【免疫グロブリン】高値だと肝硬変かも!基準値を知ろう

肝臓でつくられるたんぱく質のひとつにグロブリンがあります。このグロブリンの中で免疫とかかわるのがγグロブリン(ガンマグロブリン)で、「免疫グロブリン」と呼ばれることが多いです。

肝臓疾患の検査といえば血液検査というイメージが強いのですが、その血液検査では見えなかったものが、今回のγグロブリンの数値で見えてくるのです。

重要なγグロブリンについて、その種類、役割、数値の見方などを解説します。

γグロブリンと肝臓とのかかわり、γグロブリンの役割と種類

確かに免疫というと反射的に「白血球」のワードが思い出されますが、γグロブリンとのかかわりが深いのが、白血球成分のひとつである「リンパ球」です。NK細胞やT細胞、B細胞などが免疫機能を果たすのがリンパ球でした。

γグロブリンは、「B細胞」と呼ばれるリンパ球の細胞で産生され、抗体として威力を発揮します。抗体は、抗原(たとえばアレルゲンやウイルスなど)を強固にブロックする役割がありました。

実はこの免疫グロブリン=γグロブリンが、肝機能障害やかなり重度な肝疾患と密接にかかわっています。これからその関係性について、具体的にお話していきたいと思います。

かといって、γグロブリンは肝臓でつくられているわけではありません。γグロブリンをつくるB細胞はリンパ球に存する細胞ですから、リンパ球も当然ほかの血球成分同様「骨髄」でつくられます。

生まれる前の胎児のみ、肝臓でγグロブリンがつくられるますが、生まれてからは骨髄の造血幹細胞でほかの血球と一緒につくられたリンパ球でγグロブリンがつくられることになります。

γグロブリンは肝機能障害の重要なマーカーとなる!

肝臓とのかかわりでγグロブリンが最も重要な意味を持つのは、γグロブリンの数値によって肝機能障害の程度がわかる、という点においてです。肝臓でつくられるかどうかは関係ありません。

γグロブリンの値が正常範囲を逸脱していると、特に顕著な高値の場合、何らかの肝機能障害が起こっている可能性が極めて大きいです。つまり、γグロブリンは肝機能障害の重要なマーカーとなるのです。

(γ)グロブリン値を測定するために有効な検査方法として、「蛋白分画(たんぱくぶんかく)検査」が挙げられますが、この検査などでγグロブリン値の詳細を知ることができます。

この検査では「A/G比」や「ZTT・TTT」も参照します。その結果、以下のような肝機能障害、肝疾患のリスクが考えられます。

γグロブリン値の傾向と肝機能障害・肝疾患リスク
γグロブリンが著しく高値を示し、A/G比が低値を示すとき、肝硬変(終末期慢性肝炎)の可能性がある

ただし、高齢者は比較的γグロブリン値が高値で推移しますし、肝硬変などの肝機能障害以外にも、膠原病(こうげんびょう)や多発性骨髄腫などでも顕著な上昇がみられることがあります。

逆にネフローゼ症候群の場合、(γ)グロブリン値が低値を示すことが多いです。しかしアルブミンも低値を示すことが多いため、A/G比には明確な異常が現れない可能性もネフローゼ症候群の場合考えられます。

とすると、ここで重要になってくるのが、「γグロブリンの基準値」ですよね。ただ、γグロブリンはさらにいくつかの種類に分けられますので、種類ごとの基準値を知っておきたいところです。

γグロブリン(免疫グロブリン)には5つの種類がある!それぞれの基準値は?

γグロブリンの肝臓とのかかわりがはっきりしたところで、γグロブリンの本質的な「抗体」としての役割にも触れておかなければなりません。同時に、それぞれの基準値を記しておきます。

γグロブリンの種類 それぞれの役割や特徴 それぞれの基準値
IgG 侵入してきた病原体およびウイルス抗原と結合し、白血球の働きをサポートしたり、ウイルスや細菌が出す毒素と結合して無毒化したりする。免疫グロブリンの5種中、もっとも多く血中に存在する。 870~1700mg/dL
IgM 補体(ほたい)と呼ばれるたんぱく質とともに病原菌、ウイルスなどの抗原を破壊したり、白血球がこれらを食べるのを助けたりする。感染が起こった後、初期段階で産生される抗体。 35~220mg/dL
IgA 侵入してきた病原菌やウイルスなど、異物の侵入を防ぐ働きに関与。喉の表面、腸の内側、気管支の内側の壁など、粘膜の表面に常駐する。 110~410mg/dL
IgD リンパ球の成熟、分裂になんらかの役割を果たしているものと考えられる。現在のところ、このクラスの免疫グロブリンの詳細まで解明されているわけではない。 判明していない
IgE アレルギー反応に主要な役割を果たす(アレルゲンを攻撃)。アレルギー性疾患、寄生虫感染症などで増加。血中の量が最も少ない免疫グロブリン。 358mg/dL以下

IgE、IgG、そしてIgMなどの表記を見てピンときた人もいるかもしれませんね。γグロブリンはまさに「抗体」そのものなのです。

「Y」の字の血中成分をイメージすると、ますます抗体に思い当たる人もいるでしょう。まあそんなことよりも特に重要な意味を持つのが、「基準値」です。

上でもすでに触れたように、基準範囲を逸脱しているときには、何らかの肝機能障害が起こっている可能性が高いと考え、さらなる精密な検査や治療など、できる限りの対処を講じる必要があります。

血液検査からでは見えてこない肝臓のリスクが、γグロブリン値をとおして見えてくる

肝機能検査といえば、一般的には「血液検査」をイメージすると思いますが、今回の最大のテーマは、血液検査からでは見えてこない肝臓のリスクがあって、そのリスクの特定に、蛋白分画検査が役立つ、ということでした。

その蛋白分画検査では、グロブリンの数値が具体的にわかり、そのなかでも「免疫グロブリン」と呼ばれるγグロブリンの数値がさまざまな情報を伝えてくれるということをお分かりいただけたかと思います。

要は、血液検査でおなじみのALT(GPT)、AST(GOT)、γGPTの数値に異常があるときは、「特定の肝細胞が破壊されています」という情報しかわからなかったのが、(γ)グロブリン値を知ることで、

どういった破壊が起こっていてどの程度の悪化か、そして懸念される肝機能障害、肝疾患はなにか

といった具体的なイメージが可能になるのです。肝機能に不安をお持ちの方は、ぜひ蛋白分画検査やγグロブリンのことを覚えておいていただきたいと思います。

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