グルタミンの効果で二日酔い解消!多く含まれる食べ物を生で食べよう

スポーツをされている人にとって、「グルタミン」はトレーニングに欠かすことのできない栄養素のひとつというイメージかもしれません。グルタミンは激しい運動をしたときに起きる筋肉の分解を抑え、筋力維持の効果があるとされています。

しかし!グルタミンはアスリートだけでなく、お酒をたくさん飲む人にも良い栄養素と言えます。なんとグルタミンはアルコールの分解を促して、二日酔い症状を改善するのです。

グルタミンのアルコール分解に関する効果、そのほかの健康効果についてご紹介します。


グルタミンは非必須アミノ酸のひとつ

アミノ酸にはたくさんの種類がありますが、その中でも「グルタミン」は体内に最も多く存在するアミノ酸になります。

タンパク質を構成するアミノ酸のひとつで、体内で合成することができるため非必須アミノ酸に分類されます。ただ強いストレスなどにより必要量が急激に増えて体内での合成が追いつかなくなることもあり、準必須アミノ酸と言われることもあります。

グルタミンには筋肉の分解を抑制する効果、免疫機能を高める効果、消化管の機能を助ける効果などがあります。傷の治りを良くする働きもあり、外科手術の後でグルタミンが使われることもあります。

似た名前の成分に「グルタミン酸」がありますが、グルタミンとグルタミン酸は別物です。

グルタミンとグルタミン酸、別物だけど深い関係がある

グルタミンもグルタミン酸も、タンパク質を構成するアミノ酸です。どちらも体内で合成することができるため、非必須アミノ酸に分類されます。

グルタミン酸といえば「味の素」を思い出すかもしれません。グルタミン酸がうま味成分であることを発見したのは日本人で、世界初の化学調味料として広まりました。正確にはナトリウムと結合した「グルタミン酸ナトリウム」の形で使われています。

グルタミン酸とアンモニアに、「グルタミンシンテターゼ」という酵素が働いて作られるのがグルタミンです。そして逆に、グルタミンを酸加水分解するとグルタミン酸とアンモニアが作られます。

それぞれの作用については、全然違っています。

グルタミン
消化管機能を助けたり免疫力を高め、また運動による筋肉の分解を抑える
グルタミン酸
脳の神経伝達物質になる

このようにグルタミンとグルタミン酸は全く別の作用をする成分ですが、その合成に関しては深い関係がある成分になります。

ちなみにグルタミン酸ナトリウムでアレルギーを起こす人がまれにいますが(中華料理店症候群、グルタミン酸ナトリウム摂取が原因ともされるが正確な因果関係は不明)、この人はグルタミンでもアレルギーを起こすと考えられるため注意してください。

グルタミンはお酒を飲む人にもいい!二日酔い改善の効果

アスリートにとって、グルタミンはおなじみの成分かもしれません。先ほども言いましたが、グルタミンには激しい運動による筋肉の分解を抑える効果があるため、体を鍛える前後に摂取されることも多くなります。

このように運動をする人に良いと言われるグルタミンですが、実はお酒を飲む人にとってもおすすめの成分になります。グルタミンを摂取するとアルコールの分解が促されて、二日酔いをしにくくなるのです。

飲酒とグルタミンの関係について、詳しくみていきましょう。グルタミンには他にも、消化管機能を助けたり免疫力を高めたりといった効果もあります。それらについては、後の章で詳しく説明します。

アルコールの分解には酵素と補酵素が必要

お酒を飲むと、体の中に取り込まれたアルコールは肝臓で分解されていきます。

まずアルコール脱水素酵素が働いて、アルコールはアセトアルデヒドになります。次にアセトアルデヒド脱水素酵素が働き、アセトアルデヒドは酢酸になります。そして最終的には水と二酸化炭素へと分解されて、体外へ排出されていくのです。

この分解がスムーズに進んでいれば二日酔いの心配もないのですが、分解が滞ってアセトアルデヒドが増えてしまうと二日酔いになってしまいます。

アセトアルデヒドは有害な物質です。二日酔いの頭痛や吐き気といった症状の元凶は、このアセトアルデヒドにあるのです。

アルコールの分解には、主にアルコール脱水素酵素とアセトアルデヒド脱水素酵素という二つの酵素が必要になります。そしてこの酵素が働くときには、補酵素の「NAD」も必要になります。

補酵素「NAD」は酵素の働きを助けて、自分自身は「NADH」へと変化します。お酒を飲み過ぎて分解しなくてはいけないアルコールが増えてしまうと、次第にNADHが増えてNADが不足してきてしまいます。

NADが不足すると、アルコールの分解はスムーズにできなくなってきます。分解に時間がかかるようになり、「お酒が体からなかなか抜けない」という状態になってしまうのです。

グルタミンはアルコールの分解を促す

私たちは食事から活動するためのエネルギーを得ています。食事で取り入れた糖質をグルコース(ブドウ糖)にまで分解し、そしてさらにそのグルコースが分解されていく過程でエネルギー(ATP)を作りだします。

脳や筋肉はこのATPを消費して活動をします。ただ激しい運動をしたりしてたくさんのATPが必要になると、やがてATPを作るためのグルコースが不足してきてしまいます。

グルコースは脳や全身のエネルギー源となるもので、グルコース不足は体にとって危機的な状態です。そこで働くのが糖新生というメカニズムです。これは糖質以外の物質からグルコースを合成するというメカニズムになります。

この糖新生によってグルタミンはグルコースへと変化します。そしてこの反応の途中で、実はNADHをNADへ変える働きもあるのです。NADが増えれば、アルコールの分解は再びスムーズに進むようになります。

つまりグルタミンはアルコールの分解に必要な補酵素NADを増やすことで、アルコールの分解を促す効果があるのです。

アルコールの分解を促す働きはグルタミンだけでなくアラニンにも

アルコールの分解を促す効果のあるアミノ酸として、グルタミンだけでなくアラニンにも注目が集まっています。アラニンもタンパク質を構成するアミノ酸のひとつで、非必須アミノ酸になります。

グルタミンやアラニンにアルコールの分解を促す働きがあることは、ラットの実験によって確認されました。

二日酔いの状態にさせたラットはグルタミンやアラニンを含んだ餌を好んで食べるようになり、またそれらの餌を食べたラットの方が二日酔いからの回復が速かったのです。

それだけでなく、グルタミンやアラニンは肝障害を改善させ肝機能を高める効果もあるのではないかと考えられています。

今のところヒトに対しての確実な研究結果は出ていないようですが、期待はできるかもしれません。

グルタミンはその他にもいろいろな効果が期待できる

グルタミンはアルコールに対する働きだけでなく、その他にもいろいろな効果が期待で来ます。中には実際に医薬品として使われていることもあります。

筋肉の分解を抑える効果

激しい運動をしたときや風邪をひいたときなど、体に強いストレスがかかったときには筋肉が分解していき、体の中に蓄積されていたグルタミンがたくさん消費されていってしまいます。

このときグルタミンを補給することで、筋肉の分解を抑えて筋力を維持できることがわかっているのです。そのため体を鍛えている人は、グルタミンの入ったサプリメントを摂ったりします。

またアスリートだけでなく、手術後の体を動かせない患者にも使われることがあります。手術後に体が動かせないと筋肉は減っていってしまいますが、それを防いで維持するために投与されたりするのです。

消化管の機能を高める効果

消化管には絨毛(じゅうもう)と呼ばれる突起があり、栄養素はここから吸収されていきます。絨毛では新陳代謝が活発で、常に古い絨毛が剥がれ落ち新しい絨毛が生まれています。また絨毛には、細菌やウイルスの侵入を防ぐ役割もあります。

この絨毛のエネルギー源がグルタミンになります。グルタミンが十分にあることで絨毛は常に新しく生まれ変わり、食事から摂った栄養を効率良く体内に取り込むことができるのです。

何らかの問題があって絨毛の動きが悪くなると、人は栄養をしっかり取り込むことができなくなってしまいます。

抗がん剤治療などを行っていると、絨毛の新陳代謝がうまくいかなくなります。絨毛が生まれ変われず、栄養をしっかり吸収することができなくなるのです。

そのため抗がん剤治療中の患者にグルタミンが投与されることもあります。またグルタミンを含む胃薬も発売されています。

免疫機能を高める効果

免疫機能に関係する細胞には、リンパ球やマクロファージなどがあります。グルタミンはこれらの免疫機能に関係する細胞のエネルギー源にもなります。

また絨毛の新陳代謝を活発にすることによっても、細菌やウイルスの侵入を防ぐ働きがあります。これらの働きによって、グルタミンには免疫機能を高める効果が期待できます。

実際にマラソンランナーにグルタミンを投与した実験では、投与することで感染症にかかるのを抑える効果がありました。(意外かもしれませんが、マラソンランナーはレース後に免疫力が低下し風邪をひきやすくなります。)

その他にもグルタミンは傷の治りを良くしたり、成長ホルモンの分泌を促すような働きも期待されています。実際にグルタミンを投与することで、外科手術後の回復期間を短縮することができたようです。

グルタミンを摂取できる食べ物

グルタミンは体内で生成することができるアミノ酸です。

食品から摂取する場合には

  • チーズ
  • トマト
  • 大豆
  • 海藻類 など

に多く含まれています。

その他にもいろいろな食品に含まれていますが、熱を加えるとその効果がなくなってしまうため、生で食べられる食品が良いでしょう。お酒を飲むときには、サラダや刺身を一緒に食べると良いかもしれません。

摂取量、摂取する自分の状態に注意

普段の食事から摂取する分には、過剰になってしまうことはほとんどありません。

サプリメントで摂取する場合には使い方を守るようにしてください。過剰に摂取することで、肝臓の負担となってしまうこともあります。

先ほども言いましたが、化学調味料のグルタミン酸ナトリウムに対してアレルギーのある人は注意してください。

また精神疾患のある人も避けた方が良いでしょう。グルタミンは体内でグルタミン酸になります。グルタミン酸は脳の機能に関係するアミノ酸であり、グルタミンを摂取することで問題が起きたという報告もあります。

抗けいれん薬や肝性脳症を予防するラクツロースという薬を服用している場合には、グルタミンサプリメントは使わないでください。これらの薬の効果を弱めてしまう可能性があります。

また肝性脳症はアンモニアが増えることで発症してしまう病気です。グルタミンは酵素の働きによって、体内でグルタミン酸とアンモニアに変化します。アンモニアが生成されることで症状が悪化してしまう危険があるため、気をつけてください。

付き合いなどでお酒をたくさん飲むという人は、一度グルタミンを試してみてもよいかもしれません。ただし肝臓のためには適量の飲酒で抑えること、休肝日を作ることも重要だということを忘れないでください。

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