肝臓と肌荒れの関係。肝機能の低下がシミやくすみの原因になる

肝臓の機能低下が肌荒れやシミ・くすみの原因になるという説があります。

正直、シミやくすみができたからといってその原因が肝臓にあると思い込んでしまうのはよくありません。特にシミの多くは基本的に「紫外線」が原因になります。

また、肝臓に何らかの疾患を発症して起こる肝機能障害の1つである「黄疸(おうだん)」が、シミやくすみのように見えている可能性もあります。黄疸は、白目や皮膚の一部の黄変が起こる肝障害です。

肝機能の低下や肝臓のトラブルで肌荒れやシミ・くすみがあらわれるのか?今回はこのテーマをお話しましょう。

肝機能が低下すると肌荒れよりもシミやくすみが起きる

確かに肝臓のトラブルによって肝機能が低下すると、全身の血流が悪化するために、顔色が悪くなったり皮膚に若干の異常が起こったりすることはあります。それにやや重度な肝疾患に黄疸はつきものです。

ですから肝臓のトラブル、肝機能低下がシミやくすみの原因になる可能性は十分考えられます。

しかし一般的にシミやくすみの原因となるのは、肝機能低下ではなく、紫外線の照射によるメラニンの増殖、活性であると考えられます。

美容ケアに余念がない女性であればこのことをすでにご存じの方が多いと思います。ところが逆に、メラニンが減少することでシミやくすみの原因になってしまうこともあるんです。そこに肝機能低下が関係してきます。

肌荒れは肝臓のトラブルよりも便秘で起こりやすい

肝機能が低下すると肌荒れが起こるということは比較的広く知られていると思います。事実肌荒れは肝機能障害の1つに数えられますが、「少し肝臓が疲れているかな・・・」という程度の肝機能低下では、肌荒れは起こりません。

肝硬変をはじめ、かなり重い肝障害の症状の1つが肌荒れであると考える必要があります。ですから、一般的な「肝臓疲労」を感じる段階で肌荒れがあったとしても、あまり強引に結び付けないほうがよいでしょう。

とはいえ女性の場合、わずかな肌荒れに対しても敏感になるかもしれませんね。明確な肌荒れではなく肌荒れが起こる前兆のような「違和感」のレベルなら、少々の肝機能低下によって感じられることもあるかもしれません。

そこはもう主観か客観かによって見解が異なる部分なので正直なんともいえませんが、ちょっとした肌荒れの気配であれば、深刻な肝疾患の心配はしなくてもよいでしょう。休養したりお酒を休んだりといったケアをしてあげてください。

肌荒れの兆候が見られた場合、肝機能低下よりも「便秘」とのかかわりが強く疑われます。ずっと便秘がちだったからという理由であっても、肝機能低下よりはその「ずっと」のツケが肌に現れている可能性が高いです。

さて、肝臓とのかかわりでより気になるのは、シミやくすみのほうです。肌荒れとシミ、くすみは根本的に異なる肌トラブルと考えるべきです。

肝機能低下との関係はメラニンの「減少」にある

シミやくすみの原因というと、「紫外線とメラニン」のワードが真っ先に思い浮かぶと思います。紫外線が増加すると黒色のメラニンをつくる細胞が増殖・活性化し、部分的に肌が黒ずんで見えることでシミやくすみになると説明されます。

ここまではよく知っている人が多いと思います。しかし実は、メラニンにはもう1つ種類があるんです。そのメラニンとは「白いメラニン」で、このメラニンが豊富に産生されることで、いわゆる「美白」が実現されると説明されます。

白いメラニンの産生を触発するのが「グルタチオン」と呼ばれる酵素で、この酵素は肝臓で合成される酵素です。そのため肝機能が低下すると、グルタチオンの合成が停滞し、白いメラニンがつくられにくくなります。

グルタチオンは、システイン、グルタミン酸、グリシンの3種類のアミノ酸を肝臓で合成してつくられる肝臓酵素です。

グルタチオンの不足は肝障害やその他全身のさまざまな疾患の原因ともなりえます。グルタチオンはそれだけ重要な酵素なのです。

そして肌のシミやくすみの原因も、肝機能低下によるグルタチオンの減少にある可能性もあるのです。

肝機能と肌の調子が気になる人はこの3点に注意・工夫して

ちなみにグルタチオンは、スプラウト(ブロッコリーの新芽)をはじめ、ブロッコリー、カリフラワー、アスパラガス(特に穂先)などの緑色野菜に多く含まれるので、食材からも摂取することができる栄養素でもあります。

ですから肝臓の疲れや肝機能低下を自覚していて、なおかつ最近お肌の具合がイマイチかな、さらにはシミやくすみが増えてきているな・・・などと感じた人は、次のことに注意・工夫をしてみてください。

  1. 紫外線を浴びない、紫外線対策を厳格化する
  2. 肝機能検査(血液検査)を実施して、数値が悪ければ対処する
  3. スプラウト、ブロッコリー、カリフラワー、アスパラガスなどを積極的に摂取する

特に、紫外線のケアはバッチリなのに、シミやくすみが増えてきている・・・とお悩みの方は、まずは肝機能検査をして、数値に異常があれば上記の緑色野菜を積極的に摂取するなどの工夫をこらしてみてください。

もちろん上記に先立つ大前提となるのが、「正しい生活習慣を日常とする」ことです。十分な睡眠や適度な運動、ストレス解消など、日々できる努力もあわせて行うよう心がけましょう。

グルタチオンの数値は肝機能検査でわかるの?

グルタチオンの数値はよほど詳細な検査をしない限り、一般の血液検査ではわかりません。しかし実際に重大疾患とグルタチオンの数値は密接に関係しますので、そういう状況では検査が必要になることもあります。

ただ、肌のシミやくすみの問題でそこまで厳密な検査を実施するのは、一般的でないのはもちろん、常識的とも言えません。では、グルタチオンの数値は知ることができないのかというと、そうでもないんです。

実は、グルタチオンはALT(GPT)AST(GOT)と並んで肝機能検査の基本的、代表的な検査項目であるγGTP(γ:ガンマ)と密接にかかわっているのです。γGTPが基準範囲外にあるとき、肝機能が低下していると判断されます。

アルコール性の肝障害(脂肪肝、肝炎が起こっていると、γGTPの数値が基準より高くなることで知られます。

ですからグルタチオンの産生を正常にするためには、アルコール摂取にも気をつかう必要があります。

ただし、グルタチオンの産生が停滞するのは、γGTPの数値が基準値よりも低いときです。この部分は誤解しないように注意していただきたいと思います。

γGTPの基準値(JSCC勧告法)(※)
  • 男性・・・50IU/L以下
  • 女性・・・30IU/L以下

※基準、もしくは正常範囲はの判断は医療機関によって異なることがあります。

ただし、γGTPは高ければよいというものではあり得ません。というのも、グルタチオンには強い解毒作用があり、しかし一説では、その作用が強すぎることで抗がん作用も無力化しようとするのではないかともされるからです。

何事も大切なのは「バランス」です。数値に多少の高低はあっても、「正常」であることが第一なのです。ですから、γGTPの数値が低いことを理由としてお酒をガブガブ飲むようなことがあってはいけませんよ・・・

肝臓とお肌の関係は複雑!それゆえ「健康な肝臓」を目指したい

今回は、「肝臓がトラブったら大切なお肌にも影響が出るのではないか」という仮説について検証してきました。おそらくなかなか複雑怪奇に富んだお話だったかと思います。

こういうときに心がけたいのは、あまり難しいことを考えず、「健康・正常である」ことを目指すべきであるということでしょう。難しいことは、スキンケア製品の開発者の方々にお任せすればよいのです。

私たちは、「まずは健康であってその延長に美容がある」という部分を再確認したいところですね。

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