肝血管腫とは。肝臓に腫瘍ができる原因と切除手術が必要になる条件

肝臓の腫瘍(しゅよう)というと、真っ先に思い浮かぶのが「肝臓がん(肝がん、肝細胞がん)」でしょう。

しかしがんはあくまでも悪性新生物(増殖をやめない異常な新生細胞)です。がん(悪性腫瘍)以外の良性腫瘍もあります。

肝臓に良性腫瘍ができる確率は低いですが、中でも最も危険性が高い「肝血管腫(かんけっかんしゅ)」の原因について今回お話します。

肝血管腫の原因は判明していないが、疑われれる要素はある

肝臓の病気はいろいろありますが、真っ先に「肝血管腫」の病名を挙げる人は、病気を経験された方や専門のお医者さんでもなければ、まずないと思います。

しかし肝臓の良性腫瘍の中ではその発生率は「4.8%」と群を抜いています。

では、数ある肝臓病のなかでなぜ肝血管腫が起こるのか、その原因や病態について検証していきましょう。

さて、不吉な「腫瘍」が肝臓にできるという事態の中で、比較的発生率が高いと考えられている肝血管腫ですが、その原因はいったいなんなのか・・・この部分が非常に気になるところです。

しかし現在のところ、残念ながらはっきりした原因はわかっていません。とはいえ、肝血管腫の原因ではないかと疑われる要因はいくつかあります。

肝血管腫の原因と疑われる要因
  • 遺伝
  • 肝硬変肝炎などの肝機能障害
  • ホルモンバランスによる影響

肝血管腫は、男性に発生しない肝臓良性腫瘍ではないすが、女性のほうに多くみられることが統計からわかっています。このあたりは、上記の「ホルモンバランス」が原因であることを裏付けているようにも感じられます。

ほかにも、アルコール摂取が原因であるとの説もあります。男性にしても女性にしても、お酒の飲みすぎには注意したいところですね。

悪性か良性か判断しづらい!切除手術が必要な条件とは

肝血管腫の原因となりうる要因については、理解していただいたら予防に役立てていただきたいと思います。問題は、数ある肝臓良性腫瘍のなかでも、肝血管腫がより警戒を必要とする腫瘍であるという点です。

できてしまったものは、適切に対処する以外に仕方がない部分もありますが、肝血管腫がどんな腫瘍なのかについても触れておきたいと思います。肝血管腫の病態として注意すべき点があります。

それは、肝血管腫は通常無症状であるという点です。もともと肝臓という臓器自体が「沈黙の臓器」と呼ばれるくらい、自覚症状に乏しい臓器です。しかしそれが逆に、病気を悪化させてしまうことが多いです。

実は、肝血管腫についてもそういった怖さがあります。肝血管腫自体は、がんのようにまとまって腫瘍ができるわけではなく、肝臓の血管にポツンとできる良性の腫瘍のイメージになります。

肝血管腫のcgイラスト画像
(出典:肝血管腫-一般社団法人日本胆膵外科学会より)

自覚症状があらわれないため、別の検査の際に偶然発見されることが多いです。万一肝血管腫が発見されたとしても、その大きさや病状によってはそのまま治療が行われないこともあります。

ただし、CT撮影などによる経過観察をしている過程で組織が増大する傾向がみられる肝血管腫に対しては、切除手術などの外科的療法の対象になります。

肝血管腫の造影CT写真
(出典:肝血管腫・増大傾向あり:造影CT-一般社団法人日本胆膵外科学会より)

もうひとつ問題になるのが、肝血管腫の多くは、CTなどの造影画像からは悪性腫瘍(つまり、肝臓がん)であるか良性腫瘍であるかの判別が難しいという点です。

判断がつかない場合には、安全のために開腹して切除手術を行う必要があります。肝血管腫で外科的療法が必要になるケースをまとめます。

切除手術が必要となることがある肝血管腫
  • 腫瘍の良性/悪性の区別がつかない場合(上記説明を参照ください)
  • 腹痛をともなう腫瘍(良性の判断が下っても)
  • 腫瘍組織が増大する場合(上のCT造影画像)
  • Kasabach-Merritt症候群(腫瘍部の血液凝固異常がみられる症状)

(参考:肝血管腫・増大傾向あり:造影CT-一般社団法人日本胆膵外科学会より)

また、切除手術ではありませんが、肝血管腫増大などにより腫瘍が破裂してしまう場合(極めてまれな症状です)には、カテーテルを用いた「肝動脈塞栓(せんさく)術」という外科的療法の対象になります。

このように、肝血管腫の場合、良性の腫瘍ではあっても、いろいろ厄介なことが多いという実態があるということは覚えておいていただきたいと思います。

良性腫瘍ではあっても肝血管腫は油断できない肝臓腫瘍

まあどんな病態であったとしても、「腫瘍」ができたなどといわれたら誰でもあまり気持ちのいい思いはしませんよね。しかもそれが「肝臓」ともなると、腫瘍の響きもますます不吉の度合いを色濃くさせます。

ですから「肝血管腫」などと診断がくだり、それが良性腫瘍であることが判明したとしても、ほっと胸をなでおろすことがあっても、油断をするようなことはおそらくないとは思います。

しかし実際のところ、腫瘍組織が増大していく可能性も十分考えられるのが肝血管腫ですから、経過観察が必要であると医師が判断したなら、その判断はちゃんと尊重し、経過観察していただきたいと思います。

ちゃんと観察していれば、万一組織が増大したり、あるいは悪性化という最悪な事態を招いたとしても、危険の度合いは最小限にとどめることができるはずです。この点は最後に確認しておきますね。

この記事をシェア

合わせて読みたい

ページ先頭に戻る