【意外!】肝機能が低下する原因7パターン。飲酒や肥満だけじゃない


肝臓は、一般的には「タフな臓器」であるといわれます。そのタフさを過信して肝機能を低下させてしまう現代人は多いです。要は、生活習慣の問題で起こる、「身に覚えがある肝機能低下」です。

これに対し、生活習慣とは無関係で肝機能低下が起こってしまうこともあります。生活習慣や体質、遺伝などですね。

今回は「肝機能が低下する原因」をテーマとしてお話します。

考えられる肝機能低下の原因は大きく分けて7パターン

肝機能が低下する原因はいろいろ、数え上げたらキリがないくらいたくさん原因は考えられます。

たとえば、「なんだか風邪気味かもなぁ・・・」という程度のちょっとした体調不良でも肝機能が低下することがあります。

逆に肝硬変のような大病の患者さんであれば、肝機能が低下していないはずがありません。原因は多様なのです。

ただ、いくつかの系統ごとに分けるなら、「7パターン」に分けて考えることができます。

  1. ウイルス性肝炎の感染
  2. 生活習慣の問題(飲酒・肥満)
  3. 自己免疫性肝障害
  4. 薬の影響
  5. 胆道系のトラブル
  6. 遺伝
  7. 激しい運動(肝機能の低下は実際にはない)

それぞれ検証していきましょう。

原因1~B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス感染の可能性も疑ってみて!

飲酒習慣の有無、メタボリックシンドロームなどの問題の有無にかかわらず、肝機能が低下する原因のひとつに、「ウイルス性肝炎」の可能性が考えられます。

ウイルス性肝炎にもいろいろな種類があります。しかしやはり日本では特に、

  • B型肝炎(HBV)
  • C型肝炎(HCV)

には要警戒です。HBV感染の有無は、HBs抗原・抗体検査HCV抗体検査で調べることができますので、ぜひ検査してみてください。

ウイルス性肝炎の場合、慢性肝炎全体の7割を占めるため、ウイルス感染のリスクは私たちが想像する以上に高いと考えられるかもしれません。

身に覚えのない肝機能低下がみられたときには、HBs抗原・抗体、HCV抗体検査をぜひ受けてみてください。

原因2~生活習慣が悪化してる?超音波検査や基本的な肝機能検査が有効

ウイルス性肝炎のリスクがないことがわかれば、正直ひと安心というところでしょう。ただし、さらに踏み込んで検査しないと肝機能低下の原因の特定には至らないことも事実です。

ウイルスに感染していないとなると、まず考えられるのは、「生活習慣の問題」でしょう。飲酒習慣がある人は、飲酒量が気になるところですよね?

厚労省の推奨では、アルコール摂取量の上限は「20mL/日」です。

肝臓の質、肝機能の高さは個人差が大きいので、上記はあくまでも「推奨」であって、超えていたからといって必ずしも肝機能が低下するわけでもなければ、超えていなくてもアルコールが肝機能低下の原因になることもあります。

また、体重超過(BMI>25)によって検査値が肝機能低下を示すこともあります。

  • 飲酒による肝機能低下のリスクはγGTP(γ:ガンマ)
  • 体重超過による肝機能低下のリスクはALT(GPT)、AST(GOT)

などに現れやすくなります。

肝機能検査の詳細については「血液検査の数値の意味。これで肝臓の状態がまるわかり」をご覧ください。

特に体重超過の人の場合、肝臓に不当な量の脂肪が付着する脂肪肝の疑いがあります。

脂肪肝は超音波検査(エコー検査)で目視して確認することもできますので、体重が重いと自覚のある人、あるいは医師などから指摘されたことがある人で、肝機能が低下していると感じた人は、超音波検査を受けてみてもよいでしょう。

生活習慣が原因の肝機能低下は、アルコール摂取量を控える、体重を落とすなど、生活習慣を正すことで改善されることが多いです。悪化するとたいへんなので、そうならないよう早めに対処すべきです。

原因3~自己免疫性肝障害の脅威!ALPやγグロブリンの値に注意

ALT(GPT)、AST(GOT)、γGTPに異常がないということは、ウイルス性肝炎やアルコール性・非アルコール性脂肪性肝障害などのリスクは限りなく低いと考えられます。

しかしだからといって、肝機能低下が起こっているという事実が翻ることはありません。むしろ、一般的とはいえない原因が隠れている可能性が高いと考えなければなりません。

そのひとつが「自己免疫性肝障害」です。

自己免疫というのは、「自己抗体」と呼ばれる抗体(身体に侵入してきた異物を撃退する役割を担う兵士のような存在)が、正常な細胞や組織を抗原(撃退の対象となる異物)とみなして攻撃してしまう免疫異常です。

自己免疫性肝障害の代表的な肝疾患として、「原発性胆汁性肝硬変」や「自己免疫性肝炎」が挙げられます。

自己免疫性肝炎は慢性肝炎と酷似するため見極めが重要です。

自己免疫性肝障害の特徴として顕著に見られるのが、ALT(GPT)やAST(GOT)は正常もしくは正常に近いにもかかわらず、

  • ALT
  • γグロブリン

の数値が異常上昇するという特殊な傾向です。

γグロブリンは「免疫グロブリン」とも呼ばれ、私たちの身体を守る機能を考える上で非常に重要な役割を果たします。少々怖い印象がある肝障害かもしれませんが、現在は良い薬が開発されています。

原因4~もしかしたら薬の影響かも?薬物は肝障害の原因となることが多い

基本的には、上記の原因1~3のいずれにも当てはまらないケースで考えておけばよいリスクといえます。とはいえ、薬による肝機能低下が起こることは意外と多いのもまた事実です。

サプリメントや漢方であれば、ノーリスクというわけでは決してありませんが、肝機能低下の原因となる事例は多くありません。しかし薬物となると、ほぼすべての薬で肝機能低下のリスクをはらみます。

実際、処方箋の注意事項・副作用などの項目に「肝機能障害」のワードが盛り込まれることが多いです

。薬物は肝臓にとって「毒」となることが多いと解釈しましょう。特に、薬物の長期利用は肝機能低下のリスクを高めます。

原因5~胆道系のトラブルは大丈夫?「痛くない胆石」は意外と多い

肝臓でつくられる胆汁(脂肪の吸収を助け老廃物を流すなど多様な役割がある消化液(消化酵素は含まない))の流れが阻害される要因が肝機能を低下させる原因になります。

比較的多くみられるのが「胆石」です。あるいは、「胆道系のがん」の可能性も考えられます。胆石やがんなどの影響で胆汁の流れが阻害されると、肝機能は間違いなく低下します。

胆石というと、「激痛を伴う胆道系のトラブル」といったイメージもあるかと思いますが、胆石の中でも「痛みなどの自覚症がほとんどない胆石」もけっこうあるんです。それだけに要注意です。

ウイルス感染はなし、生活習慣も大丈夫、薬も習慣的に服用していない、でも肝機能が低下している・・・そんな人は、胆道系のトラブルを疑ってみることも必要かもしれませんね。

原因6~特定が困難なことも多い「遺伝」が原因の肝障害も…

たいていの場合、原因5までで肝機能低下の原因は特定されます。しかし生体の仕組みはそんなに単純なものではありません。特に「遺伝」というファクターは、第三者である医師からは一番目に見えづらい部分でもあります。

先天的な肝障害をお持ちの患者さんもいます。これは遺伝による典型的肝障害ですが、先天的なものであれば比較的特定しやすいです。

ところが、遺伝の影響で「ある時期に突然肝機能が低下した」となると、これは特定が難しくなります。

どう考えてもおかしな現象が起こることもあります。たとえば、検査数値からは肝機能低下が認められないのに、なぜか黄疸(おうだん=白目や皮膚の一部が黄変する肝障害)がみられるといった特殊なケースもあります。

そんな奇妙な症状なのだから、きっと遺伝に違いない・・・そう判断はできたとしても、特定するのは難しいことが多いです。

また、遺伝による肝障害は、肝機能低下といった「ちょっとした肝臓のトラブル」よりも重くなることが多いです。

肝移植が必要なレベルの重度肝障害の原因が遺伝であることもあるのです。患者さんからするとなかなかつらい現実ではありますが・・・

原因7~思わぬ要因が「肝機能を一時的に低下させる」こともある

実は筆者もかつて経験したのですが、風邪がなかなか良くならなずに、一度血液検査をしてみようということになって肝機能をみてみたら、肝機能が低下しているという結果になって驚いたことがあります。

医師はすぐに「風邪の影響だろう」と気づき、幸いすぐに風邪がよくなり再び血液検査をして肝機能も無事に回復していたのですが、そうした「ちょっとしたトラブル」が起こっているそのタイミングで血液検査をすると、異常が現れることもあります。

実際風邪の間は薬を飲んでいますので、上記の「原因4」のケースに合致していた可能性も高いです。ただ、風邪であれば比較的気づきやすいともいえます。筆者の担当医がすぐに「風邪の影響だろう」と思い当たったように。

ところが、風邪以外でもこれと似た状況が起こることもあるんです。たとえば、前日に激しい運動をしたときなどにそれは起こります。

激しい運動をすると、筋肉細胞の破壊が起こります。特に、普段運動習慣がない人が突然激しい運動をしたりするとその傾向が顕著になり、肝機能を示す代表的な検査項目であるALT(GPT)やAST(GOT)の数値が急上昇することがあります。

というのも、ALTやASTは肝臓でつくられるだけでなく、筋肉細胞中にも多く含まれるからです。特にASTは多いです。つまり、肝機能が低下しているわけではないけれど、肝機能低下の疑いがかかる検査結果になるのです。

ちなみに、ALTやASTと同じく筋肉に多く含まれるCK(CPK)という酵素の数値も、激しい運動のあとには高値を示すことが多いです。

このあたりの見極めは難しいところかもしれませんが、血液検査の前日には「食べる時間の制限」や「激しい運動の制限」が必要になることが多い理由はお分かりいただけるでしょう。

という具合に、かなり意外性のある、つまりは「肝機能が低下していない肝機能低下(?)」も起こりうるということは、もしかしたら知っておいたほうがよいかもしれませんね。

肝機能が低下するには様々な原因が考えられることを知っておこう

肝機能が低下する原因は多様であるということをご理解いただけたかと思います。ですから、肝機能検査(血液検査など)を実施して肝機能の低下を指摘されたときには、原因を決めつけず、いろいろな原因を想定する必要があります。

肝機能が低下したからといって「胆道系のがんかもしれない・・・」などとむやみに落ち込む必要はもちろんありません。胆道系のがんによる肝機能低下はむしろレアケースです。

とはいえ、肝機能低下がみられたときに、「昨日飲みすぎたかな。すぐ直るだろう」と安易に考えるのも危険だということは忘れるべきではありません。万一のことも少しは想定しておいたほうがよいのです。

確かに肝機能を示す数値は、その日によって比較的大きく変動することもあります。ですからタイミング次第で数値の変動は大きいと解釈すべきです。だからこそ、そのときどきの数値だけでなく、「ご自身の傾向」を知ることが大切なのです。

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