寝ても疲れが取れないのは肝臓が疲れているから!疲労と肝臓の関係とは

子供のころであれば、大はしゃぎしてヘトヘトになっても、ひと晩ぐっすり眠れば翌朝は何事もなかったように、いとも簡単に日常を取り戻すことができました。子供のリカバリー力には目を見張るものがあります。

ところが大人になるとそうもいきません。何しろ現代人の多くが睡眠不足のご時世ですから、「眠れば回復する」という命題自体があってないようなものです。

ただ、もっと深刻な状況があります。

ぐっすり眠っても疲労が回復しないケースです。このケースは、ある臓器のトラブルが原因になっている可能性があります。その臓器は、ご存知「肝臓」です。

肝臓の問題と疲労感は密接に関係している!注意すべき症状とは

子供のころは寝れば消えていた疲れが、大人になると寝ても疲れがとれなくなってしまうことは多いです。

その原因を年齢に求める人もいますが、確かに年齢も関係してはいるものの、もっとはっきりした原因があります。

ぐっすり眠っても疲労が抜けきらない最大の原因として、「肝臓も疲労している」ことがあげられるのです。年齢が関係しているというのは、加齢による肝臓の蓄積疲労の可能性も考えられるからです。

あなたの肝臓は大丈夫?肝臓が疲労すると現れる症状

肝臓の疲労と全身の疲労感、あるいは倦怠感(けんたいかん=けだるさ)との間にはどうやら密接な関係がありそうだと推測されるわけですが、疲労感とか倦怠感というのは主観であることが多いです。

一般的に病気やあらゆるトラブルの症状には客観性がなければお話が進んでいきません。そこで、疲労感や倦怠感の原因となる具体的な症状をいくつかご紹介しておきましょう。

言い換えれば、これからお話する症状が出ているときは、疲労の自覚はなくても肝臓が疲労している可能性がある、ということになります。

肝臓が疲労すると現れやすい症状
  • 十分な睡眠をとっても疲れている感じがする、だるい
  • 慢性的な肩こり、首のこり、腰痛
  • 頭痛、めまい、ふらつきがよく起こる
  • 情緒不安定(イライラ)
  • 肌荒れ、むくみ、便秘、冷えなど一般的な不調

上記の症状のいずれかを自覚したら、栄養剤やサプリメントを口にする前に、「もしかしたら肝臓が疲れているのかも・・・」と、ちょっとだけ疑ってみてもよいかもしれませんね。

肝臓が疲労するとカラダも疲労を感じるカラクリは?

肝臓は人体で最大の臓器です。もちろん大きいこと自体に意味はありませんが、逆に意味があって肝臓に一定以上の大きさ、重さが必要な臓器となっていることはご想像のとおりです。

ひとことでいえば、肝臓にはそれだけすべきことが多いと解釈できます。肝臓の役割を大まかに分類するなら、代謝(たいしゃ)、解毒(げどく)、そして胆汁の生成・分泌という3つの柱をイメージすることができます。

肝機能の3本柱をおさらいしておきましょう。

代謝 小腸から受け継いだ栄養素を役立てるため、さらには解毒のために血中の物質を別の物質に変化させる
解毒 アルコール代謝の過程で発生する有毒なアセトアルデヒドやアンモニアなど、毒素を分解して無毒化する
胆汁の分泌・生成 肝臓で生成された老廃物を排出するための胆汁をつくり、胆管と呼ばれる管から胆のう、十二指腸へと送る

胆汁には、消化・吸収を助ける役割もありますし、また上記3本の柱を効率的に遂行するために、「栄養素の貯蔵」という役割も、肝臓の重要な機能です。

肝臓が疲労してくると、肝細胞がダメージを受けることにより、上記の3本柱が十分な機能を発揮しなくなります。代謝されなければならない物質が十分に代謝されず、毒素が残り、胆汁も十分機能しなくなります。

もちろん上記の肝機能が壊滅的な状況に至るわけではありません(そういう状況を「肝不全」と呼びます)が、肝臓の疲労によってごくごく小さな機能不全が起こり、それが疲労の形で表面化します。

そう考えると、肝臓の疲労もなんとなく不吉な状況であるように感じられるでしょう。もちろん疲労には、筋肉疲労や精神疲労もありますので、すべてが肝臓の疲労のせいではありません。

ただ、精神的なストレスなどによる肝臓への負荷が大きくなること(詳細は下にあります)は十分考えられるので、やはり疲労感、倦怠感の原因の比重としては、肝臓の疲労との関係を考えると近道になる場合が多いです。

とすると、ぐっすり眠ってもとれない疲労感や倦怠感を取り去るためには、まずは肝臓の疲労を取り去る必要があるというひとつの着地点が見いだされたことになります。

そのためにまず知りたいのは、「なぜ肝臓が疲労するのか」というギモンの部分でしょう。

肝臓疲労の原因は肝臓のオーバーワーク!それって何が原因になる?

私たち人間が残業続きで睡眠時間が少ない生活を続けていると、個人差はあるにせよ、いずれ身体のどこかに破綻をきたします。その原因の多くは「疲労」に求められるはずです。

これと同じように、肝臓を働かせすぎてしまうと、肝臓が疲労して肝細胞にダメージが起こり、ごくごく小さな機能不全が起こって私たちの身体も疲労を覚えることになります。

具体的なところでは、毎日休まず十分満足するくらいの量のお酒を飲み続けると、肝臓にとって毒素であるアセトアルデヒドを無毒化するのが追い付かなくなり、肝臓が毒されてしまうことになります。

今の例からもわかるとおり、肝臓というとアルコールとの関係が密であるという印象が強いですが、実はアルコール以外の原因によって肝臓が不当な疲労を強いられてしまうリスクもあるのです。

肝臓疲労のリスク因子
  • 食事の量(回数)が多すぎる、間食をする
  • アルコールの過剰摂取、糖質・脂質の過剰摂取
  • 睡眠不足の習慣化
  • ストレスの蓄積
  • 薬やサプリメント、食品添加物による弊害

これらの条件はいずれも肝臓の負荷、つまりは「肝臓のオーバーワーク」となりえます。上記に挙げた各項目について、それぞれ詳しく検証してみましょう。

食べる量、アルコール、糖質・脂質摂取による肝臓への影響

肝臓が大きな臓器である最大の理由は、たくさんの血液を臓器内に流れ込ませ、代謝、解毒、胆汁の分泌などの仕事をして、その大量の血液を再び血管に送り込むからです。

つまり、大きいからこそ肝臓は、心臓と並んで重大な循環機能をはたすことができるのです。(個人差はありますが)レバー特有のあの生臭さは、いわゆる「血のにおい」であるとも説明されることがあります。

心臓のような大血管は多くありませんが、膨大な数の肝細胞によって構成される肝臓には、無数の微小血管が網の目のように張り巡らされているため、肝臓が扱うことができる血液の量は非常に多いです。

しかしその大きさに求められているのはあくまでも「血液の量」であって「(血中の)栄養の量」ではありません。ですからいくら肝臓が大きな臓器であっても、過剰な食事、飲酒が肝臓にとってプラスになることはあり得ないのです。

送り込まれた栄養が肝臓で飽和状態に至ると、その栄養を代謝したり毒素を無毒化したりするのが間に合わなくなってしまうのです。その結果招くのが、脂肪肝という肝疾患です。

脂肪肝は将来肝炎や肝繊維症(かんせんいしょう=肝細胞が壊死を起こして線維化する肝疾患)、そして重篤な肝硬変(かんこうへん、肝がんへの移行リスクが最大の肝疾患)へと発展するリスクをはらみます。

睡眠不足による肝臓への影響

肝臓をはじめとする臓器は、自律神経系の働きと密接に関係しています。自律神経系のバランスによって各臓器の健全が保たれているといっても過言ではありません。

私たちが睡眠の状態にあるときには、副交感神経系が交感神経系に対して優位な状況です。このときは、自律神経系のバランスにおいて、さまざまな臓器の活動も停滞します。もちろん肝臓も同様です。

とすると、睡眠時間が短くなることによって、交感神経系が副交感神経系に対して優位な時間帯が長くなるため、肝臓が休息する時間がなくなってしまうのです。休息がなければ疲れてしまうのは人間も肝臓も同じです。

睡眠をしっかりとっているのに疲労が抜けない(肝臓の疲れもとれていない)のだから、睡眠は疲労感・倦怠感とは関係ないなどという誤解は避けるようご注意いただきたいと思います。

ストレスによる肝臓への影響

睡眠不足が肝臓の疲労など悪影響をもたらすのであれば、ストレスも同様の悪影響を与えることになると、おそらく賢明な読者は気づかれたのではないでしょうか。

睡眠不足と肝臓疲労との関係は、「自律神経系のバランスが崩れる」ことにありました。実はストレスによってもまったく同様のことがいえるのです。睡眠不足と同様、ストレスによっても肝臓は疲労します。

ストレスによって胃がやられてしまうのも自律神経系のバランスが崩れることにあります。そのため、たとえば自律神経失調症の患者さんがいろいろな体調不良を訴えることにも理解がおよびます。

経験則的に「ストレスは胃や肝臓にとってマイナスとなる」という現象自体はよく知られていますが、自律神経系という重要なポイントが噛んでいることがわかると、改めてご納得いただけるかと思います。

薬やサプリメント、食品添加物による肝臓への影響

病気の改善や予防のために薬を服用したりサプリメントを摂取したりするわけですが、これが肝臓にとってアダとなってしまうこともあります。一見「なぜだ?」と思うかもしれませんね。

しかし冷静に考えれば、理屈は食事やアルコール、糖質・脂質の過剰摂取が肝臓に与える影響とほぼ同じメカニズムが考えられます。まずは薬についてですが、薬(薬物)は病気の原因を攻撃する毒物でもあります。

そのため薬を服用すると、肝臓は解毒の作業が忙しくなってしまうのです。一方のサプリメントは、ジャンルとしては「食品」ですかが、必要な栄養素が凝縮された食品であるともいえます。

薬物と異なり毒素を含まないサプリメントは、一般的には身体に害がないといわれますが、その安心感からか、必要以上の量の栄養をサプリメントから摂取してしまうケースも意外と多いのです。

これはつまり、少なくとも肝臓から見れば、単一の栄養素の食事を過剰に摂取していることと同義です。このケースでも当然肝臓疲労の可能性は高まります。

食品添加物は、肝臓からみれば薬とサプリメントの中間的意味合いの物質です。ですから多くの食品添加物を摂取すると、やはり肝臓の疲労の原因となりうるのです。

血液や臓器の司令塔的役割を担うのが肝臓

肝臓はさまざまな臓器を経由した血液が集まり、この血液の成分を適切な状態にしてから再びさまざまな臓器を通じて全身へと送り出します。その意味では、血液や臓器の司令塔に近い役割が肝臓にはあるといえます。

ですから肝臓は、ちょっとやそっとのことがあっても簡単には弱音をはきません。そのため肝臓は「沈黙の臓器」などとも呼ばれます。少々のダメージでは自覚症状が現れにくいことの比喩です。

しかし私たちは肝臓のそういうがんばりに甘えるばかりではいけません。肝臓にがんばってもらうことは重要ですが、がんばりすぎると疲労につながるのは、私たち人間と同じです。

肝臓を疲労させて結局損をするのは、私たち人間自身です。そして肝臓を疲労させるのも、その肝臓の持ち主である人間にほかならないのです。

そういうことにならないよう、「腹八分目」、「休肝日」、「適度な運動」など、肝臓疲労を蓄積させないためのキーワードをいつも頭の片隅に入れておいていただきたいと思います。

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