親から子供に感染する母子感染や乳幼児期に感染してしまうタイプと、大人になってから感染してしまうタイプがあります。

最近は母子感染や乳幼児期の感染は減り、ほとんどみられなくなりました。かわりに増えているのは、大人になってから感染してしまうタイプです。

B型肝炎ウイルスの感染原因は感染者の血液や体液に接触してしまったことです。大人になってからの場合、性交渉や不衛生な環境でのタトゥーやピアスの穴開けなどが感染原因になります。

以前は輸血や集団予防接種による感染もありましたが、現在はきちんとチェックされているため心配ありません。

大人になってからの感染では、1−6ヶ月の潜伏期間を経て発熱、倦怠感といった風邪に似た症状出たり、黄疸が出たりします。以前はこのような急性肝炎の症状があってもほとんどの人は治り、慢性化することはあまりありませんでした。

しかし最近はそのまま慢性肝炎へと移行してしまうことが増えてきていて、それが問題になっています。

慢性肝炎の治療のしかたは人によって違い、経過観察ですむ人もいますがすぐに治療が必要になる場合もあります。治療法は飲み薬か週1回のインターフェロン注射です。

一人一人の症状やウイルスの状態などによって治療法は変わってきます。感染の不安があればまず詳しい検査を受けて、ウイルスや肝臓の状態を知ることが第一です。

C型肝炎

C型肝炎の患者数はウイルス性肝炎の中でも一番多く、また慢性肝炎から肝硬変、肝がんへと進行させてしまうことも多い病気です。

血液を介して感染する病気で、かつては注射針の使い回しや手術時の輸血が原因で感染してしまうことがありました。現在はきちんと対策が行われているため、そのようなことはありません。

しかし最近も特に若い人での新たな感染報告があり、注意が必要です。感染経路がはっきりしないということもよくあります。

C型肝炎ウイルスに感染すると急性肝炎を起こしますが、あまり症状がなかったり、あっても風邪程度だったりするために感染に気がつかないことも多くなります。

その後自然にウイルスがいなくなることもありますが、7割くらいの人は慢性肝炎へと移行してしまいます。しかし慢性肝炎になっても自覚症状はほとんどなく、気づかないうちに肝硬変や肝がんになっていたということもあります。

早期発見のためには血液検査を受けることです。どこで感染したのかわからないという例もあるため、一生に一度は検査をしておくとよいでしょう。

C型肝炎の治療は、今、大きく変わってきています。以前はインターフェロン注射が中心で、それでも効果がなかったり、副作用がひどいため治療を諦めざるをえない人も多くいました。

しかし最近新しい飲み薬が開発され、今までよりも治る確率が格段に増えました。インターフェロン注射より副作用も少なく、注射のための通院も必要ありません。C型肝炎は、「治りにくい病気」から「治せる病気」へと変わりつつあるのです。

治療には医療費の助成制度も受けられます。C型肝炎は今は症状がなくても、放っておくと肝硬変や肝がんになるリスクの高い病気です。そのときに後悔しても遅いですから、今のうちにしっかり医師に相談しておきましょう。

D型肝炎

D型肝炎は南ヨーロッパなどでは多くみられますが、日本ではまれな病気です。D型肝炎ウイルスは単独では生きていけないウイルスで、B型肝炎ウイルスの存在が必要です。つまりD型肝炎ウイルスに感染した人はB型肝炎ウイルスにも感染しています。

E型肝炎

E型肝炎は水や食べ物を介して感染し、2−9週間の潜伏期間後に急性肝炎を発症します。その後、慢性肝炎になることはありません。ただし妊婦が感染した場合には致死率が高くなるため、注意が必要です。

E型肝炎は東南アジアや中央アジアではよくみられますが、日本や欧米ではまれな病気でした。しかし最近は日本国内での感染報告もたまにあります。

豚の生肉、猪や鹿などの野生動物の肉などが原因で感染することがあり、野生の猪や鹿などを食べる「ジビエ料理」の流行によってE型肝炎の感染報告も増えてきているようです。

アルコール性肝障害

アルコールを飲むと、肝臓は一生懸命に働いてアルコールを体に無害な酢酸に変え、そして最終的に水と二酸化炭素へと分解してくれます。しかし途中で毒性の強い「アセトアルデヒド」が作られます。

このアセトアルデヒドが肝細胞を傷つけ、肝臓に問題を起こしてしまいます。またアルコールの飲み過ぎは脂肪の代謝を抑えてしまい、肝細胞には脂肪が溜まりやすくなっていきます。

このようにアルコールの飲み過ぎが原因で起きてしまう肝臓の病気をまとめて「アルコール性肝障害」と言います。しかし肝臓に多少問題が起きていても自覚症状はほぼありません。かなり悪化させてから、やっと異常に気づくようになります。

アルコールの飲み過ぎを長い間続けていると「アルコール性脂肪肝」となります。それでも飲酒を続けていると「アルコール性肝炎」になったり「アルコール性肝線維症」になっていきます。

アルコール性脂肪肝
アルコールの飲み過ぎが原因で、肝臓に中性脂肪が蓄積し過ぎた状態。肝細胞全体の1/3以上が脂肪化してしまっている。
アルコール性肝炎
アルコールの影響により肝細胞が炎症を起こしたり、壊死してしまった状態。肝細胞が大きく膨らむ「風船化」が見られる。
アルコール性肝線維症
アルコールの影響により肝細胞が線維化した状態。肝機能は低下してくる。

これらの状態がさらに続くと「アルコール性肝硬変」で肝臓が硬くなり、肝機能はかなり低下します。アルコールが原因の「アルコール性肝がん」になってしまうこともあります。

ところでアルコールの飲み過ぎとは、どのくらいの量を言うのでしょうか。これは日本酒に換算して毎日3合以上を5年以上続けた場合です。女性ではこの2/3くらいの量を目安にしてください。

気をつけたいのは、男性よりも女性のほうが少ない飲酒量、短い飲酒期間でも発症してしまいやすいことです。

最近は女性でも飲酒量の多い方が増えています。肝臓に問題が起きていてもなかなか自覚症状は出ないため、今症状がないからと安心しないで下さい。手の施しようがない状態にまで悪化してから後悔しても遅いのです。

アルコール性肝障害の治療の基本は、なんと言ってもアルコールを止めることです。そしてうれしいことに、断酒するだけでも肝臓の状態はだいぶ改善されます。

肝硬変にまで進んでしまっている場合には、もう肝臓を元の状態に戻すことは難しくなります。ただその場合でもアルコールを止めることで生存率は上がりますから、諦めないでください。

脂肪肝

脂肪肝とは肝細胞に中性脂肪がたくさん溜まってしまった状態です。その原因は飲み過ぎ、食べ過ぎ、肥満、糖尿病などです。日本人は肥満度合いが軽くても脂肪肝になりやすいとされます。

肝細胞に脂肪が溜まり過ぎると、肝機能は低下してしまい肝炎を起こしてしまうこともあります。脂肪肝にはアルコールの飲み過ぎが原因とされるものと、アルコールはあまり飲まないのになってしまうものとがあります。

以前はアルコールの飲み過ぎが原因とされる「アルコール性脂肪肝」がほとんどでした。しかし最近はアルコールを飲まないのに脂肪肝となってしまう「非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)」が増えています。

NAFLDでも重症化しにくいタイプの人もいますが、最近問題になっているのはその中でも「非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)」と呼ばれるタイプの人です。

非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLDナッフルディー)
アルコールの飲み過ぎが原因ではない脂肪肝(一日のアルコール摂取量は日本酒で1合以下、ビールだと中瓶1本以下)。食べ過ぎや肥満が原因とされる。
非アルコール性脂肪性肝炎(NASHナッシュ)
NAFLDの中でも症状が重症化して、肝細胞が壊死したり炎症を起こしてしまったりするタイプ。NAFLDのうちの5人に1人くらい。肝細胞が硬くなる線維化もみられる。

何が原因となってNAFLDがNASHへと進行するのかはわかっていませんが、NASHはそのまま放置してしまうと肝硬変や肝がんになってしまうことがあるため注意が必要です。40−60代の女性に多いとされます。

アルコールを飲む人は肝臓のことを多少気にされると思いますが、飲まない人は肝臓が悪くなっているなどとあまり考えないのではないでしょうか。

アルコールを飲まなくても肝臓病になってしまう可能性があること、そのまま放っておくと肝硬変や肝がんになってしまうかもしれないことを知っておいてください。生活習慣を改善し体重を少し落とせば、症状は少しずつ良くなってきます。

▼脂肪肝について 詳しくはこちらの記事をご覧ください
【脂肪肝とは】肝臓はどんな状態?特に症状がなくたって放置は危険!

薬物性肝障害

薬物性肝障害は薬物の服用が原因で起きてしまう肝障害です。健康になるために服用する薬も体にとっては異物です。肝臓で代謝、解毒されるために、肝臓にも影響を与えやすいのです。

薬を服用後に倦怠感、食欲不振、吐き気、黄疸、発熱、全身のかゆみなどが出たときには、すぐに薬を中止して医師に相談してください。

薬物性肝障害を起こしてしまう可能性がある薬は、ありとあらゆる薬です。漢方薬で起きることもありますし、健康食品やサプリメントなどで起きることもあるので注意してください。

薬を中止して2−4週間くらいすれば、肝臓の機能は改善してきます。ただしまれに劇症肝炎になってしまうこともあります。

自己免疫性肝疾患

自己免疫性肝疾患とは、ウイルスや細菌などから自分の体を守るはずの免疫システムに異常が起き、自分自身の体を攻撃することで起きてしまった肝障害です。特に中年以降の女性に起きやすい病気です。

「自己免疫性肝炎」や「原発性胆汁性肝硬変」などがあります。自覚症状がないことも多く、検査で見つかったりします。放置すると肝硬変になってしまう恐れがあるため、治療をしっかり受ける必要があります。

この他にも肝臓の中に液体の溜まった袋ができる「肝のう胞」、細菌感染により肝臓に膿が溜まる「肝のう瘍」といった肝臓病もあります。

急性肝炎

ここまでは肝臓病を起こした原因から、肝臓病の種類を説明しました。次は症状から肝臓病を分類していきます。肝臓病を起こした原因に関わらず、症状は病気の経過によって似ています。

急性肝炎とは、肝臓に急性の炎症が起きて肝臓の機能が低下してしまう病気です。その大きな原因は肝炎ウイルスですが、薬物性肝障害や自己免疫性肝疾患などでも起きます。

初めは発熱、喉の痛み、頭痛といった風邪に似た症状が現れ、風邪と間違えてしまうこともあります。そして尿の色が褐色になったりした後で、黄疸が現れます。他に食欲不振、全身倦怠感、吐き気や嘔吐、腹痛、関節痛、発疹といった症状も出ます。

入院になることも多いですが、安静にして適切な治療を行うことで1−2ヶ月で治ります。ただごくまれに(1−2%くらい)劇症肝炎になってしまうこともあるため、注意は必要です。

ウイルス性肝炎のうち、急性肝炎を引き起こしやすいのはA型とB型です。C型でも急性肝炎を起こしますが、その症状が軽いために風邪と間違えて見過ごしてしまうことが多くなります。

A型肝炎の場合には、急性肝炎を引き起こしやすいものの慢性化することはありません。ただごくまれに劇症肝炎になることがあります。B型肝炎では急性肝炎を起こした後で慢性化してしまうことが増えていて、肝硬変、肝がんになることもあります。

慢性肝炎

慢性肝炎とは肝機能検査の結果が6ヶ月以上に渡って異常を示している状態です。肝臓はずっと炎症を起こしてしまっています。ウイルス性肝炎が原因になることがほとんどですが、自己免疫性肝炎により慢性肝炎になることもあります。

慢性肝炎の場合には、自覚症状はほとんどありません。全身倦怠感があったり食欲不振があったりということはありますが、その原因が慢性肝炎だとはなかなか気がつかないでしょう。

慢性肝炎の70%はC型肝炎によるものです。治療を受けないままだと10−30年かけて肝硬変へと進行し、その後肝がんになってしまうこともあります。現在はC型肝炎も飲み薬で治療できますから、きちんと医師の指示に従いましょう。

劇症肝炎

急性肝炎の患者のうち、1−2%では劇症肝炎に進行してしまうことがあります。劇症肝炎とは肝細胞が短期間の間に急激に破壊され、肝機能が著しく低下してしまった状態です。

原因として多いのはA型、B型肝炎ウイルスです。他に自己免疫や薬物が原因になって劇症肝炎になってしまうこともあります。

症状は、初めは急性肝炎による全身倦怠感、食欲不振、吐き気、発熱、皮膚のかゆみ、黄疸などがあります。その後悪化して劇症肝炎となると倦怠感が強くなり、意識障害が起きてうわ言や意味の通じないことを言ったり、興奮状態になったりします。

このような意識障害を「肝性脳症」と言います。肝性脳症の原因は、アンモニアなどの有害物質が脳へ流れてしまったことです。

肝臓には有害物質を解毒する働きがあるのですが、劇症肝炎になり肝機能が著しく低下したために解毒が十分できなくなり、アンモニアなどがそのまま脳へ達してしまったのです。

他に腕を伸ばしたり手を広げたときに不規則な震えが起こる「羽ばたき振戦」という症状が現れたりもします。腹水が溜まったり、さらに進行すると昏睡状態に陥ってしまうこともあります。

劇症肝炎は命の危険があり、すぐに入院が必要です。肝移植が行われることもあり、移植が成功すれば生存率は比較的高くなります。

肝硬変

肝臓は再生能力の高い臓器のため、炎症を起こしてもすぐに自分で修復していくことができます。しかし炎症状態が長く続いていると、次第にそれができなくなっていきます。

やがて肝臓の組織は線維化して硬くなり、表面が凸凹になって小さくなってしまいます。このような状態を「肝硬変」と言います。肝硬変にまでなってしまうと肝細胞はかなり破壊されていて、もう元の状態に戻ることは難しくなります。

原因の7割はC型肝炎ウイルスです。その他にB型肝炎ウイルス、アルコール、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)などが進行して、肝硬変になります。さらに進行すると肝がんになってしまうこともあります。

肝硬変は、その進行状態によって「代償期」と「非代償期」に分けられます。代償期はまだ肝臓の機能がなんとか保たれている状態です。しかし非代償期になると、肝臓は機能を果たせなくなり、様々な症状が現れてきます。

代償性肝硬変

代償期には、肝細胞の破壊が進んでいても肝機能は何とか保たれたままのため、自覚できる症状はあまり現れません。それが肝臓の病気の怖いところとも言えます。

もちろん血液検査や画像検査などで診断できます。代償期の肝硬変であることがわかったら、すぐに治療を始めることが大事です。なんとしてでもこれ以上病気を進行させないようにすることが必要です。

ウイルス性肝炎が原因の場合にはウイルスを抑えるための治療が行われます。肝機能を改善するための薬も使われます。

非代償性肝硬変

非代償期になると様々な症状が現れ始めます。

非代償性肝硬変になると現れやすい症状

  • ひどい倦怠感
  • 集中力の低下
  • 食欲低下
  • お腹の張り
  • 黄疸
  • 皮膚のかゆみ
  • こむら返り
  • むくみや尿量減少
  • 肝臓の辺りの圧迫感
  • 出血しやすくなる
  • クモ状血管腫(首や胸部の血管がクモの足のような形に浮き出る症状)
  • 手掌紅斑(親指の付け根や手の平が赤くなる症状)
  • 女性化乳房(男性なのに女性のように胸が膨らんでくる症状) など

このような自覚症状が出るようになったときには、肝臓の状態がかなり悪化してきていると思われます。すぐに医師の診察を受けて下さい。

肝硬変で肝臓が硬くなると、肝臓に血液を送っている「門脈」という血管の圧力が上がり「門脈圧亢進症」も起きます。門脈圧亢進症と肝機能の低下とが原因となり、合併症の危険も出てきます。

肝硬変で起こりやすい合併症

  • 食道・胃静脈瘤:食道や胃の静脈が破裂して出血し、吐血や下血が現れる
  • 腹水:腹腔に血液やリンパ液が溜まり、お腹がパンパンに膨らんでくる
  • 肝性脳症:肝機能低下によりアンモニアを解毒できなくなり、意識障害が起こる

食道・胃静脈瘤は大量出血すると命に関わります。症状に気がついたら、すぐに処置をする必要があります。肝性脳症も進行すると昏睡状態に陥り、命の危険があります。

腹水が溜まってきても、初期には自分では気づきにくくなります。お腹が張ってくると動きづらくなり、それにより筋力低下することもあります。

肝硬変が進行してしまった場合には、肝移植による治療も検討されます。肝がんになってしまうこともあるため、注意が必要です。

肝がん

肝硬変が進行すると、肝がんにもなりやすくなります。しかし早期発見ができ、肝臓の機能がまだ残っている状態ならば治していくことは可能なため、少しでも早く治療を始めることが大切になります。

原因の70%近くはC型肝炎ウイルスで、15%ほどがB型肝炎ウイルスとされます。肝がんになっていても、がんによる自覚症状はなかなか現れません。肝硬変による倦怠感、食欲不振、黄疸、腹水などがある状態です。

治療方法はがんがどこまで進行してしまっているか、肝機能がどのくらい残っているかなどによって違ってきます。

B型、C型肝炎ウイルスに感染している人は、自覚症状がなくても定期的にがんの検査も受けておいた方がよいでしょう。

最近、C型肝炎は治療法が進歩したおかげで高い確率で治るようになってきました。しかしC型肝炎が治っても、肝がん発症のリスクが完全になくなったわけではありません。定期検診はきちんと受けるようにしてください。

肝臓は沈黙の臓器、問題が起きても症状が出ないため要注意!

このように肝臓病の原因はいろいろとあり、同じ原因でも肝臓の状態によって症状は違います。重要なことは、肝臓がある程度ダメージを受けていても自覚症状が出にくいということです。

肝臓は「沈黙の臓器」と言われます。肝細胞が壊されても、自分の力で再生し修復していけるのです。しかしそのせいで、肝臓に問題が起きたことに気づけず病気を見逃すことにもなってしまします。

肝臓病によって症状が現れるのは、病気がかなり進んでしまってからです。けれど検査などで早い時期に肝臓の問題に気がつけば、手遅れになることなく改善させることができます。

会社などでの健康診断は必ず受けるようにし、再検査などの連絡がきた場合には放っておいたりせずきちんと医師の指示に従いましょう。

また肝臓病でははっきりした自覚症状がないものの、次のような症状が現れることがあります。

  • だるさが続く、疲れやすい
  • 発熱が続く
  • 油っこいものが食べられなくなった
  • 以前のようにお酒が飲めなくなった、お酒がおいしく感じなくなった
  • 食欲がない
  • 吐き気が続く など

これらは風邪をひいた時や、忙しくて疲れがたまっているような時にも現れそうな症状です。そのため放置してしまいがちですが、肝臓病のサインの可能性もあります。続くようなら一度医師の診察を受けてみるとよいでしょう。

白目や皮膚が黄色っぽくなる「黄疸」が現れたときには、肝臓に問題が起きています。そのような症状が出たときには、すぐに受診してください。

早い時期に異常に気づくことができれば、肝臓の機能を改善させることはできます。手遅れになってから後悔しないようにしてください。

肝機能は風邪をひいているときなどにも悪くなってしまいます。肝機能が悪かったからと心配し過ぎず、まずは再検査を受け、医師の指示に従って必要ならば治療をしていくようにしましょう。
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