下痢が続くのは肝臓が原因!?肝機能の低下でおこる下痢の症状

下痢が起こる原因は非常に多様です。

とはいえ肝臓のトラブルに端を発して下痢が起こるケースはそう多くありません。というより、肝臓の問題が絡んだ下痢はむしろまれなケースであるといえます。

ただし、肝臓に何らかの問題が起こって、それが原因となって下痢が起こるようなケースでは、原因となった肝臓はかなり危機的な問題を抱えている可能性も考えておかなければならないでしょう。

今回は肝臓と下痢の関係についてお話します。

肝臓が弱るとなぜ下痢がおこりやすくなるのか?

下痢は、便中の水分が異常に増加して起こる症状です。多くは、「胃腸のトラブル」の一環として下痢が起こります。

胃腸の問題が下痢の原因になるということは、直観的に、あるいは経験的に納得できると思います。しかし肝臓のトラブルが下痢の原因になるとすると、ひと筋縄では説明がつきそうもありませんよね。

ただ、下痢は「便中の水分が異常に増加して起こる症状」であるところから逆算して、「肝機能障害によって体内の水分の処理がどうにかなるのではないか?」の仮説を立てることはできます。

肝機能が低下すれば胃腸のはたらきも低下する可能性大!

便秘が原因で肝臓が悪くなる」の記事で、「肝臓は栄養循環の司令塔だ」というお話をしました。

肝臓が正しく機能すれば、全身の栄養バランスが正しく保たれる可能性がそれだけ高くなることは容易に想像できるでしょう。

ということは逆に、肝機能が低下することによって、全身の栄養のバランスが正しく保たれなくなる可能性が高くなることも十分に想像できるはずです。

だからといってなぜ下痢が?と、あなたは思いますか?

では、「全身」というのはいったいどこのことを指しているのかというと、これは文字通り「身体の主要な臓器や部位すべて」と解釈することができます。もちろん、「胃腸」だって当てはまります。

さあ、この時点でようやく肝臓と胃腸のかかわりにたどりついたことになります。肝臓の性質はその人、その肝臓によって機能に大きな個人差が生じる臓器ですから、多少の肝機能低下なら胃腸には何ら問題はないという人もいるでしょう。

しかし逆に、肝機能低下によって胃腸が不調になり、その症状の1つとして「下痢」が起こることがあっても驚けません。胃腸の不調によって、水分処理がうまくコントロールできなくなると、下痢や便秘が起こるのです。

肝臓の主要な役割の1つに「胆汁の生成」があります。

実はこの胆汁、胆のう → 十二指腸と流れてから、便と一緒に老廃物を体外に流しだすという重要な役割を担っています。そしてその際、余った胆汁は再び肝臓に戻るという特徴があります。

これを「胆汁の腸肝循環(ちょうかんじゅんかん)」と呼びます。

胆汁の腸肝循環をあらわしたイラスト
(出典:胆汁酸 | 中央区八丁堀駅から徒歩1分、内科での診察は高橋医院へ)

ところが胃腸の機能が低下すると、胆汁を肝臓に戻す力を失い、余った胆汁もそのまま便と一緒に流し出してしまうのです。

そしてこの胆汁の成分のうち、実にその97%が「水分」です。この「水分」が下痢の原因になります。

なかなかまどろっこしいお話だったかと思いますが、一見無関係そうに見える「肝臓と下痢」の間にはこのような関係があったんです。密接とはいえないものの、希薄ともいえない関係でしょうかね。

ただ、肝臓の具合が悪いと下痢が起こりやすくなる理由は、それだけではないのです。

肝機能低下によって「肝細胞の保水機能」も危うくなる

私たちは、何をもって「肝機能が低下した」と判断するのでしょうか?

肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれるくらいですから、肝臓が少々ダメージを負ったとしても、私たちがそのダメージを肝臓のダメージとして認識することはありません。

ではどうやって肝機能の低下を知ることができるのかというと、やはり「肝機能検査(血液検査)」が一番わかりやすいでしょうね。たとえばALT(GPT)、AST(GOT)、γGTP(γ:ガンマ)などは、よく知られる肝機能の検査値です。

これらの数値が何を意味するのかについては血液検査についての記事でご確認いただきたいのですが、しかし下痢と関係する部分だけはこちらでも触れなければなりません。

実はALT(GPT)やAST(GOT)、γGTPなどはいずれも、「肝臓でつくられる酵素」の名称で、肝臓を構成する肝細胞の内部成分として存在します。

ところが肝細胞が壊れると(ダメージを受けると)細胞内からこれらの酵素が血中に漏れ出すことになります。

ということは、これらの酵素の数値が高ければ、それだけ肝細胞の破壊が進んでいることを意味するのです・・・と、ここまでは「肝臓がダメージを受けていますよ!ケアしましょうね!」というお話です。下痢とは無関係です。

しかし肝細胞の内部成分は、これら酵素だけを含んでいるわけではありません。肝細胞は当然「水分」だって含んでいます。

ということはですよ・・・「肝機能が低下する(肝細胞が破壊される)と、水分だってたくさん漏れ出すことになりはしないか?」

の推測も成り立ちそうです。しかも漏れ出す酵素や細胞内部成分は、上記3種以外にも、ALPだとかLAPだとかコリンエステラーゼ(ChE)だとか、もっともっとほかにいろいろな種類があります。

とすると、そういったいろいろな種類の酵素だのなんだのを含んでいる細胞が破壊されるたびに、どの細胞からも水分が一緒に放出されることになります。つまり、細胞の保水機能が低下し、堤防が決壊したような状態にもなりうるのです。

これが「下痢」の原因になっているとも考えられているんです。よく「肌の状態が悪い人は肝臓が悪い(肝機能が低下している)」などといわれますが、もしかしたら「肝細胞の保水」と「肌の保水」とがどこかでつながっているのかもしれませんね。(まあこれは完全に根も葉もない憶測ですが・・・)

それはさておき、上記の説明部分と関連して下痢が起こると考えられる具体的な肝疾患についてもまとめておきましょう。

下痢が起こることがある肝疾患
  • 肝炎(特にA型肝炎、B型肝炎)
  • 肝硬変

いずれも長期にわたる「慢性下痢」の症状が見られることが多い。

上記はいずれも、数ある肝疾患、肝障害の中でも激しいか機能低下が起こります。それだけ肝細胞破壊が進んでいる、あるいは腸肝循環もままならないほど栄養循環がうまくいかなくなってしまったことが原因と考えられる下痢です。

下痢だからといってすぐに「肝臓?」と思う必要はないけど…

ここまでお読みいただいて、「なんか最近は下痢しがちだから肝臓が悪いのか?」などといぶかる人もいるかもしれませんね。

ただ、基本的には「下痢したら肝臓が悪いと思え」などというスタンスは不要です。

冒頭でも触れたとおり、下痢の原因は非常に多様であり、そのほとんどが「胃腸のトラブル」です。

ただ、いつまでたってもよくならない下痢に悩まされ、しかもその原因がイマイチわかっていないという人は、肝臓との関係も少し考える・・・というくらいのスタンスでちょうどいいかもしれませんね。

いずれにしても、身体は臓器も血管も骨格も、互いが干渉しあってうまく成り立っています。中でも肝臓は「司令塔」の役割を担います。

ですから肝臓がクロマクでなくとも、まったく無関係ということもないと考えておいたほうがいいのかもしれませんね。

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