寝ても寝ても眠いのは肝機能低下が原因かも。食べ物で解消する方法
「つかれた~…ねむいなぁ…」と、私たち人間は一生懸命仕事をしたり運動をしたりすれば、精神や身体が疲労します。睡眠不足のときにも疲労感や倦怠感がつきまといますよね。
疲労感の中には倦怠感(けんたいかん=だるさ)や不快感、眠気などさまざまな感覚が含まれますが、今回は特に「眠気」と肝臓の疲労の関係にクローズアップし解説します。
寝ても寝ても眠い…なんてあなたは、肝機能が低下しているかもしれません。その眠気を解消するための、食べ物による肝臓回復法をご紹介します。
肝機能低下から強い眠気が起こるメカニズム
眠気にもいろいろな種類がありますね。あまりの心地よさからついウトウトしてしまうのは、日々の疲れの影響が多少あったにせよ、多くは自律神経系のバランスが正しく保たれているときに起こる自然現象に近いです。
ただ、疲れていて眠くなってしまう、眠くて眠くてどうしようもないという種類の、いうなれば「心地よさを伴わない強烈な眠気」は、肝臓が疲労して肝機能が低下していることと無関係ではありません。
肝臓疲労と最も密接にかかわる「アルコール摂取」に疲労や眠気の原因のひとつを求めてみましょう。
- 肝機能低下による強い眠気が起こるまで
-
- 飲酒、食べすぎ、過度な運動
- 肝臓の疲労
- 有害物質の発生(残留)と解毒のための酵素を分泌→眠気
- 有害物質ならびに解毒酵素がミトコンドリアの働きを低下させる
- 細胞に活動を与えるATPが不足し、アンモニアの除去効率が悪化
- さらにATPの不足が進み、脳細胞が活性を失う
- 強い眠気が起こる
- 6により不調が肝臓にフィードバックされて(2にもどって)悪循環を生じる
という具合になります。いかがでしょうか?
2番目の「肝臓疲労」の原因は、肝臓疲労自身にも脳の疲労にもあるわけですから、ちょっとだけややこしい話になってしまいます。
これから詳しく、順を追ってご紹介します。
代謝しきれなかったアルコールが起こす脳への影響
眠気は自律神経系とかかわりがある感覚です。ということは、強い眠気は脳機能と深くかかわっているはずです。事実、脳が強いストレスを感じると、自律神経系がバランスを欠くことがあるのはよく知られます。
たとえばお酒を飲みすぎて肝臓のアルコール代謝が間に合わないと、いわゆる「二日酔い」の症状が現れます。二日酔いでは、前日ぐっすり寝ても翌日まで頭痛や強い眠気、だるさなどの症状がみられます。
お酒を飲みすぎて眠くなるのは当たり前・・・そう感じるかもしれません。しかしこのメカニズムを探るなら、「肝臓が代謝しきれないアルコール(アセトアルデヒド)の残りが脳に届いた結果」と解釈されます。
ということは、アルコールによる影響と似た状況の肝臓疲労によって、二日酔いのような「強い眠気」が起こることもありうるのではないか・・・の推測は十分成り立ちます。
実は、このことは二日酔い以外のストレス(精神疲労)、肉体疲労、睡眠不足や頭脳疲労などさまざまな要因で誘発される現象で、その余波は「肝臓の疲労」という形で肝臓にフィードバックされます。
一度に代謝しきれないほどのアルコールを摂取するだけで十分肝臓は疲労しますが、代謝しきれなかったアルコールはさらに脳の疲労や自律神経系のバランスの乱れなどを呼び、結果的に肝臓はさらなる疲労を強いられる悪循環が生じます。
ですからいろいろある肝臓疲労の種類の中でも、アルコールに誘発される種類の肝臓疲労は特に疲労の度合いが大きくなります。アルコールによる疲労をはじめ、こうした肝臓の疲労が、「連続的な強い眠気・倦怠感」の原因になります。
肝臓が疲労することで起こる眠気の原因となるトラブル
ここからがいよいよ今回のテーマの核心になります。肝臓をはじめとした身体のいろいろなストレスが、結果的にさらなる肝臓の疲労を呼ぶんですよ、というところまでお話しました。
私たちも時に「疲労の上に疲労が重なる」という経験をしなければなりませんが、肝臓は今まさにその状況に置かれています。この状況で私たちに起こることといえば、「作業効率の低下」です。
会社の上司や学校の先生に叱られたときのことを思い出すと、すべてとは言いませんが、だいたい「もーイヤだ!」と思いながら仕事や勉強をしていたことに思い当たったりませんか?
そのときすでに精神的肉体的な疲労がピークに達していたのではないでしょうか?肝臓は誰かに叱られることはありませんが、作業効率の低下の余波は多方面におよびます。
そして肝臓自身にとっても状況は好まざる事態に至っています。
つまり、肝臓の主要な役割である代謝と解毒の機能が低下するのです。たとえばアルコールの場合ですと、以下の不具合と肝機能低下が起こります。
アルコールの代謝によってアセトアルデヒドという強い肝毒性を持つ物質が生成され、これがアセトアルデヒド脱水素酵素(NADH)という酵素によって酢酸へと代謝されて解毒が行われます。
NADHは個々の細胞内のミトコンドリアと呼ばれる部分に影響を与えます。ご存知の方も多いと思いますが、ミトコンドリアは個々の細胞が活動するためになくてはならない細胞小器官です。
個々の細胞が活動しなければ、心臓も肝臓もどこも動けなくなるので私たちは生きていくことができません。ミトコンドリアはそのくらい重要な細胞小器官なのです。
NADHは、アルコール代謝に欠かすことができない重要な肝臓分泌酵素です。しかし実は、NADHの分泌量が多くなると、ミトコンドリアの働きを低下させてしまう特徴があるのです。
飲酒だけではありません。食べすぎや筋肉疲労など、物理的な負荷がかかりすぎると、今度は、こちらも有害なアンモニアの発生を誘発します。そしてこのアンモニアも悪いヤツなんです。
ミトコンドリアの働きを低下させるのは、アルコール摂取によるアセトアルデヒドやNADHだけでなく、アンモニアも同様です。
ですから飲酒だけでなく、食べすぎや運動によっても肝臓の機能は低下します。
ミトコンドリアの重要な働きは、細胞の活動源となることです。ミトコンドリア自体が細胞を直接動かしているわけではありません。活動の源となるエネルギーを生み出しているのです。
そのエネルギーはATPと呼ばれます。つまり、アンモニアやNADHがミトコンドリアの機能を低下させることで、ATPの不足が起こります。ATPは脳の働きに重要な意味を持つエネルギーでもあります。
しかも悪いことに、アンモニア除去の際にもこのATPが活躍しています。ですからATPが不足すると、結果的にアンモニアの悪行を食い止めることができず、ATPはさらなる不足の状態に陥ります。
そうなると、脳細胞の働きも当然鈍ってきます。強い眠気が起こる原因の一端は、ATPの不足にも求めることができるのです。
風が吹くと桶屋がもうかるような話だったかもしれませんが、肝機能が低下すると眠気が襲う大まかなメカニズムの説明は以上になります。
食べ物にちょっと気をつかって肝機能回復!眠気が起こらない毎日に
なんだか調子が悪い…、医者に肝機能のことで指摘を受けた、そんなあなたが毎日眠気を感じているなら、肝臓の疲労と強い眠気は深く関係しているかもしれません。
肝臓を労わり疲れを回復させてあげることで、その眠気を起こさないようにしましょう。
肥満の解消やアルコールの制限(禁酒)は当然のこととして、ここでは毎日口にする食べ物についてを中心に、肝機能を回復する方法をご紹介します。
肝臓にいい栄養素、良質なタンパク質を摂る
肝臓の機能を助け修復する栄養素には次のようなものがあります。
- タウリン
- オルニチン
- セサミン
- アラニン
- スルフォラファン
- オメガ3脂肪酸
- ビタミンB
ブロッコリーや芽キャベツなどのアブラナ科の野菜はスルフォラファンを多く含んでいるため、毎日の食事に添えてほしい緑です。
また肝臓の解毒作用を補助してくれるニンニクや玉ねぎ、炎症を防ぐ効果があるりんごやグレープフルーツは意識的に食卓に盛り込んでください。ビタミンBは緑黄色野菜に多く含まれていますよ。
良質なタンパク質とは、脂質が少ない
- 鶏のささみ
- 豚肉の赤身
などを指します。これらには上記したビタミンも多く含まれるので、肝臓の事を考えれば取り入れない手はないです。
他にも大豆は植物性のタンパク源として世界で利用されている優れた食品です。中でも大豆食品である豆腐は、手軽ながら低カロリー、そして吸収率が高いのでおすすめですよ。
肝臓の負担になる鉄分や脂質を摂り過ぎないようにする
もともと肝臓には必要な量の鉄分が貯蔵されるようになっていますが、肝臓の機能が低下すると、鉄分が過剰に肝臓に蓄積されてしまいます。
鉄分は活性酸素を発生させるので、肝臓に悪い影響を及ぼすと言われているのです。
鉄分はタンニンという成分によって吸収が阻害されるので、鉄分を多く含む食品を摂るときにはお茶やコーヒーと一緒に食べるといいでしょう。
脂質も適量であれば、細胞膜を生成したりホルモンの材料になったりとする、身体に必要なものです。
しかし肝臓が処理しきれない量の脂質を摂取してしまうと、肝臓の処理が追い付かず疲労の原因になってしまいます。逆に、肝臓が疲労しているときに多くの脂質を送り込んでしまえば、肝臓が悲鳴をあげるのはよくわかりますよね。
脂質が多いものは
- バター
- マヨネーズ
- 肉の脂身
- スナック菓子
- フライ麺のインスタントラーメン
といった高カロリーなイメージがあるものです。これらは避けましょう。おいしいのに!という気持ちはわからなくもないのですが…自分の肝臓のためですよ。
最近眠気が強いなぁ…と思ったら、肝臓の健康も考えてください
今回のお話から、体内には血液以外にもいろいろな循環が行われているのだなぁと実感できますよね。厳密には、肝臓は心臓とは異なり「循環器」には含まれません。
しかし実際には、心臓だけでなく、肝臓も体内のさまざまな循環の要になっている印象がますます強まります。まさに「肝」という感じがしますよね。
心臓を大事にするのは誰にとっても当然ですが、この機会に、多くを語らない肝臓だからこそ、ますますいたわってあげなければならないという気持ちになります。
寝ても寝ても眠いあなた、ぜひ・・・