肝機能障害であらわれる10の初期症状。チェックリストで要確認
肝機能障害とは血液検査で何らかの肝臓についての数値が異常値であるときを指します。
主にはウイルス性の肝炎やアルコール性肝障害、薬物による肝障害、自己免疫性肝障害などがあり、その種類は実に様々です。
種類が異なればそれぞれ症状や治療法も異なりますから、肝機能障害の症状はこうだと明言できるものではありません。しかし肝臓の場合、ごく軽微な症状でも危険が大きいという点は症状を問わず共通します。
肝臓が傷んでいるサインとなる、肝機能障害でおこる「軽微な症状」をチェックします。
肝臓病のサインかも?肝機能障害の初期の症状に注意
かつては「脂肪肝なら大丈夫」などと看過されがちだった軽微な肝機能障害もありましたが、軽微な肝機能障害が将来肝炎に、肝炎が肝硬変に、肝硬変が肝臓がんに・・・などと悪化をたどってしまうこともあります。
そうならないためには、ごく軽微な肝臓の悪化を鋭敏に察知し、早めに対処することが大切です。しかしだからといって、ちょっと不調を感じたらすぐ病院に行って肝機能検査をするというわけにもいきませんよね・・・
そんなときは、まずは「セルフチェック」によって肝臓の健康状態を把握することをおすすめします。
まずはセルフチェック。肝機能障害の症状を悪化させないために
ネットで検索すれば軽度肝機能障害の疑いをチェックできるとするチェックリストはたくさん載っています。しかし中には少々アヤシゲなリストもありますので、今回は信頼できるリストを掲載します。
なんとなく肝臓に不安があると感じているけれど、病院に行くほどでもないのかな?でも何か重大な肝臓病だったりしたらどうしよう・・・という具合に現状を持て余している人は、ぜひチェックしてみてくださいね。
ただし、セルフチェックはあくまでも肝機能障害の症状の目安なので、いくつかの項目が当てはまったとしてもそれで肝臓が傷んでいることが決定するわけではありません。
しかし肝臓は「沈黙の臓器」などの異名をとるくらい、自覚症状には乏しい臓器です。ですから逆にチェックがまったく入らなかったとしても、肝臓は絶対に大丈夫と断言はできません。
肝臓というのはそういう臓器であるということを踏まえて、では、チェックをはじめましょうか。以下の10項目すべてに対し「はい」、「いいえ」の2択で回答してください。
- 肝機能障害の症状セルフチェック
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- 風邪をひいていないのに風邪に似た症状(主に発熱や関節痛など)がある
- 継続して食欲がなく、時おり吐き気があり、時に嘔吐することがある
- 身体全体に原因不明の倦怠感(だるさ)がある
- 黄疸(おうだん=白目や皮膚の一部が黄変する)がみられる
- リンパ節(特に首、わきの下、太ももの付け根の部分)に腫れ・痛みがある
- 慢性的な腹部の膨満感がある
- 以前にくらべて下痢や便秘の頻度が高くなった
- 手のひらの赤みが強く、てかりを伴うことがある
- 胸や肩などにクモ状血管腫(※)がみられる
- 異常な腹の出っ張り(ポコンとしたふくらみ)がある
▼「クモ状血管腫」の画像(9番目の項目)
(出典:アザとホクロ Q12 – 皮膚科Q&A(公益社団法人日本皮膚科学会)資料24:くも状(星芒状)血管腫)
なお、8番目の項目にある「手の赤み」のことを手掌紅斑(しゅしょうこうはん)と呼び、重度肝機能障害の典型的な症状です。もちろん肝機能障害以外にも手掌紅斑があらわれる病気はあります。
さて、いくつ「はい」のチェックが入ったでしょうか?1つでもチェックが入るとあまり気持ちの良いものではありませんよね。セルフチェックの結果をどう解釈するかが重要ですので、お話を続けます。
セルフチェックの結果をどうとらえるべきか
「はい」、「いいえ」のいずれかをチェックしていただけたかと思いますが、結論から言うと、「はい」にひとつでもチェックが入ったとすると、それが肝機能障害の症状である可能性が生まれます。
「はい」の個数が増えれば増えるほど、肝機能障害による症状の可能性は高まります。具体的にいくつ以上ということは言えませんが、気になる人はしかるべき医療機関で精密な肝機能検査を受けてください。
複数のチェックが入ったからといって、必ずしも肝機能障害による症状であるとは限りませんが、何らかの障害やトラブルがどこかで発生している可能性は極めて高いので、要注意です。
また、「はい」のチェックがひとつもなかったとしても、それで肝臓が健康な状態であると断言できるものでもありません。これはすでにお話しているとおりです。脂肪肝などはほとんど無症状ですから。
肝臓の場合、何らかの肝機能障害が症状としてあらわれているとするならば、その時点で状況はかなり悪いほうに進行している危険性が高いと考える必要があります。
いずれにしても今回はあくまでも目安としてのセルフチェックですから、不確定要素は大きいと考え、不安があれば早い時期に医療機関で検査していただくようお願いします。
脂肪肝は肝機能障害の症状がないから「日常生活チェック」が有効
進行して肝炎を発症するようなレベルまで悪化すると、何らかの肝機能障害の症状があらわれることもありますが、脂肪肝の場合基本的には無症状のことが多く、それが治療の遅れの原因にもなりえます。
脂肪肝には飲酒が直接の原因となるアルコール性脂肪肝と、飲酒習慣がまったくない人の、つまりはメタボなど食生活や運動不足に原因がある単純性脂肪肝NAFL(ナッフル)があります。
非アルコール性脂肪肝炎NASH(ナッシュ)となると、NAFLとはまったく異なる悪質な肝炎であるため、大きく話がちがってきます。
しかし「脂肪肝」と名がつくものは、初期症状には極めて乏しいといえます。
ですから「初期症状には気を付けてください」ともいうわけには残念ながらいかないことのほうが多いです。脂肪肝は生活習慣とのかかわりが大きい肝疾患なのはみなさんもご存知でしょう。
そういうときは、肝機能障害の有無や症状レベルをチェックするよりは、「生活習慣から脂肪肝の危険性を探る」という手法を採用するほうが有効です。脂肪肝についても、セルフチェックをしてみましょう。
今回もまた「10項目」のチェックシートですよ。例によって「はい」、「いいえ」でお答えくださいね。
- 脂肪肝のセルフチェック
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- 毎日お酒を飲む(基本的に休肝日は週1日未満)
- 太っている(メタボリックシンドロームや肥満)
- 習慣的に夜食を食べる
- 食べ方に問題がある(早食い、やけ食いなど)
- 偏食、好き嫌いがある
- 脂質(脂っこいもの)、糖質(甘いものや炭水化物)を習慣的に多く摂取する
- カロリーを習慣的に多く摂取する
- 塩分を習慣的に過剰に摂取している
- 慢性的な運動不足(運動することが生活習慣になっていない)
- 規則正しい生活が送れていない
こちらも「どれか1つでも当てはまれば脂肪肝の危険性がある」と判断されます。まあ現代人でひとつもチェックが入らない人のほうがおそらくずっと少ないんじゃないでしょうか?
とはいえ、だからチェックが入っていてもよいということではまったくありません。事実、日本の現代人の多くが脂肪肝にかかっていることを忘れるべきではありません。
ただいずれも「習慣的に」とか「慢性的な」とか、継続性ある悪しき生活習慣が問題になっていると考える必要があります。そりゃたまにはありますよね、飲みすぎ食べすぎ運動不足などなど、いろいろと・・・
たくさん「はい」にチェックが入ってしまった人は、いきなりゼロにするのは無理があると思いますので、1つずつチェックを減らしていくことが大切です。要は「意識」の問題ですね。
時代は変わって、現在は「脂肪肝なら大きな差し支えはない」と考えるべきではない時代です。脂肪肝、大いに警戒していただきたいと思います。
なお、明確な肝機能障害があらわれるわけではありませんが、「脂肪肝の症状」についてもこちらのページでぜひご参考いただきたいと思います。
肝機能障害の症状があったらセルフチェックだけでなく病院で検査を
今回は肝機能障害や脂肪肝に関するセルフチェックをしていただきましたが、結果はいかがでしたでしょうか?そうある機会ではないので、良い機会ではあったかな、と思っていただけたなら幸いです。
ただし今回のチェックは、肝機能障害や脂肪肝の有無を確定するためにご紹介したわけではありません。最終的な診断を下すのは、セルフチェックではなく診察・検査を担当したお医者さんでなければなりません。
しかし自覚症状に乏しい肝疾患ですから、今回のセルフチェックをきっかけとして肝機能障害、脂肪肝の有無を知るために病院へと足を運んでいただく機会になれば、それは非常にうれしいことと思います!
症状がすでにあらわれている人はもちろん、セルフチェックをしてみてなんとなく不安を感じたなら、最近肝機能検査を受けていないという人は特に、ぜひこの機会に病院で肝機能検査を実施していただきたいものです。