【撮影写真あり】肝臓をずたぼろにする毒キノコ8選【普通にはえてる】

お酒が肝臓にダメージを負わせることはよく知られますが、アルコール以外にも主食となるご飯、パン、麺類、そして甘いものなどの「糖質」や、肉が好きな人にとって要注意の「脂質」は脂肪肝発症、悪化の原因です。

しかし!もっとダイレクトに肝臓をむしばむこわ~い対象があります。「毒キノコ」です。その脅威の毒性と、肝臓をズタボロにする恐怖の毒キノコの種類や基本的な見分け方を、山とキノコ愛好家の筆者が実際の写真付きで紹介します。

肝機能がゼロに!「猛毒御三家」の異名を持つ猛毒キノコ3種

毒キノコの毒にもいろいろな種類があって、中には肝臓を激しくむしばみ、肝臓を「ただの臓物」と化す脅威の毒性を示すものもあります。

しかも、解毒する薬がまだ開発されていない毒を持つ毒キノコが多く、誤って食べてしまったら最後、もうあとは死を待つばかり・・・そういう毒キノコもあるんです。コワイですねぇ。

毒キノコと呼ばれる以上どんなキノコでも口にすべきではありませんが、それを言い出したら「シイタケ」だって実は毒キノコに分類されると唱える学説もあったりするので、その境目がイマイチ不明瞭なことが多いです。

そこでまずは、「食べたら死を免れない猛毒キノコ」からご紹介しましょう。彼らは「猛毒御三家」などと呼ばれ、多少でも野生キノコに興味がある人ならだれでも知っているくらい有名な猛毒キノコです。

いずれも激しく肝臓を害し、治療しなければかなりの高確率で死を招く怖い毒キノコです。まずご紹介するのは、猛毒御三家の中でも最も目にする機会が多い、つまりは、どこにでも生える毒キノコです。

ドクツルタケ

その毒キノコの名は「ドクツルタケ」という真っ白な美しいキノコです。ドクツルタケは1本食べただけでほぼ確実に死に至るといわれます。致死量はわずか「8g」といいますからヒエェェ・・・ですね。

ドクツルタケ写真
(ドクツルタケ幼菌:筆者が撮影)

夏~秋くらいの時期になれば、ちょっと山がちなところ(少なくとも本州では)であればこんなものがそこらへんに普通に生えているのですから、ますますヒエェェ・・・です。

見た感じいかがでしょうか?真っ白で小さくてかわいらしいですよね?しかしこれが食べたら死んでしまうレベルの猛毒を持っているんですよ。

もうちょっと成長して大きくなると、

ドクツルタケ写真2
(ドクツルタケ成菌:筆者が撮影)

このように、少し毒々しくなりますね。ちなみに「ツルタケ」というこちらも毒キノコながら、毒性が弱いために食べる人もいる(!)というキノコがあるんですが、ドクツルタケはその猛毒版なんです。

だからこそ「毒ツルタケ」となったという説もあるんだとか。それならばツルタケをドクツルタケと呼び、ドクツルタケをモウドクツルタケなどと呼んだほうがよかったのになぁ、などと思います。個人的には。

しかしこの猛毒キノコ・ドクツルタケは、山中で遠くに1本だけ見えると極めて美しいと感じてしまうくらい、ほんとうに息を飲むほどキレイなキノコでもあるんですよ。

シロタマゴテングタケ

ドクツルタケとセットで覚えておいてほしいのが、「シロタマゴテングタケ」です。こちらも2~3本食べたらアウト!などと説明されることが多いですね。

小ぶりなものが多いシロタマゴテングタケは、見た目上の特徴がドクツルタケと酷似しています。筆者が撮影したはじめのキノコ写真は、「ん?どっちだ?」と悩むくらいでした。見た目の違いはほんのわずかです。

キノコの軸(柄(つか)と呼びます)の部分がツルっとしているのがシロタマゴテングタケで、少しデコボコしていたり模様があったりするのがドクツルタケ。幼菌時はほとんど見分けがつきません。

そのため、両者を区別するために特別な試薬を使用したり顕微鏡で胞子をのぞいたりして判別するそうです。写真のキノコにはササクレがあったので「小さなドクツルタケ」と判断しました。

まあどちらにしても、できれば近づかないほうが無難です。遠目に見ればどちらもたいへん美しい姿です。さすがに見たくらいでは肝臓も目も脳もやられませんから、見て楽しんでいただきたいと思います。

ちなみにこのドクツルタケ、シロタマゴテングタケは「殺しの天使」というとてつもないニックネームがあるんですよねぇ・・・

タマゴテングタケ

そして猛毒御三家のラストを飾るのが、「タマゴテングタケ」という猛毒キノコです。タマゴテングタケは主に北海道でみられるキノコですが、関東在住の筆者自宅の近隣にもありした。

そしてこのタマゴテングタケ、1本食べたら死んでしまう「殺しの天使」よりも数段毒性が強い!ということですから、これはまた怖いキノコの登場です。ヨーロッパ圏では「死の帽子」の異名をとります。

タマゴテングタケ写真
(タマゴテングタケ成菌:筆者が撮影)

黄色っぽかったりクリーム色っぽかったりしますが、この手の毒キノコは非常に危険です。タマゴテングタケにそっくりな、同じく猛毒の「タマゴタケモドキ」というキノコも肝臓を害し、死を招きます。

ところで「タマゴ」、「テング」など親しみあるワードが毒キノコ名に連ねられていますが、これは「テングタケ科」のキノコであり、その代表格であるタマゴタケというキノコに似ているからかと思われます。

テングタケは、死ぬほどではないものの、まあまあふつうレベルの毒キノコです。「毒キノコの絵」と聞いて思い出すあのキノコが「ベニテングタケ」という弱毒キノコ、「タマゴタケ」はおいしい食菌です。

いずれもテングタケ科に属するキノコですよ。ベニテングタケは肝臓への直接的な影響はない(そういう毒は微量)と考えられていますが、テングタケには肝臓を害する毒があります(そんなに強くない)。

テングタケ写真
(出典:テングタケ-毒キノコ写真集|毒キノコ図鑑より)

テングタケの写真がどこかにいってしまったので、「毒キノコ写真集」という素晴らしいタイトルのサイト様より、毒キノコのテングタケのお写真を拝借しました。チョコレートのような色ですね。

猛毒御三家が属するテングタケ科の特徴は、とにかく毒キノコが多いことです。そして見た目の特徴として、

  • 傘の裏にヒダがある
  • 柄と傘の付け根下にツバ(小さなヒラヒラしたもの)がある
  • 柄の底にツボと呼ばれる袋状の組織がある

が挙げられす。ツバは風雨にさらされたり誰かがいじったりしてなくなってしまうこともあります。ツボは、幼菌時には卵の殻のように全体を覆っていることもあります。

はじめはタマゴから生まれかけのようだったのが、

タマゴタケ写真
(タマゴタケ幼菌:筆者が撮影)

翌日には・・・

タマゴタケ写真2
(タマゴタケ成菌:筆者が撮影)

こんなに立派に傘が開き、背も高くなります。ちなみにこれが「タマゴタケ」というキノコで、テングタケ科では珍しい優良な食菌です。あまり似ているキノコがないので、比較的簡単に見分けられます。

ただし、猛毒御三家の幼少時は、ツボ(卵の殻)がすっぽり全身を覆った幼菌の姿をしており、おいしいタマゴタケと見分けが付かないことがあります。判別するためには、ツボを割って中を確認してください。

そして、少しでも違和感を覚えたら、絶対に口にしないようにしてくださいね!野生キノコを食べるなら、絶対的に自信があるキノコだけですよ。

まだまだある猛毒キノコ!おいしいキノコにそっくりな菌も

上記は「猛毒御三家」と呼ばれるくらいですから、ちょっと別格の脅威です。猛毒中の猛毒といえます。

しかしどうでしょう?上の写真のキノコを見て「食べたい!」と思いますか?

感じ方は人それぞれなのでなんともいえませんが、あまり食欲をそそるキノコには見えません(しかし実際味はおいしいんだとか)。問題は、「食欲をそそるキノコ」のほうかもしれませんね。

特に、おいしいキノコに似ているキノコは、たとえ毒性が弱くても誤食の危険性はむしろ大きいといえます。また、おいしいキノコに似ていて味もおいしいとなると、これは非常に危険です。

たとえ弱毒であっても、おいしさゆえに大量摂取してしまう可能性も考えられ、結果的に摂取した毒成分が致死量に達してしまうこともあります。毒性は御三家ほどではなくても、そうした危険は大きいキノコのお話です。

ニセクロハツの写真
(出典:ニセクロハツ-日本アルプス登山ルートガイドより)

ニセクロハツは猛毒御三家に次ぐ猛毒菌です。2~3本で致死量といわれますが、かなり大ぶりなキノコなので、そう簡単には食べて致死量に至ることはないはずですが、肝臓は激しくダメージを負います。

最近まで食べられていたクロハツ(最近毒キノコに昇格)、あるいはクロハツモドキという毒キノコにそっくりです。クロハツが毒キノコに分類されるようになったので、黒っぽいキノコは食べないと覚えましょう。

コテングタケモドキの写真
(コテングタケモドキ:筆者が撮影)

コテングタケモドキは強毒キノコで、食べられるチャタマゴタケに似ます。毒キノコが多いテングタケの仲間ですね。鈍いシルバーというか灰色というか茶色というか、複雑な色合いのミステリアスなテングタケです。

なお、モドキではない「コテングタケ」というそっくりな毒キノコもありますが、こちらは肝臓への直接的なダメージはないようです。肝臓を激しく損傷するのは、コテングタケモドキのほうです。

フクロツルタケの写真
(出典:フクロツルタケ-きのこ図鑑より)

おなじみテングタケ科の猛毒キノコで、ドクツルタケによく似ています。ただし、ドクツルタケと違ってツバがないのが特徴で、ドクツルタケよりもひとまわり大きいものが多い(筆者の)印象があります。

食べたら肝臓を激しく毒し、最悪死の危険も伴います。

コレラタケの写真
(コレラタケ:筆者が撮影)

かつては「ドクアジロガサ」と呼ばれましたが、肝臓を害する前にコレラに似た胃腸障害が起こることから「コレラタケ」に改名されました。いろいろな意味で非常に厄介な猛毒キノコです。

というのも、非常においしいナメコ、エノキタケ、ナラタケ、ナラタケモドキなどの幼菌時に酷似し、見た目の特徴からは判断できないことが多いからです。テングタケと異なり比較的寒い時期に発生します。

もちろん、ナメコもエノキもナラタケもナラタケモドキも晩秋~冬にかけて発生するので、時期も合致します。小さいものの、一度にたくさん食べるおいしいキノコに似ることから、肝臓へのダメージは深刻です。

他にもタマシロオニタケと呼ばれる、ボツボツ、ギザギザ、イガイガした強毒キノコも肝臓を害します。ただこれについては、そっくりなキノコが多いため、判別が難しいです、いちおう、こんな感じのキノコです。

タマシロオニタケと思しき写真
(タマシロオニタケ?:筆者が撮影)

ほんとうはもっと細かく、時期、発生場所、傘のへりに入る線(「条線」と呼びます)の有無などを詳細に分析していろいろなキノコを判別する必要がありますので、野生キノコはプロと一緒に収穫しましょう!

肝臓をボロボロにするキノコによる症状。治療はできる?

今度は毒キノコの「毒」の部分に迫ります。まずは症状ですが、上記(特に猛毒菌)に共通する症状があります。

肝臓を毒する猛毒菌による症状
毒キノコ食後半日~1日後、猛烈な下痢、嘔吐、腹痛、発熱などの胃腸障害がみられ、ほぼ1日で何事もなかったように完治する。しかし1週間程度後、体調不良から吐血などの重篤症状が起こり、死に至る。

どうですか?「え?」という感じの驚くべき症状ですよね?治ったのに1週間後に死んじゃうの?と、筆者もはじめてこの毒の脅威を知ったときには思いましたよ。なんともいやらしい攻撃です。

ちなみに、上記症状の説明は、ごくごく控えめに表現しています。これ以上はちょっとここでは申し上げられないというくらいの苦しみを伴いながらの最期を迎えることになるといわれます。

実はこの毒性、アマトキシン(類)と呼ばれる毒によるもので、実際にはそれぞれの毒キノコにいろいろな種類の毒が含まれているのですが、今回ご紹介したキノコたちの象徴的な症状は、いずれもアマトキシン特有です。

アマトキシンが特に強い肝毒性を持つわけではないのですが、この物質には「遅効(ちこう)性」という特徴があって、文字通り「食べてからしばらくして(15~24時間程度)症状があらわれる」のです。

ということは、食べた直後からジワジワと毒がまわっていてもしばらくは症状が現れず、血中に入り込んだアマトキシンが肝臓に入ると、私たちが知らない間に肝臓はどんどんむしばまれていくことを意味します。

そして1週間後、気づいたときにはもう手遅れになっているのです。治療法がないわけではありません。誤食の毒キノコをすべて吐き出し、胃洗浄するのが唯一の治療方法です。

しかし誤ったことに気づかなければ、初期症状が現れてもすぐに一旦は治ってしまうので、その後何事もなく生活して、その間毒がジワジワと肝臓を害し、手の施しようがなくなってしまうのです。

症状自体も怖いですが、アマトキシンの毒性も非常に大きな脅威です。何しろ毒キノコは食べないこと、これに尽きます。野生キノコを食べるなら、自己責任以外にありません。

毒キノコは悪くない!野生キノコ採取・摂取は自己責任で

今回ご紹介したアマトキシンは、すべての毒キノコが持つタイプの毒ではありません。多くは動植物に含まれるアルカロイドや、溶血性タンパクが毒キノコの毒成分になります。

つまり、今回ご紹介した「肝臓を毒するキノコ」以外にもっともっとたくさんの毒キノコがあることを意味します。たとえば、食べた瞬間「バーン!」という感じであっという間に死に至るカエンタケ。

あるいは、死ぬことはほぼありませんが、食べたが最後、向こう1カ月は指先や鼻先、耳たぶの先などの「先端部位」に焼け火箸を押し付けられたような激痛が続く「ドクササコ」などという恐怖キノコもあります。

たとえばトリカブトのように、かなり多くの植物に毒成分が含まれていますが、植物の毒は「自身が生き延びるため」、つまりは他者に害を与えるために含んでいる毒であると解釈されることがあります。

しかし毒キノコの毒は、その生成のプロセスが明らかになっていないものがほとんどで、まさに秘密のヴェールに包まれているのが現状です。要は、「毒キノコが毒を持っていてもキノコは悪くない!」のです。現状は。

美しいシロタマゴテングタケの姿を見ていると、コイツが悪者だなんてとても思えません。筆者が確信していることは、誤って食べたにしても、すべて自分が悪いと解釈すべきであるということです。

「猛毒御三家」なんて呼ばれてはいるけれど、シロタマゴテングタケ(ドクツルタケもタマゴテングタケも他の毒キノコも)は誰かをやっつけようとして毒を持っているわけではないのです。

そのことは忘れず、毒キノコを見つけても遠くから眺めるか、そのままそっとしておいてあげるのが、知恵ある人間としてのマナーかなと思います。正しいルールのもとで、美しくもミステリアスなキノコたちをご堪能ください。

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