肝臓にいい食べ物。科学的根拠のある肝機能を改善する食品まとめ
心臓は「循環器」と呼ばれ、体の中で中心的な存在ですね。一方、肝臓は「消化器」に分類されます。
心臓は血液自体を循環させる臓器であり、肝臓は血中の栄養を適切な状態で循環させるという大切な役割を担っています。
肝臓は栄養の問題とかかわりが大きいため、「食べ物」によって肝臓自体が元気になったり、肝機能低下が起こったりとすることもあるのです。
「肝臓にいい食べ物」とはどんな人にとって、どんなものが該当する?
食生活が原因で肝機能低下が起こっているなら、食生活を改善しましょうというお話になるわけですが、逆にどういう状態を指して「肝臓に良い(つまり、肝臓が良い状態になる)」と考えるのかがまずは問題になります。
たとえば肝機能検査の結果を見て、お医者さんが「肝臓の状態が悪いので注意しましょうね」とアドバイスを与えることはあります。肝機能低下が起こっていれば、仮にわずかな機能低下であっても同様の指摘があるはずです。
ところが「あなたの肝臓の状態はふつうの肝臓よりもはるかに素晴らしい!」などとほめられることはありません。仮に健康な人の数値の平均値のど真ん中にあったとしても、お医者さんは「異常ありませんね」とそっけなくスルーです。
つまり何がいいたいのかというと、「肝臓に良い食べ物」とは「肝機能低下を改善できる食べ物」、「肝機能を低下させない(良好な状態をキープできる)食べ物」を指すのではないか、ということです。
個々の体質(あるいは遺伝)とも関係しますが、暴飲暴食や過度の偏食を避け、睡眠や運動、ストレス解消など常識的な範囲の生活習慣を送れているなら、基本的に「肝機能を低下させる食べ物」はないと考えて問題ありません。
ただ、一度低下した肝機能を食べ物から改善させるのは、そう簡単なことではありません。もちろん上記に挙げた基本的な生活習慣を大前提とした上で、栄養素まで踏み込む必要があります。
肝臓の状態を改善させる栄養素
少し前置きが長くなってしまいましたが、いきなり肝臓に良い食べ物を考える前に、まずは「肝臓に良い栄養素」を考察してみることにしましょう。ただしもうひとつ、重要な注意点があります。
確かに肝臓に良いとされる栄養素、食材はたくさんありますが、これはあくまでも脂肪肝をはじめとする「軽度肝機能障害」が前提になります。
肝炎などの重度肝機能障害ではマイナスになることもあります。
ですから、この記事でおすすめする食べ物は肝機能検査の結果から「ちょっと肝機能が低下していますね」とお医者さんに指摘されたレベルの肝機能障害がみられる人、に推奨したいものとしてお話します。
低下した肝機能を改善する、あるいは肝機能を健全に保つためには、次のポイントが前提になります。
- エネルギー不足の回避
- たんぱく質の十分な摂取
- ビタミンの補給
(参考:食事のポイント-肝臓の治療(医療法人社団結仁会浜田内科・消化器科クリニック)より)
ひとことでいえば、「バランスの良い食生活を心がける」ということですね。「エネルギー」というのは、栄養素に置き換えるなら、
- たんぱく質
- 脂質
- 炭水化物(糖質)
に相当します。「三大栄養素」という特別扱いを受けることもあるくらい重要な栄養素としてみなさんもご存じかと思います。
そういう重要な栄養素ですから、肝臓がよかろうと悪かろうと、不足はダメなのです。
特に、脂肪肝によるダイエットが必要であると考える人は要注意です。どうしても脂質と炭水化物(糖質)をカットしようという意識になってしまうと思いますが、「カット」はNGであると考えてください。
カットではなく、「今まで多すぎた分を減らす」という意識が必要です。これまで脂質や糖質・炭水化物は過剰に摂取してこなかった人でも肝機能低下は起こり得ます。
そのケースでは、肝機能改善のためにこれらの栄養素を減らすことはデメリットにしかなりません。なぜならば、エネルギーが不足すると、肝細胞の回復改善に必要な栄養素をエネルギーとしてつかってしまうからです。
肝細胞を回復させて肝機能を改善しようという段階でエネルギー不足が起こってしまうと、肝細胞回復のために必要となるグリコーゲン、たんぱく質などの栄養素をエネルギーとして代替してしまうのです。
このときに起こっているのは、エネルギーだけはありあまっているのにエネルギーを消費させるための材料がない「空焚き」の状態です。空焚きが長続きすると、改善どころか深刻な肝機能障害の原因になってしまうのです。
たんぱく質は、肝細胞の原材料なので当然「十分な摂取」が必要になることはいうまでもありません。ビタミンについても、肝臓の主要機能である「代謝」の際に重要視される栄養素です。
ですからたんぱく質の十分な摂取とビタミンの補給も欠かすべきではありません。しかし「脂肪肝」に代表される肝機能低下を改善させるときに誤解が生じやすいのが、脂質と糖質(炭水化物)の扱いなのです。
もちろん脂肪肝の悪化や糖尿病などを誘引する過剰摂取は絶対にNGですが、不足するのも肝臓にとってマイナスとなってしまうという事実は正しく理解していただきたいと思います。
要は、「過度なダイエットはだめですよ」という、よく言われる基本的な注意事項の再確認になります。
肝臓にいい食べ物をエネルギー、ビタミンから具体的に紹介
ずいぶん前置きが長くなってしまいましたが、ここから肝心な「肝機能改善、肝機能低下予防のための食べ物」にいよいよ言及します。しかし食べ物の前提になるのがここまでお話してきた「栄養素」であることは明らかです。
要するに、上記で触れた栄養素を豊富に含む食べ物を積極的に、過不足なく摂取することを目標にしていただきたい、という意図を踏まえて「食べ物」をまとめます。
- 肝機能改善・低下予防効果がある栄養素と食べ物
-
- たんぱく質・・・肉全般、魚全般、卵、大豆製品など
- 脂質・・・植物油、バターなど
- 糖質(炭水化物)・・・ご飯、パン、麺類
- ビタミン(特にB群)・・・豚もも肉、大豆、落花生、ロースハム、鶏レバー、玄米、胚芽米、小麦胚芽など
いかがでしょうか?全体的なイメージとしては、「栄養価の高いいろいろな種類の食べ物を好き嫌いなくちゃんと食べましょう」という、昔からよくいわれてきた言い習わし的な食べ物が推奨されます。
ついでにいえば、「よく噛んで食べる」というもうひとつの言い習わしも、肝機能改善には有効ですので、付け加えておきますね。
では、それぞれ詳細に説明してまいります。
エネルギーとなる栄養素からみた、肝臓にいい食べ物
まずは「エネルギー分野」からです。
▼肝機能改善に有効な食べ物と推奨されるエネルギー摂取量(1日当たり)の目安
栄養素 | 具体的な食べ物 | 1日当たりの摂取目安量 |
---|---|---|
たんぱく質 | 肉、魚、卵、大豆製品など | 75g(300kcal) |
脂質 | 植物油やバターなど | 55g(495kcal) |
炭水化物(糖質) | ご飯、パン、麺類などの主食 | 300g(1200kcal) |
推奨される1日当たりの総エネルギー・・・300+495+1200=1995(kcal)
という計算が成り立ちます。約2000kcalですね。
ただし、たんぱく質だけ、脂質だけ、炭水化物・糖質だけで2000kcalという栄養摂取の方法は望ましくありません。まあそのあたりは当然わかっているとは思いますが。
ここまではあくまでも私たちが生活する上で必要になる「エネルギー」に関連する食べ物と栄養素のお話です。これらが大幅に不足すると肝機能改善は遠のき、むしろ肝機能低下の原因になります。
もちろん大幅な過剰摂取でも、脂肪肝によるさらなる肝機能低下や糖尿病などの生活習慣病の原因になりますので十分注意してください。
ビタミン類からみた、肝臓にいい食べ物
それでは、続いてビタミン類についてもまとめます。
とはいえ、ご存じのとおりビタミンにはたくさんの種類がありますので、これらをまんべんなく摂取するとなると(もちろんそれも大事なことです!)、正直なかなかたいへんだったりもします。
そこで、中でも特に肝臓とのかかわりが密接で、肝機能改善の効果があると考えられている「ビタミンB群」に注目してみたいと思います。まずはビタミンB群に属する栄養素と食べ物をまとめます。
▼ビタミンB群に属する栄養素とビタミンB群を豊富に含む食べ物
栄養素 |
ビタミンB1 ビタミンB2 ビタミンB6 ビタミンB12 ニコチン酸アミド(ナイアシン) パントテン酸 葉酸など |
---|---|
食べ物 |
豚もも肉 大豆 落花生 ロースハム 鶏レバー 玄米 胚芽米 小麦胚芽など |
ではなぜビタミンB群を含む食べ物が肝機能を活発にする、つまりは肝機能改善を可能にするのか、その理由も考えてみましょう。
実は、ビタミンB群は肝臓にとって非常に都合の良い栄養素なんです。
- 体内の代謝をスムーズにする働き
- 糖質や脂質、たんぱく質などをエネルギー源に変換する働き
- すべて小腸で吸収されることで肝臓にとって合理的に働く
こういった特徴があるからです。(参考:「大鵬薬品工業・肝臓生きいき!!」より)
肝機能の改善は、肝細胞の回復に近い意味を持ちます。ビタミンB群の働き、特徴は、肝細胞の回復を考える上で有効なのです。
これが、「ビタミンB群を豊富に含む食べ物が肝機能を改善する・低下させない理由」であると結論づけられます。
サプリメントによる肝機能改善はあり?なし?
栄養素だけなら、食べ物にこだわらなくたってサプリメントがあるじゃないか・・・という声も当然上がるでしょう。
事実、サプリメントはそのイメージとは異なり、法的には「薬」ではなく「食品」です。
さすがに「食べ物」という感じではありませんが、いちおうサプリメントの是非や効能についても触れておくことにしましょう。
ただし、サプリメント摂取の際には十分注意が必要です。
特にB型肝炎、C型肝炎をはじめとするウイルス性肝炎では、サプリメント摂取による症状悪化の危険性も考えなければならないからです。
肝炎以外にも、重大な肝障害によって病院で治療を受けている患者さんは、安易にサプリメントを摂取することをおすすめできません。担当のお医者さんとよく相談して、許可が出た場合のみOKと考えてください。
さて、サプリメントで肝機能改善を目指すという考え方についてですが、肝臓系サプリメントというと、
- オルニチン(カキ、シジミ)
- クルクミン(ウコン)
などがよく知られますよね。
確かにオルニチンにしろクルクミンにしろ、肝機能改善の効果はあります。しかもカキ・シジミやカレー(ウコン)など、食べ物だけから必要な量をそう簡単に摂取できるものではありません。
ただオルニチンにしてもクルクミンにしても、イメージ的には「お酒を飲む人に有効」という印象があり、お酒を飲まない人がサプリメントを摂取して肝機能改善を目指すという発想は、正直違和感があります。
たとえばアルコール性脂肪肝性肝障害の人が飲む薬と非アルコール性脂肪肝性肝炎の患者さんが飲む薬とでは、成分が異なります。これと同様のことがサプリメントにもいえると考えるのが自然でしょう。
ですから、アルコールと無関係に肝機能が低下している人が肝機能を改善するためのサプリメント選びは、お医者さんに相談したりドラッグストアの薬剤師に相談したり、専門家の知恵を借りたりするほうが無難です。
また、妊婦さんにとっては「葉酸(ビタミンB群)」が重要な栄養素であることはよく知られます。しかし葉酸サプリメントも、特に輸入品は不純物質、危険物質が混入している可能性もありますので、要注意です。
肝臓の健康は食べ物から。しかし何より基本に忠実なことが重要
肝臓は、私たちが食べる食べ物から運ばれる栄養を一括管理し分配する超重要な臓器です。ですから肝機能が低下すると、芋づる式にいろいろな問題が全身にあらわれる危険があります。まさに「肝臓の健康は食べ物から」なのです。
しかし「肝臓に良い食べ物」という発想は正直違和感があります。上で述べたように、お医者さんは「良いか悪いか」で判断せず、「悪いか悪くないか」で判断します。これは肝臓に限った話ではありませんが。
ということは、「良い」のではなく、「悪くなった(疲れた、肝機能が低下した)肝臓を改善する」意識が何より大切なのです。そのためには、昔の人が口をすっぱくして言い続けた、「好き嫌いなく何でもよく噛んで食べること」が大切です。
そして、「腹八分目」が大切です。そんなの基本ではないか!と思うかもしれませんが、基本に忠実な食生活を送ることが、肝臓にとっての健康でもあり、私たちにとっての健康でもあるのです。
この機会に、昔から言われてきたことを思い出していただくと同時に、食べ物と肝機能改善の関係とをよく照らし合わせていただき、がんばって低下した肝機能を改善していただきたいと思います。
昔の人はエライなぁ・・・