肝炎とは。原因、症状、悪化によって移行する肝障害の種類

肝臓の重度疾患というと肝硬変をイメージする人が多いと思いますが、肝硬変、さらには肝がんなどへの前段階ともなりうる「肝炎」を軽視するわけにはいきません。

肝炎にならなければ重篤な肝疾患になる確率は激減します。

そのためには「肝炎にかからないための予防」が必要になるわけですが、その予防のためには、まずは「肝炎とはどういう病気なのか」を正しく理解する必要があります。

今回は肝炎に関する概要についてお話します。

そもそも「肝炎」ってどんな肝疾患なの?

肝臓に何らかのトラブル(疾患)を抱えたとき、そのトラブルのことを多くは「肝臓病」と呼びます。肝臓病は文字通り「肝臓の病気」ですが、肝臓病という特定の疾患があるわけではありません。

実は肝炎もこれと同じで、肝炎にはいくつかの種類があると考える必要があります。

実際には、「肝炎」を特定の疾患のように解釈(というか表現)することもあるようですが、厳密には、肝炎は特定の疾患ではありません。

たとえば代表的なものでは、

  • B型肝炎、C型肝炎などのウイルス性肝炎
  • アルコール性脂肪性肝障害・肝炎
  • 非アルコール性脂肪性肝炎

など、ちょっと思い浮かべるだけでも肝炎にはいろいろな種類があります。これらをすべてひっくるめた場合の呼び方が「肝炎」となるわけです。

厚生労働省のデータによると、日本における主要なウイルス性肝炎だけでも推定300万~370万人(内訳はB型が110万~140万人、C型が190万~230万人)の肝炎患者がいると考えられています。

しかし自覚症状に乏しいことや、あるいはA型肝炎ほかのウイルス性肝炎、アルコール性脂肪性肝炎などを加える、もしくはすでに肝硬変に移行している患者数も加えると、実際にはもっと多い可能性が極めて高いです。

肝炎にかかると肝臓はどうなってしまうの?

症状とはいっても、肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれるくらい、かなりひどいダメージを負ったとしても、自覚症状には乏しい臓器です。

ですから自覚症状ではなく、「肝臓の状態」がどうなってしまうのかについてお話します。

そうはいっても、上記の説明のとおり肝炎にはたくさんの種類がありますので、それぞれ症状が異なるんじゃないの?と思うかもしれませんね。

しかしイメージとしては、種類(疾患の名称)が異なるのは原因が異なるからであって、症状は(軽重のちがいは当然あるけれど)どれも似たり寄ったりであるといえます。だからこそどれも「肝炎」と呼ばれるわけですね。

肝炎はさまざまな肝障害を経て至る場合が多く、放置すると肝硬変などの重度肝疾患へと移行する危険性が高い疾患です。自覚症状がない(ことが多い)からといって、決して油断はできません。

で、実際肝炎にかかると肝臓がどんな状態になるのかというと、肝炎の文字からもわかるとおり、ひとことでいえば肝臓を構成する肝細胞が部分的にダメージを負い、肝臓に炎症が起こった状態に至ります。

炎症は、私たちが知る一般的な炎症というイメージで問題ありません。たいていは「肝臓の腫れ」ですが、肝臓に熱を持つこともあります。赤くなるかどうかはわかりません。

ただ、肝炎にはそうした見た目(実際に肉眼では見えませんが・・・)の状態以上に深刻な「症状」があります。

肝炎が発症するとおこる深刻な症状

その「深刻な症状」とは、

  • 肝機能の低下
  • 肝機能障害

が起こることです。肝機能低下や肝機能障害については、初期的なものであれば自覚症状がありませんが、重くなるといろいろな自覚症状が現れます。

中には特殊なタイプの肝炎もあります。たとえば、免疫機能が誤って発症する自己免疫性肝炎がこれに当たります。

ほかにも、薬の副作用として起こる薬物性肝障害でも肝炎を発症します。

また、ウイルスやアルコール、自己免疫、薬の副作用などとは無関係に、膠原病(こうげんびょう)などほかの重度疾患が原因で発症する肝炎も多いです。

いずれにしても、炎症によって肝細胞に破壊が起こることで、さまざまな肝機能障害が起こることがあるのが、肝炎の症状の最大の特徴です。

自覚症状が現れてからでは遅い!軽度な段階で肝炎を防ぐことが重要

今回は「肝炎」についての概要をお話してきましたが、肝臓病の代表的な疾患である肝炎は、やはり自覚症状に乏しいという難しい面があります。

はっきりした自覚症状が現れてからでは肝炎がかなり進行している可能性が高いです。

冒頭でもお話したとおり、肝炎の進行は肝硬変や肝がんなど重大な肝疾患を招く危険性を高めることを意味します。その意味では、自覚症状が現れない比較的軽度な状態で肝炎を食い止める必要があります。

肝炎の有無は、血液検査による肝機能検査から比較的容易に判断できます。血液検査ですから、肝炎の有無を調べる肝機能検査自体もそんなにたいへんな検査ではありません。

肝機能検査のつもりはなくても、ごく一般的な血液検査で知ることができる

の数値が高いと、その高さによっては肝炎が強く疑われます。

ですから定期的に肝機能検査を受けていただくことをおすすめします。

特に飲酒習慣がある人や長期的に薬を飲み続けている人、原因ははっきりしないけれどどうも最近体調がすぐれない人は、ぜひ一度肝機能検査を受けていただきたいと思います。

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