【肝硬変とは】写真でみる、危険な肝臓の状態
肝臓疾患はたくさんありますが、代表的ともいえるのが「肝硬変(かんこうへん)」でしょう。
肝臓というと「レバー」のイメージもありますが、肝硬変の文字からはああいうビロ~ンとしたイメージはありません。
さすがに「肝硬変とは、肝臓が硬く変化した病気です」なんて安易な説明をするわけにはいきませんが、これはなかなかうまく表現したな、と思える症状(肝臓の状態)なんですよ。
今回は、肝硬変とは何かをイメージしやすいように説明していきます。
【写真あり】肝硬変とは、肝臓がどうなった状態を指すの?
肝硬変について考えるとき、おそらく「生命の危険も極めて大きい重篤な肝臓病」というイメージでとらえる人が多いと思います。それはまさに正解なのですが、では、肝臓の状態はどんな感じ?のギモンに対して自信を持って答えられる人はそんなに多くないと思います。
肝臓は手に取ってみることはもちろん、症状を自覚することも難しい臓器なので、確かに「肝硬変」といわれてもピンと来ないのもわかります。
視覚的な感覚はともかく、症状をことばで説明することにチャレンジするなら、「金属疲労」に似ているかもしれませんね。疲労骨折の際に金属疲労のたとえが用いられますが、見た目はともかく、症状は似ています。
肝硬変を数ある肝疾患のひとつととらえたときの症状については、肝硬変の症状の記事に記してありますのでこちらをご覧ください。
ここからは「肝硬変にかかった肝臓の状態」についてお話します。
再生とダメージの繰り返しが肝臓の線維化を招く
金属疲労というのは、一般的には「金属のような頑丈な部品でも繰り返し力を加えることでその部分が破損する」ことを意味します。肝細胞は再生可能な細胞であるという特徴が、金属疲労のような状態を招いてしまうのです。
肝臓は非常に多くの仕事をこなさなければならないため、肝細胞は何度もダメージを受けますが、そのたびに再生します。肝臓は半分切除してもビクともしないなどと言われるのはこのためです。
ところが再生しても再び酷使されることですぐにダメージを負い、この「再生・ダメージ」の繰り返しにより、思わぬ弊害が生じます。
その障害とは、肝臓組織の線維化(せんいか)です。「線維」は「繊維」に似ていますが、糸がつくられるわけではないので基本的には別と考えてください。
ただイメージ的には、線維化によって本来弾力があるはずの肝組織が、繊維のように無機的な状態になるという点では似ています。では、再生・ダメージの繰り返しによってなぜ線維化が起こるのかが問題です。
肝組織の線維化が起こる、つまりは「線維」の正体はなにかというと、実はあなたも私もよく知る「コラーゲン」なんです。
ダメージを受けた肝細胞が再生する際に大量のコラーゲンが必要になるのは、切り傷と同じです。
コラーゲンが肝臓組織に組み込まれて肝臓全体を覆うような形で線維化は進行していきます。メカニズムとしては金属疲労に似ていますが、コラーゲン線維が付着する様は、傷にできる「かさぶた」に似ています。
この状態が進行したのが肝硬変です。主な原因は次のものがあります。
- B型、C型といったウイルス性肝炎
- アルコール性肝炎
- 非アルコール性肝炎
いずれにしても肝細胞の損傷と再生のカラクリが招く、肝臓の終末的な状況が肝硬変なのです。
重度な肝硬変になると、本来レバー状のなめらかな質感でなければならない肝臓が、ゴツゴツした岩のように見えるということですから、「肝臓の・硬質な臓器への・変化」という意味で、まさに肝・硬・変なのです。
(出典:肝硬変の肝臓(腹腔鏡写真)- 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター 肝炎情報センター)
百聞は一見にしかず!実際に肝硬変に侵された肝臓を見てみましょう
肝臓は「レバー」なので、説明しようとするとどうしても「レバーのような」と説明しがちですが、実際のところ、食べるレバーと人間の肝臓では、質感は確かに同じですが、大きさや全体のイメージが異なります。
そこで、ことばであれこれ説明するよりは、実際に見ていただいたほうが早いということで、肝臓の写真を見てみましょう。
▼左:正常な肝臓、右:肝硬変の肝臓
ご覧の通り、左の正常な肝臓に対し、右が重度に進行した肝硬変を発症した肝臓です。まさか「右が正常だよね?」と感じる人もいないとは思いますが、念のため。
右の肝臓は「これが肝臓?」と思われるくらいの病変が起こっています。医学的に怖いと感じるのはもちろんですが、これが自分の身体の中にあることを想像すると…というところのほうがむしろ大きいかと思います。
一方、上の画像(右)のようになってしまう直接的な原因であるコラーゲン線維ですが、分類でいえば「たんぱく質」に属します。たんぱく質といえば、私たちの皮膚や骨、そもそも細胞などをつくるための超重要物質です。
しかし、本来できるべきではない肝臓に皮膚のような「たんぱく質による生成物」が突然できはじめたと考えると、とてもまともな状況であるとはいえないですよね。
ちなみに、肝硬変の前段階として、コラーゲン線維が肝臓組織に組み込まれて肝機能が低下した状態の「肝繊維症」が挙げられます。これが進行して肝機能障害のステージが上昇した病態が「肝硬変」です。
肝臓にとって「まともではない状況」ではあっても、私たち人間は肝臓がそんなたいへんなことになっているとはツユ知らず、飲んで食べて大騒ぎして…の不摂生をしてしまいがちです。
その結果いたるのが、肝臓にとって終末的な状況が肝硬変なのです。もちろんウイルス性肝炎のように生活習慣との関係が希薄な原因もあるので一概に言えない部分もあるのも事実ですが。
脂肪肝
↓
肝炎・肝繊維症
↓
肝硬変
と進行することが多いので、初期の肝疾患(脂肪肝)でなんとしても踏みとどまらなければなりません。
肝臓の特徴をよく知ることが肝硬変を防ぐための第一歩!
「肝硬変なんて、よほどのことがない限りそう簡単になるものではない」とする意見もあります。逆に、「肝臓はデリケートだからすぐに悪化して肝硬変になるよ」とする意見もあります。
肝臓というひとつの臓器に対して対極的な意見が聞かれます。その理由のひとつに、「肝臓は肝機能に大きな個人差がみられる臓器である」という事実が挙げられます。それゆえ、人によって解釈や感じ方が異なります。
たいへんな仕事をこなすという意味では、肝臓はデリケートな臓器とはいえないかもしれません。反面、一度悪くなりはじめるとそこからの悪化のスピードは非常に速いので、その意味ではデリケートともいえてしまいます。
個人差が大きいことや悪化させたらたいへんなことになるといった、肝臓に関する初歩的な特徴をまずは個々が理解し、肝臓をいたわってあげることが、肝硬変という究極な肝疾患を防ぐための第一歩であるといえるのです。
肝臓を悪くする原因、
- 飲みすぎ食べすぎ
- 太りすぎ
- ストレス
- 過労
- 運動不足
- 睡眠不足
などなど、これらは日常に潜んでいます。そういう小さなほころびが、最終的に肝硬変という終末的な破綻のきっかけになってしまいます。
このことを忘れず、日々を大事に生活していただきたいと思います。