脂肪肝の症状。フォアグラ状態になった肝臓が起こす体の異変

肝臓の病気のなかでも最も重い病気であると説明されることが多い肝硬変(かんこうへん)ですが、「病気が重い」ということはすなわち、「症状が重い」ということと同じですよね。

痛みはどうか、その他見た目の異変はどうかといった、「肝硬変の症状」をテーマとしてお話していきます。

肝硬変で一般的にみられる典型的な8つの症状パターン

「肝硬変にかかった肝臓がどんな状態になっているのか」についてはこちらの記事でイメージしやすいように紹介しています。

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【肝硬変とは】写真でみる、危険な肝臓の状態

肝臓は、自身に痛みを感じる神経を持たない臓器です。ですから「肝臓が痛い」と感じる症状は、肝臓もしくはその周辺の何らかのトラブルが原因で、肝臓周辺の神経が痛みを察知していることになります。

少々ややこしい話ですが、肝硬変で肝臓自体に痛みを感じたとしても、それ自体肝臓が痛みを感じているわけではなく、肝硬変によって変異(線維化や腫れ)した組織がどこか別の部位の神経を圧迫したことによる痛みです。

ですからここでは、肝硬変による<痛み>は「肝臓以外の痛み」を指すことにします。

肝硬変を発症したときに見られる症状は、大きくわけて8パターンあります。特に初期の肝硬変の場合は無自覚のケースも考えられますので、以下に挙げる症状がみられたときには注意してみてください。

▼肝硬変を発症したときによくみられる症状

くも状血管拡張 首、前胸部、頬などにできる赤い斑点
手掌紅班(しゅしょうこうはん) 手のひらの両側および全体に現れる赤み
腹水(ふくすい) 主に下腹部にたまる水、あるいは水がたまる症状。大量にたまると腹部全体が膨満する。
腹壁(ふくへき)静脈拡張 腹壁(へその周りの皮下組織)の静脈が太くなり皮膚に浮かび上がる
黄疸(おうだん) 白目や皮膚の一部が黄変する肝疾患特有の症状
羽ばたき振戦(しんせん) 肝性脳症の症状のひとつ。鳥が羽ばたくような手の震え。
女性化乳房 女性ホルモンの肝臓での分解が低下するため、主に男性の乳房が大きくなる
睾丸萎縮(こうがんいしゅく) 女性ホルモンが高くなるため睾丸が小さくなる男性特有の症状

(参考:肝硬変の症状-肝硬変(国立研究開発法人国立国際医療研究センター肝炎情報センター))

【写真閲覧注意】肝硬変であらわれる一般的な症状を写真でみてみる

ことばによる説明でもなんとなくご理解いただけたかとは思うのですが、上記のうち、特によくみられる肝硬変の症状を、今度は実際にイメージとしてとらえていただきます。

1.くも状血管拡張
空のくもではなく、虫のくものほうの「くも状」です。以下は肝硬変の男性の肩にできたくも状血管拡張です。「くも状血管腫」と呼ぶことも多いです。

くも状血管拡張の症例写真
(出典:視覚素材問題(11問)- 看護師国家試験 解答・解説1785(第99回))

2.手掌紅班
手掌紅斑には、症状によって見た目が異なる症状が現れますが、以下はかなり重度の手掌紅斑がみられます。肝硬変の余波ながら、見た目はまるで手のひらのひどいやけどのような症状です。

手掌紅班の症例写真
(出典:肝硬変症-神奈川歯科大学)

3.腹水
以下の断層写真では、本来空洞ができるべきではない部分に空洞ができているように見えますが、これは空洞ではありません。肝硬変による腹水が大量にたまっている様子を写した断層写真です。

腹水は、リンパの水分吸収と滲出(しんしゅつ=にじみ出すこと)とのバランスが崩壊した結果起こる現象で、肝硬変以外にも、末期がんなど終末期的疾患の典型的な症状です。

腹水の症例写真
(出典:肝硬変の合併症と治療(肝がんは除く) – 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター 肝炎情報センター)

4.腹壁静脈拡張
「メデューサの頭」などの異名をとる、かなりはっきりと浮かび上がる静脈が特徴的な、こちらも肝硬変の代表的な症状です。肝機能障害が血流に現れたのが腹壁静脈拡張です。

肝臓に入らなければならない血液が肝機能障害により入り込めず、静脈に逆流した結果、こうした特徴的な症状起こります。ちなみに「メデューサ」はギリシア神話の神の1人ですが、その髪の様を症状に応用しているとのこと。

肝硬変による腹壁静脈拡張症例写真とCG画像
(出典:Cirrhosis – Just In Time Medicine | Michigan State University)

5.黄疸
肝疾患の症状としては最も典型的な異変です。肝硬変以外でも、胆道系のトラブルでは必ずといっていいほど黄疸がみられます。肝硬変前の初期的肝疾患でもみられるため、早めの対処のきっかけにできる症状でもあります。

肝硬変による黄疸症例写真
(出典:肝臓病の症状 – やまうち内科クリニック)

6.羽ばたき振戦
肝硬変の余波が脳に及んで起こる脳障害の一種である「震え」です。指先をパタパタとはたつかせて、まさに鳥が羽ばたきをするような震えがみられます。

7.女性化乳房
女性ほどではもちろんありませんが、男性の体内にも少量の女性ホルモンが分泌されます。肝機能障害によってこの女性ホルモンが正しく代謝されずに体内に残ってしまうと、女性化乳房のような症状が起こります。

8.睾丸萎縮
女性ホルモンの問題で男性生殖器に問題が起こって現れるトラブルです。こちらも場所が場所なのでこちらの画像は省かせていただきます。

という具合に、肝硬変は肝臓と直接的には無関係な部位にさまざまなトラブルが現れることがおわかりいただけたと思います。肝臓は全身に影響を与える臓器であることを再確認できますね。

肝硬変で自覚できる重篤な症状は非常につらいもの

前章では「肝硬変でみられる(目に見える)症状」でしたが、ここからは患者さんご自身が自覚する症状について説明を加えます。

肝硬変で起こる全身の激しい痛みの原因は「全身こむら返り」

肝臓には痛みを感じる神経がないのだから、肝硬変は生命の危険はあっても、そんなに苦しくないのではないか・・・などという声もたまに聞こえてきます。しかし残念ながら、肝硬変はそんなに生易しい病気ではありません。

確かに肝臓が線維化してなめらかさと弾力を失い、ゴツゴツ、ガサガサの肝臓になってしまう肝硬変でも、肝臓自体が痛みを感じることはほぼありません。

ところが肝硬変を発症すると、全身の筋肉が激しく痛む「全身こむら返り」の症状がみられるリスクが急激に高まります。実際、中等度の肝硬変の患者さんの80%に全身こむら返りの症状がみられるといいますから、かなりの高確率です。

とすると、なぜそんなワケがわからない、でもたまらなく痛い症状が現れるのか・・・のギモンが浮上しますよね。このあたりも肝臓が全身と密に連携していることをよく表しているんです。

上の「腹水」のところで、リンパ(実際には血管も)から水分がにじみ出てしまうのが肝硬変の症状の特徴だとお話しましたが、このとき、アミノ酸も水分と一緒にリンパや血管の外部に漏れ出してしまいます。

アミノ酸は筋肉の状態を良好に保つ役割を果たします。したがって、アミノ酸不足により筋肉の痙攣(けいれん)が全身のあちこちで起こることになります。これが、全身こむら返りが起こる簡単なメカニズムです。

ちなみに「こむら返り」というのはいわゆる「足がつる」という状態ですが、その「足」はどこかというと、特に「ふくらはぎ」のケースが多いですよね。実はこのふくらはぎのことを、昔は「こむら」と呼んだそうです。

こむら返りの明確な原因もわかっておらず、全身にふくらはぎがあるわけでももちろんありませんが、肝硬変による全身疼痛(とうつう=しくしくとうずくような痛み)を表現するにはふさわしいことばなのかもしれません。

末期ステージの患者さんともなると、痛みから全身をエビのように反り返らせなければならない患者さんもいるそうです。

肝硬変ではかゆい「湿疹」が出ることが多い

肝臓の状態が悪いと黄疸だけでなく、顔色が悪くなるなどして皮膚の状態が悪くなるということが昔から言われてきました。肝硬変(その前段階の肝炎でも)のステージともなると、その傾向は顕著です。

特に、強いかゆみを伴う湿疹が出るのも肝硬変の大きな特徴です。全身こむら返りの痛みに苦しみながら、さらに湿疹によるかゆみにも悩まされなければならないわけですから、肝硬変はうわさにたがわぬ重病・難病です。

しかも、「はっきりと湿疹があらわれているわけでもないのに、強いかゆみだけが襲ってくる」という、想像しただけでパニックに陥りそうな症状も肝炎や肝硬変では見られます。

肝硬変による(湿疹などの)かゆみの特徴
  • 見た目に異常がなくても強いかゆみが突然襲いかかる
  • いくらかいてもある程度時間が経過するまでかゆみが治まらない
  • 全身のあちこちに、場所を問わずあらわれる
  • かゆみで目覚める、あるいはかゆくて眠れないことがある
  • 処方・市販を問わず、かゆみどめの薬が効きづらい

(参考:肝臓病のかゆみの特徴-健康情報サイト(大日本住友製薬))

かゆみが起こるメカニズムについてもすでに解明されているのですが、ここでは割愛します。

肝硬変はつらい。だからこそ、ぜったいに肝臓を労わるべき!

肝臓病にはいろいろな種類がありますが、悪化を放置していると、最終的には肝硬変に至ります。悪化しはじめるとそこからが早いのも肝疾患の特徴なので要注意です。肝硬変から先は・・・肝臓がんが待っています。

今回はかなり衝撃的なエピソードもあえてご紹介しました。アルコール、肥満、運動不足、睡眠不足、ストレス、甘いものの食べすぎなどなど、肝臓がダメージを受けるきっかけは日常にイヤというほど転がっています。

個人的な感覚でいうなら、食べたり飲んだりして得られる「幸せ」と引き換えに、肝臓はダメージを負ってくれているのだな・・・などとも感じます。しかし肝臓もいつまでも「沈黙の臓器」ではないのです。

肝硬変は、肝臓がそれまでにため込んできた不満のあらわれでもあるような気がします。もちろん、生活習慣と無関係に肝硬変を患わなければならなかった方もいらっしゃるとは思いますが。

タフな肝臓であるか否かも含め、運不運が影響していることも事実ですが、健康な今だからこそできる対処について、そろそろ考えたほうがいいのかもしれませんね。自戒も込めつつ…

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