肝臓が痛い!痛みを身体の右側に感じる場合は臓器疾患かも

人間は痛みに敏感です。鈍感だったら困りますね。傷口から血が流れ出しているのに「あれー、なんかかゆいな」という程度では、「治療をしなければ!」という危機感が生まれません。

人間が痛みに敏感であるせいかどうかはわかりませんが、時として、痛むはずのない場所が痛むこともあります。時に「肝臓」でそれは起こります。

肝臓が痛いと感じるとき、その痛みははたして何を意味するのでしょうか?

意外?肝臓には痛みを伝える神経がない!

痛むはずのない場所が痛むことがあり、その場所が肝臓です・・・などというと違和感を覚える人もいるかもしれませんね。言い換えれば、「肝臓は痛みを覚えない臓器」となるわけですから。

胃や腸(の一部)など主要な臓器はふつうに痛みを感じるわけだから、肝臓が痛むことだってあるでしょ?と思うかもしれませんが、実は、肝臓には痛みを感じる神経がないのです。

まずは肝臓の位置を把握しよう

肝臓は多くの肝細胞からなる大型臓器で、それだけに役割も多く、特にお酒が大好きな人の肝臓は過負荷にながちです。そのため肝臓がくたびれてしまうことも珍しくありません。

ところが、肝臓はかなり悪化しても症状が現れるのが遅く、また肝臓自体が痛みの神経を持たない(原則として痛みを感じることがない)ため、「沈黙の臓器」という異名をとる臓器でもあります。

しかし実際には、肝臓が痛い、あるいはそのように感じる経験をしたことがある人は意外と多いようです。その原因を探る必要があるわけですが、そこでまずは、肝臓がどこにあるのかを再確認しておきましょう。

肝臓は、その下底が肋骨右最下部と重なるような位置関係にあり、肝臓全体は肋骨の内部にすっぽりと隠れるように位置しています。

▼肝臓の位置
人体における肝臓の位置

痛むはずのない肝臓に痛みを感じるのは、かなり大きな臓器ゆえ、肝臓周辺に痛みの元があるのに肝臓が痛んでいるかのように錯覚しているのではないか、という仮説が立ちます。

では、肝臓周辺にはいったい何があるのかというと、ぱっと気が付くところでは、肝臓上部に肋骨、横隔膜(おうかくまく)などが位置し、周辺臓器には胃、脾臓(ひぞう)、すい臓などが位置しています。

痛覚にかかわる神経がないのに、肝臓が痛む原因は?

肝臓には痛みを感じる神経がないと書きましたが、厳密にいうと、痛覚(痛みの感覚)とかかわる神経がない、というべきです。確かに、指を切ってしまったときのような痛みはありません。

しかし肝臓にも知覚神経はありますので、強い痛みがないだけで、「なんとなく痛い」とか「鈍痛」とか言われる痛みは感じます。ただ、肝臓自体の痛みは「肝臓が痛い」と自覚される痛みとは異なる場合がほとんどです。

原因自体は非常に多様であると推測されますが、原因の所在の候補として挙ることができるのが、次の2とおりの考え方です。

  1. 肝臓自体が痛みの原因である
  2. 肝臓以外の周辺臓器、部位が原因である

肝臓自体が痛みの原因となって感じる痛みの正体

少し頭を柔らかくしてお考えいただきたいのですが、肝臓自体が痛みの原因だったとしても、肝臓が痛覚とかかわる神経を持たない以上、肝臓自体が(自覚できるほどの)痛みを感じているわけではありません。

また、あまり難しい話は避けますが、痛みを感じているのは肝臓やその周辺ではなく「脳」です。ということは、肝臓の何らかのトラブルにより、その周辺に何らかの刺激が到達し、これを痛みの感覚として脳がとらえていることになります。

このケースで考えられる原因は、肝臓の炎症や腫瘍などによる「腫れ」です。本来肝臓が位置すべき部分からはみ出した部分が別の部位や臓器の知覚神経を不当に圧迫することで、脳が痛いと感じているのです。

肝臓が痛いように感じられる原因のうち、肝臓自体が原因になっているとすると、上記のような可能性が考えられますので、このタイプの痛みは非常に危険な痛みであると解釈する必要があります。

また、肝疾患に端を発し、その余波が腎疾患や十二指腸潰瘍などへとおよんだ結果、めぐりめぐって肝臓が痛いと感じられる痛みに転換されることもありますので、とにかくややこしいです。

ただ、いずれのケースも肝臓に問題があるさまざまな臓器疾患による痛みであることは確かなので、医療機関で詳しい検査や治療をする必要があります。

特に、身体の右側に出る痛みは要注意です。明らかに肝臓とは異なる

  • 右の背中
  • 右肩
  • 右脇腹
  • 右腰

など、とにかく「右側が痛い」のが肝疾患による痛みの特徴です。

肝臓以外の周辺臓器・部位が痛みの原因となって感じる痛みの正体

肝臓自体に問題があって肝臓が痛いように感じられるケースについてたった今お話ししたばかりですが、結局のところ、肝臓自体が痛いわけではなく、その周辺臓器や部位が痛いと脳が認識しているというカラクリでした。

ということは、これからお話しする「肝臓以外の周辺臓器・部位」が痛みの原因になっていたとしても、痛みの伝達自体はむしろシンプルで、このケースではそのままトラブルの発生元が痛んでいることになります。

ただ、肝臓は大きな臓器なので、その周辺の痛みであっても、あたかも肝臓が痛んでいるかのように感じられてしまうことになります。

肝臓が痛いように感じられる周辺臓器のトラブルは、以下のケースが考えられます。

肝臓以外のトラブルによる肝臓の痛みの感覚
  • 胃痛
  • 十二指腸のトラブル(潰瘍(かいよう)など)
  • 運動などによる筋肉痛
  • 腰痛
  • 姿勢が悪いことによる肝臓周辺部位のトラブル

など

いずれにしても、肝臓に近いエリアの臓器(特に2番目の図に示した臓器)や筋肉、骨格、組織などにトラブルがあって、この部分自体もしくはその周辺の痛みを肝臓の痛みととらえてしまうケースが多いです。

ただここでひとつ気を付けなければならないことは、実際には肝臓の問題が原因の痛みなのに、胃痛や腰痛などのせいにしてしまうおそれがあるという点です。

肝臓にまつわるさまざまな痛みのまとめ

今回はだいぶややこしいお話になってしまったかもしれません。そこで、ここまでお話ししてきた内容を要点だけまとめてみたいと思います。

肝臓にまつわるさまざまな痛み(原因の所在→自覚しうる感覚)
  1. 肝臓の問題→肝臓の痛み(肝臓の腫瘍などによる腫れが原因)
  2. 肝臓周辺の問題→肝臓の痛み(肝臓周辺の臓器や筋肉、骨格などの問題が原因)
  3. 肝臓の問題→肝臓周辺の痛み(肝臓が悪いのに胃痛や腰痛であるとの誤解に注意)

もしご自身に痛みの自覚があって、なおかつ「原因が肝臓にあって肝臓が痛い」というよくある解釈をしていて、実際には上記1~3の→の左側の問題が起こっていたとしましょう。このとき、

  1. 痛みの原因は正しく認識していますが、痛みの発信元は正しくありません。
  2. 痛みの原因も痛みの発信元も正しく認識していません。
  3. 痛みの原因も痛みの発信元も正しく認識していますが、誤解が生じやすい事例でもあります。

このように、「肝臓が痛い」と感じるトラブルでは、あらゆるケースで誤解を生じやすいと考える必要があります。そして、誤解したままでは大きなリスクを招くことにもなります。

いかがでしょうか?少しはご理解いただきやすくなっているかな、と思うのですが・・・ポイントは、肝臓自体が痛むのではなく、痛みの感覚の発信元はその周辺であるにもかかわらず、肝臓が痛いように感じてしまうことです。

そして、リスクが高い以上は、肝臓が痛いと感じたら、まずは病院でお医者さんに相談に乗ってもらうことを強くおすすめします。

「痛みの重要性」を考えるきっかけにしてほしい

繰り返しになりますが、今回は「ややこしいお話し」でした。こんなにややこしいなら、はじめから肝臓に痛みの神経を通したほうがよいではないか?と思われたかもしれませんね。

確かに冒頭で触れたように、「痛みの感覚」というのは人間にとっては非常に重要なものです。知覚としてはマイナスイメージの感覚ですが、痛みの感覚がもたらすメリットは計り知れません。

事実、肝臓が「沈黙の臓器」であることが、肝疾患が起こりやすい原因としては有力です。気まぐれな神様がちょっとした意地悪でもしたのでしょうか・・・いや、これはむしろ逆かもしれません。

肝臓はとにかく負担が大きい臓器であり、少々ダメージを受けたとしても、また再生して私たちの健康のためにがんばってくれる臓器でもあります。そんな肝臓が「雄弁な臓器」だったとしたらどうでしょう?

おそらくご飯を食べるたびに肝臓が痛み、疲労のたびに肝臓がうずき、お酒を飲むたびに悶絶しなければならないでしょう。これなら確かに肝臓はいつでも健康かもしれませんが、精神は病んでしまうでしょう。

そう考えると、神様はやむを得ず「ややこしい方法」を採用していろいろな形で「肝臓や周辺臓器の問題」を私たち知らせるすべを授けてくださったのかもしれませんね。

いずれにしても、「痛み」という感覚の重要性を、「肝臓が痛い」という不思議な現象の事例を通じてこの機会に再考していただければ幸いです。

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