かゆみの原因は肝臓トラブルかも!?肝疾患でおこるかゆみの特徴

皮膚に湿疹やかゆみが出た場合、その原因が肝臓病にある可能性があります。

そうかといって、なんでもかんでも肝臓のせいにするのも良くありません。虫刺されや皮膚に常駐する雑菌、アレルギーなどが原因の可能性のほうが大きいです。

ただ、いろいろ原因を探ってみても思い当たらない場合や、過去に大きな肝臓の病気を患った経験がある人の湿疹やかゆみであれば、もしかしたら肝機能が再び低下しはじめているのかもしれません。そのあたりの見極めについて考えます。

肝臓病による皮膚の湿疹やかゆみの特徴は?

肝臓病にはいろいろな種類があります。比較的軽度とされる肝機能低下であれば「脂肪肝」が思い当たりますし、深刻な肝疾患であれば「肝硬変」に思い当たるでしょう。

軽重はともかくとして、肝臓病と呼ばれる種類の肝疾患の多くに共通するのが、「肝細胞のダメージによる血流の悪化」です。肝臓に限らず血流が悪化すればさまざまな悪影響があらわれます。

皮膚は、肝臓やほかの内臓のトラブルを映し出す鏡としての役割を担うこともあるのです。

重度肝疾患による皮膚障害は重症になることが多い!

肝硬変などの重度肝疾患によるさまざまな症状のなかでも少し異質なのが「睡眠障害」です。

自覚症状に乏しい肝臓病でなぜ睡眠障害が起こるのか少々不思議に思うかもしれませんが、やはり重度肝障害となると、自覚症状も顕著になります。

たとえば肝硬変では「全身疼痛(ぜんしんとうつう=全身がうずくように痛む)」や「全身の皮膚の異様なかゆみ、湿疹」に悩まされる患者さんが多く、そうした自覚症状が「睡眠障害」を招きます。

痛みはわかりますが、眠れないほどの「かゆみ」ともなると不快感としては最上級でしょう。夏の夜、蚊に「ぷぅー・・・ぅ-ー・・・ん」と耳元でやられると、その蚊に対しておぞましいほどの憎悪が湧きあがりますよね?

しかし重度肝疾患による「眠れないほどのかゆみが全身を襲う」という状況は、蚊によるかゆみやいやがらせどころではない、想像を絶する苦しみにも匹敵するのではないでしょうか。

肝硬変や慢性肝炎などで起こる「かゆみ」の特徴
  • 眠れないほどの強いかゆみ
  • 不定期で全身にあらわれたり治まったりするかゆみ
  • 湿疹が出ていないのに強いかゆみだけがある
  • いくらかいてもかゆみが治まらないかゆみ
  • 薬がまったく効かないかゆみ

(参考:肝臓病のかゆみの特徴-健康情報サイト(大日本住友製薬)より)

夜も眠れず薬も効かず、かいても治まらず・・・という「苦しみ」にも通じる強いかゆみが、肝硬変や慢性肝炎などで起こるかゆみの特徴です。肝硬変では加えて痛みなどの症状もあるわけですから、ほんとうにつらい病気です。

軽度の肝疾患であったとしても、血流の悪化が起こっている以上は、皮膚のかゆみなどの異変が起こる可能性があります。ただ、肝臓はタフな臓器なので、その一部の状態が悪くても、ほかの細胞が肝機能を補います。

そのため、軽度肝障害の場合は、上で挙げたような「重度なかゆみ」といった形で皮膚症状があらわれることは多くありません。

重度の肝臓病ではなぜかゆみがあらわれるのか?

肝臓病では顔や顔以外の肌の色が悪くなることから、「皮膚の状態が悪化しているのではないか」と考えられがちです。確かに肝臓病によって皮膚の状態が悪化することはあります。

ただ、重度肝臓病のかゆみと皮膚の状態の悪化は直接的にかかわってはいません。実は、肝機能の著しい低下により、皮膚にかゆみの原因がないのに、脳が勝手にかゆみを察知してしまうのです。

人間の脳や脊髄には「オピオイド受容体」と呼ばれる、ホルモン物質に似た働きをする物質があります。オピオイドにはかなり多くの種類があるのですが、それぞれの数的バランスが保たれることが、私たちの体調にとって重要です。

オピオイドの中で痛みやかゆみと密接に関係しているのは、かゆみを引き起こす原因となる「ベータエンドルフィン」と呼ばれるオピオイドと、かゆみを軽減させる「ダイノルフィン」と呼ばれるオピオイドです。

ふだんはベータエンドルフィンの数とダイノルフィンの数のバランスが保たれているため、虫刺されや湿疹などの特別な事情でもない限り、かゆみが起こることはありません。

ところが重度の肝臓病にかかると、ベータエンドルフィンが不当に増加してしまうことがあるんです。ベータエンドルフィンとダイノルフィンの数的バランスが崩れてしまうんですね。

かゆみの原因となるベータエンドルフィンが増えすぎると、かゆみを抑制するダイノルフィンの数が足りなくなってしまうため、肝臓病になるとわけのわからない異様なかゆみが起こるというカラクリなのです。

「脳が勝手にかゆいと感じる」と書いたのは、ベータエンドルフィンやダイノルフィンなどのオピオイドが脳にたくさんあるからです。このかゆみに対して薬が作用しないのは、オピオイドに対する作用がない薬だからです。

オピオイド受容体は痛みとも深くかかわる物質ですが、たとえばがん患者さんの全身疼痛に対しては、オピオイドをコントロールするための良い薬が開発されています。ということは、かゆみに対しても効果がある薬はあるはずです。

ただし肝臓病の場合、薬自体が害になってしまうこともあるので、そのあたりがひとつの大きなネックになってくることも考えられます。

また、「肝臓病と湿疹の関係」については、現在のところ明確になっていません。ただし、肝臓病が原因で皮膚の状態が悪くなることはあるので、湿疹ができてその湿疹がかゆみを訴える可能性はあります。

加えて、肝臓病は全身性のトラブルを引き起こす原因ともなります。肝臓病の余波として悪くなった臓器や組織の影響で湿疹があらわれ、かゆみを伴うことは考えられますが、上記の「かゆみの特徴」に示したかゆみとは根本的に異なるかゆみです。

「経験したことのないかゆみ」との闘い

重い病気にかかるとどうしても「痛みとの闘い」を強いられることになりますが、肝臓病の場合「かゆみ」との闘いになります。おそらく経験したことがない種類のかゆみであると考えられます。

薬が効かないかゆみであるなどと紹介されることが多いのが、肝臓病によるかゆみの症状の特徴ですが、上記でお話したとおり、オピオイドをコントロールしてかゆみを抑制することができる薬がないわけではありません。

ただ、市販されているものをご自身の判断で使用すると、肝臓の状態がさらに悪化してしまう危険性も考えられますので、ぜひ担当のお医者さんに相談していただきたいと思います。

痛みでもかゆみでもつらさは相当ですから、迷わず相談してみてください。

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