肝硬変の検査方法。血液検査、CT・MRI撮影、超音波検査

肝臓は、自身がダメージを受けても自覚症状が表面化しづらい臓器です。しかし肝硬変(かんこうへん)ともなると、たとえ初期の肝硬変であったとしても、まったくの無症状ということはほぼありません。

肝硬変にならないうちに、ちょっとした不調や違和感‥たとえば食欲不振や慢性疲労など目に見えないトラブルの段階で医療機関に相談することが望ましいです。

それでも検査の結果、すでに肝硬変を示す数値だったということも起こりえます。今回はその検査がどのように行われるか、というお話です。

検査でわかる肝硬変のあれこれ。肝硬変と検査方法・検査数値の関係

肝機能検査は、一般的に肝臓の状態を知るために行われます。

肝機能検査にはいろいろなものがありますが、主に実施されるのは次の3つです。

  • 血液検査
  • CT・MRI(断層撮影)
  • エコー・超音波検査

「肝臓の状態」にもいろいろあるわけですから、それぞれの症状(疑われる状況)ごとに、最適な検査方法を導入して検査を行います。

たとえば、肝臓が健康な状態なのか否かを判断するためには、血液検査が行われます。

肝硬変かもしれないと思って血液検査だけを行うお医者さんはおそらくいないでしょう。血液検査から、たとえばALT(GPT)、AST(GOT)、γGTP(γはガンマ)の数値を知ることで、肝臓の健康状態を知ることができます。

これらに異常があるからといって、すぐに肝硬変であると疑われることは多くありません。ただ、これらの数値が異常な高値、あるいは低値だったり、ほかの肝機能数値が正常値から大きく逸脱している場合には、肝硬変の可能性も疑われます。

▼血液検査とその項目の見方については、こちらで詳しく紹介しています。
血液検査の数値の意味。これで肝臓の状態がまるわかり

肝硬変かもしれない!疑いがかかったときに採用される検査方法

肝硬変は、肝臓の線維化※が進んで、見た目からして正常な肝臓とは明確に異なる肝臓の状態をいいます。

※線維化については「肝硬変とは?」の記事をご覧ください。

もちろん、内臓だから一般人には見えません。

しかし特殊な器具を駆使すれば、肝硬変は「目に見える肝疾患」となります。肝臓の状態をつぶさにリアルタイムで観察するための器具が、エコー(超音波)やCT・MRI(断層撮影)などです。

▼エコー、超音波検査
超音波検査のイメージ写真

▼CT・MRI(断層撮影)
断層撮影のイメージ写真

肝硬変が重大疾患であることは衆目の一致するところですが、検査から肝硬変を知る方法は「目で見る」という、意外と原始的な考え方が採用されることになるのです。

ただ、肝硬変の疑いがかかるという程度で、その疑いが強くない場合(たとえば肝炎から肝硬変へと移行する過渡期)には、「目で見えない(見づらい)状態の肝硬変」の可能性もあります。

そういうときには、やはり検査数値を頼ることで一定の判断を下すことができます。

肝硬変を示す代表的な検査項目と検査数値

肝硬変が疑われる検査数値を検査項目ごとにまとめ、簡単に解説も加えることにします。

検査項目 肝硬変が疑われる数値範囲 解説
アルブミン 3.5g/dL以下 肝硬変による激しい肝機能障害によりたんぱく質の合成能力が低下し、肝臓でつくられる代表的なたんぱく質であるアルブミンの数値が著しく低下する
γグロブリン 2.5g/dL以上 肝硬変の最大の特徴の1つは「肝臓の線維化が進行する」ことであり、線維化が進行すると、死んだ肝細胞が増えるのに伴ってγグロブリン(免疫グロブリン)の濃度が上昇する
膠質試験(ZTT・TTT) ZTT‥12U(Kunkel単位)を上回る、TTT‥4U(Maclagan単位)以上 肝硬変など肝機能が著しく低下したときに行われるスクリーニングテスト。主にZTT、TTTと呼ばれる検査が行われる。γグロブリンが上昇するとZTT、TTTも上昇がみられる。
血小板数 10万個/dL以下 線維化が進行して肝臓における血流が悪化すると、古くなった血液を分解する役割を担う脾臓(ひぞう)に多量の血液がたまって肥大が起こり、脾臓の働きが不当に活性化する。脾臓で血液が分解される際に、必要以上の血小板も一緒に分解される。

肝硬変とは直接関係なくても間接的にかかわるかもしれない肝機能を示す検査数値は非常に多様です。他、肝機能検査の数値について詳しく知りたい方は「血液検査の数値の意味、解説記事」をご覧ください。

こんな検査数値がでたら肝硬変かも!

ここまでは、「肝硬変かもしれない」という疑いが前提となって検査をした場合についてお話してきましたが、ここからは、肝硬変など思いもしていなかったけれど、検査数値は「もしかしたら・・・」の可能性を示しているケースをご紹介します。

検査項目・検査方法 肝硬変が疑われる検査数値の範囲 解説
ALT(GPT)とAST(GOT)の比から判断する方法 AST/ALT<1‥初期の肝硬変
AST/ALT>1‥かなり進行した肝硬変
ALT(GPT)とAST(GOT)の少なくとも一方に大きな異常が見られる場合に肝硬変を疑い、膠質反応試験など詳細な検査を行うきっかけになる
γGTP 基準値を大きく上回る アルコール性脂肪性肝炎が悪化して肝硬変に至っている可能性を示す
LAPLD(LDH) LAP、LDHの軽度上昇 軽度上昇の場合、ほかにもさまざまな肝機能障害の可能性があるため、慎重な判断が必要になる。LAPはたんぱく質を分解する肝臓酵素、LDHは糖代謝酵素。
ALP ALPが極めて高くなる ALPは胆汁とのかかわりが大きい酵素で、胆汁性肝硬変の有力なマーカーとなる
ビリルビン 直接ビリルビンだけが高値の中間型高ビリルビン血症 中間型高ビリルビン血症は肝細胞の異常で起こる症状。ビリルビンは黄疸(おうだん)の際に見られる色素。
コリンエステラーゼ(ChE) 著しく低値を示す 肝臓だけで生成されるコリンエステラーゼは、肝硬変などの激しい肝機能障害によって生成されなくなる
A/G比 アルブミン(A)の減少により低値を示す A/G比は「アルブミン/グロブリン比」で、アルブミンは肝臓だけで生成されるアミノ酸。肝硬変などの激しい肝機能障害によりアルブミン値(A/Gの分子)が低値を示すと、A/G比も低値を示す。
アミラーゼ 血清アミラーゼ、尿アミラーゼがともに低値 アミラーゼは主にだ液、すい液などに含まれる消化酵素。肝機能との直接的なかかわりは持たないものの、腎機能障害が間接的に肝硬変などの肝機能障害の原因になることもある。

いろいろと耳慣れない検査項目や検査方法を挙げてきましたが、いずれも、検査項目の単独の異常で肝硬変を疑うことは多くありません。ほんとうに肝硬変ならば、上記の多くの項目で「肝硬変が疑われる数値」に合致します。

とはいえ、どれか1つだけが合致したとしても、何らかの肝機能障害が起こっている可能性が高いので、安心のためにも医療機関で相談していただいたほうがよいでしょう。

検査がすべてではないけれど、肝硬変の診断は検査に依存するのが現状

肝硬変という病気は、人間が決めた病気です。肝臓からしたらそんなことは知ったことではありません。つまり、人間が肝臓の状態に対し、「これ以上は肝硬変としよう」と決めたのです。

ですから本来であれば、検査がすべてと考えるのは正しくない発想であるといえるかもしれません。肝臓のキモチなど考えない人間が決めたことなのですから。

とはいえ、医療現場ではどうしたって検査に頼る以外にないのが現状です。肝硬変のような重大疾患だからこそ、少なくとも患者さんの側からしたら、検査数値を尊重することが大切です。

自分で肝硬変ではないと思っていても、上記の検査結果から「もしかしたら・・・」の疑いが芽生えたことで、一命をとりとめた患者さんも少なくないはずです。

肝硬変にならないよう、普段から日々を大事に生活することももちろん大切ですが、万一肝臓を悪くしてしまったのであれば、検査結果も尊重したほうがよいことは間違いありません。

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